43:無限収納のある世界で?
シュバツェル16年4月24日(日)
はあっ?! 袋がないだとう?!
そういえば、今まで買い物しても袋に入れて渡された事はなかった! リュックに入れている、マイバックを使っていた!
紙は高価だ。紙袋が一般的に使われている訳がない。
風呂敷みたいな物も、布が高価だ。布も使っている訳がない。
もちろん、ビニール袋がある訳もない!
では、どうしているか?
みんなマイかごを持ち歩いているので、そこへ肉も服も買い物は入れている。
サイラさんにお願いして、毛糸を買い集めてもらった。
サイラさんが毛糸を買い集めている間も、私はマクラメで袋になりそうな物を量産した。
フェンスとか魚網を長方形に切り取って半分に折り、サイドを留めたイメージだ。
持ち手は付けない。それを付ける時間と毛糸がおしいわ。編み目に指を引っかければ持てるし、家まで持って帰れたら良い!
持ち手にもなるフチは、さすがに少し太くしてある。
毛糸もそんなに安い物ではないが、生地の切れ端でヤーンを作るより早いし、麻紐よりは繊維が商品に付かないだろうと、毛糸にした。
私の部屋でクーとルーとおとなしく遊んでいたサーラちゃんが、なんとも頼もしい助っ人になってくれたのは嬉しい誤算だ。
サイドをゆっくりだが、丁寧に片紐結びで止めていってくれる。助かるよー。
「サーラちゃん、ありがとう。
とっても助かるよ」
「良かった。サーラ、お手伝いしたかったの」
良い妹サーラちゃんにほっこりしつつ、買い物袋もどきを量産していたら、書類が一区切りついたサイラさんも手伝ってくれている。
「すみません、サイラさん。
ありがとうございます」
サイラさんにお礼を述べる。毛糸の買い出しから戻り、書類を片付けてから手伝ってくれているサイラさんにお礼を言ったのだ。
「いえ。これは色んな紐やロープでできるんですね。編み方も簡単。
それでいて先日のハンモック、今日の"袋もどき"が作れる。
この技術は充分、登録可能ですわね」
そこかーい!
「まあ、ハンモックと同じ編み方なら、使う紐の量が布より少ないのも利点ですかね。
もっと袋に近い形やバッグも作れます」
今日はとにかくたくさん作るのが目的だ。可愛さとか、見た目は省いている。紐をなるべく使わない編み方にしているからね。
とにかく、袋を作るのだ!
◇
毛糸十玉分と、元々持っていた使いかけの一玉分から作った袋をお母さんのところへ運ぶ。
そして"兌換紙幣使えます"というプレートと、袋を渡した。
「こっちのプレートは、兌換紙幣を持ってる人に、この店では使えますってご案内。こういうご案内があるかないかで、売上が変わる事があるんだよ」
お母さんは、まだ使い方が広まっていなくて、扱い方を知ってる店も少ないものねとレジに置いてくれた。
「こっちは買い物袋。買って下さった商品を入れる、専用の袋。
服を畳んで、こう入れて持ってもらったら……。ほら、店の商品の宣伝にもなる」
「まあ! 専用の入れ物? 凄い凄い!」
ずっとはムリでも、最初の何日かあれば良いわって話していたんだ。これは後に作り方を教え、ずっと継続する事となった。
かごを持たずに来た人に、紐でしばるよりお洒落と人気となったんだ。
「これは、サーラちゃんもお手伝いしてくれたんだよ。ね」
「うん」
サーラちゃんは赤くなって、私の後ろに隠れてしまった。可愛いなー。
「サイラさんも手伝ってくれたんだよ」
サイラさんにすみません、ありがとうございますと言うお母さん。いえいえ、と返しているサイラさんを尻目に、ローリエさんに話しかける。
「この間はありがとうございました。
夕飯作るの、間に合いました?」
「どういたしまして! 楽しかったよ。
美味しいお昼ご飯に刺激を受けて、凝った料理をしたから遅くなったよ」
「あはは、お腹空かせて帰って来ただろうアージヨさんに申し訳ないな」
「大丈夫。喜んでたもん」
そんな話も終え、部屋へと戻る。
◇
「はあ、まさか袋がないとは……」
「今までお買い物して、買い物についてくる袋はなかったのでは?」
いや、そうなんだけど。
「無限収納が、人口の半数は使えます。貴重品や重い物を、入るだけ入れている人もいますよ」
「無限収納?! 」
それあったら、カートとかいらないんじゃ? でも、売れてたよね?
「人にもよりますが、ほとんどが人の頭ニつ分くらいの大きさなので、あまり入りません。
優さまはまだ、お調べになってないのですか?」
「初耳です」
って事で、さっそく試してみる。
無限収納をイメージし、イメージが固まったと思えたら……。
「無限収納」
お! できた! 空間に黒い無限収納の出し入れ口? が表れた。そこへ手を入れてみる。
「……肩まで入りますが……、どこにも指先があたりません」
「ああ、大き目なんですね」
ある程度まで、荷物を持たなくてすむのはありがたい。
「無限収納が大きい方は、出したい物をイメージすると出てくるそうです」
「なるほど、探し回らずにすむのは助かるよ」
サイラさんは、十キロ入りの麦袋が五個入るそうだ。それだけ入れば十分そう。
サーラちゃんも大きいっぽい。サイラさんみたいに、十キロ入りの麦袋が何個入るか試した事がないからちゃんとは分からないらしいが。
ついでに言うと、無限収納は成長期が終わるまでは大きくなる事もあるので、まだ大きくなる可能性もあるそうだ。
「それにしても、女性の方が男性よりスキル保有者も、大きな無限収納を持っている事も多いんですか?」
「ええ。一説では、実際に男性のように重い物を持って活動できる体力も筋力もないので、それを補うためではないかと言われていますね」
男性は、財布代わりに使える程度のサイズの人もザラだそうだ。それに対し、女性は頭ニ個分くらいのサイズが多いそうだ。
「ああ、そんな感じがしますね」
なかなか興味深いな。
しかし、無限収納にお金、なんなら全財産入れてて死んでしまったら?!
「空間から落ちて来ます。
老衰などで、無限収納を維持するのが難しくなるとじわじわと。
不慮の事故などで亡くなると、一気に落ちて来ます」
ははは。何とも言いがたいが、まあ、入れっぱなしで家宝とかが失くなる事はなさそうで良いね。
ただ、恐ろしく非日常的だ。
この日はそんな風に日中は終わり、夜はささやかながら、気持ちを込めた料理を用意。
お母さんと、お母さんのお店"スリール"の壮行会で楽しい一日を終えた。
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