異変の終わり
時は、長い旅路の終着点へと静かに流れ始めていた。
幾度も過ぎ去った絶望も、数えきれない戦いの傷跡も、いまでは雪解けのように輪郭を曖昧にしながら、確かな未来へと繋がっている。
あの異界で交わした誓い。
その奥底に潜んでいた闇との対峙。
そして、命の理さえ越えて語りかけてきた“存在”との約束。
――すべてが、今日という日のための道だったのだとわかる。
人工霊輝の奔流に揺さぶられ、数えきれない選択に試されながらも、少女たちは最後まで笑顔を失わなかった。
守るべき記憶は守られ、奪われるはずだった未来は、再び彼女たちの掌へ戻ってきた。
胸の奥に、ずっと言えずにいた言葉がある。
逃げ続けてきた想いがある。
けれど、旅の終わりに立つ今は――もう目を逸らす理由はどこにもない。
これは、戦いを終えた者たちが歩み出す、新しい「始まりの章」。
静かに降り積もる運命の余韻の中で、アレクスは決断する。
愛する少女たちに。
支えてくれた“彼女たち”に。
そして、未来そのものに。
たどり着いた答えを、ただ真っ直ぐに伝えるために。
『1月24日 / 15:28』
あれから数週間が経った。信じられないことだが、アンジュの世界に旅立った時、現実世界では数時間しか過ぎていなかったのに、あの世界の中ではまるで違う時間の流れを感じていた。
今、改めて明確にしなければならないことがある。人工霊輝の検査だ。アンジュがみんなを一人ずつ調べてくれて、本当に人工霊輝は彼女たちから消えていた。セレステの刀で調べてみると、それはまるで溶けて消えたかのように彼女たちからなくなっており、大切な記憶はすべて無傷で残っていた。みんながもう二度と貴重な記憶を失わずに済むと思うと、心から嬉しかった。
それに、みんなに伝えたいことがあった。今日、みんなの前で言うつもりだ。あまりにも長い間先延ばしにしてしまった。まだ女の子たちは聞いていない。
数時間後、街から離れた場所にやってきた。ここは街とは違って、ほとんど田舎のような雰囲気だった。路面電車まで走っている。この場所にみんなを呼んだのには理由がある。ここは暖かい場所だからだ。冬だというのに、物理的にではなく、感情的に暖かい。この風景を見つめていると心が安らぐ。
停留所で路面電車を待っていると、電車が止まるのが見えた。そして一瞬のうちに、いくつもの足音が聞こえ始める。一人ずつ路面電車から降りてきて、そこにはみんながいた。俺の前で微笑んで、まだ遠い未来を待ち望んでいる。
「みんな、ありがとう。ついてきてくれ」
みんな近くを歩きながら、この街の道を歩いていく。寒さを感じるが、みんなと一緒なら耐えられる。
ついに開けた野原の前に出て、夕日が見える場所で立ち止まった。一人ひとりを見つめる。
「みんな、ありがとう。何をもらったのか感謝の言葉すら見つからない。夢を見ているのかどうかもわからない」
みんなが近づいてきて、ルーシーが言った。
「夢なんて見てないわよ、アレクス。これがあたしたちの現実なの」
ひかりがもっと近づいてきて、腕に抱きついてくる。
「わたし、家に帰って一緒に暖まるのを待ってるんだから」
ただ微笑みながら、女の子たちとの触れ合いを楽しんでいる。なぜなら……
そう、一人ひとりを愛しているからだ。
なぜみんなを愛しているのか、説明するのは簡単じゃない。多くの人にとっては間違いだろう、気まぐれだろう、エゴイストだとさえ思われるかもしれない。でも、そうじゃないとわかっている。
