現実世界恋愛「今語れる(でも、ないけど)、2人の出会い」
あえて再び語ろう。
私たちの馴れ初めは恋愛と呼ばれるものではないかもしれない。
私こと旦那ちゃんは、齢30を過ぎた頃に見た、独居老人の自分が一人で孤独に死んでゆく夢を見て、結婚というものを強く意識するようになった。
それまで恋愛や結婚なんぞ、機会はすぐにめぐって来るさとタカを食っていた、だが現実はどうだ?全くチャンスは訪れないし、年を重ねていくだけだった。
もはや自分からではどうにもならない、そう考えた旦那ちゃんは、市町村が運営する安っすい結婚相談所に席を置いたのである。
とりあえず、婚活しているテイをしておけば、親もそれなりに安心するだろうし、なにより自分がやっている感はある・・・そう、ここまでやったんだから、出会いなんてすぐさ・・・そう思った自分が甘かった。
出会いを求めて、嫁候補のファイルめくり、希望をだしてはノー返事、出会えてもドタキャン、その日にお断り、ならばと婚活パーティに参加すれば、まさに結婚前提面接で、気疲れをしてしまう。
そう恋愛というハードルを飛び越え、結婚するというお題目は、気軽とはいけないのも現状ある。
そりゃあ、誰だって一応生涯の伴侶を探すとなれば身構えざるを得ない。
そんなんで、旦那ちゃんの婚活は数年が経過してしまう。
40を前にしたある日、今日も元気に婚活だと、旦那ちゃんが相談所に来ると、スタッフのおっちゃんが会ってもいい人がいるぞという話をしてきた。
年上だけどとてもいい人だということで、旦那ちゃんは会って見る事にした。
おっちゃんも付添うという事で、まあ、見合いみたいなもんだったんだろうか。
大牟田のホテルで会食となった。
珍しく、旦那ちゃんはスーツを着て、その方と出会う。
印象はお互いに悪くない・・・これはうまくいくかな・・・なんて、思ったが2回目の食事のあと、メールの返事が返ってこず、これまでの経験で、もはや先の展開が読めて仕方のない旦那ちゃんは、自分の方から断りのメールを入れた。
相手の方もホッとしたのか、すぐに「分かりました」との返事。
もはや結婚なんて・・・いつになる事やら・・・いや出来ないんじゃねと・・・それでも相談所へと足が赴く自分はマゾなんじゃねと旦那ちゃんは思いつつ、ルーティーンと化した女性のファイルを眺めていた。
すると、おっちゃんがやって来た。
「会ってみるか?会ってみたいって人おるけど」
「また見合い風?」
「んにゃ、いつもの感じ一対一で」
「ん~」
「無理には言わんけど」
珍しく控えめなおっちゃんだった、前回の事が気になっているのだろうか。
だけど、旦那ちゃんには躓いている暇などない。
「いいですよ。会います」
「そうか、じゃ近いうちにここで」
「分かりました」
旦那ちゃんの40歳の誕生日、近所のパチ屋でスロットを嗜んでいた。
いい感じに連チャンしている。
すると、スマホが鳴った。
旦那ちゃんは、外にでて電話をとった。
「山本君、今から来れるか」
「へ、なんで?」
と、旦那ちゃんは間の抜けた声で言う。
「あのさ・・・今日だったんよ」
「なにが」
「顔合わせ」
「へ?」
旦那ちゃんにとって、寝耳に水の話だ。
だが、しかし、彼の経験則は焦ったって仕方がない・・・どうせ、どうせだと心が伝える。
「ちょっと遅れます」
「おう、なるだけ早く来てくれ」
どうせ駄目じゃん。だったら、この連チャンきっちり取りきって行くのが筋ってモンだ。
旦那ちゃんは高速消化でレバーを叩き、きっちり連チャンを終えて、相談所へ向かった。
「遅くなりました」
息を切らせて駆けつける旦那ちゃんに、バツの悪そうな顔のおっちゃん。
その隣にちょこんと座っているのが嫁ちゃんだった。
「すいません、遅くなりました」
「いいえ、無理言って用事はお仕事か何かですか?」
「いやあ」
とバツの悪そうな顔を浮かべる旦那ちゃんだった。
思えばこれが旦那ちゃんと嫁ちゃんのファーストコンタクトであった。
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ふたりの出会いを。