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霊輝  作者: ガンミ
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「生きたい」

レイスドールの闇が広がる中、戦いはついに限界点へと踏み込む。

アンジュを襲った一撃が、アレクスの中に眠っていた霊輝を激しく揺り動かし、サップ隊長の隠してきた“真実”が崩れ落ちるように姿を現していく。


しかし、激闘の只中で揺れているのは戦場だけではない。


深い闇に沈んだアンジュの意識は、罪と後悔、そして消えかけた希望の狭間で彷徨い続けていた。


自分を許せないまま抱え続けた重荷。

誰にも言えなかった願い。

そして――初めて触れた生きたいという想い。


外では力と憤怒がぶつかり合い、

内では心と願いが静かに形を変え始める。


この章で揺らぐのは敵か味方かだけではない。

“彼女自身”が辿りつく答えこそが、未来を大きく変える。

『??? / アレクス』


空中に浮上した。体から青い不思議なエネルギーが溢れ出している。これが霊輝ってやつか?まあ、どうでもいい。サップ隊長と向き合う準備はできている。


「てめえを殺してやる!」


怒り狂った声で叫んだが、奴は全く動じなかった。


「シヌ?まさか私に向かって言っているのか?」


「ああ、お前以外の誰にも言ってねえよ」


「ニンゲンとは実に滑稽だな。まずその概念は私には適用されないと前に言ったはずだが?」


「俺はそうは思わねえ」


「やれやれ……本当にニンゲンというのは私を苛立たせる。これもキミたちのためにしているというのに」


「黙った方がいいぞ、今すぐお前を片付けてやるからな」


「少し私の話を聞いてくれないか?それともアンジュや他のニンゲンのイノチに何かあってもいいのか?」


この野郎……俺を脅して今すぐ何かしないよう圧力をかけてきやがった。とりあえず話を聞くが、隙を見つけて攻撃する方法も考えておく必要がある。


「これは大きな善のための必要悪なのだ。何世紀もの間、ニンゲンの暦に基づいて、我々レイスドールは常に使命を持っていた。それはニンゲンの魂を管理することだった。私の先祖たちは常にニンゲンの完璧を追求したが、決して到達することなく、何も達成せずにこの世から消えていった。だが私は違う」


奴はアンジュの刀を持ち上げ、指で刀身全体を撫でた。


「この刀は私が作った十個の人工霊輝を蓄積することに成功した。あらゆる種類のニンゲンの感情を蓄積したのだ。キミやニンゲンたちには理解が困難かもしれないが、これらすべてを集めることは、完璧な魂、完璧な器、ニンゲンが真に変わるための道筋を作るために必要だったのだ」


何を言ってるのか全然理解できないし、理解したくもない。手に何か異変が起きているのに気づいた。奇妙なシンボルが手のひらに現れている……これは何だ?


「皆がここにいる以上、真実を話すしかないな。どうせ全員消し去るのだから」


「お前の好きにはさせねえ!」


「そんな無意味なことをする必要はない。それにキミはアンジュに利用されただけだ」


これを聞いて腹が立った。こいつが何を言おうと、俺は挑発には乗らない。アンジュは悪くない。彼女には選択肢がなかっただけだ。


「アンジュの任務は単純だった。人工霊輝を使って十人のニンゲンに埋め込み、その結果を観察することだった。最初の一人が成功だったとき、正しい道を歩んでいることがわかった。だがアンジュは私に異常について報告してきた。その異常が奇妙に思えたので、私は彼女に嘘をついた。アンジュが私に嘘をついていることを完全に知っていたからだ。アンジュには、与える霊輝ごとに前の持ち主を探すために使わなければならないと信じ込ませた」


「つまりお前が彼女の行動の責任者だと認めるわけだな」


「いや、全く違う。十個の人工霊輝が埋め込まれた後に続くのは、それらを抽出することだった。それが常に元々の計画だった。そしてアンジュが再び私に嘘をついていることに気づいた。アンジュの報告では人工霊輝を近くで監視していると述べていたが、実際にはしていなかった。私の背後で抽出していたのだ」


