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ダマスカヤ峠(1)


 馬車に乗って少し経ち、落ち着いてきたところで王太子が声を掛けた。


「アッシュマイヤー嬢、申し訳ないが私達の髪色を変えてもらえるか?」


 この世界の平民は茶色の髪がほとんどだ。聖女のようにピンクだったりブルーだったりもいなくは無いが非常に目立つ。オレの真っ黒な髪も、王太子の金髪もそれ以上に目立つ。


 オレ達は今、商家の若夫婦とメイドと言った服装をしているが、皆、無駄に整った容姿の上にこの髪色では目立つことこの上ないだろう。残念ながら瞳の色まで変える事は出来ないが、髪色が違うだけでも印象は大分違うだろう。


 〝救国の四星〟に選ばれたオレ達はこの一年間、一切の公務から退き来年の〝救国500年大祭〟の準備に従事している事になっている。

 一年経ってもオレ達が帰ってこなかったらどうするんだろう?

……オレ達が帰ってこなかったら魔王が攻めてくるんだからそれどころじゃないか。


 

 オレは頷いて、呪文を唱えた。攻撃魔法のようなモノは詠唱無しでも出来るが、このような繊細な魔術は呪文を唱えたほうがうまくいく。


 王太子はカフェ・オ・レのような明るめのブラウン、サーラはもう少し赤みががったキャラメルのようなブラウン、オレは濃いコーヒーのような暗めのブラウンだ。団長の髪色は元々茶色なので、そのままでいいだろう。


「それから、名前なんだけど……私のことはアルと呼んでくれないかな?敬語も無しだ」


「承りましたわ、殿下」


「アル!……敬語!」


「わかったわ……アル。 私のことはリアと。」


「了解!サーラもね」


「私はメイドなので、アル様、リア様でいいですよね?」


「魔大陸に渡ったら様無しでお願いね」


 サーラはピキッと固まったがしぶしぶ頷いてくれた。


 団長に休憩時間に話すと


「じゃあ、俺の事はクリフで」


 と、笑って言った。





 オレ達は概ね和やかに旅を続け、2日後の昼過ぎにはダマスカヤ峠の麓に着いた。第三騎士団の駐屯地に向かう。麓の小さな町、ポタラの役場に司令部をおき、周辺に駐屯しているそうだ。


 役場に着くと


「あれっ?団長?」


 と若手の騎士が疑問の声をあげたが、クリフが片手を挙げるとそれ以上質問してこなかった。


 司令部にしている一室に案内してもらうと、簡素な室内にカルルック第二騎士団長、メルローク副団長、

中年のお役人風のおっさん、いかつい猟師風の男がいた。


 皆の前の机には大きな地図が広げられ、何箇所か×印が書き込まれている。


「やあ、スティングレイ。

 こちらは行政官のレンブロン氏。今回の盗賊団に関する現地の責任者だ。そして彼はこの地域の猟師たちをまとめている猟師のザックだ」


 クリフが両名と握手を交わしオレ達の方を向いた。


 二人ともいぶかしげな顔をしている。そりゃそうだろう。盗賊団を討伐しようっていう司令部に商人らしき者たちを引き連れてやってきて、その内二人は女性だ。クリフ自体も騎士服でなく冒険者が着る様なラフな服装だ。


「第三騎士団長のクリフォード・スティングレイです。

休暇中なのでこんな服装で失礼する。彼らはある商家の若夫婦でカストゥールまで送っていく途中なのだが、諸事情により彼らの入室と作戦への参加を許可していただきたい」


「俺は……偉い団長さん方が許可したっつうんならかまわねーが……」


 ザックが言うと、レンブロン氏もこっくりと頷く。


「ありがとう。 

 じゃあカルルック、早速だが状況説明を頼む」


 

 王都の東南に連なるミネルバ山脈。その中で比較的標高の低いダマスカヤ峠は交通の要所だ。王都からこの峠を越え、東に下る道は肥沃な農地を経ていくつか地方都市を通り、港町カストゥールに至る。峠から南に下る道は、やはりいくつかの地方都市を経て王国第二の都市、ムートンまで伸びている。(ムートンはアッシュマイヤー公爵領オレんとこだ)

