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霊輝  作者: ガンミ
42/130

裏切りの代償

大きな局面を迎えます。

計画を実行に移したアレクスたちを待ち受けていたのは、裏切りと、避けられぬ対峙。

ひかりや仲間たちの想いが交錯し、予想を超える事態が連鎖していく。

誰も後戻りできない、緊張の連続が始まります。

『4月30日 / 16:33』


一日かけて考えた計画を実行に移すため、鳴羽界隈を離れて東の地区へ向かった。到着したのは大人向けの店が立ち並ぶ通りだった。バーやそれに類する店舗がずらりと並んでいる。


昨日と同じように、今日もまた全員が俺についてきてくれた。だが、奥へ進もうとした瞬間、男たちの一団に囲まれて進路を塞がれた。


鳴羽界隈の連中とは違い、こいつらはもっとフォーマルな格好をしている。スーツのジャケットにボタンシャツ、ただしネクタイは締めていない。全員が威圧的な視線を向けてくる。


そして、その男たちの間を掻き分けて現れたのは見覚えのある顔だった。


ハゲだ。

相変わらず、あの得意気な表情を浮かべている。


「あら、誰かと思えばハゲじゃない」


ひかりが最初に口を開いた。嘲笑するような口調で挑発する。

ハゲの口元が歪んだが、ひかりの挑発には構わず怒鳴った。


「うるせぇガキが!全員捕まえろ!」


男たちが一斉に向かってくる。

だが、俺はもう準備ができていた。再び霊輝のエネルギーを解放する。手に宿った光が迸り、男たちを襲った。


俺だけじゃない。エミリーもまた、手から霊輝のエネルギーを迸らせ、残りの男たちを蹴散らした。


戦いは一瞬で終わった。

残されたのは、呆然と立ち尽くすハゲだけだった。何も言えずにいる。


「な、なんだよお前ら……化け物か……」


ひかりは優越感を感じているようで、ゆっくりと挑発的な笑みを浮かべながらハゲに近づいていく。男の目の前に立つと、ハゲは尻もちをついて地面に座り込んだ。

完全におびえている。


まあ、当然だろう。自分にとって反自然な光景を目の当たりにしたのだから、怖がるのも無理はない。

でも、ひかりはそれを利用して嘲笑った。


「どうしたのよ、ハゲ。お前の手下どもがネズミみたいに倒れちゃったわね」


ハゲの男は反応しない。ただ地面に座ったまま怯え続け、ほとんど腕で顔を覆っている状態だった。


その時、二つの店の間の路地から誰かが素早く駆け出してきた。そしてひかりの頬に拳を叩き込む。

でも、予想通りひかりはびくともしなかった。

殴ったのは...紫さんだった。

拳の関節をさすっている。明らかにダメージを受けたのはひかりではなく彼女の方だ。


「また会ったな、ひかり。ウチの連中に何の用だ?」


皮肉めいた口調で問いかけているようだったが、ひかりは今度は答える代わりに、紫さんを見て喜ぶ代わりに、拳を握りしめた。


ひかりがじっと見つめている。でも全く反応しない。


その時、ハゲが立ち上がって紫さんの後ろに隠れるように駆け寄った。


「紫、早く戻らないと!この糞みたいなモンスターどもを殺さなきゃ!!」


完全に正気を失ったように叫んでいる。紫さんの顔には明らかに嫌悪の表情が浮かんでいたが、ハゲは止まらない。


「全部殺さないと、俺たちが殺される!!」


肩を掴みながら必死に喚いている。目は落ち窪んで、もう理性なんて欠片も残っていない。


「そうだ、ボスなら…!ボスが!ケケケ!ボスが全部やってくれる!いつもそうだ、あははは!」


狂ったように笑いながら、突然紫さんを押し倒した。ひかりにぶつかる。


ハゲはそのまま俺とは反対方向に走って逃げていく。


「ちっ、あれがお前の標的やったんか、ひかり!?」


