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第90話 灼熱の活火山地帯

 跳びあがって、振り下ろされた拳を避ける。

 溶岩に包まれた腕に殴られれば、ダメージのみならず火傷のバッドステータスを受けるのは必至。


 だが、俺の側から攻撃することに問題はない。

 灼熱の大地へと着地してすぐ、一転攻勢。水でコーティングされた右前脚で、薙ぎ払い。


 紫電も同時に発動しているため、敵に大きなダメージを与えることに成功した。

 僅かだが奴の体が揺れる。


「竜乃ちゃん、後ろのが詠唱してる!」


『させないわよ!』


 火の鳥とのデッドレースを繰り広げていた竜乃は望月ちゃんの言葉に、奴らの一番後ろの精霊が魔法の準備をしていることに気づく。

 瞬発的に高火力な遠距離が出来るパーティ唯一の頼れる中衛は赤と青の混じり合った火を放った。


 俺も負けてはいられない。レベルが上昇したこの中層では、竜乃のブレスでも容易に撃破というわけにはいかない。

 毎回の戦いで敵の数を減らすのは、俺の役目だ。


『硬いだけの敵が、俺を止めるな!』


 正面に壁のように並ぶ4体の溶岩型精霊に対して咆哮。

 紫電を織り交ぜることで威力を増すことに成功したために、動きを止めるのみならずそれなりのダメージを与える。


 そのまま左の前脚の爪で先ほど斬り裂いた敵をもう一度斬り裂いて倒し、勢いに任せて二匹目を右前脚で力の限り斬り裂く。

 尻尾で敵を強く打ち付けてやや遠くに弾いたところで、水の魔法で剣を創造して突き刺した。


 止まるつもりはなく、すぐに振り返り、咆哮での痺れが治り始めていた一体に突撃。

 飛び掛かり、溶岩目がけて噛みついた。


 見かけこそマグマだが、しっかりと実態がある敵は俺の爪と牙の攻撃にじわじわとHPを減らされていく。


『■■■■■■■―!!』


 最後の一体が咆哮から解放され、火の玉を三つ放ってくる。

 普段の俺なら余裕をもって避けれる攻撃。けれど今回は敵から顎を離さなかった。


 一発受け、ややよろける。けれど決して牙は離さず、二発受けたところで噛みついていた敵のHPを0になったのを確認した。

 こうなれば三発目を受けてやる義理はないので、その場からすぐに飛び退く。


 咆哮一発で4体の内3体を持っていけるだけの力の差が、俺とこの中層のエリアモンスターとの間にはある。

 チラリと目線を向けてみれば、竜乃も背後にいる2体の精霊の内1体を倒し、もう一体も追い詰めているところだ。


 最後に残る一体の方を向いて、俺は大地を蹴った。




 ×××




 敵をすべて倒した俺達は念のために望月ちゃんによる回復を受ける。

 その過程の中で、体中を見回して水の加護が異常をきたしている部分はないかを確認していた。


 俺達が今居るのは東京のTier1ダンジョン中層、火の精霊地帯、活火山だ。

 灼熱の大地で安全に探索するには、水の加護による保護が必須。


 その情報を事前に神宮さんから得ていたために、俺と望月ちゃんは二人でこの魔法の訓練をして、見事習得したのである。

 つまりこの水の加護の魔法は俺と望月ちゃんの努力の結晶というわけだ。エモい。


 え? 俺達の魔法習得にかかった時間? 一時間くらいですかね。


 まあとにかく、この魔法のお陰でマグマの流れる活火山の内部でも無事に活動が出来ているという事だ。


“虎太郎の旦那お疲れー”

“やっぱ攻撃が出来るって大事やな。活き活きしてたわ”

“物理でボッコボコにしていく旦那に勝てる奴いないっす”

“中層のフロアモンスター相手なら余裕をもって倒せるって、マジで関東で一番強いのでは?”

“このまま最前線押し進めちゃって下せえ”

“配信をするたびに伝説に近づいていくモンスターテイマーはモッチーだけ”

“この配信からしか得られない栄養がある”

“キミー:道中なら特に問題はなさそうだね”

“ミヤ:このままなら本当に歴代最速で1つ目クリアしそうですね”

“キミーパイセンとミヤさんもよう見とる”

“二人の仕事だからな”

“推しごとってこと?”

“ファン活動を仕事に出来た女達って名前で特集組めそうで草”


 コメント欄もいつも通り盛り上がっている。

 JDC大会以降、熱は冷めることはなく、むしろ中層に挑戦し始めてからは視聴者数も増えている一方だ。


 毎回記録を色々更新しているみたいで、文字通り日本中が俺達に注目していると言っても過言ではない注目度だ。

 コメント欄で表に出てくるのは優さんと神宮さんだが、神宮さんの話では政府の職員の何人かも配信の管理に当たって頂いているらしい。


“ミヤ:望月さん、そろそろ中ボスの場所に着くはずです。まだ今日は探索を始めてからあまり時間は経っていないので、このまま攻略しちゃっても構いません”


 中層は広大だが、その分機器の数も多い。そのためある程度探索を進めれば、その地点から探索を再開することが可能だった。

 この活火山地帯も同じで、この火山に到達するまでにいくつかの火山を越えたのだが、その中にも機器が多く設置されていて、探索者を助けてくれている。


 まぁ、そうでもしないと一つの地帯が数日かけて踏破する規模のこの中層を探索できないのだが。


“ミヤ:中ボスは強敵ではありますが、望月さん達なら勝てる筈です。頑張ってください!”

“ミヤさんの仕事モード”

“早く正体を現せ”

“さっき戦闘中にモッチー呼びしてたの知ってるんやぞ”

“いまさら繕っても遅い”


 探索時代は水の地帯を攻略したので、火の地帯に来たのは初めてだ。

 ここの中ボスと戦ったこともないが、1つ目の施設ならば問題はないだろう。


“ミヤ:モッチー頑張れー!”

“それでいい”

“やればできるじゃねえか”

“よ う こ そ”

“こっちは良いだろ? ん?”


 ……神宮さん受け入れられすぎじゃないですかね?

 俺たち以上にコメント欄で弄られる神宮さんを見て何とも言えない気持ちになりながら、奥へと進む。


 初めて会ったときは凛々しい感じで仕事が出来るキャリアウーマンって感じだったのだが、最近は印象が変わりつつある。


「あれ?」


 ふと、望月ちゃんが声を上げて配信のドローンを下に向けた。

 他の探索者に出会ったときの行動だが、まさかこんな場所に?


 そう思って正面を向くと、四人の探索者パーティがこちらへと歩てきていた。

 中ボス部屋からこちらへ来るという事は、倒したという事だろうか。


 彼らの姿は少しずつ大きくなる。

 目視できるのは一人の男性と三人の女性。その姿には流石に見覚えがある。


 男性は、日本一とも言われるモンスターテイマー、武田明たけだあきら

 そしてその妻のヒーラー兼サポーター、武田和香たけだのどか


 ギャルっぽい印象の金髪の少女が、闘者の伊藤優梨愛いとうゆりあ

 彼らは関東にすい星のごとく出現した上位パーティ、「天元の華」だ。


 そして彼らの先頭を歩く、一人の少女。

 黒髪を揺らす、整った顔立ちに凛々しい印象を出しながらも、比較的雰囲気が柔らかいのが「天元の華」のエースの魔法剣士。


 俺達のバックアップ君島優さんの姉、君島愛花だ。


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