「だってお前が悪者だから!彼女はいつもそれを知ってたんだ!」


「私の話を遮るなニンゲン」


「チッ……」


「これらの人工霊輝を貯蔵する方法は一つしかない。アンジュの刀を使うことだった。アンジュがその方法を取ることはわかっていた。私のような者を知性で上回ろうとするなど愚かだった。私はあらゆる面でアンジュを上回っているのだから。だからアンジュを監視する必要があると知っていた。そのために夢喰いを使ったのだ」


「何!?今何て言った?」


「そうだ、夢喰いを使ってアンジュを監視したと言ったのだ。常に使っていた。レイスドール世界全体でよく守られている秘密があるからだ」


「秘密?」


「夢喰いは無から生まれた存在や、その世界の一部ではない……この間ずっと、夢喰いは私の先祖によって創造されたものだったのだ」


この言葉を聞いて驚いた。他の皆も言葉を失っているようだった。セレステとオダも最も衝撃を受けている様子だった。女の子たちは意識を失っているアンジュを守ることに専念しているが、これも聞いていた。


「オダ隊長とセレステ、そんな顔をするな。これまでの教えが全て嘘だったと知るのは突然すぎるのはわかるが、それが現実だ。夢喰いはレイスドール自身の創造物で、ニンゲンと我々自身に新たな一歩を与える目的で作られたのだ」


「お前は狂ってる!」


「他人をそのようにラベル付けするのをやめろ、ニンゲン」


「『人間』って言い続ける奴がそれを言うか」


「では何と呼べばいい?それがキミの正体なのだから」


「もう終わりか?良い殴り合いをしてやるためにな」


「ニンゲンは暴力的だと聞いていたが、その噂が真実だとわかる」


「不正義があるときだけだ。そして今、まさに一人を見ているところだ」


「私が?何らかの決意か何かで非常に偏見を持っているに違いない。私は正しいことをしているのだ。それを裏付けるデータベースがあり、この結果のために全てを捧げた先祖がいる。取るに足らないニンゲンがこの全てについて何を知っているというのか!」


「そうだ、俺はただの人間だ。お前の論理も考え方も理解できない。そしてまさにその理由で、人間として、お前が本当の問題を見ていないことに気づく。俺が今怒っている理由、こんなに怒らせる理由は、お前のせいで彼女たち全員が苦しんだことだ。アンジュでさえ、お前が作ったものの駒に過ぎなかった。これが続くのを許すわけにはいかない」


「また同じことを言っている。なぜアンジュの私への背後の行動に対して何もしなかったかを教えよう。

見逃したのには理由がある……キミのような人間が必要だったからだ。今、キミは私の最も貴重な標本となった。

キミは天然の霊輝を持つだけでなく、自分の霊輝の中にすべての人工霊輝の反映を蓄積することに成功した。

人工霊輝の持ち主を解放する能力を得て、それだけでなく、今でも見ることができる。キミは計り知れない潜在能力を持っている。

天然霊輝を持つという単純な事実だけで。それに気づいたとき、アンジュがしていることを全て見逃した。

何らかの形でキミがこの世界に来て、私の新しい実験対象となるように。だからこそキミと戦うことはできない。

キミは私がこれまで見た最高の標本なのだから」


拳を握りしめた。霊輝がさらに上昇するのを感じた。考える前に、すでにサップの顔を殴り、地面に叩きつけて吹き飛ばしていた。


「今だ!」


ライラとエミリーに戦闘に加わるよう指示した。スズはアンジュの治療を試みる。オダはこれを利用してカグヤから逃れ、ツルギを殴った。セレステも戦闘に加わる準備ができていた。オダはツルギとカグヤを無力化した。


サップは遠くから再び空中に浮上した。


「なんと突然の攻撃だ。私のミスだ」


こいつが何を言おうと関係ない。俺は再び信じられないほど速く動き、サップの前に現れて連続攻撃を加えた。俺の目の前で、ライラとエミリーが霊輝を放って攻撃する。しかしサップは巨大な蛇のようなものを一体出現させ、それが彼を取り囲み、二人の攻撃を防いでいた。


