47:試作キャンピングカー
シュバツェル16年5月5日(木)
朝、魔道具ギルドから、キャンピングカーの試作が出来ましたと連絡を頂き、もちろんすぐさま伺った!
ローニーさんとサーラちゃんと伺い、速攻でマリーナさんに試作キャンピングカーに案内して頂いたよ。
私が思うタイプは、乗合馬車が一頭立て八人、二頭立てで十二人までが馬に牽かせる重さの目安らしいので、牽くのは馬より力のある八本足の馬スレイプニルか、ペルシュロンという大型馬に牽いてもらう。
あ、ペルシュロンは地球にもいるよ。
一頭立ての馬が牽くタイプは後方のベッドルームがなく、キッチンの床がリビング+ダイニング+ベッドルームの機能になる多目的スペースと、簡易キッチンと食料庫だけの形で生産される。
小柄なこちらの人達が、これで四人乗れるタイプになるそうだ。
くっ。軽自動車でも、普通に馬一頭よりハイパワーなんだった! とは、設計の時に思い知った、自分の考えなしさ加減だった。
他にもタイプがあるが、強度などは保ったまま、徹底的な軽量化もされているよ。
このタイプはすでに何台かが作られ、耐久性などのテストに協力してくれる人に貸し出されているとも聞いている。
それはさておき、スレイプニル版キャンピングカーに入らせて頂こう。
引くドアを開けた正面が、ユニットバスになっている。
「馬車にシャワーが、それもツヨシさまの作られた二ハンドル混合水栓なんて最新式のシャワーが……」
ローニーさん、早くもここで口があんぐりしていますよ。早い早い。
「夏なら川で水浴びとかもできるでしょうが、毎日は無理でしょうし、冬場は絶対に外ではできませんからね」
ユニットバスで、小さいながらも湯船があるからお湯にも浸かれるんだよ。
ドアから左手を見ると、キッチンになっている。もちろん小型冷蔵庫、新型二口コンロがあって、設備もバッチリだ。
車の運転席、助手席部分にあたる部分がないので、とても広いのは嬉しい。
「普通の家より、はるかに良いキッチンって一体……」
あははー、そこはもう無視だよ。いつか自分が使う時に、“キャンピングカーと思える物にした”もんね。何より、
「移動する小さな家ですから」
この一言に尽きるな。ふふふ。
さてさて、キッチンの向かいがダイニングスペースになっている。
イス部分は蓋を開ければ全て収納スペースになっていて、常温保存可能な食料が、かなり備蓄できる。
このイスは、ソファーベッドの機能もある。折り畳みのテーブルの足を折り畳んで背を低くし、ベッドの支柱にすれば、何人かが寝れるスペースにもなる。
この機能は、護衛で馬に乗ってる人に使ってもらうスペースとして考えている。
部材の時に何度か試したので、ぱぱっと組み立ててみせる。
「ここはこうすると、何人か寝れるようになるよ。
下が収納だし、枕元に荷物を置いても、こちらの方なら充分足を伸ばして寝れるでしょ?」
「下手な宿より良い寝床……、いや、かなり良い」
ローニーさん、かなり呆然としてるー。
最後に、後方はベッドルームとなる。
奥行き200センチあるので、私やお父さんくらい大きな人でも充分寝られる。
幅は200センチを切っているが、こちらの人には余裕サイズなので、ここをベッドルームとして使うにはかなりの広さがある。
もちろん、ベッドの下は収納になっていて、服や使わない上掛け布団をしまっておける。
二段ベッドタイプの寝具を入れて、四人がそれぞれパーソナルスペースとして使う事も可能だ。
天井に天窓があり全体が明るいし、キッチンやダイニング、後方のベッドルームにも小さな窓が左右にもあるので換気もできる。
備え付けの冷暖房設備も、全面断熱材入りでばっちり機能する。
「私、家ではなくこのキャンピングカーを買います」
いや、それはさすがに……。
むむ? これで普通の3Kの新築よりちょっと高いくらいって、同じ機能の3Kの家より安いかも……。
そのうちどっちももっと安くなるんだろうけど、快適に過ごす事重視なら、今現在ならそれもありなのかもしれない……? う、うーん? しかし……。
サーラちゃんはお父さんの家で慣れているためか、最後に「ちっちゃなお家もすっごーい」の一言で終わった。
◇
「いかがでして?
