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霊輝  作者: ガンミ
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交錯する力

アレクスは霊輝の理解を深めながら、次の一歩を探っていく。

その流れの中で描かれるのは、アンジュの視点から明かされる、ひかりにまつわる過去の一端。

そして物語は再びアレクスへ戻り、彼はついに、自ら考え抜いた奇妙な計画を動かし始める――。

『4月28日 / 7:47』


学校への道を歩きながら、アンジュが霊輝の武器の「個性」について説明を始めた。


「それぞれの霊輝の武器には『個性』があるの。だから、それぞれの女の子の武器も違う『個性』を持ってるのよ」


まだ俺の背中に乗ったままのアンジュが、頬を俺の頬に寄せてきた。この体勢で歩くのは妙に奇妙だったが、何も言わないことにした。


「今からオマエが既に持ってる武器の『個性』を正確に教えてあげるわ」


アンジュが楽しそうにしているのが分かる。でも、なんだか変な感じで、彼女の髪が耳にかかって、くすぐったい。


「まずはルーシーの剣。あの『個性』は完璧な実行よ。オマエが剣を触ったことがなくても、剣が全ての戦闘をやってくれる の」


そういえば、初めて使った時、剣が勝手に攻撃してるみたいだった。アンジュが言ってるのはあのことか。今のところ一番使える武器かもしれない。


「次はアナスタシアの拳銃。精密射撃よ。どこに狙いを定めても、標的がいれば弾は必ず当たるの」


アナスタシアの武器はほとんど使ったことがないから、正確にどう使うのかよく分からない。


「次はライラの鎌。前にも言ったと思うけど、もう一度言うわね。あの鎌は生命エネルギーを奪う代わりに力をくれるの。一番強力と言えるけど、使えば使うほど弱くなってしまうのよ」


ライラの鎌の使い方が少しずつ分かってきた。長引かせるための武器じゃない。素早く、確実に決める。それがこの鎌の本質だった。


「そして今度はひかりの鞭よ。あの子の個性は破壊衝動。見たでしょう?あの鞭は強力な炎で燃えているわ。でもひかりはまだ知らない詳細があるのよ。その鞭は衝動的で、勝手に攻撃することもあるの」


確かにあの時、鞭が生きているように見えた。まるで意思を持っているかのように動いていたな。

でも、今更になって疑問が湧いてきた。


「もしこれらの武器が全部、持ち主の何かを表しているなら...一体何を表してるんだ?」


アンジュが俺の前で逆さまに浮かんできた。髪が垂れ下がって視界を完全に遮っている。でも歩き続けた。


「アレクス...なぜそんなことを聞くのよ?私は人間の感情なんて理解できないわ。それぞれの武器が彼女たちにとってどんな感情を表しているかなんて判断できないもの...」


なんだか機嫌が悪そうだった。でも背中に回ってきて、軽い体重を俺にもたれかけてきた。浮いているくせに、まるで背負っているみたいな感覚だ。


そうか。アンジュには感情の解釈ができない。結局、それは俺が自分で考えるしかないってことか。

でも、どうやって?


その時、俺はもう一つのことを理解した。

でも、妙な感覚が胸の奥で蠢いた。抑えきれない疑問が湧き上がって、気がつけば口から言葉が零れていた。


「なんで、お前の世界の連中はそんな人工霊輝なんて作ったんだ?」


アンジュが俺の背中から離れて、隣を歩き始めた。でも、その表情は今度はどこか悲しそうだった。


「うーん、なんて言えばいいのかしら...あはは...あはは...」


笑ってはいるが、明らかに無理をしている。

そんなアンジュを見ていると、また彼女が落ち込んでしまうのは嫌だった。


「話してくれよ。俺たち、友達だろ?」


その言葉にアンジュは少し緊張したような表情を見せたが、驚いたことに話題を逸らそうとはしなかった。


「私の過去の一部を話してあげるわよ...具体的には霊輝がひかりと反応した時の部分。それでいい?」


頷く。

アンジュが何を話すつもりなのか分からないが、ひかりと出会った時の話だけでも...俺はしっかりと分析しなければならない。


『××××年/ アンジュ』


今度も失敗。これで九回目よ。

最初からずっと……そして今も。霊輝に関する全ての任務で、結果を出せなかった。でも隊長は諦めない。


「アンジュ、もう一度だ」


サップ隊長の声に振り返る。サップ隊長は何度失敗しても希望を捨てない。人工霊輝を「ガイド」として使って、他の霊輝を見つけるために。


手にしているフラスコには、三つあった特別な霊輝のうち最後の一つが入っている。またこれも失敗するのでしょう。


私はレイスドールとして失敗しているのかもしれない。でも...なぜこの霊輝が「ガイド」なの?他の霊輝を見つけるためって、本当にそれだけ?