その蛇を見て何かを思い出した。


「その蛇……まさか?」


「おや!以前に見たことがあるような顔をしているな。きっと夢喰いと混同したのだろう?これが私の『初解』だ。これでアンジュの周りで実際に起こっていることすべてを監視し、データを収集していた」


あの時見た蛇のような生き物を思い出した。アナの家で初めて見た時のことを。つまりこの間ずっとこいつだったのか……この間ずっと真実を知っていて、常に一歩先を行っていた。ということは……


「あの時、夢喰いが人間を攻撃していたのをコントロールしていたのもお前か?」


「どの状況を指しているのかわからない。何度もやったことだからな。だがもしあの物を指しているなら」


サップはトウセイが倒れている場所を指差した。


「あれは私ではない。責任者だったのは、あそこにいる“あの物”だ。夢喰いたちを他の次元へと連れて行ったのも、あの物の仕業。そしてその時、我らは夢喰いの支配をすべて失ったのだ」


少し混乱した。サップが夢喰いをコントロールしているが、トウセイもコントロールしている。なぜ?


「トウセイがこの全てと何の関係があるんだ?」


「……これを言いたくなかったが、もうどうでもいい。あの物も私が創造したのだ」


「何だと!?」


「あいつは自分で『トウセイ』という名前を付けた。馬鹿馬鹿しいだろう?あの物は生きているかのように考え始め、感情を感じたがって私に反逆した。どうやったのかはわからないが、どこかの時点で従順なふりをして情報を盗み、全ての夢喰いのコントロールを奪ったのだと推測している。だが私にとってはただの失敗実験に過ぎない。それに比べてキミは……」


サップは渇望する目で俺を見た。これには不快感を覚えた。


「キミはほぼ完璧なニンゲン、あるいは最低でも完璧への第一歩だ。キミを分析する必要がある。実験する必要がある。だからこのばかばかしい戦いをやめて私に従え。さもなければ結果は致命的なものになる」


当然従うつもりはない。だが奴がそう言ったのを利用してある考えが浮かんだ。


「分かった、降参する」


俺がそう言った瞬間、周りのみんなが驚いた。当然だろう。みんな動揺して、同時に色々と叫んでいる。俺を理解しようとしてるんだ。でもサップだけは違った。むしろ喜んでるように見える。


「やっと分かったのか。それならこちらに来い」


空中に浮かびながらサップに向かって近づいていく。だが、その瞬間サップが何かに気づいたようだった。


「待て!」


立ち止まって、ただサップを見つめる。


「確実にするために、そこで動くな」


もちろん近づくつもりだった。でもサップが俺の企みに気づくことも分かっていた。だからもっと分かりやすく見せかけた。人工霊輝について理解していることがあるとすれば、それは何であろうと俺に触れるためには奴が近づく必要があるということだ。心臓の近く、そこに奴の霊輝があるからな。


「まだ信用できんなニンゲン、だから今のうちに……」


サップがアンジュの刀を見て、手を上げてその刀を持ち上げる。そして槍のように俺に向かって投げつけてきた。でも、そんなことは予想していた。体中にあった霊輝を手に集中させて、刀の刃を素手で掴む。貫かれるのを阻止した。本当にギリギリだった、もう少しで貫かれるところだった。


サップは怒っているようだ。当然だ、なぜなら...


「アンジュの刀を取り戻したぞ。いいトリックだろう?」


サップが周りの大蛇を動かして俺を攻撃しようとしたが、その瞬間エミリーとライラの霊輝がその大蛇を止めた。みんなのところに戻る。


「みんな!」


エミリーとライラの助けで、三人で霊輝を合わせて同時にサップを攻撃する。ホースから出る水流のように、霊輝がサップに激突した。サップはそれを止めようとしたが、俺とライラとエミリーは全てのエネルギーを使ってサップを攻撃し続けた。爆発が起こり、痛みに満ちた奴の叫び声だけが聞こえた。


