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霊輝  作者: ガンミ
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血と雲と約束と

アレクスに突きつけられる、自身の出自と霊輝の秘密。そしてライラとのデートが始まるが、その裏ではエミリーを巡る計画が静かに進行していた――しかし、遊園地でのひとときは思わぬ方向へと転がり始める

『4月18日 / 8:17』


エミリーの状況は理解できた。でも、頭の中で一つの疑問が浮かんだ。今こそ、すべてを明確にする時だと感じていた。ウィリアムが霊輝について知っているなら、ずっと探していた答えを持っているかもしれない。なぜ俺に霊輝があるのか、その理由を。


「ウィリアム、聞きたいことがあるんだ」


全員の視線が俺に向けられた。


「俺もエミリーと同じように霊輝を持ってる...なぜ持っているのか、教えてもらえるか?」


ウィリアムはその質問に考え込むような表情を見せた。


「君も霊輝を持ってるって?うちらと同じような?」


疑っているのか、それとも自分の中で疑問を整理しているのか。しばらく考えてから続けた。


「君の霊輝を分析してみるよ。いいかな?」


頷くと、ウィリアムは目を閉じて集中し始めた。俺の霊輝を分析しているのだろう。やがて、小さくつぶやき始めた。


「変だな...確かにうちらと同じような霊輝を持ってるけど、なぜかはわからない」


目を開けたウィリアムの表情には困惑が浮かんでいた。まだ考え込んでいるようで、分析した結果が理解できないといった様子だった。


「分析した結果から、二つの仮説を立てることができる。聞きたいか?」


俺が頷くと、ウィリアムは軽くため息をついてから話し始めた。


「うちの最初の理論は、君が特別な霊輝を持って生まれた、あの稀な人間の一人だってことだ。うちの家系でもそういう記録は少ないから、その可能性は捨てきれない」


一度黙り込んでから、続けた。


「そして二番目の理論は...君がうちの家系の末裔かもしれないということだ」


その瞬間、息が詰まった。

混乱が頭の中を駆け巡って、めまいがしそうになる。俺が...奴らの家系の末裔?そんなバカな。父さんは何も言ってなかった。ずっと普通の生活を送ってきたのに。

考えが堂々巡りして、頭の中が真っ白になりかけた時、ウィリアムの声が聞こえた。


「すごく混乱してるみたいだね、アレクスくん」


振り返ってウィリアムを見る。それからエミリーの方も。二人とも心配そうな表情を浮かべている。

何を信じればいいのか、何を考えればいいのかわからない。


「説明してやるよ… うちは、君がどちらかの家系の末裔だと思っている。その根拠を教えてやる… だが、これは両家だけの秘密だ」


家族間?一つの家族じゃなくて?他に誰が関わってるんだ?

ウィリアムは辺りを見回して、誰も聞いていないことを確認してから、少し身を乗り出して小声で話し始めた。


「うちらの家系・ウォルターは、何百年も前から続いてる。だが、実は… もう一つの家系・ヴェスパーも同じだ。昔、両家は結ばれた。今は遠い存在だが、血と霊輝は共有してる… エミリーにもその力があるのは、そのためだ」


え?

二つの家系が霊輝を持ってる?エミリーはウォルターの苗字だが、ヴェスパーなんて聞いたことがない。


「正直に言うとさ、うちらの家系って完全に人間じゃないんだよね」


は?

完全に人間じゃないって、どういうことだ?じゃあ一体何なんだ?


「うちらの種族の核は二つの種族に分かれてる。ウォルターの血統は"P"っていう種族で、ヴェスパーは"M"っていう種族なんだ。これがうちらの種族の起源なんだよ」


呆然としてしまった。

思わずエミリーの方を見る。

じゃあ、エミリーも...


