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踏切り妄想族 シーズン2 午後は○○思いっきり田吾作

作者: 葵さくらこ

ここのシリーズの第一弾↓こちらです!

◆踏み切り妄想族 恋はドキドキ スウィートスパイラルハニー

http://ncode.syosetu.com/n4170k/

良かったら先に↑こちらをどーぞ!



挿絵(By みてみん)



「実行部隊の久米川です。」



ヤツの話はこんな感じだったんだ。



話を少し戻そう。俺は今回もバーでヤツの話につきあってやってる。男が二人。そしてここはバーだ。常識的に考えれば、洒落たジョークでも交わしつ、罪の無い世間話や仕事の日頃のうさなどを、ゆっくり語り合うにふさわしい場所だと思うのだが、(少なくとも自分のバーの認識はそういった感じだ)ヤツは違う。まるで違う。


毎回妄想だ。それも自分に常に都合の良いよう、相当に屈折された妄想だったりするのだ。


人が消費するエネルギーの大半は脳内消化なのだ。人はそのエネルギーの大半を、実は "思考" に費やす。体を動かす、臓物を常に正常に動作させるなどと言う活動は、実は全エネルギーの中では、ごくごく一部に過ぎない。ほとんどが脳だ。


その大切な脳エネルギーをほぼ全て『妄想』で消費する彼は、切なさというか潔さすら感じる。


人生のどれだけを無駄にしてるかは想像に容易い。




まぁいい。




とにかく話を元に戻すと、彼はまぁ↓こんな事を言うのだ。



「その後大久保コンツェルン、やっぱりなかなか諦めてくれないんだよね…」



妄想を現実と同じテンションで語るのも、ヤツの特徴だ。そこに照れが無い。強い酒を飲みたいと言っていた彼は、アーシャンボー・クレオール(ラム)を今日は口にしていた。そして遠くを見つめながら語る。思い出の旋律をひとつひとつ指で手繰り寄せるように。



が、繰り返すが、これはすべて妄想だ。空想だ。虚無の世界だ。



で、彼は言うんだ。



「大久保コンツェルンの実行部隊の久米川が、僕にしつこくアプローチしてきて…」



前回彼から聞いた話(妄想)では、踏切りで娘を助けた縁で、大久保コンツェルン総裁、大久保爾大朗に合う → 酷く気に入られてしまって、大久保コンツェルンの総裁に僕を誘う → 断る → 「ワシは諦めないよ」と大久保爾大朗に言われ、壮絶な大久保コンツェルン引き入れ工作が始まる!


…というのが、今回の彼の妄想のスタート地点なのだが、とりあえずここで、大久保コンツェルン実行部隊「久米川」が、登場したというのが、今回の話の中核のようだ。





彼の語りに戻ろう。



「ある日、おれふつうに部屋で寝てたんよ。したら、宅配便の人が突然やってきて、『え!俺何も頼んでませんよ!』と言ったら、釣り竿が届いてるって言うんんよ!贈り物だって言うから、とりあえず中開けてみたら、超高級和竿、田吾作!それが突然、誰だかワカラン人から届いてるんよ!」



彼は語る。テンションが高い。彼は続ける。



したらドアが開いて、黒ずくめの男がいるんだ。そして言うんだ。



「気に入って…、、いただけましたか…?(ニヤリ)」…って。。



それがどうやら今回の話の中核、「実行部隊久米川」だそうだ。痩せ形。背丈は標準だが、眼鏡の奥で時として光る眼光は、冷淡、そして冷酷。薄い唇から時折見せる口元だけの笑いは、ある種背筋が凍り付く殺気すら感じるそうだ。


ただ、その喋り方は、どことなく人を食ったようなというか、小バカにしたような感じというか。決してはっきりと喋らない。もったり喋るが、時として突き刺すような重厚さもある。



闇社会の真の住人はこういうタイプだろうか?



表と裏。光と闇。それが巨大コンツェルンの真の姿なのかもしれない。そしてその闇社会、真の刺客、実行者、それが久米川だと言う。



それが、今日釣り竿を持ってきた。どういう事だ?



彼は言う。



「小村さん…、、釣りがお好きだって…、聞いたものでして…、」(久米川)


久米川の鈍い眼光が鋭く眼鏡の奥で光り、心臓を捕らえる。ニヤリと笑う唇は、決して友愛ではない。ある種強制だ。


それが僕の気を引く為の『特務工作』である事は確かだった。寧ろ脅迫に近い。全ては僕を大久保コンツェルンに引き入れる為。


彼らは僕の発言、行動を徹底的に調べ、僕の欲しがるものを全て与える事によって、グループ内に引き込もうとしているのだ!僕は背筋が凍りついた!



そこで僕は言ったんだ。



「待ってください!釣りが好きだって言ったのは、なんとなく "釣り堀っていいヨネ!"って言った程度で、それでもさすがに毎週行く気にはなれないよね!って思いつつも、そもそも実際釣れてしまうと、コイとかフナとかの強烈な生臭さに、かなりドン引くよね!って言っただけで、別に強烈な釣りのマニアだなんて言った記憶ありませんよ!」



「お嫌いですか、お釣りは?」(ニヤリ)



「そういう問題じゃありません!そもそもこんな高級釣り竿いただけませんよ!」


「高級ヘラ釣り用和竿 田吾作、最高級品です。360万です。お気に召しませんでしたか…??」


「そういう問題じゃないッス!そもそもたかが釣り竿に360万って意味わかんないですよ!」


「お気に召しませんでしたか…それは残念だぁ…」と、久米川、多少残念そうな表情を見せるが、口元には薄く笑いを浮かべる。




「鮫山!鮫山!」




久米川がもう一人の刺客を呼んだ。それが鮫山。彼は久米川の忠実な部下で、命令とあれば、チャリパクぐらいは平気でするような男だ。


鮫山は久米川と違い、サングラスをしている為、顔はよく分からない。

鮫山は久米川の指示を聞き小さく頷いたかと思うと、そのまま竿を真っ二つに折ってしまったんだ!360万を何も躊躇せずにだ!



