表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/47

前世を思い出した!(1)

 お読みくださってありがとうございます。励みになります!



 オレが前世の記憶を思い出したのは三日前の事だった。


 義妹にねだられ覚えたての魔術を披露し、調子に乗ったオレは制御も出来ないくせに派手な火魔法を発動、カーテンに引火、慌てて水魔法で消し止めたものの濡れた床に滑って頭からダイブ。

そのまま意識を失った。


 眠っている間に見た夢は前世の俺だ。

ちょっと…いやかなり?活発な中学生男子。空手に明け暮れ全国屈指の実力。これでも期待の新星とか言われていたんだぜ。

もう一人小学生の頃からのライバルがいて、いつも全国大会の決勝で当たっていた。戦績は五分。

今度こそヤツに勝ち越そうと意欲に燃えて全国大会の会場に向かう途中、誰かの叫び声に振り向くとオレの視界一杯に迫る車、劈くブレーキ音。 これが最後の記憶だ。

まあ……そういうことなんだろう……


んで、前世の記憶を思い出した影響なのか高熱を出したオレはベッドから動けないでいる。熱に浮かされた頭でつらつらと今までのことを考えていたら、ハタと気づいた。


(ここ、オレが前世で見てたアニメの世界に似てる……)


 体を動かすのが好きで、ゲームや漫画にあまり興味の無かったオレが唯一見てた異世界冒険アニメ。

 その世界にそっくりだ。


 ん?なんでそのアニメが好きだったかって?   ヒロインがめっちゃ可愛かったからだ!

 清楚でちょっと天然なヒロインは、中一思春期真っ只中のオレのモロ好みだったんだ。


 アニメは四人の若者の旅立ちのシーンから始まる。

 復活した魔王を倒すため、王国の期待を一身に背負った若者達。勇者、聖女、魔導師、騎士の四名は様々な苦難に会いながらも絆を深め見事魔王を討ち果たす。


 ヒロインの聖女は16歳。平民ながらも聖なる力が発現。教会で暮らしながら人々に治癒や加護を施し民衆にとても人気のある少女だ。 


 今は物語の始まる7年程前だろうか。どうして解ったかと言うとオレはその魔王討伐パーティーの一人、王国随一の魔導師(になる予定)だからだ。


 今はまだ魔法が発現したばかりでしょぼい魔法しか使えないけれど、アニメに出てきた魔導師と名前が同じ。髪や目の色も同じ。なによりこの国はアニメと同じシャンタル王国で、オレと同い年だと聞いている第一王子の名前もアニメと同じアルフレッドだ。


 オレはこの先成長して王国随一の魔導師となって……なるよな?……なるはず……

 で、めっちゃ可愛いヒロインと旅に出るはず……だ!


 あ!ここでオレは既にいろいろやらかしてることに気づいた。


 前世の記憶が無い時のオレも今のオレも、性格自体はあまり変わっていない。むしろ記憶の無い分、かなり自由に本能のままに振舞っていた。由緒正しい公爵家の生まれでありながら、なぜこんな風に育ってしまったのかと父を始め周囲は頭を抱えていたが、前世のオレの性格に引きずられていたんだろう。


 オレを生んだ現世の母は2歳の頃流行り病で亡くなった。母のことはうっすらとしか覚えていない。

 で、4歳頃のオレは、庭師の息子(6歳)、メイドのマーサの息子(5歳)、公爵家騎士団の団長の息子(4歳)を従え、毎日楽しく暴れまわっていた。


 三人の子分?を従え庭を駆け回り、木に登り、屋敷の大階段の手摺を滑り降りるオレを見て、父は周りに腕白な男の子しかいない環境、そして屋敷の女主人であり子供の教育を担う公爵夫人がいないことが原因であろうと考え、同じ年頃の女児を持つ未亡人を後妻に迎え入れることにしたらしい。


 アニメで語られていたオレの過去はというと――

 妻を亡くして2年程しか立っていないにもかかわらず新しい女性を迎え入れた父を嫌悪し、新しい母にも妹にも馴染めず、父や義母、義妹が仲良く談笑する中で一人異邦人であるかのような孤独を感じていた。

 魔力が発現した後は逃げるように魔導師団に入り、魔導師団の寮に住むようになった後は一度も実家に帰っていない。容姿は派手で美しいが、根暗で屈折した魔導師として描かれていた。


 もうこの時点でアニメと現実は大分違う。


 だって、後妻を迎え入れようと父が決意したのはほとんどオレが原因だし、新しい母に初めて会った時の事は黒歴史だ……

 お前の新しい母だと紹介された女性を見た途端、オレは突進し彼女に抱きついた。そして、そのボリュームたっぷりな胸に頭を擦り付けぐりぐりと堪能した後、振り返って


「オヤジ!グッジョブ!!」


 と叫んだのだ!当然のごとく父に拳骨をもらったオレは痛む頭をさすりながら横を見ると……

 

 ……天使がいた。


 ふわふわのミルクティー色の髪にすべすべの頬、少し目尻が下がり気味のパッチリとした瞳、お人形のような女の子が固まってオレを凝視していた。

 オレは天使をギュッと抱きしめ、額や頬にキスの雨を降らせていると、父にべりっと引き剥がされた。


 義母はしばらく絶句していたようだが、にっこり笑ってオレの前に屈みこみ


「まずは言葉遣いから直していきましょうね」 と語りかけ


「私達、うまくやっていけそうね」


 と、今度は義母から抱きしめてくれた。


 その後、言葉遣いから立ち居振る舞いまでかなり厳しく鍛えられた。おかげでかぶった猫は一級品となった。義母と義妹との仲は良好だ。


 そう、良好なんだ。義母は厳しくも愛情を持って接してくれているし、義妹はオレの金魚のフンだ。父との仲も良好で、このまま成長したら屈折した陰キャになりそうもない。これが物語にどう影響を与えるか予測も出来ない。

―――それとも似ているだけでアニメとは違う世界なのか? 


 ここまでウダウダ考えていたオレは

(うん!考えても解らない事は考えるだけ無駄!)と結論付けて寝ることにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