「うちらの種族が地球に来た時、人間と一緒に暮らすことを決めたんだ。だから今は人間とのハーフなんだよ。だから君も怖がらないでくれ。でも...もし君がうちらの家族の誰かなら、それは君も"M"か"P"の一員ってことになるんだ」


頭が混乱した。

こんなこと、想像したこともなかった。


言葉を止めて、少し間を置いてから続けた。


「我々の存在が知られていた時代があった。『選ばれし者の世代』、我々はこの世界で“英雄”として知られていた。しかし、その歴史は封印された」


その言葉に思わず息を飲んだ。


「記録もほとんど残っていない。ただ一つ確かなのは、“我々の霊輝”は特別だった。それを操ることができたのは、我々の血を持つ者たちだけだ」


言葉を聞いたとき、胸がドキリとした。彼は、真剣な表情で俺を見つめていた。


「霊輝は、我々にとって自然な力だ。戦いに使えるように設計されていた。形を与え、用途を持たせる。それが我々の霊輝」


自然と疑問が口からこぼれた。


「なんで、そんな家系が普通に社会に溶け込んでるんだ? 特別な力を持ってるのに、誰にも知られずに――」


「つまり、うちたちは、先祖からずっと、社会の中で普通の人間として生きてきたということだ」


その言葉が耳に入ると、まるで自分の中の何かが揺れ動いた気がした。彼はその瞬間、まるで過去の重みを背負っているかのように見えた。


今までの自分の生活が、ただの平凡なものだと思っていたけど、実はそれがすぐ隣に「特別な運命」として息づいていたのかもしれない。


「もう状況がよく分かっただろう...エミリーは孤独な存在になる。現れる敵と戦うことだけに注意を向けて、それだけに専念することになる。うちの二つの家族は昔からこの街を影で守ってきたからな」


ウィリアムの言葉を聞きながら、思わず軽く机を叩いてしまった。エミリーのことといい、この状況全体といい...混乱なんてレベルじゃない。まるで疑問の竜巻に巻き込まれたような気分だ。もしかして、俺はずっと秘密の中で生きてきたのか?それとも嘘の中で?


「落ち着けよ、アレクスくん。話したのはあくまで仮説だ...でも、君がうちの二つの家系のどちらかである可能性が一番高いのは否定できない。ウォルターもヴェスパーも、多くの兄弟、叔父、甥、従兄弟がいるからな。うちの家族にはうちも知らない、覚えていない子孫がたくさんいるんだ」


ウィリアムの言葉で少し落ち着いたが、視線は机に向けたまま上げられない。思考も感情も整理できない。頭の中には一つの疑問だけが浮かんでいた。


俺は...一体何者なんだ?


その時、エミリーが俺の背中に手を置いた。振り返ると、彼女は何も言わなかった。


エミリーの前で崩れるわけにはいかない。弱さを見せちゃダメだ。俺が彼女を助けるはずなのに、今は動けない状態で...