一人ひとりが、失っていた何か……いや、持てるなんて思いもしなかった何かを見せてくれた。義務というものを、目を閉じていたくても立ち上がる責任を教えてくれた。一人ひとりの真剣さが、守ることは重荷じゃなく名誉だと教えてくれた。
一人ひとりが、足りなかった部分をくれた。そして俺も、どういうわけか彼女たちにとって何かになれた。これは利益の交換じゃない、幻想でもない。これは愛だ。たった一人を愛するのと同じように真実の愛だ。
世界が理解することはないかもしれない。俺たちを裁き、指を指し、軽蔑の目で見るかもしれない。
でも、何だって言うんだ?あいつらは俺たちが一緒に過ごしたことを知らない。
悲劇の中で盗んだ微笑み一つ一つの意味を、すべてが失われたように思えた時に差し伸べられた手の意味を、静寂の中で分かち合った涙の意味を知らない。
決められないからみんなを愛してるんじゃない。一人ひとりがかけがえのない存在だから愛してる。
みんなと一緒に、愛は一つの形に限られないと発見したから愛してる。
心は分裂するんじゃなく、広がるんだと教えてくれたから愛してる。
そして恥じるつもりはない。逃げも隠れもしない。
これが俺たちの愛だ。社会が決めるものでも、他人が期待するものでもなく、一緒に築いたものだ。
理解したい人がいるなら、いいだろう。拒絶したい人がいるなら、それもいいだろう。でも俺ははっきりしている――彼女たちが俺の未来だ。それを守るために必要なことは何でもする。
「ルーシー、好きだ。アナ、好きだ。ライラ、好きだ。ひかり、好きだ。メリッサ、好きだ。フィリア、好きだ。ルビー、好きだ。スズ、好きだ。ノア、好きだ。レイナ、好きだ。エミリー、好きだ……そしてお前もだ、アンジュ、好きだ」
みんな見つめたまま何も言わない。その時、遠くで路面電車が通り過ぎる音が聞こえ、同じ瞬間、みんなが一斉に言った。
「わたしたちもアレクスを愛してるの!」
みんなが俺に向かって飛び込んできて、大きな抱擁に包まれた。これが伝えたかったことだ。やるべきことが残っていて、今それが終わった。これからは未来を見つめることだ。
『2月14日 / 16:03』
アナの家に向かっていた。女の子たちから大切な話があるって連絡が来たんだが、一体何だろう?
家に入ると、辺りは静まり返っている。
「みんな?」
誰も返事をしない。リビングに向かったが、誰もいなかった。
「どこにいるんだ?」
その時、キッチンからひかりが歩いてきた。
「ひかり!他のみんなは?」
何かを後ろに隠しているようで、いつもよりそわそわしている。これはひかりらしくない。
「どうしたんだ、ひかり?」
近づこうとすると、彼女は手を前に差し出した。隠していたのはチョコレートの箱だった。
「ハッピー……バレンタイン……」
言葉を失った。チョコレートの箱を受け取る。ひかりの頬が赤く染まっている。
「ありがとう、ひかり」
ひかりは緊張した笑顔を浮かべ、不安そうな目をしていたが、突然俺に近づいて素早くキスを奪った。
「それがわたしのご褒美!」
そう言って、キッチンへ走って戻っていく。今まで見た中で一番可愛くて恥ずかしがっているひかりだった。
ソファに座って考えていると、他のみんなはどうしたんだろう?
その時、ルビーがリビングに入ってきた。俺に近づくと、小さなギフトバッグを差し出した。
「これって、もしかして?」
「そうだ!チョコだぞ!絶対食べろよな!」
なぜか声のトーンがやけに高い。緊張してるのか?