ひかりから離れながら言った。何か言いたそうな表情を浮かべているが、性格を考えると特に言うことなんてないのかもしれない。


その時、ルーシーが紫さんに向かって駆け出した。

拳を振り上げて腹部に一撃を入れる。でも倒れず、数歩後退しただけだった。


驚いたことに、アナスタシアも動いた。紫さんめがけて駆け寄ると、鋭い蹴りを腕に叩き込む。ルーシーとの連携で、二人への対応を迫られる――


その時、エミリーが俺に向かって叫んだ。


「先輩!あのハゲが逃げた方向を追って!私たちはこの女が邪魔しないように食い止める!」


計画が理解できた。俺はひかりに向かって走り、手を掴んで一緒に駆け出した。紫さんは何もできずに、ルーシーとアナスタシアとの戦いに集中するしかない。


ひかりと並んで走りながら、あのハゲが逃げた街路を見回す。少し先で、まだ走っている姿が見えた。前にいる人たちを押しのけながら必死に逃げている。もう少し追いかければ捕まえられそうだ。


やがて奴は中規模のビルに入っていった。外見は普通の建物だが、きっとあれが東牙会の拠点に違いない。まだ中に入る必要はない。敵の可能性のある拠点が分かった今、新しい作戦を立てる時だ。


ひかりを見ると、彼女も俺を見つめ返している。何も言わずに視線を交わしただけで、もうやるべきことは決まっていた。戦っている女子たちを助けに戻ろう。


でも、戻ってみると...


アナスタシアがエミリーを肩で支えているのが見えた。心配になって急いで近づく。よく見ると、紫さんの姿はもうどこにもない。エミリーは手でお腹を押さえていた。


「エミリー、大丈夫か……?」


そう声をかけると、彼女は弱々しく笑いながら顔を上げた。


「うん……ちょっと、くらっとしたけど……大丈夫……だと思う」


アナスタシアが素早く状況を説明し始めた。


「紫さんは卑怯な手を使ったのよ...あたくしとルーシーに正面から挑むのは無理だと分かっていたから、何とかしてエミリーを狙ったのよ」


確かに、エミリーは近接戦闘が苦手だ。身体能力は高いが、霊輝を遠距離で使うことしかできない。油断した瞬間を狙われたんだろう。


「エミリーを殴った後、あの方向に逃げていったわ...」


アナスタシアが指差した方向を見ると、ルーシーが心配そうな顔で俺の隣に近づいてきた。


「追いかけようと思ったんだけど...エミリーと一緒にいた方がいいと思って」


これには驚いた。今まで二人はあまり仲が良さそうに見えなかったのに、ルーシーがエミリーを心配して残ったなんて。意外だったが、彼女らしい優しさだった。


それはともかく、あのハゲがどこへ向かったかは分かった。あの建物が次の目標だろう。


『5月1日 / 16:47』


今日のために練った作戦は、東牙会の連中全員の注意を引くことだった。要は奴らを孤立させて、援軍を呼べないようにするためだ。

ひかりが提案したのは、自分が群衆の前で挑発することだった。


「わたしがやる」


そう言い切った時の表情を見て、反対する気にはなれなかった。

目的地の中規模なビルの前に到着した時、エミリーだけがいなかった。昨日の件を考えれば、彼女がここに来ない方がいいだろう。


ひかりが建物の入り口前に立つ。そして叫んだ。


「お前ら!!東牙会の馬鹿ども、ボスを出せ!さあ出てきて戦え!!」


その叫び声に反応して、建物から大勢の男たちが現れた。何人かはスマホで誰かと話している。でも、すぐにひかりに向かって走ってきた。


一人の男がひかりに近づいた瞬間、彼女は足を使って男を蹴り飛ばした。続けて鞭を召喚する。

危険だ、と思った。


でも、よく見ると鞭で男たちを打った時のダメージが、普通の鞭とそれほど変わらない。なぜこんなことが?