「何やってんスか!もったいないじゃないっすか!」



思わず僕は言ってしまったが、その声はもう届かない。360万の高級ハンドメイド和竿田吾作360万は一瞬にして物干しにすらならない『単なる竹だった物体』に成り下がってしまった!



これが闇社会なんだ…。



僕はその時、背筋が凍るような思いをしたよ…。




彼は再び遠くを見つめる。


なんだかよく意味が分からんw





「今度は翌日なんだ。」





と、彼は続けた。まだ話あるんか!




「朝起きたら家の前にフェラーリが横付けされてたんよ!」と彼。



そこで久米川が登場!前回同様、「気に入って…、いただけましたか…??」と発言。久米川、更に続ける!


「フェラーリ 550…。価格はまぁ…、19万ユーロ…、日本円で行くと2390万円といった感じでしょうか…」


久米川再び怪しげな眼光を光らす!ヤツはカマボコの試供品でも手渡すが如く、軽々とフェラーリを手配するんだ!コレが闇社会だ!


僕は思わず言ってやったんだ!


「フェラーリ 550と言えば、空吹かしだけでも甘美なエンジン音とレスポンスを示すV12エンジン搭載の、まさにキング・オブ・フェラーリの名にふさわしい、引き締まった乗り心地と重厚さすら併せ持つ、超高級車じゃないっすか!いただけませんよ!絶対にいただけませんよ!!!!」


「小村さん…。。赤いお車がお好きだって・・言ってたから…。」(久米川)


「それはミニ四駆の話です!たまたま自分が改造しまくったミニ四駆が、たまたま赤だっただけで、それも最終的に『軽量化!』とか言ってヤスリで削り過ぎたら、机から転落の衝撃でボディーがベッコリ行っちゃったっていう過去があるだけの話なんです!!!そもそも赤ってだけでナンでフェラーリなんスか!」


「そうですか…、お気に召しませんでしたか…。。」と久米川。


「そういう話じゃなくて!」



「鮫山!鮫山!」



鮫山登場。久米川、鮫山に目配せする。鮫山、静かに頷く。





ボンッ!





一瞬でフェラーリが炎上。僕が受け取らないと分かった瞬間、不要だと判断でもしたのだろうか?最上級フェラーリ 550 2390万円(19万ユーロ)は、一瞬にして『単なる鉄だった物体』へ変貌。強烈な追い込み。



「僕はこの時も闇社会の恐ろしさを強く感じたよ…」



…と彼。




「僕はこの時、この鉄屑、誰が始末するんだろう?と一瞬思ってしまったよ…」と、更に彼。彼はグラスのラムを少しだけ口に運ぶ。




「今度は東急ハンズなんだ。」と彼。




まだ続くんか!




自分が東急ハンズに行った時、突然店員が皆、オレに『土下座』するんだ!


どうしたんだろう?って思ったら、そこで久米川再登場だよ!


そしていつもの通り、こう言うんだ!



「気に入って…、いただけましたか…、、…って。。」



状況を聞いて初めて理解!ヤツは東急ハンズを企業毎買い上げてしまったんだ!さすがにそれはビビった!僕は言ってやったんだ!



「待ってください!久米川さん!僕は今日、ハンズにボールペンの換え芯を買いに来ただけですよ!あとそれと台所の三角コーナーがカビまみれで再起不能になったから、安けりゃ買い換えようって思っただけですよ!」



「…気に入って…、、いただけませんでしたか…??」と久米川。



そりゃそうだ!ハンズ買収なんて、あまりにあんまりだ!



しかも驚いたことに、店内のロゴやビニールも全て「KOMURA HANDS(小村ハンズ)」に書き変わっていた!1976年(昭和51年)、遊休地利用を図るため、新規事業としてホームセンター事業に参入し、同年11月に第1号店となる藤沢店が開店した東急ハンズ 『34年の歴史』 に僕が幕を閉じるなんて、あんまりじゃないか!!!!



「…そうですか…、、お気に召しませんでしたか…。鮫山!鮫山!」



待ってくれ!また爆破か!



「やめてください!爆破だけはやめてください!」



何故?という表情の鮫山。手元にはスイッチが握られ、まさに押される直前の状態だった。




よかった!あぶなかった!




「じゃ、あの大学生にあげちゃいますか。君、君、名前何?ああ、遠藤くん、じゃ今日から君に、このハンズあげちゃうから。今日からここは遠藤ハンズだから。」とめんどくさそうに言って彼らはその場を立ち去った。


大学生は無邪気に、「マジスカ!まじでもらっちゃっていいンスカ!もう学校とかもやめちゃっていいンスカ!」と無邪気にウカれていた。




「僕はこの時も闇社会の恐ろしさを強く感じたよ…」



…と彼。



僕的に素朴な疑問なのだが、別に東急ハンズ買収しなくても、「ボールペンと三角コーナーの買い占め」の方が、ハートをガッチリつかめるよーな気がするのだが、どうだろう。


どうでもいい。そもそもこれ、妄想だし。どーでもいいし。





「そして今度は電車に乗る時にね」…と彼は続けようとした!






もういいw もういいw







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