「ありがとう、ルビー」
彼女は俺にもっと近づいて、じっと見つめてくる。
「何かあったのか?」
「うーん……」
何かを望んでいるようだった、少なくともそう見えた。俺は彼女の頭に手を置いて撫でてやった。
「赤い髪、好きだぞ」
赤毛に加えて顔も赤くなった。今まで以上に赤くなって、思わず自分のくだらない考えに笑ってしまった。それがルビーを困惑させた。
「何笑ってんだよ?」
「いや、何でもない」
彼女は唇を尖らせて、突然言った。
「じゃあこれがあたしの復讐だ」
俺の頬にキスをして、すぐに去っていく。あんなことをしておいてさっさと行ってしまうなんて信じられない。
その瞬間、今度はアナがリビングに入ってきた。手には高級な贈り物のように包装されたチョコレートの箱を持っている。手を差し出して渡してくれた。
「お茶と一緒に召し上がってくださいまし」
「ああ、ありがとう、アナ」
その時、彼女は俺の隣に座り、俺の肩に頭を預けた。そのままの姿勢で言った。
「アレクス、こんな時間をもっと作りましょう、いつまでも」
「ああ、もちろんだ」
彼女は俺の手を取って、キスをした。もしかしたら、これが彼女なりの上品な表現なのかもしれない。立ち上がって去っていく。
彼女が出ていくと、今度はルーシーが元気よく入ってきて、すぐに俺の隣に座り、小さなチョコレートの袋をくれた。
「ハッピーバレンタイン!」
俺はルーシーからチョコレートを受け取りながら笑顔を返した。
「ありがとう、ルーシー」
ルーシーは俺の隣に座り込んで、腕を抱きしめてきた。
「どうしたんだ、ルーシー?」
「別に何でもないの。ちょっとの間だけ、あなたを抱きしめていたいのよ」
数秒間そのまま過ごした後、ルーシーは俺をじっと見つめた。
「これで十分ね。次の子の番よ」
そうか、順番を決めてるのか。まあ、みんなの間で公平にやってるってことだな。
ルーシーが去ると同時に、エミリーが入ってきた。彼女は手を差し出してチョコレートの箱を渡してくれた。顔を赤らめながらも、俺の目を見ようとしない。
俺はチョコレートを受け取ったが、エミリーが俺を見ようとしないので、彼女の視線を捉えようとした。
「エミリー、なんで俺を見ないんだ……もしかして嫌いになったのか?」
その瞬間、エミリーは驚いたように俺を見つめた。
「そんなことないの!ただ……こういうことするの恥ずかしくて……」
俺は彼女の素直さに笑顔を向けた。
「ありがとう、エミリー」
エミリーはまた顔を赤らめて、急いで走って出て行った。本当に恥ずかしがり屋だな。
その直後、今度はライラが走って来て俺に抱きついた。
「アレクス!」
ある事に気づいた。彼女は俺を「お兄ちゃん」と呼ぶのをやめていた。実際、アンジュの世界から戻ってから呼ばなくなった。最初は彼女が家にいることになったのは嘘や色々な事情があったが、ライラとの関係は一番複雑かもしれない。ただし、俺にとってではなく。
「ハッピーバレンタインなの!」
「ああ、ありがとう、ライラ」
ライラは俺の頬にキスをして、そのまま去っていった。
ソファにはもうたくさんのチョコレートが積まれていた。その時、スズが入ってきた。彼女が持っていたのは奇妙なチョコレートの箱だった。奇妙というのは、その変わったデザインのことで、まるで魔法と幻想の世界から取り出したかのような、古い時代のもののようだった。まあ、これが彼女なりの気持ちの表し方なんだろう。
「ハッピーバレンタイン、アレクス」
「ありがとう、スズ」
チョコレートの箱を受け取った後、彼女は何も言わずに俺の前に立っていた。頬を赤らめながら、指をもじもじと弄んでいる。ゆっくりと俺に近づいてきて、手で合図をした。近づいてこいということらしい。言われた通りに近づくと、耳元で囁いた。
「いつか、もっといい報酬をあげるから」
そう言うと、何を意味するのか説明もせずに走って行ってしまった。俺は何を暗示していたのか、深く考えないことにした。
その時、フィリアがやってきた。少し悲しそうに見える。
「どうしたんだ、フィリア?」
「……他の子たちが、貴方とお茶の時間を作ってチョコレートを楽しむのを許してくれなかったんです……」
「いいさ、気持ちが大切だろ」
「本当ですか?」
「ああ、ありがとう、フィリア」
彼女はエネルギーを取り戻したように笑顔になり、変な包み方をしたチョコレートを渡してきた。
「え〜、フィリア?これは何だ?」
「チョコレートです、もちろん!それに、今日は愛について完全に神聖な日ですから」
フィリアは頭に入らないような色々なことを話し始めた。あまりにも早口で喋るからだ。その瞬間、メリッサが入ってきてフィリアに順番だと伝えた。フィリアは顔が輝いているかのように笑顔で去っていった。
メリッサはハート型のチョコレート箱を持っていたが、何かのアニメの包装紙もついていた。いかにも彼女らしい。
「ありがとう、メリッサ」
彼女は赤面して、ジャケットの中をごそごそと探り、漫画を取り出して俺に渡した。
「今夜楽しんでよ」
そう言って走り去った。俺がそのマンガの表紙を見ると、なんとエロティックなものだった。一体なんで彼女がこんなものを俺に?