一瞬だけ考えてしまった。隊長が私を騙しているのではないかと。

でも、そんなはずはない。サップ隊長よ?なぜそんなことを?

...けれど、隊長の霊輝実験について、理解できないことが増えている。


あの時の言葉を思い出す。


「この霊輝のプロトタイプを、ニンゲンに渡してくれ。どう反応するかを調べろ。成功すれば、以前失った霊輝の回収にも近づけるはずだ」


悪意はないはず。それは分かっている。でも、隊長の本当の意図が見えなくなってきているのも事実よ。


人間の世界に戻ってきた。


水晶の小瓶に入った人工霊輝、最後の一つを持って。中の光はかすかで、今にも消えそうだった。


街を飛び回りながら探し続けた。霊輝に反応する人間を。でも、何も起こらない。誰にも反応しない。


その夜、屋根の上で立ち止まった。下を見回していると、騒々しい声が聞こえてきた。


何かしら?

下を覗くと、人間たちが殴り合っている。理由はわからない。でも、その光景に嫌な感じがした。

人間って、こんなに残酷に殴り合うものなの?

見ていられなかった。その場を離れようとした瞬間—

水晶の小瓶が光った。


「え?」


霊輝が勝手に反応している。そして、小瓶から飛び出した光がゆっくりと下へ降りていく。


反応している……誰かが、下にいる。

混乱の真っ只中――

その中心にいたのは、ひとりの少女。

ひかり...あの子だった。

そして――彼女の身体が崩れるように、倒れた。

その瞬間、彼女と視線が合った。

ほんの一瞬。けれど、確かに私を見ていた。


私はその後、ひかりをただ見守っていた。男性と女性が彼女を介抱している間も、ずっと。


「お願いだ……ひかりを助けてくれ……俺にはわからない……」


男の声は震えていた。彼の名は、ゆう。


白衣の男が診察を終えると、眉をひそめて言った。


「ゆうくん……これは……奇妙だな。彼女は呼吸している。だが、心音がない。脈も……ないんだ」


私は、その理由を知っていた。

彼女は今、生きても死んでもいない――境界にいる存在。


それでも、彼女を必死に守ろうとするその姿に……私は、何かが壊れそうになった。


……「罪悪感」って、こういう感情なの?


その後、ゆうの元に茜という女性が加わった。二人はひかりを丁寧に看病した。


だから、もう監視をやめた。彼女は、きっと大丈夫だと信じられたから。


でも、わからない。

なぜ別の人間に霊輝を反応させる必要があったのか?

サップ隊長への報告書を作ることにした。

レイスドールは生と死のバランスを守る存在のはず。人間の魂を管理する役目を負っている。


それなのに、なぜ隊長はこんなことを?

答えが見つからないまま、レイスドール中央部へ戻った。次の任務のために。


でも、確実に言えることがある。

何かが間違っている。

でも、止められない。命令だから。

私はただ、命じられた通りに動くしかない。


……上官たちの命令に従えなかった罰……いや、本当の罰は、彼女たちに危険な力を背負わせたこと。……どちらを選んでも、この胸に残るのは罪悪感だけ。……でも、全ては選択。……責められるべきは、私だけだ。


上官たちは『必要だから』って言う。でも、ルーシーもアナスタシアも、ライラも……皆、私が霊輝を押し付けた。理由が命令でも偶然でも、結果は同じ。……だから、この痛み……全部責任だ。


答えがほしい。これは正しいのか?


でも、誰に聞けばいい?


サップ隊長は、問いには答えず、ただ『失ったものを取り戻す』と繰り返すだけだった。……あの言葉は命令でも慰めでもなく、私に課せられた義務を刻むための呪文のように響いた。


人間に聞けばいいのか? ……でも、彼らには私の姿も声も届かない。……だから、答えはない。


……いや、違う。


思い出した。訓練時代に聞いた話。

“例外”がいる。ごく稀に、私たちの存在を認識できる人間がいる。


確かに、霊輝を受け取った彼女たちの中に、その「例外」は存在した――


例外はライラだった。彼女だけは私を見て、声を聞くことができた……でも、彼女にさえ人工霊輝を植え付けたこの罪が、縛りつける。……会いに行く資格なんて、ない。


……でも、ライラがいるなら、同じように“見える”人間が他にもいるかもしれない。……探せば、誰か……私の言葉を聞き、過ちを正す手がかりをくれる人が……


……たとえそれが誰であろうと…………たとえそれが誰であろうと……その人には――私の話を聞いてほしい。私の過ちを理解してほしい。そして……問いかけに答え、救いの手を差し伸べてほしい――


任務が終わったら、そのときこそ……自分の問いを口にしよう。


サップ隊長に?

