67:多趣味の一つ
シュバツェル16年6月5日(日)
「じゃあ、オレらはコイツをギルドに運んでおくぜ」
「すまないね、頼むよ」
朝ご飯が終わると、ラミアを回収に来て下さった冒険者さん達は、一足先に町へ帰って行った。
「優さんとユリシーズは、後で一緒にギルドへ行くよ」
ただ、午後は川原で集めた物をあれこれする心算だったのだが……。
その後は何事もなく、家族で楽しく過ごした。
いや、それは正確ではないな。
サーラちゃんが悲しそうな顔をするくらい、ユリシーズさんは私にくっついて回った。昨日の続きで、魔法を教わりたいみたい。
「ユリシーズ! こちらのみなさんの邪魔すんじゃないよ!」
「わ、分かってるよ」
ま、これ以降はアカザさんの監視が厳しくなったので、最終的に楽しくキャンプは終わった。
◇
「じゃあ、お父さん。私は冒険者ギルドに寄ってから帰るね」
「おお、気を付けてな」
冒険者ギルドの前で私、アカザさん、ユリシーズさんはキャンピングカーを降りてみんなと別れた。
ギルドに入るとギルマスの部屋へ通され、そこでユリシーズさんがラミアに遭遇した経緯の説明から始まり、なかなか時間がかかった。
◇
「ああ、もう夕方かあ」
「思ったより、時間がかかったからね」
通常、ラミアが旧王都の方に出る事はまずないそうだ。何かあるかも知れないから、森の警戒レベルを引き上げて様子を見るって事で落ち着くまでに、時間がかかったのも大きい。
「優さん!
オレに魔法を、イテッ」
「アンタはアタシの説教だよ!」
ユリシーズさんは翌日から、我が家の庭にキャンプを張って居座ってしまい、最終的にはカールくんも住んでいる離れで暮す事になったのはしばらく後の話だ。
「ばたばたしちまって、あんまりゆっくりできなかったねぇ。
金の大鷲亭の女将さんたちも、珍しく一緒だったってーのに」
「また、行きますよ。
おじいちゃん達とそろって出かけられるのは、今しかありませんから」
次は森じゃなくて、草原でも良いかもしれない。あっちなら、ラミアもいないだろう。
家に帰り着くと、アカザさん達とユリシーズさんは、アカザさん達の拠点へ帰って行った。
お父さん達がキャンピングカーの掃除を終わらせてくれていたので、時間ができた。
風除室の見栄えしそうな位置に、浅い陶器の桶を配置する。
ここで良いか、離れたり横へずれたりしながら、出来上がりをイメージして考える。ここで良さそうだ。
昨日、川原で集めた砂利を桶に敷いて、下から持って上がって来ていた背の高目の植物を植え付ける。
桶に井戸水を張り、浮草を浮かべれば一先ず完成だ。
「お姉ちゃん、ご飯にしようってお父さん達が呼んでるよ。
わあ、玄関に川ができてる!」
「完成は明日だけど、“ビオトープ”って言うんだ。良いでしょ?」
「うん! こんなの初めて見た!」
ほとんどなんちゃってレベルだが、なかなか良い。明日、ヤマトヌマエビみたいな、小さなエビを入れたら完成だ。
動画とかで見た事があるだけで、実際に作ったのは初めてだ。その割に、けっこう気に入る物ができた。
手入れが楽なので、ベアタンクでベタを飼っていたが、ビオトープもやってみたかったんだ。
「玄関を通る時に、楽しみができたね」
「この草は、小さいキレイな花が咲くんだよ。咲くのも楽しみ!」
「花が咲くんだ? それも楽しみだね」
この日は、おじいちゃん達が初めてお父さんの家に泊まる。靴を脱いで生活する開放感に感動していた。
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