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魔王討伐会議(1)

 お読み下さってありがとうございます。励みになります。

 

 魔導師団で学んで7年、オレは17歳になった。


 11歳で初級魔導師、13歳で二級、15歳で王国で片手の指の数程しかいない一級魔導師となり、王国でも類を見ないほどの天才魔導師と言われている。いやもう頑張った。ホント頑張った。誰か褒めてくれ!


 一応公爵令嬢として社交界デビューもした。夜会とかお茶会とか興味無いからあんま行かないけどな。

 ―――仕事、忙しいし……


 国内随一の天才魔導師、高位貴族の令嬢としての立ち居振る舞い(一級品の猫かぶり)、(ボロがでないように)寡黙で(めんどくさいから)滅多に夜会等にも姿を現さない事から〝幻の黒薔薇姫〟とか恥ずかしい二つ名で呼ばれているらしい。


「私、『一度お見かけしたが、黒薔薇のように高貴で妖艶な令嬢だ』とか『お会いしたいが、慎ましやかで夜会にも滅多に出られないらしい』とか聞くたびに噴き出すのを堪えて腹筋がかなり鍛えられましたわ」


 と、義妹のフィリスが感想つきで教えてくれた。


「その、こっぱずかしい名は勘弁してくれ!オレが薔薇って柄か?」


「あら、お姉さまは見た目は完璧ですわ。その艶やかなストレートの黒髪も、陶器のような滑らかな肌も真っ赤なルビーのような瞳も……()()()()()は華麗で妖艶で……」


 赤らめた頬に手を添えほうっ……と溜息をつく。

 が、キリッとこちらを睨み


「お姉さまは中身が残念過ぎるのです!

〝オレ〟はお止め下さいと何度も言っているではありませんか!」


 と叱られた。


「外では言わないだろ?でも、実はそんなオレも好きなんだよな?フィリスちゃんは」

 

 とにっと笑うと、フィリスは顔を赤らめ、ふいっとそっぽを向いた。






 今日はこれから父と王城に向かう。公爵家頭首として父に、一級魔導師としてオレに緊急の召喚状が届いた。内容は書かれていないが、心当たりはある。アニメの開始時期がもうそろそろだ。魔王が復活したんだろう。


 馬車に揺られ王城に着くと陛下附きの侍従と近衛騎士が待っていた。

 そこから長い廊下を歩く。普段登城して様々な用事を足したり、夜会が開かれるエリアよりもっともっと奥まった王族のプライベートエリアに程近い場所まで案内され、見事な彫刻の施された重厚な扉の前で侍従は足を止めた。ノックをすると中から扉が開かれる。一礼して入室すると侍従は扉を閉め戻っていった。


 かなり広いこの部屋は柱や天井は扉と同じ見事な彫刻が施され、足元は毛足の長いふかふかのペルエ織りの絨毯、窓は広く大きいが分厚いカーテンがかかっていた。


 外からの光はまったく入らないが、部屋の各所に凝った造りの魔術灯が灯されているので、十分明るい。

部屋の真ん中には大きな大きな20人以上座れるような円卓があり、そのほとんどが既に埋まっていた。


 一際豪奢な椅子とその右隣の椅子は空席で左隣から4つの椅子には偉そげなおっさん達が座っている。

 ここ、シャンタル王国の貴族の頂点、2つの公爵家(内1つはアッシュマイヤー家(オレん家)だけど)と3つの侯爵家の頭首達だろう。

 その横に空席が2つあってその隣にはオレの上司、魔導師団のトップ、アルベルト・ローマンが座っていた。

 ローマン総団長に会釈をして父とオレは空席に腰掛ける。今日は一級魔導師としての召喚だからオレは魔導師団のローブを羽織っている。魔導師団員共通の濃紫のローブ。金糸で細かな刺繍が袖口や袷、裾にはいっている。金糸は一級、銀糸は二級、白い糸はその他の団員を表す。

 当然ローマン総団長もオレと同じ金糸だ。


 右側の空席の隣は教会関係者だろう。でっぷり太って法衣の上にごてごてと装飾品をつけたふんぞり返ったおっさんと、中肉中背、一見目立たなそうで目だけは油断できない鋭さを秘めたおっさん。その隣に聖女。


 おおっっ!ナマ聖女!

 アニメでは見ていたけれど、直に会うのは初めてだ。

 緩くウエーブがかかった桜色の髪、陶器のような肌にパッチリとした空色の瞳。薔薇の蕾のような唇は今は緊張のためか固く引き結ばれている。小柄なせいもあり、全体的に凄く庇護欲をそそる印象だ。


 聖女の隣は第一、第二、第三騎士団長が座っている。こちらは面識がある。といっても、主に面識があるのは魔物討伐などで一緒になる第三騎士団長のクリフォード・スティングレイだけだけど。(ちなみにアニメでは一緒に魔王討伐に行く騎士はこいつだ。)王族、王城を守る近衛の第一、王都の治安を守る第二騎士団とはあまり接触が無い。


 スティングレイ団長とローマン総団長の間にも空席が一つ在った。


 部屋の隅で控えていた陛下の侍従長がお茶を持ってきてくれる。最高級の紅茶の芳醇な香りを堪能しながら飽く事無く聖女を眺め、極楽極楽♪などと思っていたら、国王、王太子の入場が告げられた。


 皆、一斉に立ち上がり臣下の礼をとる。

「よい。楽にしてくれ」と陛下の声がかかり、国王、王太子の着席を待って、皆も再び着席した。

 

 宰相は残った一つの席に向かい着席せず皆に一礼した。


「まずは結界を」


 宰相の声を受けローマン総団長が結界を張る。

 これでこの部屋の声は外に漏れず、許可無く入室も出来ない。


「皆様、急な呼び出しにもかかわらず本日はお集まり頂きありがとう存じます。

 まずは陛下からのお話をお聞き下さい」


「皆、忙しい身であるのは余も十分解っているが、今日集まってもらったのはそれを上回る重大案件である。

―――先日、〝魔王が復活した〟との情報が教会からもたらされた」


 いきなり爆弾が投下された。


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