空中に浮かんでいる力も残らず、エミリーとライラと一緒に降下した。アンジュの様子を見に行く。彼女に近づくとスズが言った。


「ごめんなさいアレクス、でも私の治癒呪文は彼女には効かないの」


その時、空からツルギとカグヤが落ちてきた。上を見ると、セレステとオダが急速に降りてくる。セレステが近づきながら素早く言った。


「私に彼女を治させて」


彼女は自分の刀を使ってアンジュを治療する。何が起こったのか未だに理解できずにいた。その時、遠くから再び声が聞こえてきた……


「オマエたちは本当に面倒だな」


またサップだった。でも今度は酷く傷ついているようだ。こいつがこんなに頑丈だなんて、驚くほど恐ろしい。オダは今度こそサップと戦うつもりのようで、言った。


「おい、サップ隊長、一つだけ聞かせてもらいたいことがあるのう」


「何のことだ、オダ隊長?」


「お主も我らを騙していたのか?人工霊輝のことを話した時、お主の種族の全員を自分の主義のためだけに騙したのか?ツルギやカグヤを騙くことなど気にならなかったのか?」


「……奴らのことなどどうでもいい。実際、回収部隊は私の目的には邪魔だった。だから意図的にここに連れてきたのだ」


「それで奴らに何をした?」


「特別なことは何も。ただ私に従わせるために奴らの体が必要だった。単純にここに連れてくる機会を利用して二つのことを達成した。一つ目は奴らを排除すること、二つ目は奴らを操ることだ」


「そうか……そうか……お主はもはや隊長と呼ばれる資格などないのう」


「は?何を言っている?オダ隊長」


「お主に言っても意味がない。我らを皆騙し、ずっとお主と部下の好き勝手にさせていたのだからな」


「そうか、オダ隊長、お前もあのニンゲンどもに騙されたのだな」


「騙されてはおらん。だが一つだけ確信していることがある」


オダが刀を抜いて攻撃の構えを取った。


「お主が唯一ここで倒れる者だということを...首を差し出せ」


一歩前に出て、オダがサップとの戦いを始めた。刀と刀がぶつかり合う金属音だけが響く。でも、これ以上見ていたくなかった。再びアンジュの様子に集中する。彼女の手を強く握った。


「アンジュ、お願いだから死なないでくれ……まだ待ってるんだ。まだ行かないでくれ。まだ君に言いたいことがあるんだ」


彼女は反応しない。セレステがアンジュを治癒させようと全力で努力している。


「お願い……アンジュ」


……その時、手を軽く握られたのを感じた。急いでアンジュを見る。彼女が手を握り返している。目が開こうとしているようだった。


「アンジュ!」


そしてアンジュが目を開けた瞬間、視線が合った。その金色の瞳が俺をじっと見つめている。互いの視線が離れることはなかった。


『アンジュ』


闇に包まれていた。何もない。ただここにいるだけ。虚無の中で、一人きり。誰もいない、何もない、そして静寂。


そう……これが相応しい。いいえ、これこそが当然の報い。あの子たちにしたことを考えれば、許されるべきではない……許されるはずがない...でも、なぜ泣いているの?


「うあああ……うあああ……」


この孤独の中で泣いている。ルビーが許してくれた時のことを思い出した。あの時はとても救われた気持ちになったけれど……でも。


みんなとても優しくて、許してくれる。私なんかが許されるべきではないのに。この受けるに値しない優しさにどう報いればいいの?こんなに深い罪悪感を背負っていると、無償の赦しはもっと大きな負債のように感じられる。赦しを受け入れて、みんなと一緒に前に進むなんて、それこそもう一つのエゴイズムかもしれない。


したことの後で、みんなの友情と幸せを享受するつもり?それが一番エゴイスティックなことよ。


だから、犠牲こそが唯一の「天秤を釣り合わせる」方法。これが私の「罪」に見合う唯一の結果だと考える。


「世界の終わり」と呼ばれるこの場所に来た目的は、大死神様に会うため。この刀と人工的な霊輝から解放されれば、抱えている罪を消し去ることができる。すべての世界から浄化されるなら、たとえそれが自分自身の消滅を意味しても。自分が作り出した悪を世界から完全に消し去る方法。自分自身を犠牲にしてでも。


