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街路樹

作者: さち


ある日の彼とのドライブデート。



「久しぶりのお出かけ楽しかったね〜。」

「うん。昼に食べたラーメン美味かったしなぁ。」


今日あった出来事を二人で話しながら、彼の家までの道を車は走る。車中では二人が好きなアーティストの曲が流れている。


…幸せだなぁ〜。


この後は彼の家でお泊まり。

今日は頑張ってご飯作るんだ!

一緒にお風呂入っちゃったりして…。

夜は家で二人きりでお酒も飲む予定。



楽しみがまだまだたくさん。

はぁ。でも、結構歩いたからちょっと疲れちゃった。



「眠いのか?たくさん歩いたしな。大丈夫?」

「ん?う〜ん。少しね…でも大丈夫だよ。」

「無理しないで寝てってもいいぞ?着いたら起こしてやるし。」

「でも、運転してくれてるのに寝ちゃったら悪いよ。」

「大丈夫だよ。この後も一緒にいられるんだし。」

彼はそう言って私の頭をクシャッと撫でた。


優しいなぁ。嬉しいなぁ。


「…いいの?ホントに寝ちゃうよ?」

「いいよ。遠慮すんな。」

チラッとこちらを見て微笑む彼。

ニッコリ笑って私は返事した。


「ありがとう。じゃあ、少しだけ休ませてもらうね。」

そう言って少しシートを倒して横になる。




体を少し横に向けて、助手席側から窓の外を見ていた。

流れる景色を眺めてボーッとしていたら、ウトウトと眠気が襲ってきた。



あぁ。眠たい…眠れそう。

今日のデートが楽しみで昨日あんまり寝られなかったんだよね。遠足前の子どもみたいな自分を思い出して少しニヤけた。

…その時。





フッと視界に黒いものが入った。



…え?今のアレ何?




モヤッとした黒い塊。




街路樹かと一瞬思ったけど、アレはたぶん違う。




思い出して背筋がゾッとする。




人だ。間違いない…。




下を向き、植え込みの中に突っ立っていた。




慌てて体を起こして後ろを見た。


「お、おい!急にどうした?」

彼が驚いて声をかけた。


「い、今の見なかった!?」

「え、何のこと!?何を見たの?」

「人!人が立ってたの。…黒くてモヤッとしてた。」

「えっ。見間違いじゃないのか?」


「間違いなく人だった…と思う。」


「間違いないのか…。だとしたらヤバいモノ見たのかもしれない…。」

「え?なんで?」

「だって、今通ってきた所は人が立てるスペースなんてなかったぞ。」

「えっ。立てるスペースがないって…。」





そこは橋の上で車道から離れた所に歩道があり、人が立つならそこだろう。そして植え込みには背の低いツツジがびっしり植えられていて人が立つ空間などなかった。

横になっていた私の目線の高さからは分かりづらかったが、綺麗に隙間なくずっと続く植え込みはその後確認が出来た。



ちなみに私が慌てて振り返って見たそこには何も見えなかった。その間、数秒。

…人が走り去れるような時間ではなかったのだ。





「…あれぇ?寝ぼけてたのか?」

彼が怖がる私を和ませる為か悪戯っぽく笑って、からかった。

「え…。」

私は怖くて反応出来なかった。

だってウトウトはしてたけど、眠ってはいなかった。



私の不安そうな顔を見て、彼がまた頭をクシャッと撫でながら言った。

「大丈夫だよ。気のせいだ。…何かあっても俺がいるだろ?」

ちょうど止まった赤信号で、彼がキスしてくれる。


「俺が怖い気持ちも〜らった。へへっ。」

「…ありがと。」

…彼の優しさに私は何度救われただろう。

さっきまでの怖い気持ちは本当にどこかへ行ってしまったようだ。



たぶん、アレは街路樹。

そう。私が寝ぼけて見間違えたんだ。



そうだよね。でも…あの辺、街路樹なんて全く植えられてなかったけどね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やーん、デートいいなぁ。 優しい彼氏で羨ましい。と、思っていたら、 怖すぎ。 最後は、やっぱり、優しい彼氏。 羨ましい。
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