酒は呑めどもの気を付けろ
緋岐×紗貴&将、元凶正宗(高一:初夏)
※ 飲酒のシーンがありますが、ワザとではありません!!!
進んで飲んでいるわけではありませんのでご容赦ください
続いてしまった……
「酒は呑めどもの気を付けろ・裏」
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未成年の方は、ご遠慮くだされッ!!!
「もう、訳わかんない」
愚痴を零しつつ紗貴が向かうのは台所だ。
本日土曜日は、瑞智家で英語の強化合宿が強行されていた。
といっても、先生役の緋岐と、生徒役の紗貴、将の3名で……ではあるが。
事の発端はカレー。
由貴は中学三年生の勉強合宿の為、家にいない。母 桜も家にいないという状況で、紗貴はカレーを作った。作ったのはいいとして、作り過ぎた。
正宗と紗貴の2人だというのに、ゆうに10人分はあるという状況で。
無論、蘭子にも声を掛けたが、あいにく今日は家の用事で来ることが出来ないとのこと。そのことを紗貴から伝え聞いてから数分後、緋岐のスマートフォンのLINEの着信音が鳴った。開いた瞬間、顔を引きつらせて固まってしまったので、誰からなのかと尋ねれば、それは蘭子からだとすぐ返された、のだが……内容については頑なに黙秘を貫かれて、紗貴と将は首を傾げたのだった。
さて、そんな事情も相まって結局、正宗、紗貴、緋岐そして将の四人で食卓を囲むことになった。
瑞智家の食卓はいつも賑やかだ、テレビも付いてい入るものの、ほぼBGMと化す。今日も何気ない学校での出来事だとか、八百屋のおじさんが、またおばさんに叩かれていただとか、話に花が咲いていた。
そこで、思いもしなかった話題がお茶の間を凍り付かせた。何気ない、正宗の一言が発端だった。
『この間の、中間試験……また、見事な点数だったでなあ』
『ちょっと、おじいちゃん!?』
快活な笑い声を上げながら言えば、紗貴が慌てて止めに入る。だがしかし、主語が抜けていようとしっかり伝わるものは伝わって。
『英語、悪かったのか?』
何だろう、神々しい笑みを浮かべているはずの緋岐がとってもコワイ。ちょっと涙が出そうになるくらいには、威圧感がすごい。だから、巻き込んだ。一人より二人だと思って何が悪い。
(旅は道連れ世は情け!!)
『将君だって、悪かったんだから!』
『ちょっと、さっちゃん!?』
そこで、暗黙の内に決定してしまったのだ。今日は土曜日。緋岐と将は元々泊る準備もして来ている。久しぶりに、マリオ●ートでもしようなんて話していたというのに。
(マ●オカートではなく、まさかの英語強化合宿になるなんて)
とりあえず、水を喉が渇いたからと一足先に戦線離脱した紗貴は、悪くない。ちょっと部屋を出る時に恨みがましい視線を将から頂いたがご愛嬌だ。
居間ではテレビを楽しみにながら新聞を広げて晩酌を嗜む祖父の姿があって。
「いいなあ、大人は……」
何て溜息を吐きながら呟けば、正宗は声を上げて笑った。
「勉学は、学生の本分じゃて」
「それは、そうだけど……」
言って、冷蔵庫を開けるとミネラルウォーターをグラスに注ぐ。
―― その時だった……
「あ、いいよ。おじいちゃん私出る」
家の固定電話が鳴った。水を注ぐと、ちょっと急いで居間に戻る、そして正宗の隣にコップを置くと電話の方へと急いで向かう。
「はい、瑞智です。……はい、祖父ですか?今、代わります……おじいちゃん、志筑のおじさんから!」
孫娘に呼ばれて、手元を見ずにそこにあったグラスを傾けて、正宗は一瞬顔を顰めた。
「何じゃ、水か……一杯だけ……」
「おじいちゃん!」
間違って水を飲んでしまった。せめて一杯日本酒を……と、思ったところで再度孫娘に呼ばれて、重い腰を上げたのだった。
入れ替わりで戻って来たのが紗貴だ。
「全くも~、マイペースなんだから……」
ぶつくさと文句を言いながら、紗貴もグラスをよく確認せずに、付けっぱなしのテレビを消すべくリモコンを捜しながらグイッと飲んだ瞬間、喉に焼けるような刺激が走る。更には、何だか独特の臭いが鼻をつく。
「げほっ……なに、これ……お水じゃ、ない……?」
ブワッと自分の体温が上がるのが判るのと同時に、グラグラと目が回る。何だか頭も痛くなってきて、紗貴はそのままダイニングテーブルに突っ伏すようにへたり込んだのだった。