でも……なぜルビーが許してくれた後にこれを決めたの?ルビーの赦しは犠牲の必要性を確信させる触媒だった。思いとどまらせるものではなく。赦しによって、他の人たちが私をどう見ているかと、私が自分をどう見ているかの乖離に直面させられた。ルビーは私の中に善を見た。でも私には最初の操作しか見えない。この乖離は耐え難いほど痛い。


「もしあの子たちが私を良い人だと見るのなら、私は明確に良い行為ができることを証明しなければならない―みんなの安全と決定的な平和のために自分を犠牲にすること」


霊輝を隠す計画はもう実行不可能だった。私を暴露する要素があまりにも多すぎる。それに、あの子たち全員の感情の重さも感じている。だから赦しは私にふさわしくない。赦しは罪悪感を和らげるどころか、無条件の愛に値しないと感じさせることで激化させた。犠牲こそが、その赦しを「獲得」し、まだ抱えていると感じる負債を浄化する唯一の方法になった。


でも……みんなの声を聞いて、全員がここまで私のためだけに来てくれて……一体どうすればいいの?全員が私を憎んでいないことを示してくれた。私に対する気持ちが悪いものではないことを証明してくれた。もしかしてアレクスが仲介者だからかもしれない。でも、そうじゃなかったら?なぜ?


人間の感情は難しい……彼女たちの声を聞いたことで、もう合理化することが不可能になった。これは大規模で絶対的な肯定。「みんなが私を憎むべき」という信念が、圧倒的で反駁不可能な反対の証拠の前で崩れ落ちる。例外ではない――これが常態。


きっと最良の場合でも、許されてから平和に去るか、遠くから容認されることを期待していたはず。でも受け取ったのは根本的に違うもの――私の存在が価値あるもので、望まれているという積極的な肯定。


ライラと友達になった時でさえ、まだ感謝されていると感じた。でも友情の重みを理解していなかった。なぜ今これを感じているの?レイスドールは感情を感じないはず?……それとも本当にアレクスの言う通り、理解するのが苦手なだけで、いつも持っていたの?


私はただ盤上の駒だった。本当に何かをしていたわけではない。サップ隊長はおそらく最初から全てを知っていた。だから私を諦めた。その結果、ここにいる。虚無の中、暗闇に囲まれて、何もない……そして静寂。


今、全てが明るみに出たようで、私がすることに何の意味があるの?答えは明確……もう何もない。もう犠牲の価値はない。この犠牲を全員に隠れてすることを望んでいた。そうすれば全員が幸せになれると思った。でもこの全てには詳細があった……それは人工霊輝の中にまだ残っているみんなの記憶。その記憶には感情があるからとても貴重。でも返すことができない。


全て計画していた。大死神様に会う時が来て、少なくとも大死神様の力でそれらの記憶を全部返せることを期待していた。自分を犠牲にして。それを望んでいた。でも大死神様に会う直前に突然眠ってしまい、目覚めた時にはアレクスと女の子たちが来ていた。


計画していたことが全てこんなに簡単に台無しになったのか理解できない……

でも……一人一人が私に何かを言いたがって、みんなの側にいてほしいと……

だからこそ理解できない。なぜみんなこんなことをしているの?なぜ私に残ってほしがるの?ほとんど話したこともない。ライラ以外は名前さえ知らなかった。

アレクスが教えてくれるまでは……


卑劣なレイスドールだったことも分かっている。どんなにみんなのためにしたことも、霊輝から解放されたことも関係ない。良い人として扱われることを受け入れられない。でも……みんなの顔を思い出すと。


みんなと一緒にいたいという気持ちを感じる。でもそれもエゴイスティック。でも望んでいる。望む……?本当にその言葉を言えるの?本当にそういうことを感じられるの?分からない。でも信じようとしたい。その感情を感じようとしたい。もっと正確に言うなら、理解しようとしたい……


「本当にこれにふさわしいの?」「重荷にならない?」疑いと不安。今確実に感じていると言えるのはこれだけ。みんなが求めていることに適切に応えるべきよね?