それとも……人間たちに?


あの時はまだ…決めていなかった。でもこれ以上、同じままじゃいけない。そう感じてたの、迷いが騒ぐたびに、眠れない夜ごとに…オマエが現れるまで。


『アレクス』


アンジュの横顔を見ながら、一緒に学校の入り口まで歩いてきた。でも、入り口で足を止める。


話を聞いて、一つのことが分かった。アンジュは人間に対する見方が、あのサップとは全然違う。でも、命令に従うことに縛られている。その命令のせいで、彼女たちにしたことに罪悪感を感じているんだ。


俺にも分かった。今度はアンジュを...救わなければならない。


「今なら分かる気がする。答えを探してるんじゃなくて、自分が正しいと思うことを確認したいんだろう?」


アンジュは少し首を傾げたが、何も言わない。恥ずかしくて答えられないのかもしれない。


「その質問に答えてやる。もう答えは分かってるだろうが、それでも言ってやる」


今度は俺をじっと見つめてきた。その瞳に映っているのは...希望だった。何も言わずに俺を見続けている。

拳を握りしめる。


「過去は消せない。でも向き合うことはできる。だから戦え。お前が正しいと思うもののために」


驚いた表情を浮かべた。その目には驚き以外何もない。


「お前の中には心がある。だから自分の本能を信じろ。上からの命令に縛られるな」


アンジュが一歩後ろに下がった。疑いか、希望か、今彼女が何を感じているのかはわからない。でも、はっきりさせておかなければならないことがある。


「俺たちは友達以上になろう。同盟者として」


またしても、アンジュは動揺しているようだった。あちこちを見回して、答えることができずにいる。そして興奮のあまり、手をあちこちに振り回し始めた。馬鹿げた動きだが、それがアンジュだ。俺には彼女への疑いなんてない。ただ、彼女に俺を信頼してもらいたい。それだけが今必要なことだ。


彼女は少し近づいてきた。緊張して、時々しか俺の目を見ようとしない。


「アレクス...本当に私、オマエにとって何かになれるの?」


その質問に対する答えは、「はい」以外にない。残りの女の子たちを救うだけじゃない。アンジュも救えるんだ。そして、どうやってかはわからないが、いつかあのサップとやらに立ち向かって倒し、アンジュも自由にしてみせる。それが俺の決意だ。


「アンジュ、お前の世界の連中に間違いを証明してやれ!」


アンジュが微笑んで頷いた。その笑顔は、俺がアンジュで見た中で一番自然なものだった。まるで小さな太陽が目の前で輝いているようだった。


それを見て、俺は授業に遅れないよう走り出した。


『16:00』


アナスタシアの家にいる。なぜかエミリーとルーシーまでついてきてしまった。どうしてこうなった。いや、正確には、気づいたらそこにいた、というほうが正しいかもしれない。


リビングの奥からひかりがこちらを見ていた。腕を組んで、まるで俺を品定めでもするような視線だった。明らかに不機嫌そうだ。

そのひかりが近づいてきて、俺の隣に座った。


「ねえアレクス、あの虚弱そうな子は誰?」


ひかりの視線がエミリーに向けられる。虚弱って...確かにエミリーはそういう印象を与えるのかもしれないが。


かなり失礼な言い方だった。エミリーは一瞬、ムッとした表情を浮かべたが、何も言わず黙っていた。


「エミリーだ。学校の後輩なんだ」


エミリーは何も言わず、ひかりも特に彼女に話しかけようとしない。ルーシーとアナスタシアは俺がエミリーをひかりに紹介する様子をただ見ているだけだった。


「はあ...」


ひかりが溜息をついた。何かを諦めたような表情だ。


「ねえアレクス、お前何人女の子知ってるの?男友達はいないわけ?」


「男友達はいるけど...まあ、こういう状況には適さないというか...」


視線を少し逸らして苦笑いするしかなかった。確かに男友達はいる。榊とはよく話すが、彼は一般人だ。今やっていることに巻き込むわけにはいかない。


ひかりがさらに深く溜息をついた。こんなに女友達が多いのが気に入らないのか?