いや、今俺にできることは一つしかない。エミリーを助けることと、ライラを助けることに集中することだ。疑問も不安も全部脇に置いて。


「じゃあ、俺のことは置いといて...エミリーを助けるために具体的に何をするんだ?」


そう言うと、ウィリアムは椅子の背もたれに身を預けて腕を伸ばした。


「もう案があるんだ。エミリーが一人でもやっていけるって証明すればいいだけさ。まあ、霊輝のことだけどね」


その時、エミリーが慌てたように割り込んできた。


「でも!私、あなたたちみたいに霊輝を使えないの...怖いの...戦いたくない」


なるほど、そういうことか。

つまり、エミリーの母親は娘の霊輝を使った戦闘での実力を見たがっているということだ。独立できる力があることを証明すれば、街の守護者になることを諦めてくれる。

だったら、実際に敵と戦わせて見せるしかない。

そこで思い出した。家の結界にまだ張り付いているあの青い雲。あの夢喰いをエミリーと戦わせて、母親に見せれば十分だろう。

ただし、夢喰いの存在は秘密にしておかなければならない。

ウィリアムに視線を向けた。


「いいアイデアがある」


ウィリアムとエミリーに計画を説明した。夢喰いのことは秘密にして、明日遊園地でエミリーの母親と会うことだけを話した。


エミリーは俺の意図を察しているようだった。一方、ウィリアムは疑わしそうな顔をしている。


やはり気づかれた。でも、ウィリアムは結局協力してくれることにした。


内心、ほっとした。エミリーを遊園地の夢喰いと対峙させて、同時にライラと時間を過ごせば、一石二鳥だ。完璧な計画に思えるが、本当に思い通りにいくかは分からない。


もう決めたことだ。


結局、ウィリアムが俺とエミリーを学校まで送ってくれた。当然遅刻だったが、ウィリアムの言い訳のおかげで大した問題にはならなかった。

その日の残りは何事もなく過ぎていった。


『4月19日 / 8:33』


遊園地への準備を整えながら、昨日のアンジュとの会話を思い出していた。

俺の計画を話した時、アンジュはいつもより機嫌が悪そうだった。


「まさか夢喰いを使ってそんな目的を達成しようとするなんて思わなかったわよ...」


アンジュを見たが、何も言わなかった。でも、まだ不機嫌そうに続けた。


「それにライラとのデートにエミリーを連れて行くなんて...オマエって...浮気者よ」


眉をひそめた。アンジュらしい変な言いがかりだが、多分冗談だろう。


「安心しろ、アンジュ。全て俺がコントロールしている。俺がライラとデートを楽しんでる間に、エミリーがあの夢喰いと戦う。そうすれば、母親も彼女を放っておくようになる」


アンジュは腕を組んで言った。


「ふーん...完璧すぎる計画ね。でも覚えておきなさいよ、夢喰いは弱そうに見えても侮ってはダメよ」


シャツを着て部屋のドアに向かった。アンジュの最後の警告はほとんど無視していた。


階段を下りると、ライラが待っていた。

驚いた。ライラが着ているのは俺の服じゃなく、彼女らしいスタイルの服だった。意外だったが、同時に気になった。


「アンジュ!ライラはどこでその服を手に入れたんだ?」


アンジュが近づいてきて言った。


「どうして私に聞くのよ?昨日オマエのお父さんが買ってくれたのよ。気づかなかったの?」


ライラと目が合う。途端に緊張したような表情になって、何も言わずにいるが明らかに動揺している。


「よし、行こうか」


そう声をかけると、ライラが俺の手を握ってきた。一緒に遊園地へ向かう。


家を出ると同時に、アンジュが俺の影に溶け込んで姿を消した。歩き始めてすぐ、青い雲が俺たちの後を追い始める。

今のところ、計画は順調に進んでいる。


『10:34』


遊園地に着くと、ライラがとても興奮しているのがわかった。スマホを確認すると、エミリーからメッセージが届いている。もう中で待っているとのことだった。母親はまだ到着していない—それがウィリアムの担当部分だからな。


スマホをしまって、ライラに集中する。

中に入ると、真っ先にライラの目を引いたのは射的だった。そこに連れて行き、景品を狙って撃たせてみる。

当然、ライラが最初に挑戦した。


しかし一発目は外れた。外すと逆に燃え上がって、もう一度撃つが、また外れる。頬を膨らませて、目に火が宿ったような表情で撃つ。今度はぬいぐるみに当たったが、落ちずに何ももらえなかった。

ライラが今度は俺の方を見て、期待の眼差しを向けてくる。


最初の射撃の準備をして、狙いを定める。

トリガーを引いた瞬間、なぜか的の中心に命中した。


「え?」


こういうゲームは苦手なはずなのに、なぜ当たったんだ?

遠くを見ると、アンジュが皮肉っぽい笑顔で手を振っている。誰にも見えないのをいいことに、何かしやがったな。


「はぁ...」


ため息をつきながら、店員からぬいぐるみを受け取る。


「ライラ、これ」


「わぁ!ありがとう、お兄ちゃん!」


ライラは目をキラキラさせながらぬいぐるみを受け取った。その嬉しそうな顔を見ていると、アンジュの手助けも悪くないかもしれない。


一緒に歩きながら、次のアトラクションを探す。上空に青い雲が遊園地の真上に停まっているのが見えたが、今は気にしない。ライラとのデートを楽しむことが優先だ。ルシーやアナスタシアの時とは違って、ライラには特別な思い出を作ってあげたい。

しばらく歩いていると、「ゴーカート」という看板が見えた。


「お兄ちゃん、あれ乗りたいなの!」


ライラが指を差して興奮している。


「行こうか?」


「うん、うん!」


頭を激しく縦に振るライラを見て、思わず笑みがこぼれた。


ゴーカートの乗り場には、色あせた赤と青のカートが10台ほど並んでいた。ライラが選んだのは、フードにキズだらけの3番車。シートに座ると、プラスチックの熱で太ももがじりじりと熱くなる。