本当に今はそんなことを考えている場合じゃない。


ルーシーとアナスタシアも、群がってくる男たちと戦い始めた。

ひかりは興奮しているようで、通りを走りながら叫び始めた。


「東牙会の馬鹿ども!全員馬鹿、馬鹿!!」


野次馬が増えるにつれて、敵の数も増えていく。金属パイプを持った男たちまで現れた。

作戦は成功している。問題は、これからどうするかだ。


男たちが密集してるのを見て、霊輝のエネルギーを集中させた。

一気に解放する。


「うわああああ!」


男たちが地面から吹き飛ばされ、空中を舞ってから地面に激しく叩きつけられた。


街は一瞬で混乱状態になった。通行人たちが悲鳴を上げながら四方八方に逃げ惑う。


その騒乱の向こうに、見慣れた人影が現れた。

紫さんだ。


ひかりが彼女の存在に気づいて、ゆっくりと歩き始める。紫さんも同じように近づいてくる。

二人が向かい合った時、何も言葉を交わさなかった。

もう敵はいないと判断して、ひかりの元へ駆け寄ろうとした。ルーシーとアナスタシアも同じ考えらしい。


「待って!...茜はウチに任せて」


ひかりが手を上げて制止した。

何を企んでるのかわからないが、二人はただ無表情で見つめ合っている。


「なんでまた茜って呼ぶんや?」


苛立ったような声を出した。そして拳を振り上げる。

でも、予想通りひかりは微動だにしなかった。


「茜ええぇ―――!!」


今度はひかりが腹に拳を叩き込んだ。


「ゴホッ...」


咳き込む。ダメージが通ったようだ。


「...なかなかやるやん、ひかり...けどな...」


連続でパンチを繰り出し始めた。顔に、腹に、容赦なく。

でも、ひかりは全く動じない。まるで岩でも殴ってるかのように。

結局、疲れたのは紫さんの方だった。息を荒げながら拳を下ろす。


「ウチに手ぇ出すんやったら、頭ぶち抜いたるで、ひかり!!」


この二人の戦いが全く理解できない。


完璧に分かってるはずだ。ひかりには、あんな攻撃は効かないって。それなのに、なぜ二人とも本気で殴り合ってる?


もっとよく観察してみると...紫さんが笑ってる。


戦いながら、確実に笑顔を浮かべてた。まるでこの状況を楽しんでるみたいに。一体なんで?


理解できないまま、ただ見守るしかない。


動きが鈍った瞬間、ひかりの拳が腹部を貫く。膝を折り、ついに崩れ落ちた――。


顔を上げて、ひかりを見つめる。二人とも何も言わない。ただじっと見つめ合ってる。


「...ゴホッ...やっぱりお前、傷一つついてへんわ...ゴホゴホッ...」


背中から地面に倒れ込んだ。それでもひかりを見上げてる。


そして、さっきまでとは全然違う笑顔を浮かべた。


「なあ、ひかり...ウチの本当の居場所って、どこなんやろな?」


ひかりが驚いてる。でも答える前に、警察のサイレンが聞こえ始めた。


ここにいちゃまずい。


ひかりは地面に倒れてる紫さんを見下ろしたまま、答えることができずにいた。


俺たちは振り返ることなく、その場から走って逃げた。


『5月2日 / 16:54』


今日が決着をつける日だった。

あいつらのボスを引きずり出すための最後の一手。今回は前みたいに騒ぎを起こすつもりはない。単純に要求する。だからルーシーとアナスタシアには少し離れた場所で待機してもらった。何かあった時の援軍として。