その瞬間、ノアが誇らしげに笑顔で入ってきた。コンビニの袋を持っていて、それを俺に渡した。
「コンビニのチョコレート全部買ってきたのよ、すごいでしょ?」
「あ……ありがとう、ノア」
コンビニのチョコレートを全部買い占めるなんて、流石にやり過ぎだろ。ノアは自分の偉業に満足そうに去っていった。
少し経ってから、レイナがやってきて、今まで受け取った中で一番小さなチョコレートの箱を差し出してきた。
「ありがとう、レイナ」
受け取った瞬間、レイナが突然俺を抱きしめてきた。
「どうしたんだ、レイナ?」
「……後で話すわ……今はこの瞬間を邪魔したくない……」
何も言わずにレイナは去っていった。すると影の中からアンジュが現れて、
「残念ね、私はオマエにチョコレートをあげることができないのよ」
「構わない。お前がここにいてくれるだけで十分だ」
『2月25日』
理学部の生物学科に申請した。レイナの病気を治したい……ここで勉強すれば、きっと何かを掴めるはずだ。それだけに集中して勉強すれば、彼女のために何かできるかもしれない。試験はめちゃくちゃ難しかったが、それでも勉強できる限りのことはやった。もし落ちても、また勉強し直してもう一度挑戦するだけだ。
『3月1日』
今日は高校卒業式だった。高校生活に別れを告げる時が来た。みんなにさよならを言う瞬間だったが、もう連絡先は分かっているから、また話せるだろう。
ルーシーが泣いていた……泣く理由なんていくらでもあるよな。歩いてきたこの廊下、この大きな学校。ここに足を踏み入れて、たくさんの優しい人たちに出会った。ここで成長して、卒業して、あの守りたい未来への一歩を踏み出すために。
まいと榊が付き合ってることを知った。いつの間にそうなったんだ?でも二人とも教えてくれた。観光の勉強をするために別の街に引っ越すらしい。
カケルと竜児は映画監督を目指すって言ってた。あいつら、でかい夢を持ってるな。ヤヨイはひかりと一緒にオンラインチャンネルを続けながらマーケティングを勉強するそうだ。カズミは恋人と一緒にプロバスケットボール選手を目指してる。
みんなもう未来の計画を立ててる。これはさよならじゃない、また会うまでの時間だ。いつかまた全員で集まって、いつものように話せる日が来るだろう。
『6月29日』
今日は最悪の日だった……レイナが脚の力を失って、今は車椅子生活だ。病気が……でもまだ諦めない。必ず治療法を見つけてみせる。
一瞬、霊輝の力で彼女を治せるかもしれないと思って試してみた。でも治らなかった……これからは寝る間も惜しんで、彼女を治す方法を探し続ける。
『9月9日』
レイナの治療法にどんどん近づいてる。でも信じられないことが起きた。家族ぐるみの友人のサンティが突然やってきて、まるで当然のようにレイナを治すのを手伝いたいと言ってきたんだ。
「天才の中の天才」だの「知識の探求者」だの、なんだかんだと自己紹介してきた。でもサンティの助けを活用することにした。レイナを治す方法を急ぐために。これが最後のチャンスかもしれない。
『1月30日』
今日、何年もの汗と涙と努力の末に、サンティの助けでついにレイナの治療法を見つけた!サンティが薬を作ってくれると言った。
その後、サンティが作った薬で治療が行われた。レイナはとても抵抗していたが、真剣にとても上手くやってくれた。生きようとする彼女の強さに感謝しかない。これからは長い回復過程が続く。
『6月29日』
来年卒業だ。サンティの助けでレイナの病気の治療法を、卒業する前に見つけることができたなんて驚きだ。命に対して、レイナがまだここにいてくれることに対して、感謝の言葉が見つからない。
あとはもう一つだけやることがある……これには予想よりも時間がかかるかもしれないが……
『8年後』
パン屋でいつものように客の対応をしていた。ルーシーが開いたこのパン屋で働くのももう慣れたものだ。彼女のあの制服姿を見ると、本当に可愛くて、まるでパンじゃなくて彼女自身が甘いものみたいに見える。
