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ささやきごと  作者: 梨藍
6/9

リグレット

呼びたい名がある

呼べない名がある


そこにあるのは

目には見えない


境界線


まるで雪の様に募るのは


―― 後悔 ――



―― 水比奈独白 ――

『名で呼んではくれないかい?』


彼の方は、いつも私にそう仰っしゃっいました。

でも、私はどうしても呼ぶ事は出来ませんでした。


『式神の分際で主の名を呼ぶだなんて……』


私は、いつもそう言って逃げてばかり。知っていたのに、私はいつも逃げてばかりでした。


『私は……水比奈も白銀も、大切な家族だと思っているんだけどね』


そう言って寂しそうに微笑む主を見る度、罪悪感に苛まれました。


でも……どうしても呼べませんでした。


私は“人”ではありません。


そんな私が、主の隣に……


私にとっては、こうしてお傍に居る事を許して下さっているだけでも、恐れ多い事だったのです。


忌部の屋敷は、主と私、白銀様に翠琉様、たった四人で生活をするには充分過ぎる程大きいお屋敷です。どこか閑散としていました。


でも、そこはとても暖かくて


まるで、優しい夢を揺蕩っているみたいで



―― 夢は醒めるもの ――



私は恐かったのです。


―― 幸せ過ぎて……


涙が出そうな程、穏やかな日々を失う事が恐かった。だから、私は主を名で呼ぶ事が出来ませんでした。


それは、一種の願掛けのようなもので。ですが、その願いは聞き届けられませんでした。



“正義”の名の下に


理不尽な暴力によって


主の命は奪われました




穏やかに


“最期”を迎える事すら


あんなに希っていたのに

主様が望んだ唯一無二のお方様との再会すら


赦されなかったのです




『お前は忘れなさい。全てを忘れて新しい道を歩みなさい』


主はそう言って翠琉様から全ての記憶を消し去りました。あの“日々”は、本当に夢想の彼方へと消え去ったのです。


こんな事ならば、名を呼んで差し上げれば良かった。


こんな事ならば、もっと望めば良かった。



愛しい


愛しいたった一人の私の主




「……翠琉さま……」


だから、今度は失わない為に

誰にも奪われない為に


死神に連れて行かれないように

愛しいその名を呼びましょう。




END

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