Ep.10 無茶を通しに、
もう実際は詰みかけているのを皆理解している。
例え何度か押し返せても損害と疲労が溜まり何時か負けて終わるだろう。
一気に戦局を覆す一打をする必要がある。
「曙大尉……来てくれ」
基地内の電話で呼ぶ。
「どうされましたか?」
「……戦局をどう思う?」
顔が暗くなる。
「ほぼ負けですね。」
「そうだろうな……もし仮に時間が稼げる作戦があると言えば……受け入れてくれるか?」
「ろくな作戦じゃないですよね……」
「ああ……ほんとろくでもないさ……」
そういいながら作戦を説明する。
「ここからこの地図によると帝都まで3500km。それをぶち抜いて皇帝と政府機関を破壊する。政治的空白の間は時間が稼げるはずだ。問題は……」
「航続距離ですよね。払暁は全く足りませんし天風でも無理です。墜星なら片道は行けますが……」
「それでお前たちを呼んだんだ。墜星に大型増槽を装備かつ機内タンクを増設してくれ。払暁は……仕方ない……試作18気筒発動機の中で馬力は低いが燃費が払暁搭載型の倍あったやつに変えてくれ。それにタンクの増設と増槽を4から6装備できるようにしてくれ。なんとか7000kmまでいけるか?」
「不可能ではないですが性能低下が著しいです。馬力が大きく落ちてその上重量増加なので……百式戦11型改でも作った方が良いでしょう。それでも厳しいですがね。それと墜星ではなく二式重爆を使用した方がよろしいかと。」
「そうか……有難う。」
「では私はこれで。」
◇
11型を素体に改良された14気筒発動機に換装し、燃料タンクを追加かつ増槽を4つ装備できるようにした。
もとから4500km飛べた上にこの改装で7200kmは行けるはずだ。
当然防弾なんてないままだし、一応馬力は上昇したが、増槽装備時は流石に格闘戦性能も落ちるが負けはしないだろう。
「忌々しいな……」
祖国でもこの機体が最後まで戦い続けた……
結局間に合わなかった……
「お前も……因果なものだな……」
最期を超えて戦い続ける旧き翼か……
ふと思い立ち再設計を施す。
過去の俺には成しえれなかった技術を今は知っている。
|過去の世界に無かった業《魔法》がある。
魔法の強度上昇を考慮し構造材を減らす。
限界まで切り詰める。
◇
「出来た……!」
試験飛行を行い性能を把握する。
◇
測定結果が出た。
◇
百式戦73型
最高速 602km (+37km)
航続距離(計算値) 7120km(+2620km)
備考:単純旋回性能は増槽装備時はどの増槽を装備した百式戦系列にも劣るが、増槽を装備せず、燃料が減少した場合は11型、42型にも劣らない。
「あとはこれを何機量産するかだが……総員分用意するか?」
◇
翌日
「戦闘機の飛行士全員招集か……何があるんだ?」
「こちらから攻撃を仕掛けたりしてw」
「全員注目!これより問うことがある。」
ざわめく。
「半月後こちらより敵首都へ奇襲をかける。作戦目標は敵皇帝及び政府機関。距離は片道3500kmだ。」
さらにざわめく。
「緋空少佐殿、それは百式戦での特攻作戦ですか?」
下士官の一人が問う。
「その疑問も当然だ。一応航続距離7100kmの百式戦の新型を使用する予定だ。実質空戦可能時間はほぼ無い。が、行って帰ってはこれる。これは志願制だ。強制はしない。」
「なぜ、する必要があるのですか?」
「理由か……次以降の大規模攻勢を受ければ反撃の機会すらもうないだろう。これがきっと最後のチャンスだ。」
笑い声が上がる。
「ははははっ!常識外の距離から攻撃を仕掛けることになるのにこれがチャンスかっ!いいでしょう。私は行きます。」
「俺も行かせてください!」
「俺も行きます!」
「解った。総員か……皆、有難う……」
◇
二式重爆の設計図を出し燃料タンクの増設とエンジンの換装を行う。
爆弾槽を多少削り航続距離7800kmまでは出るようになった。
「これが間に合うかなんだよなあ……」
現在工場は百式戦73型の生産にてんやわんやしていてもう一機種のラインを追加できるかは怪しい。
◇
「ほう、俺に黙って作戦を立てているとはな。」
王子様が来た。
「何か問題でも?」
「いや……ただ見た感じ間に合うのか?」
「正直怪しいな……」
「解った、協力しよう。【王の意志】。」
「これは?」
「王家だけが使える魔法の一つだ。国民を大きく強化する……反動は来るがな……。ちょっとばかし工場まで行ってくる。」
「すまない。」
◇
「我の専用機はどうなったのじゃ!」
スカイリアさんがやってきた。
「航続距離が短いから今回の作戦には不適切だ。」
「解ったのじゃ……ただ!我も連れてけ!」
「しょうがないなあ……良いだろう。君の活躍に期待する。」
「了解じゃ!」
◇
全員が今できることをやっている。
無謀だろうと決めてみせる。
今度は片道じゃないからな……