今日だ。今日こそ、長い間努力してきた結果を全員に伝える日だ。
閉店時間になると、ルビーが車で迎えに来た。レイナも一緒だった。
ルビーは今、有名なスポーツ選手のトレーナーとして働いていて、業界ではそれなりに名が知られている。
一方、レイナはすっかり回復して、またピアノコンサートを再開し、その音楽を世界中に届けている。今は少し休憩中だけどな。
今はみんなレイナの屋敷で暮らしている。彼女が「こんなに大きな場所なんだから、みんなで一緒に住みましょうよ」って強く言い張ったんだ。確かにその通りだし、誰も反対しなかった。それに、彼女と一緒に暮らすことが彼女をとても幸せにしているのは明らかだった。
屋敷に着くと、ライラが走って抱きついてきた。信じられない。昔はあんなに背が低かったのに、成長期でぐんと伸びたのがよく分かる。
ライラは今、サンティのアシスタントとして働いている。彼女もサンティみたいに色々なものを開発したいらしい。どうしてそういうことに興味を持つようになったのかはよく分からないけど、一つ宙に浮いていた問題があった。彼女の出自についてだ。
どうやらサンティは、ライラの自然な霊輝がどこから来たのか知っていたらしい。
結局、霊輝を操れる人間の血統から来ているということだった。俺の家族やエミリーの家族がやるようにな。その記録がほとんど残っていない血統は、サンティにとって明らかにウォルター家とヴェスパー家の友人だったそうだ。
なぜそれを知っているのかという理由が驚くほど衝撃的でな。実は彼がその時代から来ているということだ。100年以上生きているらしい。あの奇妙な鎧のおかげで、そんなに長く生きられたとか。それ以上の詳細は聞きたくなかったから、知っているのはそこまでだ。
リビングに向かうと、フィリアがテレビを見ていた。
フィリアは今看護師で、もっと学びたいと言っている。教会でも手伝いを続けている。彼女は、あの時使ったあの力について話してくれた。教会で出会ったあの男が与えてくれた力だって。あの神父との戦いで俺たちを救ってくれた人。名前は何だったっけ?もう忘れちまった。
メリッサの部屋に行くと。
今はプロのアーティストで、自分の漫画を描いて、どこかの出版社で連載されたいと思っている。まだ実現していないけど、諦めずに頑張っている。今は俺をモデルにして漫画を作ろうと計画しているらしい。メリッサの漫画に描かれた自分の姿を見ると、恥ずかしいやら嬉しいやら複雑な気分だった。エロ漫画に登場させないでくれよ……
次にノアに会いに行った。
裏庭にいた。彼女は相変わらず外にいるのが好きだ。だからこそ、自然写真家になるために一生懸命努力したんだ。今の方がずっと楽しんでいるみたいだな。
ノアを見た後、アナとスズに会いに行った。
地下に作った実験室にいた。彼女たちもレイナの回復に大いに貢献したし、今はサンティの会社でも働いている。サンティがあんなに色々なものを持っているなんて驚きだよな。
まるでチート使ってるみたいだ。サンティはさておき、アナとスズは有名な技術開発者になって、様々な企業と協力して人々を支援する技術を開発している。
それからひかりに会いに行った。
部屋にいて、ちょうど生配信を終えたところだった。俺を見るなり飛びついてきて、ベッドの上に倒れ込んだ。相変わらず大胆だな。
食堂に降りると、みんなが集まっていた。あと二人だけ足りない……
エミリーがその時到着した。夕食の準備ができている。
影からアンジュが現れて、テーブルに座った。
言わなきゃいけない。この瞬間がついに来た。長い時間をかけて、一人一人にお願いしたいことがあるんだ。プライベートなレストランで、それぞれに伝える。みんな困惑した様子で、何を言おうとしているのか分からないみたいだった。
その日が来た。
