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ささやきごと  作者: 梨藍
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悪夢の一週間

緋岐×紗貴(高一:初夏)

ある年の高校受験の倍率に、嵐が起こった。

なんと、実質倍率の平均が1.58倍という平々凡々な都立高校の倍率が、3.86倍に跳ね上がったのだ。


その受験希望者の出身校がとある中学校に集中している事も話題に上がったのだが、それよりも何より騒然とさせたのは、とある1人の中学生の進学先だった。

全国模試は常に1位、剣道でも全国大会を制覇という、まさに文武両道の生徒がいるのだが、その生徒の進学先が、噂の都立高校だというのだ。


それこそ、公立私立問わず、名門校が我先にと異例の好条件を並び連ねた特待生として勧誘するも、どこにもなびかなかったと実しやかに囁かれていた。


言わずもがな、件の都立高校も驚いていた。

平々凡々、強いていうなら、少し武道に力を入れている程度の進学校に、名門校がこぞって欲しがる垂涎ものの優秀な生徒が入学して来る。


一体どういう風の吹き回しだ。まさか、自分たちの知らないわが校の魅力が!?そんな淡い期待を胸に、本人に尋ねたところ、まさかの答えが返ってきた。


「だって、他の高校に行っても、紗貴がいないじゃないですか」


平然と、まるで常識を語るかのようになんのてらいもなく言い放たれた言葉に耳を疑った教師は悪くない。


いや、まさかそんな……と、改めて尋ねると。


「女子の制服が可愛かったからです。絶対、紗貴に似合う」


と、更に信じられない返答を真面目な顔でのたまった。


……という噂が、実は噂ではなく真実であると、身をもって知ることになろうとは、この時、誰も予想していなかった。



※※※※※※



その日、1年3組に衝撃が走った。


「趣味:勉強」と言って憚らない、校内きっての優等生……もとい、不動の全国一位の頭脳を持つ鴻儒 緋岐が、なんと午後からの授業を全て無断で欠席したのだ。


入学当初、ふざけた志望動機を知った教師陣は、どんな問題児なんだと身構えいたのだが、自身の成績に胡坐をかかず、常にまじめに授業に取り組む、なんとも授業のしがいのある素晴らしいその姿に、教師一同感動していた。


そんな、授業が大好き、趣味勉強という、名実ともに優等生な緋岐が休んだのだ。あの、学ぶことが楽しいと言って憚らない鴻儒 緋岐が……である。


―― そして……それこそが前触れだったのだ……


誰に予測出来たというのだろう。これこそが、異常事態の前触れであったと。

変化は、その次の日すぐに顕著な形で現れた。


(目が死んでる)

(死んだ魚みたいな目をしてる)

(そもそも、息してるか?)


クラスが密やかに騒めく。それほどまでに、生気が抜け落ちた緋岐がそこにいたのだ。


―― 更に……


子守唄と専ら評判の現代社会の授業では、いつもなら、大半のクラスメートがドリームランドに旅立つ中、目を輝かせてまじめに授業に取り組む緋岐がそこには居るはずなのに、まさかの逆転現象が起きた。

緋岐の意識が、どこかへ旅立っているではないか!そして、いつも寝ているクラスメートたちが、その緋岐の異常事態が気になってしまって起きて……という逆転現象が起こったのだ。


現代社会の先生も、この異様な光景に若干引きつつ、とりあえず生徒たちに訊く。


「ここまでで判らないことがあるか?」


すると、何とも美しい姿勢で、スッと美しく挙手する男子生徒が一人。


言わずもがな、緋岐である。その顔はまるで幽鬼の様に真っ青だ。当てたくないけど、尋ねたのは自分自身だ。


「こ、鴻儒……なんだ?」


クラスメートも、一体この授業の何が判らなかったのか……まじめに聞いていたら何も判らないことなどなかったはずだと固唾をのんで見守る。そんな中、音もなく緩慢な動きで、表情が抜け落ちたまま虚ろな瞳で立ち上がった緋岐は徐に口を開く。