「レディ……ゴー!」


スタッフの合図とともにエンジンが唸りを上げる。隣のカートからは排気ガスのきつい臭いがした。


――が。


ライラの運転は、まるでおばあちゃんの買い物ドライブ。時速10キロも出ていないだろう。前方の子供たちのカートがどんどん遠ざかっていく。


「お嬢ちゃん、もう少しスピード出してくれ!」


係員の男性が叫ぶ。


「はーい!」


ライラは素直に返事をして、急にアクセルを踏み込んだ。


「うわあああ!」


今度は速すぎて、ゴーカートがくるくると回転し始める。ライラのツインテールが遠心力でヘリコプターのプロペラのように見えた。


「だ、大丈夫か?」


「きゃああああ!」


最終的に、ライラは完全に目を回してコースアウトしてしまった。幸い怪我はなかったが、ふらふらと立ち上がる姿を見て、今度は俺が心配になってしまった。


歩きながら、もう一度空を見上げることができなかった。あの青い雲がまだそこにある。動かずに。考えたくないのに、視線がそちらに向いてしまう。


「お兄ちゃん、次はあれなの!」


ライラが俺の手を引っ張りながら、指差した先にあったのは—お化け屋敷だった。


正直、心配になった。怖いのが耐えられないわけじゃない。でも、今この瞬間に、そういう感情は余計に緊張させるだけだ。


でも、断ることもできず、結局中に入ることになった。

中は薄暗くて、狭い通路が続いている。ライラは怖がるどころか、むしろ興奮している様子で、本来なら恐怖を感じるはずのものを楽しそうに見回していた。


最終的に、俺たちは何事もなく外に出た。大したことない お化け屋敷だった。


でも、外に出た瞬間、本当に俺を怖がらせたのは—またあの青い雲が動かずにそこにあることだった。

一体何が起こっているんだ?

慌ててスマホをチェックしたが、エミリーからの新しいメッセージはまだない。


「お兄ちゃん、大丈夫なの?」


今度はライラが俺の緊張に気づいたようだった。

頷いて、ライラの手を取る。


「ああ、まだ見るものがたくさんあるからな」


笑顔を作ったが、その笑顔が作り物だということを自分でも感じていた。不信感と、自分の計画が崩れていくような衝動が俺を蝕み始めていた。


ライラと一緒に遊園地を満喫していた。


「きゃああああ!」


ジェットコースターでライラが全力で叫んでいる。隣で俺も思わず声が出そうになったが、なんとか堪えた。

次はログフライムに向かった。水しぶきを浴びながら、ライラは本当に楽しそうにしていた。色々なアトラクションを回って、かなり良い時間を過ごしていたんだが...


ブルブル。

スマホが震えた。エミリーからのメッセージだった。

『ママがもうすぐ来るの。どうしたらいいの?』

は?なんでそんなことを聞いてくる?

急いで返信する。

『霊輝を使って攻撃すればいいだけだろ』

返事が来ない。


「お兄ちゃん、空を見て」


ライラが俺のシャツを引っ張った。

顔を上げると、いつの間にか空一面が灰色の雲に覆われていた。

雨が降りそうだ。予想外の展開だった。


「あ!エミリーちゃんなの!あそこにいるなの!」


ライラが興奮して指差している。

振り返ると、確かにエミリーがスマホを見ながら立っていた。

まずい… ライラにエミリーがここにいるって気づかれるわけにはいかない


「挨拶しに行こうなの」


ライラが俺の手を引っ張るが、体が動かない。


「?」


ライラが立ち止まった。なぜ俺が動かないのか不思議そうだ。


ゴロゴロ...

雷の音が響いた。

ライラが再びエミリーの方を見た時、人々が散らばり始めた。そして群衆の向こう、エミリーの左側から、ウィリアムとエミリーの母親が歩いてくるのが見えた。

二人は何かを言い合っているようだった。

全身が硬直した。

計画では、エミリーが母親の前でただ青い雲を攻撃するだけのはずだったのに...

完全に状況が制御不能になった。

次回は、この計画が招いた予想外の結果が描かれる。ライラとの時間はどうなるのか? そして、エミリー、ウィリアム、ライラ――全員を巻き込む事態の行方は? その答えは、次回、明らかになる。

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