※※※※※※
「緋岐、さっちゃん遅くない?」
紗貴の部屋で参考書を広げながら問題に挑んでいた将が、ふと呟く。
「そういえば……」
『ちょっと、お水飲んで来る!』
そう言い残して、紗貴が敵前逃亡を果たしてから、もう5分は経っている。
「俺たちもちょっと休もう!適度な休憩、大事だって」
将が言えば、緋岐は短く溜息を吐き出してから、「仕方ないな」と肩を竦めた。
二人で階段を降りると、正宗が何やら話しているのが聞こえてきた。どうやら電話をしているらしい。そして、二人揃って居間に入って、一瞬固まった。
紗貴が、ダイニングテーブルに突っ伏すようにして倒れているではないか。
「え、さっちゃん?」
「紗貴!?」
二人の声が重なる。そのまま慌てて近寄って、緋岐が紗貴の身体を揺すれば、緩慢な動きで紗貴が顔をあげた……瞬間、ふにゃりと効果音が付きそうな笑顔を浮かべた。
「あー……ひきくんら……」
身体がゆらゆら揺れて、顔……というか、全体的にほんのり赤い。
「うわ、何これッ……くっさ……」
紗貴が握りしめていたグラスを手にして、将は顔を顰めた。アルコール独特の臭いが鼻につく。
傍に置かれた空のグラスに、アルコールの臭いが強い紗貴が握りしめていたグラス……
その前に置かれた日本酒の一升瓶とくれば、大体のここで起こったことの予想はつくというものだ。
「ふふッ」
おかしいと言わんばかりに、フワフワしたまま紗貴が笑う。
「ひきくんに、しょーくん、たくさーん」
もう、意味が判らない。完全に酔っぱらっている。
「さっちゃん、大丈夫?」
「しょーくん、うん。きもちーねえ」
とりあえず、真っ赤になって硬直してしまった緋岐は置いておいて、将は紗貴の隣に腰を下ろすと顔を覗き込むようにして尋ねる。だがしかし、会話すらままならない状態で。
緋岐は緋岐で大変だ。いつも毅然としていて、明朗快活な紗貴が、完全にポンコツ……ぐでんぐでんになっている。
『そうそう!いっつも、キリッてしてるのに、攻めの前だとフニャッってなるの、いいよね!』
『『『わかるーッ!!』』』
(判りたくないけど、判ったッ!!!)
過去、黄色い悲鳴を上げながらキャッキャウフフと盛り上がっていた腐女子達(紗貴含む)の会話を思い出して、緋岐は一人心の中で唸っていた。
―― と、その時だ。信じられない話しが耳に届いたのは。
「しょーくん、いまさらへんなのぉ……いっしょに、おふろはいってたのにぃ~……」
「さっちゃん!?」
まさかの告白に、慌てふためく将。
「……は?」
聞き返した緋岐は、悪くない。普通の反応だろう。曲がりなりにも、お付き合いしているのは自分のはずだ。
「しょーくんねえ、ちっちゃいときねえ、かみ、あらうのこわがってたんだよねぇ~……」
「二人だけじゃないからね!?子ども達みんなで入ってたからね!!?4~5歳の話しだからね!!!???」
ほわほわと周りにお花が咲いてそうな勢いでフフフと可愛い含み笑いを零しつつ言っている内容も、まあ可愛らしいと言えば可愛らしいのだが……緋岐としては、全くもって可愛くない。初耳の衝撃の事実である。将にしても、やましいことも、やらしい気持ちもないとはいえ、緋岐の心中を察すれば、申し訳がないし、いたたまれない。
―― 閑話休題……
目下、将が瑞智道場の近くにある児童養護施設「陽だまりの家」に引き取られたのは、4歳の時だ。
幼いころは、「陽だまりの家」に紗貴と由貴の姉弟が遊びに行ったり、施設の子たちが瑞智家に遊びに来たりと、行き来が盛んだった。
その際、そのままお風呂もみんなで入ったり、道場の裏にある大きな庭に、ビニールプールを作って、みんなで遊んで、その流れで瑞智家のお風呂にみんなで入って、お昼寝をして……また庭でスイカ割りを楽しんで……なんてことが、よくあった。
特に、正宗の悪友でもあり、児童養護施設「陽だまりの家」の創立者でもある桐谷 善郎が存命中は、日常の一コマだった。
―― のだが……
緋岐が「陽だまりの家」に預けられて間もなく、善郎は帰らぬ人となり、以前ほどの交流がなくなった。だから、緋岐自身は知らない時分の話なのだ。
さて、話を戻すとしよう。
「じゃ、じゃあ……俺は、そろそろ寝ようかな?」
ふふふとお花畑な紗貴に反して、立ち尽くした緋岐の周りはブリザートが吹き荒れている。
(カオスッ!!!)