細部までお話を詰めて作り上げた試作ですが、何か至らぬところはございませんか?」
マリーナさんは私が一通り見終わると、やっと声をかけてきた。
「いえ、充分過ぎると思いますよ。
まさに移動できる小さな家だと思います」
そう笑顔で答えると、マリーナさんはとてもほっとしていた。
「後方のベッドルームなしタイプ、そちらで冒険者には充分な移動する家になりますわ」
「そうですね、それで冒険者さん達には充分なら、その形をメインにしましょう」
それくらいが一番最適なキャンピングカーだと思うので、否やはない。
「では、メインはそちらで。
こちらの試作キャンピングカーはご自宅へ運びますので、一年お使い下さいませ。
不備やお気づきの事がございましたら、ご遠慮なくお申し付け下さいませ」
そう。このキャンピングカーは、一年お借りさせて頂けるのだ。
新しいサスペンション使っていたり、今までにない代物なので、どんな不測の事態が生じるか分からない。
そのため一年後にお返しして、色々調べ、製品として売れる物に仕上げてからの販売となる。
うーん。待ち遠しいなー。
◇
自宅へ戻り、そわそわ試作キャンピングカーの到着を待つ。
山側は広い草原地帯が多く、馬や牛、羊にヤギ、家畜化したスレイプニルなんかの放牧地が多いそうなんだ。
行ってみたい。
この季節なら、子馬や子牛がいるハズだ。
うずうずっ。行きたいのだ。
おじいちゃん達の宿が立て替えのための休業になったら、家族四人とおじいちゃん夫婦とでキャンプへ行く予定はあるんだけど……っ。
行きたいなあ。
「おーい、優。
魔道具ギルドから、キャンピングカーが届いたぞー」
お父さんの声だ! キャンピングカーが来たって!
矢も盾もたまらず、キャンピングカーを目指して走り出したよ。
お父さんに置いても良い場所へ先導してもらい、キャンピングカーを停車。運んで下さったみなさんに、良く良くお礼を述べてお見送りした。
◇
「ほおー、良くこのクオリティの物ができたなあ」
早速中を見てもらうと、お父さんはそう感嘆の声をもらした。
「魔道具ギルドのみなさんが『当ギルドの威信を賭けて、最高の物を作ります』って、凄く力を入れて下さったからね」
本当に、そのおかげで良いキャンピングカーができたよ。
「ははは、すぐにでもこれで出かけたそうだな」
「まあね。キャンプするには良い季節になってるしね」
「そう言うと思って、冒険者ギルドに護衛依頼を出しておいたんだ。
女性だけのパーティーが受けてくれたから、一泊なら行ってきても良いぞ」
やっっったーッ! お父さん、ありがとう!
明日、明後日で一泊キャンプ!
慌ててカップやお皿、寝具、食料なんかを揃えに行ったよ。
キャンピングカーを牽いてくれるペルシュロンは、お父さんが所有しているコを借りる。御者は、冒険者さんがしてくれるそうだ。
後々、私の専用ペルシュロンも買うそうだ。それは自分で買えるくらい、各ギルドからの入金があれば買うよと言ったが、お父さんは譲らない。
後何回、こうしてお前にプレゼントができるか分からないんだから、絶対に俺が買うと譲らなかった。
なので、ペルシュロンはお父さんに買ってもらう事にした。本当にありがとう。
◇
「急ですが、明日はローニーさんはギルドで書類の方をされますか?
それとも、泊まりで一緒に出かけますか?」
ローニーさんは泊まりは厳しいとの事。
それはしかたない事なのでオッケー。元々、業務内容に泊まりはないはずだしね。
次は、今日はお休みのサイラさんにスマホで連絡。
ローニーさんとサイラさんは、私から急な知らせがあっても連絡がつかないって事がないようにスマホを持っている。
希少かつ、まだ改善すべき事があるとかで、あまり流通はしてないんだけどね。
サイラさんは絶対に行きます! って事だった。
実は、試作キャンピングカーができるのを、とても楽しみにしていたんだそうだ。
「自宅より快適に過ごせる町の外! 体験しないはずがありませんわ!」って、事らしい。子供さんは良いのか?
他は、もちろんサーラちゃん。
ちょっと大きくなった、クーとルー。
そしてもちろん私っていうメンバーと、護衛の冒険者さんが四人の合計七人とニ匹でキャンプとなった。
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