街を歩いていると、案の定だった。

数人の男たちが俺とひかりの前に立ちはだかる。今回は取り囲まない。ただ道を塞ぐだけ。


そこに現れたのは、紫さんだった。


「ここ数日、お前らがどんだけ問題起こしてるんや。マジで頭痛いわ」


ひかりが一歩前に出た瞬間、男たちが怯えて後ずさりする。でも紫さんだけは動じない。


「お前のボスを今すぐ呼べ!」


ひかりの声に、紫さんは舌打ちして首筋を掻いた。明らかに嫌がってる。


その時だった。また例のハゲが現れた。


「誰に向かって要求してると思ってやがる。身の程を知れよ、ガキが」


だがひかりがそのハゲを睨みつけると、あっさりと紫さんの後ろに隠れてしまった。


「チッ...串田、下がってろ。ウチが...」


しかし串田と名前が判明したそのハゲは、言葉を遮った。


「もう終わりだ、化け物ども!ボスを呼んだからな!あはは!」


串田の方を振り返った。怒りと驚きが混じった表情だった。まるで、こんなことが起こるつもりはなかったという顔をしている。


「何やってんねん串田!!なんでボス呼んだんや!?」


でも串田は完全におかしくなってしまっていた。理性を失っているというか、前回の件で相当トラウマを負ったんだろう。もう正常な判断ができない状態だ。


怒って串田のシャツの襟を掴んだが、そいつはにやりと笑った。


「離せよ紫。お前だって自分の立場わかってんだろ?ボスの女でしかないくせに」


串田のシャツの襟から手を離すと、ぷいっと皆に背中を向けた。だが、串田はまだ止まる気配すらなかった。


「お前みたいなゴミ、所詮どこにも馴染めねえんだよ。…ほら、またその目で睨むんだ。惨めな野良猫みたいに」


声がさらに大きくなった。


「そうだろお前ら!?俺の言ってることは正しいよな!?紫なんて何でもないんだよ!!」


「そうだな」

「消えちまえ」

「ボスが体目当てで置いてるだけだろ」


周りの男たちがそんなことを口々に言い始めた。


俺の中で怒りがふつふつと湧き上がってくる。紫さんの顔は見えないが、背中を見ているだけでわかった。怒りだけじゃない。悲しみも必死に押し殺そうとしている。


串田がまた近づいてきた。まだからかうつもりらしい。ひかりがそれを見て怒り始めているのがわかった。


「どうした紫、もう喋れないのか?あはは」


突然、串田が腹に拳を叩き込んだ。膝をついて地面に倒れ込む彼女を見て、ひかりが駆け寄ろうとした瞬間だった。


「待て!動くなよ、撃たれたくなければな」


串田が拳銃をひかりに向けた。


ひかりが拳を握りしめて震えている。紫さんは腹を押さえたまま地面にうずくまったままだ。動けない状況に、俺も歯噛みした。


「聞けお前ら、この女はもう用無しだ。遠慮するな、鬱憤を晴らせ!!」


串田の号令で、数人の男たちが紫さんを囲んだ。容赦ない蹴りが彼女に襲いかかる。


ひかりの腕が怒りで震えていた。でも串田の銃口がひかりを狙っている以上、うかつに動けない。俺だって同じだった。あの拳銃がある限り、下手に介入できない。

その時、紫さんの声が響いた。


「ひかり...ウチの心配なんかせんでええ...あのクソ野郎をぶちのめしたれや」


串田が怒って紫さんの方を振り返った。その一瞬の隙を、ひかりは見逃さなかった。

鞭が唸りを上げて串田の手を打った。拳銃が宙を舞って遠くに飛んでいく。


今だ!

俺は霊輝を練りながら駆け出した。だが、その時だった。


「誰も動くんじゃねえ!!」


奥から強い声が響いた。


近づいてくるのは三人の男たちだった。拳銃を構えながら、俺たちに狙いを定めている。その後ろから、まるで散歩でもするかのように悠々と歩いてくる人影があった。全く動揺した様子もない。


男たちは整然と一列に並び直すと、その人物に向かって一斉に深々と頭を下げた。そして、声を揃えて言った。


「ようこそ、ボス、若菜進也!!」


俺は息を呑んだ。


歩いてきた男を見て、背筋が凍りついた。金髪に上品な帽子を被り、空虚でありながら他人を見下すような優越感に満ちた瞳をしている。真っ白な高級スーツに身を包んだその男は、辺りを軽く見回すと口を開いた。