「……先生、嫌われたらどうしたらいいですか?」

「……謝ったらいいんじゃないか?」


まさかの質問に現代社会の五図井(ごずい)先生は、怒ることも忘れて思わずそう返したのだった。


―― 優等生の様子がおかしい


という噂は、瞬く間に校内に広まった。その時、緋岐と同じ中学出身の生徒たちは、半ば事情を理解して、そして、この後起こるであろう喜劇……もとい、悲劇を予感して、「ああ」と慈愛に満ちた顔で頷いた。

他の生徒たちは、天変地異の前触れかと恐れおののいたのだが、これは序の口だと気付いたのは、次の時間のことだった。


—— カッ、カッ、カッ……


黒板に文字を書くチョークの音が、静かな教室に響く。英語の成瀬先生は内心ほっとしていた。


(鴻儒の様子が少しおかしいと聞いていたが、まあ……確かにちょっと目は怖いけど、普通じゃないか)


なんて、どうして思ってしまったのだろう。


「はい、ここまでが動名詞の構文の復習だ。じゃあ、例題を解いてもらおう。“It’s no good~ing”これは、「~しても無駄である」という構文だが、これを使う有名なことわざがある、と前の時間に説明したと思うが、そのことわざを応えられる人はいるか?」


その質問に、何とも美しい姿勢で、スッと美しく挙手する男子生徒が一人。


言わずもがな、緋岐である。その顔はまるで幽鬼の様に真っ青だ。なるほど、確かにこれは若干怖い……当てたくないけど、尋ねたのは自分自身だ。意を決して指名した。


「こ、鴻儒……」

「It is no use crying over spilt milk.……直訳すると、「こぼれたミルクを嘆いても仕方がない 」で、日本語の「覆水盆に返らず」「後悔先に立たず」にあたることわざです。……I was hat(俺は彼女に)ed by her(嫌われた。).」


そこまで一気に言うと、力尽きたように、椅子にストンと腰を下ろして項垂れる。

この時、教室の気持はひとつになった。


(一体、何があった!!?)


触らぬ神に祟りなし……ならぬ、触らぬ鴻儒に祟りなし……まさかの緋岐の様子に、クラスは騒然としながらも、その後の授業担当の教師たちは、既に緋岐の様子を伝え聞いていたのか、そっと目線を逸らしながら、当てるような愚かな真似はしなかった。


……だがしかし、それでは終わらなかった。次の日も、更にその次の日も、緋岐の様子はおかしいままで。


原因がはっきりしたのは、まさかの4日目のことだった。


2組の委員長が3組を尋ねてきた、その瞬間 ――……まるで石像の様に動かなかった生ける屍が反応した。驚いたのは違う中学校出身のクラスメートだ。同じ中学校出身のクラスメートは、「ああやっぱり」と遠い目で乾いた笑いを浮かべている。


そんなカオスな中、平然と入ってきたのが、2組委員長の瑞智 紗貴その人だ。


緋岐からの熱視線もなんのその、一度ギロッと鋭く睨むと、次の瞬間ツンッと目を逸らして3組委員長の名まえを呼ぶ。


「日比谷くん、これ」


(は!!!?)


とは、1年3組全員の心の叫びであろう。紗貴の態度に、机に突っ伏した緋岐。誰の目からどう見ても、これはもう立ち上がれないくらいのダメージを受けているというのに、その止めを刺しに来た紗貴は知らぬ存ぜぬを貫いたのだ。


(スナイパー!!!!!!)

(死刑執行人!!!)


