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3話目
此処はとあるお城の一室
ザワザワ…ザワザワ…
円形の召喚紋の周りには息も絶え絶えのローブの人物が数え切れぬほど倒れていた。
立つのもやっとらしい高位の神官らしき人物が王冠を被った人物に話しかける。
「今度は…ぜいぜい…召喚は……成功です。まもなくっ…ふぅ……勇者…様が……ぜいぜい……現れる…で…しょう」
言い残すと神官は倒れた。
彼はついにやり遂げたのであった。
その顔は晴れやかだった。
「うむ」
すると召喚紋に灯が灯った。
その光は徐々に強くなり部屋の中を眩い光で埋め尽くした。
光が落ち着くとそこには一人の田中が鎮座していた。
「其方が勇者か」
「はい?」
「まあ良い」
田中は戸惑った。
何せ有用なスキルは一つももらえなかったのである。
王様と田中は見つめあった。
「今回は人なんですね」
お姫様は呑気に感想を言う。
「何であれ人ならば良い。来てくれてありがとう」
もともと横柄な王様は度重なる召喚失敗で打ちひしがれていた。
もう魔族とかはどうでも良くなっていた。
もはや意地である。
だから田中は召喚されても仕事がなくなっていた。