「串田さん、一体何をやってるんだ?茜はもう目的を果たしたのか?」


串田が若菜進也に近づく。声は震えているが、敬意を保とうと必死だった。


「はい、ボス。紫がやるべきことは終わりました。ご覧ください」


串田がひかりを指差した瞬間、若菜進也の視線がひかりに向けられた。


何が起こっているんだ?俺には理解できない状況だった。何かが起ころうとしている。何か恐ろしいことが。その男を見ているだけで、パニックと緊張が俺の全身を支配した。


「本当に来たんだな、ひかり...」


でも、ひかりは何も答えない。ただ怒りの表情で彼を見つめているだけだった。

若菜進也がひかりに近づこうと歩き始めた時、ひかりが数歩後ずさった。その反応を見て、若菜進也は足を止めた。


「...俺のこと覚えてないのか、ひかり?」


若菜進也がそう言うと、ひかりは怒りを浮かべたまま首を横に振った。何も言おうとしない。ただじっと見つめているだけだ。


紫さんが床を這いながら近づこうとして、手を伸ばそうとした。若菜進也に何かを言おうとしているようだった。


だが、手が十分近くまで上がった瞬間―


「黙れ、女。お前は……あの人が必死に育てたのに、このザマだ。生きてる価値もない」


若菜進也は視線すら向けず、そのままひかりに向かって歩いていく。


完全に床に崩れ落ちた。ほぼ無音で、必死に堪えながらすすり泣いている。


若菜進也がひかりの前まで来ると、薄ら笑いを浮かべた。


「覚えてないのか?まあ、お前はいつも全てに対して距離を置いてたからな」


ひかりは明らかに怯えている。口を開こうともしないが、怒りはまだ顔に残っていた。


「簡単に教えてやろう、せめて理解できるようにな。俺はゆうの親友だったんだ」


その名前が出た瞬間、ひかりの表情が変わった。驚愕以外の何物でもない。額を押さえて考え込んでいるが、本当に思い出せないようだった。


「わからない...お前なんて知らない...ゆうの友達だったなんて...全然覚えてない!」


若菜進也はただ笑った。だが、その笑みは恐ろしいほど邪悪だった。


「お前が俺を覚えてなくても、俺はお前のことをよく覚えてるぞ...」


少しだけ身を屈めて、ひかりと同じ高さまで顔を近づけた。


「お前はまだ十年前と同じだね。今のお前は何一つ変わってねえ。顔も、声も、姿も……お前は。まるで化け物のようにな...」


ひかりがこんなに近くにいる奴を見て、明らかに怯えているのが分かった。この男、見た目以上に色々なことを知っている。もしかしたら、ひかりが知らないゆうさんの過去の一部も。


「俺と一緒に来い、ひかり!そうすればお前の友達には指一本触れないと約束しよう」


ひかりは紫さんを見て、それから俺の方を振り返った。恐怖と心配が混じった表情で、誰も傷つけたくないという気持ちが手に取るように分かる。


必死に目で合図を送った。そいつの言うことを聞くなって。でも...

ひかりが若菜進也を見つめて、そして口を開いた。


「本当に約束してくれるの?」


「ああ、約束するさ。俺は男だからな。ゆうくんの名にかけて誓おう」


ひかりが何も言わずに頷いた瞬間、血の気が引いた。


「ひかり!なんでそんな奴についていくんだ!?」


叫んだけど、返事はない。若菜進也が歩き始めて、ひかりがその後についていく。


「ひかり!」


もう一度叫んだが、今度は奴が振り返った。


「黙れ、貴様… 騒ぎ立てる暇があるなら、感謝しろ。あの女がお前たちを生かしてやっているのだ」


その冷たく感情のない視線に、息が詰まった。

みんなが若菜進也の後を歩いて遠ざかっていく。俺はただ、ひかりの背中を見つめることしかできなかった。

何もできないまま。

次回――

状況は一気に絶望へと傾きながらも、まだ勝機は残されています。

アレクスとひかりが選ぶ道は、戦いか、真実か。

迫り来るのは、決戦の兆しか、それとも思いもよらぬ真実か……。

物語はさらに終幕へと加速していきます。

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