だが、そんな3組の生徒たちの心の声は、無情かな……2組委員長には届かない。それどころか、更に追い討ちを仕掛けてきた。


「ばっかじゃないの?落ち込むくらいなら、最初っからしなけりゃいいのよ!!!話しただけで浮気なら、この世の中、浮気だらけじゃない!!!」


あろうことか、捨て台詞のように、そう言い放つと、ずんずんと怒りも露わにそのまま教室を後にしたのだ。


一体、これをどうしろと……思わずにはいられない。クラスメートが視線を向ける先には、机に突っ伏したまま真っ白に燃え尽きてしまった緋岐。


もう、何も言えない……掛ける言葉が見付からない。


救いのチャイムが鳴ったのは、その時だった。


―― 否……地獄への片道切符だった……


数学の矢張先生は、教室に入った瞬間、顔をひく付かせた。気まずそうに方々に視線を向ける生徒たち……の中。真っ白に燃え尽きた状態で机に突っ伏している、生ける屍とかした緋岐の姿が何とも末恐ろしい。いつもは活き活きと、それはもう楽しそうに授業を受ける緋岐が日に日にやつれていっているのは目の当たりにしていたのでもちろん知っている……だが、昨日の授業ではここまでひどくはなかったはずだ。変わり果てた姿を目の当たりにして思わず立ち止まってしまっても、誰も文句は言えまい。


更に、その授業は不幸が続いた。席順に問いを当てていたのだが……ついに……


「はい、じゃあ次は、こう……」


呼びかけて、矢張先生は固まった。このまま、当てていいわけがない……むしろ、机に突っ伏したままの緋岐が起きているのかも怪しい。まるで屍のようだ。


「こう、じゅ……は、無理しなくてもいいぞ?」


言った瞬間、のっそりと立ち上がったと思ったら、ゆっくりと前に出る。


「ひッ!!?」


誰かが悲鳴をあげた。髪が長い分、ちょと前のめり気味でユラユラと歩くさまは、末恐ろしい。

顔面偏差値が高い分、なおのことホラー感が増している。


だがしかし、緋岐の心中も穏やかではない。


(どう、しよう……でも、だって……)


判っている。紗貴は何も悪くないのだ。


―― カッ、カッ、カッ……


(紗貴は、自分に鈍感すぎるんだよ)


―― カッ、カッ、カッ……


紗貴の魅力は、外見よりも内面に由来する。もちろん、緋岐フィルターを通せば世界一……否、宇宙一可愛いくて美人なのは間違いなく紗貴だが、一般的な見解で言えば、紗貴の容姿は至って平凡だ。


決して不細工なわけではない。だがしかし、絶世の美女とはお世辞にも言い難い。だからこそ、現段階で「まだ自分にもチャンスが?」なんてお門違いな夢を見て、紗貴に余計なことを言う女子がいることも知っていた。


曰く、「あなたより、私の方が鴻儒くんにふさわしい」「鴻儒くんをどうやって誑かしたのか」などなど、身勝手な言い分をぶつける身の程知らずには、緋岐が直々に最後通牒を言い渡している。そう、紗貴ではなく、緋岐がだ。


『だって、本当のことだもの……もっと、しっかりしないとね』


何て、笑って言ってくる。何をしっかりするというのだ。これ以上魅力的になって、どうするのだ。それでなくても見えないライバルだらけだというのに。


―― カッ、カッ、カッ……


(理不尽だろッ……俺ばっかり、不安になって……)


だって、気付いてしまったのだ。紗貴に向けられるその熱に。

だけど、紗貴はさっぱり気付いてなくて。


―― カッ、カッ、カッ……


だから、指輪を送った。

嬉しそうに微笑んでくれて。

身体も預けてくれて……


(だけど、やっぱり……安心なんか出来るわけない)


だって、自分の張りぼてだらけのカッコよさと違うのだ。


―― カッ、カ……

(どうやったら、繋ぎとめられるのか……)


思ったら、目頭が熱くなってきて。


「……先生、全然わかりません」


そんな本音を吐露していた。


驚いたのは矢張先生とクラスメートだ。指名した問題以外も、全部解いてしまっているではないか。なのに、何が判らないというのか。


ぽろぽろ泣くほど、何を追い詰められているというのか。

とりあえず、矢張先生は緋岐の肩をぽんとひとつ叩いた。


「落ち着け、鴻儒。ちゃんと解けてるから」


この時から、段々とクラスメート達の緋岐に対する認識が変わっていった。


—— 否……


もしかしてという予感が、確信に変わっていた。


(鴻儒くんって)

