第69話 第8回 JDC大会の結果
第8回 JDC大会 ~探索者ランキング戦~【公式】
米山「さあここで柱に激突したスカイホースに竜乃ちゃんのブレスが突き刺さる!!」
神宮「素晴らしい一撃です。けれど惜しい! 僅かに狙いがズレてしまっています!」
米山「おぉっと、ここでスカイホースが上を向いた! 危ない! いや……これは?」
神宮「米山さん、ここからが凄いですよ」
米山「おぉ? ……おぉー!! 凄い! 凄い一撃だ! 天から降った雷撃で、スカイホースが一発ノックアウトぉぉおお!!!」
米山「いやぁー、とんでもないモノを見ましたね!! 神宮さん、あれは魔法ですか?」
神宮「はい。あれは雷の上級魔法、トールハンマーですね。上位探索者なら使える人は多いですが、驚くべきはその威力です。今回見たトールハンマーは普通のトールハンマーに比べて範囲も威力も桁違いです」
米山「今の魔法を放ったのは虎太郎君なのですが、なんかこう、これまでの魔法とは少し違うと言いますか……もちろんこれまでの魔法もすごかったのですが、それを越える一撃な気がしましたね!」
神宮「過去のアーカイブなどを見てみると、虎太郎君は雷の魔法が得意なようですね。物理攻撃もレベルが高く、一匹で上位探索者クラスの実力はあると言われています」
米山「へぇー、それは凄い! あれですよね。最初に話題になっている望月さんの動画を再生して神宮さんに解説してもらったときは、テイムモンスターの竜乃ちゃんと虎太郎君がテイマーである望月さんよりもかなり前面に出てきていまして、どういうことなのかと思ったのですが……これを見ちゃうともう竜乃ちゃんと虎太郎君を声に出したくなると言いますか!」
神宮「もちろん二匹が力を発揮できるのは望月さんのお陰ですが、戦闘の中心に居るのは竜乃ちゃんと虎太郎君ですからね。……お恥ずかしながら、期待の新人という事で最初は職務として動画を全て確認したのですが、途中からは盛り上がってしまいました……」
米山「いやー、それも無理はないでしょう! 凄すぎて私も今、心臓がバクバクしていますからね。しかも仲間である竜乃ちゃんがピンチの時の虎太郎君の一撃、痺れますねー! こんな激闘が他にもあるんですか!?」
神宮「望月さんの配信はアーカイブで見ることが出来ますので、この動画はもちろん、他の敵と戦っているところも見れますよ」
米山「これは要チェック、ですね!」
神宮「なんというか、どの探索者も要チェック度が高すぎますね」
米山「ランク付けたら全員Sランクですよ」
神宮「米山さんは、しばらくは睡眠時間を削っての生活ですか?」
米山「ははは……そうなってしまいそうですね」
米山「さて、以上で本日紹介する全探索者の動画が終了しました。どの動画も見どころ満載で、手に汗握る戦いが多かったことでしょう。配信はここで終了となるのですが、現時点でのランキングを出すことはできるでしょうか? ………… 」
神宮「大丈夫ですかね? なにかトラブルでしょうか?」
米山「すみません、少し問題が……あ、表示できますか? 大丈夫。えー、準備が整ったようです。現時点でのJDCランキングはこのようになっております!」
神宮「そうは言っても、前回の確認から3時間程度しか経ってませんし変わったところなんて……えぇぇぇぇええええええ!!」
米山「こ、これは!? 1位が……1位が望月さんになっているー!!」
神宮「何が起こったのでしょうか!?」
米山「えー、たった今情報が入ってきました! 望月さんがTier2下層ダンジョンボスを倒したとのことです!」
神宮「えー、これ越えるんですね。越えないのかなと思っていたので驚きました」
米山「あー、でもこれ……ポイント差が……」
神宮「2位になった氷堂さんとの差は本当に僅かですね。昨日まで稼いだポイントを見るに、抜かれちゃうでしょう」
米山「かなり接戦ですからね。あと3時間しかありませんが、これはおそらく……」
神宮「そうですね……ですが、仮にこの後に抜かされてしまったとしても、短い間でも1位になったという事は私たち全員の頭の中に残っています。望月さんが奮闘したという事、そして彼女達がこれから先にも注目されるのは疑いようもないことです」
米山「そうですね。ここまで来たら1位で終わって欲しいという気持ちもありますが……えー、このTier2下層ボスの戦いはしばらく後に望月さんのアーカイブで見ることが出来るようになるそうです。これは見たいですね」
神宮「私も帰ったら必ず確認します!」
米山「さあ、それではそろそろお別れの時間になります。第8回JDC大会、討伐者ランキング戦……暫定ではありますが、1位は望月さんとなりました。おめでとうございます!」
神宮「おめでとうございます!」
米山「第9回はあるのでしょうか? いや、この盛り上がりを見るにあるでしょう。また次回の大会でお会いしましょう!」
神宮「さようなら!」
米山「さようならー!」
第8回 JDC大会 ~探索者ランキング戦~ 結果
探索者:望月理奈 2位(最高1位)
少し時を遡って、望月達がクイーンを倒す少し前。
京都のTier1ダンジョン深層にて一人の女性が端末を食い入るように見つめていた。
辺りにはモンスターの姿はなく、危険はない。
だがダンジョンの中で配信を集中して見れるソロの探索者など、彼女くらいのものだろう。
日本探索者ランキング第1位、氷堂心愛。
全探索者の頂点に立つ女性はゆっくりと顔を端末の液晶に近づけていき、そして。
「……っ~~~~!!!!」
普段の彼女からは考えられないほどの勢いでガッツポーズを繰り返した。
液晶の中では、神々しい光を放つ竜乃がまさにクイーンを倒したところである。
しばらく押さえられない喜びを体で表現するために辺りを走り回った氷堂は、ほぅと息を吐いて紅潮した様子で液晶にもう一度視線を落とした。
彼女が心配していたもう一体である虎太郎も、命に別状は無さそうで安心したようだ。
小さな胸の前で端末を大事そうに抱き、目を瞑って悶える姿は、彼女を普段から知る人からすれば目を見開くだろう。
気持ちを落ち着かせ、再び液晶に視線を落とすと、望月が1位になったという事を嬉しそうに叫んでいた。
それを聞いて氷堂はニマニマしている。
しかし自分がこれまで1位だったことを思い出したのか、急に真顔になる。
その後に剣を手にダンジョン探索に戻ろうとして、でもその足を止めて、また足を進めようとして、戻してを繰り返している。
推しを勝たせるために探索を辞めるべきか、それとも本気で推しと向き合うために探索すべきか。
色々なことを考えて百面相していた氷堂は、けれど望月達は手を抜くことなど望まないだろうという結論に至り、駆けだした。
彼女の名は、氷堂心愛。
日本探索者ランキング1位にして、今回のJDCランキングでも1位を獲得した者。
望月達がクイーンに挑むかどうかを悩んでいた時に、「よく言った」というコメントを打った人。
そして虎太郎が配信に映った日から、ずっと配信を見ている最古参の視聴者、いや強火のファンである。
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【あとがき】
JDCのお話はこれにて完結です。
この後は4話ほど小話を挟みます。これからもよろしくお願いします。
紗沙
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これにてJDCランキング編は終了となります!
ですが、虎太郎達のダンジョン挑戦はまだ続きます。この後はTier1ダンジョンへ、お楽しみに!
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