ひかりが立ち上がってエミリーに近づく。


「よろしく、ひょろっ子ちゃん」


エミリーが驚いた表情を見せる。そして直後に怒った顔になって立ち上がった。二人は同じくらいの身長で、まさに面と向かって睨み合っている。


まさか喧嘩になるんじゃ...


ひかりとエミリーの間に割り込んで、二人を引き離した。


「まあ、エミリーは訓練があるからな。外に行こう」


エミリーの背中を押して、裏庭へと向かわせる。今日は少し予定を変更することにした。本来なら霊輝のコントロールだけに集中するつもりだったが、明日から本格的な計画が始まる。今日のうちに、最低でも手に霊輝を宿すのと、エミリーの家族があの夢喰いとの戦いで見せたように外に放出する違いを理解しておかなければならない。


午後の残り時間は、可能な限り厳しく霊輝の訓練に集中した。一度で完全にコントロールできるようになるために。


『4月29日 / 16:21』


鳴羽界隈にルーシー、アナスタシア、ひかり、エミリーと一緒に到着した。実際のところ、みんなを連れてくるつもりはなかったのだが、どうしても付いてくると言い張られてしまった。


街を歩きながら、この通りを監視している人間の数が増えているのに気づく。完全に俺たちがマークされている。


その中の一人がひかりを見た瞬間、奥にいた男たちへ手信号を送った。数秒後、俺たちは完全に囲まれていた。


一人の男がひかりを睨みながら口を開いた。


「よう、元女親分さんよ。今日はどうしたんだ? こっちに用でもあんのか?」


ひかりが腕を組んで、挑戦的な笑みを浮かべる。


「冗談はよしなよ、バカ。お前より上の奴に命令してもらわないと動けないの?」


男の顔が歪む。眉間にしわが寄り、目も険しくなった。


「黙れ!!お前のせいで紫姉御が俺たちを東牙会に売ったんだ。今じゃただのゴミ扱いだ!!」


ひかりは肩をすくめて、男の怒りを完全に無視している。


「わたしには関係ないね。それより、今からでもまともな人間になる努力したら?それとも、できないの?」


男はもう限界に達したようだ。周りの連中に向かって叫んだ。


「もう十分だ!やっちまえ、お前ら!」


取り囲んでいた男たちが動き始める。でも、俺はもう準備ができていた。この通りに足を踏み入れた時から、手の中に霊輝のエネルギーを溜めていたからな。


地面に向けて放つ。小さな爆発が起きて、向かってきた男たち全員が吹き飛んだ。残ったのは、さっきひかりと話していた男だけ。口をぽかんと開けて、呆然としている。


「何をしやがった?爆弾か...?」


少なくとも連中にはそう見えたようだ。

吹き飛んだ男たちが立ち上がってくるが、今度は怯えているのが分かる。一人が突然叫んだ。


「化け物だ!逃げろ!!」


何人かがパニックになって逃げ出していく。更に脅かしてやろうと思い、手のひらを上に向けて伸ばした。掌の上で霊輝のエネルギーを集め始める。


霊輝の力が青い光の球体となって現れた。その瞬間、周りにいた男たちの顔が恐怖で歪む。


「逃げろ!!」


慌てて逃げ出そうとする連中を横目に、さっきひかりと話していた男の襟首を掴んだ。


「てめぇ、上の奴らに伝えろ。ひかりが東牙会に向かうってな」


男は震え声で呟く。


「お前...一体何者だ?」


襟首をより強く掴み上げながら、霊輝の球体を男の顔に近づける。この力からは異常な熱が放射されているようで、男の顔に汗が浮かんでいる。


「それはお前には関係ない。東牙会の連中にそう伝えろ。それと、奴らのアジトがどこにあるか教えてもらおうか」


霊輝をさらに接近させると、男は熱に耐えきれずに叫んだ。


「やめろ!東にある、鳴羽界隈のすぐそばだ!」


用が済んだ男を雑巾のように地面に投げ捨てる。男は慌てて立ち上がり、走り去りながら叫んでいる。


「化け物め!」


第一段階は予想以上にうまくいった。むしろ簡単すぎたくらいだ。

だが、まだやるべきことがある。次は鳴羽界隈の東側に向かわなければならない。そこに次の目標が待っているはずだ。

次回、進み始めた計画が思わぬ方向へ転がり、アレクスとひかりを大きく揺さぶる。

待ち受けるのは予想外の出会いと試練。

二人の運命を変える出来事が迫る中、物語はさらに加速していく――。

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