この瞬間、「過去を償う」ことはもう目標であるべきではない。みんなが未来を提供してくれた。今はそれを守らなければならない。みんながくれたものだから。


そのことに気づいて安堵を感じる。でも今ここにいる。虚無の中。怪我をして、目覚める力がない。このことに気づいた今、自分自身を憐れに思う。みんなの手の届かないところにいる時だけ。彼らを失いたくもない……。


本当の脅威、本当の戦いはもう罪悪感に対してではない。外部の脅威に対して。そこでの価値は、自殺的にみんなのために戦うのではなく、みんなと一緒に戦うこと。


消えたくない。

みんなと一緒にいたい。

みんなともう一度話したい。

もっと知りたい。ここで終わってほしくない……。


ライラとはもっと話したり遊んだりしたい。

ルーシーの親切さをもっと知りたい。

アナスタシアには人間の技術について話したい。

スズは魔術師だし。彼らの背後にある真実をまだ知る必要がある。

ひかりはとても大胆で、理解したい。

ルビーはとても強くて、彼女から学びたい。

フィリアはあまりにも善人で理解したい。

メリッサはとても好奇心旺盛で、もっと学ぶ必要がある。

ノアは未来を進むことができる人。それも理解したい。

レイナはとても多くのことを経験したのに、まだ前に進み続けているのが驚くべき……それも理解したい。


エミリーはみんなを最も考慮に入れて助けることができる人。

アレクスのお父さんはあまりにも親切で、まるで本当の私の父親のように考えているみたい。

そしてアレクス、あのバカ……私のバカ。この世界での最後の支え……いつから彼をそう見るようになったの?


本当に気づかなかった。ただその感情が既にそこにあった。またしてもコントロールできない、理解できない。ただそこに、私の中にあった。


会いたい。抱きしめたい。……手を握ってほしい。


その瞬間、誰かが手を取るのを感じた。見てもそこには何も見えない。でも感覚はそこにあった。周りを見たけれど、暗闇と虚空と静寂しか見えなかった。


「アレクス?」


立ち上がって手の感覚を探し始めた。消えなかった。走り始めて、アレクスを探そうとした。多分?本当に彼を探しているのか分からない。出口?何か。


それから遠くで声を聞いた。とても遠くだったけれど聞こえた。私の名前を叫んでいる。


「アレクス!ここにいるよ!」


また遠くで私の名前を呼ぶ声を聞いた。


「アレクス!置いていかないで、待って!」


その声に追いつこうと走って走った。それから前に何かが現れた。というより誰かが。


「あなたは誰?」


背を向けた誰か。黒いスーツを着ている。何も言わない。でも突然言った。


「彼らに会いたいか?」


その質問に、もしかしたらその男性の出現に混乱した。何を考えればいいか分からなかった。でも答えなければならないと感じた。


「はい!みんなに会いたい!」


スーツの男性は人差し指で右を指した。もしかして合図?信じることにして、その方向に走った。


それから手の感覚がもっと強くなって、突然前方にみんなのシルエットのようなものが見えた。一緒に走っている。前方に光が現れた。みんなが横で一緒に走って、その光に向かって直進していた。


それから目を開けることができた……最初に見たのはアレクスの目だった。じっと見つめ合った。泣きたくなったけれど、本能的にアレクスを抱きしめた。体の痛みの痕跡を無視して。ただ抱きしめながら泣いた。

次回――

アンジュを失いかけたあの瞬間から、運命の流れは大きく動き出す。


十の霊輝。

奪われた記憶。

傷ついた絆。

そして、それでも離れない“想い”。


彼女たちが取り戻そうとするものは、単なる力ではなく──

自分自身の生きた証と、アレクスとの歩みの全て。


サップ隊長はなお暴走を続け、レイスドールの闇はついに本性を剥き出しにする。

その中で、選択を迫られるのはアンジュとアレクスだけではない。


全員が、それぞれの“答え”を示す時が来る。


力を失ったままでは終われない。

過去を奪われたままでは前に進めない。


失われた霊輝が、再び彼女たちのもとへ帰る時。


もう後戻りはできない。

最終決戦へと進み出す。

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