こういう場合は、逃げるが勝ちだと言わんばかりに、将が立ち上がった。その瞬間……ガシッと何かが将の腰回りに巻き付いた。
「さっちゃん!!!!」
もはや、悲鳴である。
「もぉ。どこいくの。ここにいるのら。はい、あそぶ」
目が座っている。口を突き出して拗ねる姿は可愛いのだが、それよりも何よりも今は。
「ちょっと、さっちゃん離れて。これはまずいから、際どいからッ!!」
だが、離そうとすればするほど、グリグリと太もも辺りに頭を押し付けて来る。のに、緋岐が動いた。静かに屈む。そのまま、紗貴の肩をポンポンと叩けば、紗貴がゆっくり振り向いた。やっぱり目はトロンと座っていて……そんな紗貴に向かった両腕を広げて見せる。
「こっち、来て?」
微笑を浮かべてそういえば、フラフラと誘われるまま紗貴が抱き着いた。
「ひきくんら~」
喜色満面の笑みを浮かべて、おまけにスリッとすり寄るオマケつきだ。
「遊ぶのは、明日にして……もう休もうな?」
「ん~……ふふ、ひきくん、いーにおい……」
相変わらず、全く会話が成り立たないが、緋岐的にはご満悦らしい。「よいしょっ」と慣れた調子で抱え上げれば、いつもは抵抗する紗貴が今日は楽しそうにキャッキャと笑っている。
「これねぇ、ふぁいあー、まんず。きゃりいっていうのよ。しってるんだからぁ」
―― これで、英語もばっちりね
と、これまた意味不明なことを言いながらも、何処とやら嬉しそうで。
「じゃあ、もう、寝るわ……」
「うん、お休み……ほどほどにね?」
緋岐は、紗貴を担ぎ上げたまま2階に上がって行った。一人居間に残された将は、乾いた笑いを浮かべたのだった。
その数分後。電話を終えて戻って来た正宗に八つ当たりする将の姿があったとかなかったとか。
次の日の朝、記憶がさっぱり飛んでしまって一握りも残っていない紗貴は、なぜ、一糸まとわぬ状態で緋岐と一緒に寝ているのか、何でこんなに頭と身体のいたるところが痛いのか首を傾げた。そんな紗貴に、緋岐は一言。
「頼むから、絶対に、お酒は人前で飲まないで」
余りの必死さに、紗貴は素直に頷くしかなかったのだった。
END
【オマケ】
将 「ちょっと、正じぃ!!なんで間違うんだよ」
正宗「何を怒っとるか、小僧」
将 「正じぃが、グラス間違えて大変なことにッ……」
正宗「ほれ、つまみを分けてやろう」
将 「え、ナニコレ美味しい」
正宗「一緒に食うかの?」
将 「うん!あ、ちょっと待って……ジュース注いで来る」
※ 将は、正宗の晩酌のおこぼれもらって楽しく一緒に飲みました(正宗日本酒、将オレンジジュース)☆