一人ずつ、目の前に座ってもらった。正直、これを実現するのは経済的に大変だったけど、ついにやり遂げた。この瞬間は伝えるためのものだ……
まずルーシーが来た。指輪を見せて、結婚してくれと頼んだ。ルーシーは涙を流しながら受け入れてくれた。
アナが座った。いつものように上品だった。指輪を見せると、彼女は微笑んで受け入れてくれた。
ライラが次だった。緊張していたけど、何を頼むのか察していたみたいだ。指輪を見せると、すぐに受け入れてくれた。
ひかりが入ってきて座った。まるで俺に挑むような感じだったけど、指輪を見た途端に赤くなって受け入れてくれた。
メリッサはとても緊張していて、手が震えていた。指輪を見せると、喜びの涙を流した。
フィリアはじっと俺を見つめていた。言いたいことがあるようで、それでも指輪と俺の言葉を聞いた瞬間、すべてを受け入れてくれた。
ルビーは興奮しているようだった。きっともう何を言うか分かっていたんだろう。俺が何か言おうとした途端、もう受け入れていた。嬉しそうに微笑んでいた。
スズは緊張していて、あちこち見ていたけど、俺が彼女の手を取って指輪を見せると、受け入れてくれた。
ノアは落ち着いていた。指輪を見せると、涙を浮かべながら微笑んで受け入れてくれた。
レイナはじっと俺を見つめていた。お互いの手が触れ合って、一体感を感じた。彼女とは色々なことがあったけど、もう大丈夫だった。指輪を見せると、彼女は受け入れてくれた。
エミリーは色々な感情が混ざっているようだった。興奮、喜び、幸せで泣きそうなくらいだったけど、一つだけ問題があった。彼女の家族は俺たちの関係を知らない。これがどう影響するか分からないけど、後で話し合おう。指輪を見せると、彼女は受け入れてくれた。
そして最後に、アンジュだ。彼女にとってこれは何かの儀式みたいなものかもしれないけど、指輪を見せた時、彼女は泣いた。どういうわけか、この約束が何なのかよく理解しているみたいだった。
こうして、みんなと一緒に時間が過ぎ、結婚式の日が来た。
様々な外部の制約があったから、全てプライベートで行われた。
特別な神父がいて、それがあの忘れていた名前の男だった。
昔助けてくれた人。カッシウス・ローズソーンだ。
一人一人が、この幸せな瞬間に俺の隣にいてくれた。そして教会から出ると、外で家族全員が待っていてくれた。
教会の外には、父さん、ウィリアム、ソフィーお母さん、トムじいちゃん、茜、ダリオ、ニーナ、拓海、ナオコ、カケル、竜児、榊、まい、ヤヨイ、カズミ、セレステ、サンティがいた。そして、見たこともない男が一人、こっちに近づいてきた。
「あんた誰だ?」
エミリーが慌てて俺の横に走ってきた。
「ちょっと待ってアレクス!何でパパにそんなこと言うのよ!?」
「えっ!?この人がお前の親父なのか?」
エミリーの父親は不機嫌そうな顔をしていた。
「悪かった」
でも今思えば、あれだけ長く一緒にいて、一度も話に出なかったのは驚きだ。まあ、俺もそのことを気にしなかったから、責任は半分こってところか。
「なんで今まで一度も言わなかったんだ?」
「だってパパって普通すぎて、出張ばっかりで、私でさえ存在忘れちゃうのよね……えへへ」
それを聞いたお父さんは泣きそうな顔をしていた。
「そんな酷いこと言わないでくれよエミリー……」
その瞬間、ウィリアムが近づいてきて、肩をバンバン叩いてきた。
「おめでとう!アレクス」
「ありがとな」
「運がいいな。11人の女の子、いや、入れたら12人か。まったく……もう羨ましがられる存在だな」
「誰がだ?」
「僕さ」
「お前、相手いないのか?」
「最近誰かと知り合ったんだけど、それはまた後で話すよ。今は君の家系について、ユニークな話をしたくてね」
「俺の血筋がどうした?」
「正確に言うと、君の曾々々々祖父さんだな……まあ、とにかく昔の偉大なご先祖様だ。あの方が7人の子供を持ったんだ。君はその記録を破るわけだ!はははっ」