 他に街道が無いわけではないが少々遠回りになる。よってこの峠道を利用するものは多い。


「二ヶ月ほど前、立て続けに三件、商会の馬車が盗賊に襲われた。商品は全て奪われ、乗っていた者は護衛も含め皆殺された。しかし三件目の襲撃の時、唯一生存者がいた。商会の若旦那が幼い息子にねだられ、王都見物をさせようと同乗させていたんだ。とっさに子供を座席の下に押し込み隠したおかげで子供は助かった。

 子供の証言。それも目の前で親を殺されている。信憑性は薄く、とりとめのないものも多かったが、峠の北側の山中にアジトがあること、そして一味の首領らしき男は青みががった肌で異形らしいことが判った」


「俺ら、最初はその坊主の証言をまったく信じてなかったんでさ」


 ザックが引き継ぐ。


「北側にアジトがあるってえ話はともかく、首領の風体は、親を目の前で殺されて盗賊が鬼のように恐ろしく見えちまったんだろうと」


「ともあれ、私共はその子供の証言を頼りに猟師や冒険者達でチームを組み、山狩りを行なったのです」


 レンブロン氏も説明に加わった。


「商会の馬車が襲われたのは、三件とも東街道だったんで、その北側を中心に山狩りしたんだけんども……」


「王都から峠に至る道、つまりこのポタラから峠まで上る道は中街道、峠から東に下る道は東街道、南に下る道は南街道、西に下る道は西街道と呼ばれております」


 レンブロン氏が注釈を加えてくれる。


「つまりこの辺りを中心に山狩りを行なったと」


 クリフが地図の東街道の北側部分を指で円を描いた。


「この辺りは崖が多いですね」


「ああ。だからアジトに出来るような場所はそんなに多くねえ。すぐ見つかると思ったんだが……」


「人が踏み荒らしたような痕跡は多数見つかったのですが……。

盗賊団の人数は少なくとも20人以上です。それだけの人数が隠れ潜む場所ですから山の使われていない猟師小屋や炭焼き小屋を利用していると思われたのですが……」


「その後、半月ほどはパッタリ襲撃が止んだそうだ。山狩りで盗賊も警戒したんだろうと安心しかけたところ、今度は南街道で二件襲撃事件が起きた。

 一件は商人の馬車で護衛を沢山雇っていたので被害は出たが何とか撃退した。このときは多数のものが異形の者の姿を目撃している。盗賊団の首領のようだったとの証言もある。  

 もう一件は貴族の馬車でヤーンセン男爵の令嬢が友人の子爵家令嬢の領地に遊びに行く途中を襲われたらしい。護衛や御者は殺されていた。侍女と令嬢は見つかっていない」


 カルルック団長が痛ましげな表情で続けた。


 クリフも痛ましげに


「その後に第三騎士団(ウチ)に応援要請が入った訳ですね」


 レンブロン氏が頷く。


「ここ最近の動向は?」


「我々が現地に入ってからは二件。街道を哨戒していたチームが駆けつけ無事だ。逃げる盗賊たちを追ってアジトを突き止めようとしたが失敗した。何人かは捕縛できたがだんまりだ。特に首領のことを聞き出そうとすると怯えて話にならん。

 山狩りも範囲を広げて行なったが成果は無かった」


 クリフがこっそりカルルック団長に囁いた。


「サンテは?」


「見張りをつけて騎士団のテントの一つに待機させている。もし首領と思しき魔族を捕らえたら面通しさせたいからな」


 オレ達は部屋の隅で静かに話を聞いていた。サーラは少し青い顔をしている。


 オレはアニメの内容を必死に思い出そうとしていた。ダマスカヤ峠のエピソードは薄ぼんやりと記憶がある。盗賊のアジトのシーンだけでも思い出せないかと頭をひねっていた。


 バタバタと廊下を駆けてくる足音が聞こえ、若い騎士が飛び込んできた。


「盗賊が現れました!!」 



 






 



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