王女様の右腕
私は王女様の右腕です。
なくてはならない存在です。
「お前は王女様の右腕だ」
「右腕にふさわしい人間になりなさい」
だから、産まれた時からそうやって教えられてきました。
私が王女様の右腕になるというのは、定められた運命なのです。
私は王女様の右腕になるべく、大切に育てられてきました。
肌の色が変わらないように。
浴びる太陽の光の量を調節しました。
右腕の使い方が変わらないように。
王女様が右腕でこなした事は、すべて私もやりました。
そして、とうとう右腕の出番がやってきます。
「今からあなたを手術室へ運びます。右腕とのお別れをすませてください」
麻酔をかけられて手術をした後、私の右腕はなくなっていました。
けれど、私は悲しくはありません。
辛くもありません。
王女様の右腕になれた事がとても誇らしいのです。
だけれども、まだ私の仕事は完全には終わっていません。
もしもこの先、王女様が左腕や左足、右足をなくす事があれば。
私と同じ子供達に先輩としてアドバイスをしてあげなければなりませんから。