それって重要な情報なのか?まあ、確かにそういう未来も待ってるかもしれない。だからこそ、今頑張らないといけないし、彼女たちを失望させるわけにはいかないんだ。
そして、しばらく経った後……。
人生ってのは地図のない旅みたいなもんだとずっと思ってた。どこに向かってるかもわからず、ただ耐えて前に進むしかない。早すぎる別れを経験して、永遠だと思ってたものが崩れ去るのを見て、一人でいる運命なんだって自分に言い聞かせてた。
でも、女の子たちが現れた。
一人一人が、生きるってことの違う面を見せてくれた。
優しさ、強さ、希望、信仰、笑い、それに動かせないはずの運命を壊すために必要な狂気まで。
彼女たちと一緒にいて、人生は一直線じゃなくて、記憶と傷と共有した笑顔で織られた布なんだって理解した。
今、前を向いて気づく。物語はまだ始まったばかりだ。
もうすぐ、最初の子供を腕に抱くことになる。最初の子供だ。でも心の奥底で感じてるのは、恐怖でも疲れでも迷いでもない。妙に落ち着いた、深い安らぎだ。ようやく自分が属する場所を見つけたみたいな。
全部の答えを持ってるわけじゃない。たぶんこれからも持てない。でもわかったんだ。
人生ってのは全てを理解することじゃなくて、誰に心を預けるか、道が壊れても誰と一緒に歩くかを選ぶことなんだって。
俺は女の子たちを選んだ。そして彼女たちは俺を選んでくれた。
だからここにいる。最初の子供を待ってる……いや、最初の12人かもしれない。そして久しぶりに、過去の重さを感じずに笑える。未来がどれだけ大変でも、一人で立ち向かうわけじゃないってわかってるから。
家族と一緒にいるんだ。
静寂が彼女たちの一人の柔らかい笑い声で破られる。その音の中に、手の下にある約束の中に、この部屋を天井まで満たしてる愛の中に……わかるんだ。
あの神様に証明できたって。
そう、幸せになれるんだ。幸せは築けるんだ。
そして、これは無数の始まりの、ただ一つに過ぎない。
まずは――ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
貴重な時間を割いて『霊輝』に触れてくれたこと、心から感謝しています。
この物語を書きながら、たくさん学びました。
自分はプロのように上手く書けるわけでもないし、伝えたいものを完璧に形にできた自信もありません。
それでも、最後まで読んでくれる人がいるという事実が、どれほど支えになったか……言葉にできません。
『霊輝』を作った理由はいくつかありますが、その中でも一番大きいのは――
自分がハーレム物語を心から好きだからです。
今までいくつものアニメや漫画を見てきて、
「ハーレムって、もっとすごい可能性を秘めてるのに!」
と何度も思いました。
誰もその“最大値”にまだ届いていない。
だからこそ、このジャンルはもっと面白くなれる。もっと胸に響く形になれる。
自分はその革命を起こした人間ではないかもしれませんが、
いつかどこかで、とんでもないアイデアを持った誰かが現れて、
このジャンルをもっとわくわくするものにしてくれることを願っています。
……ハーレムの話を長々としてしまってすみません。
でも本当に、このジャンルが持つ可能性が大好きなんです。
これからまた物語を書くかどうかは自分でもわかりません。
もし再び筆を取ることがあれば、今よりもっと良い作品を届けられるように頑張りたいと思います。
頭の中には、まだ広がり続けている“世界”がいくつかあって、
いつかそれをまた文字にできたらいいな、と密かに願っています。
最後にもう一度。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
どうか皆さんが、これからも素敵な日々を過ごせますように。
それでは――
良い一日を。あるいは、良い夜を。