(……カッコいいし、確かに頭もいいんだけど……)


更に、次の日事件が起きた。

体育の授業中、それは起きた。


—— ピチチチチ……


小枝に止まっていた小鳥が、緋岐と目が合った瞬間大空へと逃げるように飛び立った(ように緋岐には見えた)


それが、更に緋岐のマイナス思考を加速させる。


(……今飛び立って行った鳥みたいに、紗貴も離れて行くんだ)


そう思うと、また涙がこみあげて来た……のだが。


「鴻儒!危ないッ!!」


クラスメートの一人が叫んだ瞬間、緋岐は顔面に衝撃を受けて、そのまま意識を失った。そして、まことしやかに囁かれていた都市伝説のような与太話が、真実味を帯びてきた。


超進学校でも、何か抜きんでた特徴があるわけでもない、平々凡々な都立高校に、不動の全国一位が入学した理由……


『だって、他の高校に行っても、紗貴がいないじゃないですか』


(まさか、本気で……?)

(え、生死を左右されるほど!!?)


このままでは本気でまずいと行動を起こしたのは、クラスメートだ。

何度か、紗貴にコンタクトを取ろうとしたのだが。


『反省してるなら、なんで本人が来ないの?今回ばかりは、私からは絶対に折れないからって伝えて』


と、一刀両断だった。むしろ、ブリザードが吹き荒れていて、ちょっと怖かった。無論、緋岐には伝えていない。伝えられるわけがない……伝えようものなら、緋岐は消えてしまう。多分、きっと……


天真爛漫で、気配りのできる姉御肌……それが、緋岐の彼女である瑞智 紗貴の印象だ。さりげない気遣いも出来る紗貴は、実は男女問わずに人気が高いのだが、知らぬは本人のみという状況だ。


色恋沙汰に無頓着で、さばさばした性格が人気の高い理由の一役を担っているのだが。だからこその、このガチギレっぷりに、1年3組の面々はおののいた。そして、心の中で叫んだ。


(何したって言うんだ鴻儒ッ!!!)


日に日にやつれていく緋岐。

それは、古典の授業だった。


「えー……以上が、源氏物語の概要になるのですが、みなさん知ってのとおり、作者である紫式部の詠んだ歌が、百人一首の中にもあります。それが、「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」というものなのですが、この意訳が出来る人……え?」


古典の加納先生は、思わず声をあげて固まった。もう、この頃には緋岐の奇行 は学校中に知れ渡っており、「見ざる、聞かざる、当てざる」の三大原則が出来上がっているというのに、まさかの話題の張本人が、突っ伏したまま挙手したのだ。


これにはクラス中も内心悲鳴をあげる。


「ほ、……他に……判る人……」


そんな加納先生の訴えるような問いかけに応える人は他に誰もいなくて。


「では、鴻儒くん……」


戦々恐々と名を呼べば、のっそりと立ち上がった。俯き加減のまま、ぼそぼそと答える。


「せっかく久しぶりにめぐり逢えたのに、あなたなのかどうかも分からないほどの短い時間であっという間に帰ってしまわれました。まるで、雲隠れしてしまった夜中の月のようでしたね。」


そこまで一気に言ってから、深い、長い溜息を吐くと、今度はしっかり教室中に聞こえる様な声で言う。


「いいじゃないか、会えたんだろ?嫌われてないんだったら、俺よりいいじゃん……」


(言いたかったの、それかッ!!!!!!)


クラスの気持がひとつになった。最近ひとつになることが多いが、クラスの団結力が育ってきてるね☆なんて楽観できる状態ではない。


非常事態である。


耐え兼ねたクラスメート達が最終手段に出た。それが、緋岐の同居人で幼馴染で、紗貴の共通の友人である天海 将だった。


「もう限界よ!!」

「怖いよ、美形が幽鬼とか怖いよ貞子よりコワイ!!」

「どうにかしてくれ頼むから!!」


そんな涙ながらの1年3組の訴えに、将は苦笑を零してから判った……と、頷いた。


その次の日 ……

—— ガラッ……


教室のドアが開くと、そこには2組の委員長 瑞智 紗貴が立っていた。


(デジャブッ!!!!!!)


