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勇者選抜


 〝勇者〟は誰が選ぶのか?


 聖女のように特別な聖なる力、治癒や加護といった力がある訳ではない。

 勇者とは聖剣ヴァルザードを扱える者である。聖剣ヴァルザードの力でしか魔王に止めを刺すことが出来ないのだ。


 聖剣ヴァルザードは通常は王城の宝物庫の奥深くに安置されている。この聖剣は勇者にしか鞘から抜くことが出来ない。つまり、鞘から剣を引き抜くことが出来た者が勇者である。


 勇者は聖剣が選ぶのだ。


 「勇者選定の儀を行なわなければなりませぬな」


 嬉しそうにキックスマー侯爵が言う。


「では、民衆に魔王が復活したと公表するのですか?」


「それはまずいのではないか?パニックになる者も多くいるだろう」


「今現在、魔族が襲撃してきている訳ではない。徒に民の動揺を誘うわけにはいかぬだろう」


「しかし、勇者無しで魔王を倒すのは無理だろう」


「勇者が決まり〝救国の四星〟が選出されたとなれば、もし、魔王の手の者がわが国に潜んでいた場合、警戒されてしまうのではないか?」


「そ……それでは魔王の侵攻が早まってしまうことも……それは避けねばならん!」


「ですが、勇者無しでは魔王を倒すことも難しいのも事実。早く勇者を見つけなければ!」


「勇者はどこにいるか判らないのですぞ?

 この王都で見つかれば良いが、見つからなければ国中探さなければならん。一刻も早く国中に告知して勇者選定の儀を行なうべきだ!」


 議論が尽きぬ中、王太子がスッと立ち上がった。


 国王に向かって一つ頷く。


「勇者選定の儀は行なう。――民衆には魔王のことは知らせぬ。これについては私に任せてはくれぬか?」


 知略に富み、政務に関しての評価も高い。武力にも優れ、魔力も相当高いという。人柄も温厚。常に笑顔で優しいと美貌の王太子は貴族、民衆を問わず、絶大な人気があった。


 殿下の言うことなら。と皆、即座に了承。


(うぇっ……さすがヒーロー。なんでも出来て人望も厚いってか?でもアニメでは一見人当たりが良さそうで結構腹黒だったような?まぁ腹黒じゃなきゃ王太子なんてやってられないか……

〝勇者〟ってコイツだし……選定の儀なんてやるだけ無駄だけど言うわけにもいかないしなぁ……)


 オレの思惑をよそに、その日の会議は終了となった。


 もちろん、ここで話した内容は家族にも漏らしてはならない。皆、誓約の印を結んで部屋を後にした。




 次の日、朝食後、部屋で寛いでいるところにフィリスが訪ねてきた。


「お姉さま聞きまして?勇者選定の儀が行なわれるんですって!」


「え?なんで?」(昨日の今日かよ!仕事はえーな!)


「なんでも来年が〝救国の四星〟がこの国を救ってから500年目にあたるんですって!

 それで、〝救国500年大祭〟って言う大規模なお祭が行なわれるらしいですわ。それに先立って当代の〝救国の四星〟を選定するのですって!

 今日、新聞に大きく載っていましたわ!」


「お嬢様、街のいたる所にも看板が立てられ、告知されているそうです。トムが『俺でも参加できるかな?俺が勇者に選ばれたらどうしよう……』なんて馬鹿なことをいっていましたけど」


 マーサも興味深々だ。ちなみにトムは庭師の息子だ。


「あの……お嬢様は〝救国の四星〟の一人、魔導師に選ばれるのではないでしょうか」


「さあな? オレ以外にも魔導師はいるし……」


「まあ!そうよ!絶対そうよ!お姉さま以上に凄くて綺麗な魔導師なんていないじゃないの!」


「いや綺麗とか関係な――


「ああ素敵!お姉さまが式典とかで勇者様の横で手を振るのね!勇者様はどんな人なのかしら……お姉さまにつり合う人で無ければ認められないわ!」」


 勇者の横は聖女じゃね?とも思ったが、もうフィリスは聞こえてないようだ。


 勇者選定の儀は一週間後に王城で行なわれるそうで、我こそはと思うものは役所に登録し、当日会場に向かうようにとの事だ。身分や、成人前の子供や老人を抜かして年齢も問わないとのことだ。


 オレは〝救国の四星〟に選ばれた時点で通常業務から外れた。聖女やスティングレイ団長は引継ぎ諸々でそうもいかない様だが、オレは勇者が決まるまでは基本暇だ。


 大々的に勇者選定の儀を開催したら勇者は自分でした……なんて、王太子のアホ面を見てみたいなぁなんてちょっと思っていたら、その王太子から要請があった。

 

 国宝級の聖剣ヴァルザードを不特定多数の人々に触らせるのだ。当然警備は厳重。その上で持ち出したり出来ぬよう結界を張って欲しいとのことで、即、了承した。




 当日、王城へ向かい、控え室に通される。今日も当然、魔導師のローブ姿だ。

 控え室でお茶とお菓子を頂いた後、会場に案内された。会場に設置された舞台の袖で待機する。舞台上と会場全体に結界を張り、聖剣の盗難防止、また、王太子の身の安全を確保する為だ。

 有事の際には素早く攻撃、防御できるように体制を整える。


 程なく、王太子が壇上に現れた。会場は必要最低限の任務に着いたものを除く全騎士団員を始め、むくつけき男達で溢れかえっている。


「皆のものよく集まってくれた。これより勇者選定の儀を始める」


 低いが、よく通る王太子の声に会場がどよめく。


「聖剣ヴァルザードをこれへ」


 王太子のもとに聖剣が届けられ、それを持ち王太子が声を張り上げた。


「勇者選定の儀とはこの聖剣を鞘から抜き放つ事である!

 何も難しいことは無い!このように聖剣を持ち鞘から抜くことが出来ればその者こそゆう……し……ゃ……??」


 王太子が聖剣を手に持ちスラッと抜き放った!


「抜けたぞ……?」


 しばし呆然と手中の聖剣を眺める。聖剣は眩いばかりの輝きを放っている。


「コホン!―――何か手違いがあったようだ。   

 おい、早く本物の聖剣を持ってきてくれ」


「い……いえ殿下、それはまごうかたなき本物の聖剣で御座います」


 ―――それから―――


 聖剣をもう一度鞘に戻し、他の人が引き抜こうとしたのだが、会場中の全ての人がトライしても誰一人引き抜くことは出来なかった。


 オレ一人だけはこの顛末が予測できたので、表面は澄ました顔をしながら、腹の中は大爆笑だった。









 


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