ゴクリ……と、皆が固唾を飲んで見守る中、紗貴は何かを探すようにきょろきょろ見まわしてから、大きく溜息を吐くと、迷いのない足取りで中に入ってくる。


「緋岐くん」


そして、名を呼ぶ。呼ばれても、突っ伏したままビクともしない緋岐に、再度溜息を吐いてから、腰に手を当てる。


「あのね、なんで私が怒ってるのか判ってる?」


だがしかし、その問いかけにはしっかりと頷いた。それを確認すると、ハーッと息を吐いてから苦笑を浮かべた。


「私も、言いすぎちゃった。ごめんね?」


その言葉に、のそっと顔をあげると、茫然としたままぽろぽろ泣き出す緋岐。そんな緋岐の頭をポンポンと撫でる紗貴は、苦笑を浮かべたまま言葉を続ける。


「これで、おあいこ……ね?」

「さ、きッ……ごめッ……」


言いながら、紗貴の腰回りに腕を回して引き寄せるとグリッと音が鳴る勢いで自分の頭を押し付ける。


「ちょっと、緋岐くん!?」


周りに人がいるというのに、余りに大胆な行動に出た緋岐を引き離そうとして、本気で泣いていることに気が付いた紗貴は「仕方ないなあ」と呟きながらポンポンと頭を撫でるのだった。


その姿を見て、スタンディングオベーションが起こったのは、無理もない話しだ。


「良かった!!良かったね、鴻儒くん!!」

「お前、瑞智がいないと冗談抜きでダメな子だったんだな!」

「いや、ちょっと残念くらいがちょうどいいよ!」


そんな3組の様子に慌てたのは、真っ赤に顔が染まった紗貴だ。


「ちょ、え!!?」


慌てる紗貴を他所に、3組の面々が次々に告げる。


「うちの子を、末永くよろしくお願いします」

「ちょっと駄目なところもあるけど、嫌いにならないであげて」

「嫌われたら多分、生きていけないから!!」


朝礼のチャイムが鳴って、1年3組の担任の教師が入ってきて、この騒動が収まるかと思いきや、先生まで「良かった、本当に良かった!」と、涙を浮かべて喜ぶ始末。


どうしていいのか判らないのは、紗貴一人という、カオスな空間が広がっており……


「先生、帰ります」


言うなり、完全復活を遂げたらしい緋岐は立ち上がる。涙の痕すら残っていない、完全復活である。そして、そのまま紗貴を抱えると歩き出した。


「は!?ちょっと、緋岐くん!!!??」


慌てたように、米俵のような抱え方をされた紗貴が緋岐の背中をポカポカ叩くが、何の意味もなさない。


「ちょっと、先生止めてください!!」


こうなってはッ!!と、紗貴が助けを求めたのは、担任の田崎先生だ。……が、ここ一週間の緋岐の寄行……もとい、落ち込みっぷりを知っている田崎先生は、スッと視線を逸らしただけで。

「緋岐くんの、馬鹿!!!何にも反省してないじゃないッ!!!!」


そんな叫びが聞こえてきたのが最後。教室が割れんばかりの拍手が響く中、紗貴を抱えたまま緋岐は教室から出て行ったのだった。


次の日、まるでここ一週間のことが夢であったのではないかと錯覚を起こすほど通常運転の緋岐の姿があったのだが、3組の委員長 瑞智 紗貴は体調不良の為欠席だったとか……


何があったのかは、本人たちのみぞ知る……である。



END

▼無防備なきみに恋をする▼(5題)

1.誰にでもスキだらけ

https://ncode.syosetu.com/n4437jq/31/

↑↑↑↑

この話のあとに……


1.誰にでもスキだらけ その後

https://novel18.syosetu.com/n6326js/3

↑↑↑↑

と来てからの、後日談です


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