表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/69

39:さくらとピンクゴールド

シュバツェル16年4月20日(水)

 エバーソンさん、お早いお着きで……。


 先日の子ども食堂とてら、その後の仕事のていきょうのプロジェクトのけんでおしになるとはれんらくがあった。が、馬車での移動とはいえ、予定の時間より着く時間が前後しやすいため、お早いとうちゃくとなったようだ。



「やあ、ユウじょう、元気そうで何より」


 そうおっしゃるが、目は私の手元をガン見ですよ。


「こんにちは、エバーソンさん。えっと、お出ししましょうか?」


 げんかんに入られたのは分かったが、手がはなせなかった。そして、なぜかお父さん共々キッチンへ直行して来られた。


がたいね。

 サーラちゃん、こんにちは。おじゃするよ」


 まだ時間があるだろうと、サーラちゃんにじゅうアイスを作っていたのだが、そこへエバーソンさんがとうちゃくしてしまったのだ。


「キッチンのままでもよろしいですか?」


 料理はキッチンでするものだろう? もちろんだとおっしゃり、自らイスをひいて腰を下ろしてしまった。


 ……。うん、が家ルールでやるってお父さん言っていたし、知らん! 


 おくからエバーソンさん、お父さん、サーラちゃんが、新しくえているカウンター用のイスにすわってこちらを見ている。


 人がえたのでこおりくずせきの板のタイルを人数分()やし、上にケーキ皿を乗せて皿を冷やす。スプーンも乗せておく。


 そして、ほとんどできていたフレッシュオレンジジュースを、きんぞくのボウルの中でかきぜる。


 このボウルを入れているのは、より大きなボウルで、大きなボウルにはこおりとたっぷりの塩が入っている。塩は海からと、えんからと、がんえんが取れるおくにがらで、しょみんでもかなりぜいたくに使える。


 スパチュラはないので、サラダなどを取り分ける時に使う、きんぞくのサーバースプーンで代用。うん、平気そう。


 れいとうからこおりを出してグラスへ。そこへれいぞうで冷やしていた紅茶をそそぎ、スト(ロー)ベイルす。


 昨日の夜、家にあったあさひもで、マクラメみで作ったコースターを出しておく。


 こおりくずせきのタイルの上のケーキ皿に、取っておいた半分に切ったオレンジのかわにオレンジのじゅうアイスをって乗せる。


 みんなの前に、マクラメのコースターに乗せたストロー付き冷えた紅茶、こおりくずせきのタイルをれいざいにしたじゅうアイスがそろった。


「今日はあついので冷たい紅茶と、ひょうの一つ、フレッシュオレンジジュースのじゅうアイスです。

 アイスはけますので、けないうちにお食べ下さい」


 エバーソンさんはひとしきり紅茶とアイスをながめた後、お父さんを見てアイスに口をつける。


「! これは、じゅうで作った雪? そんないんしょうだね。

 とても冷たくて、夏にはたくさん食べたくなりそうだ」


「うまいたとえですね。そんな感じです」


 サーラちゃんはおそおそる、一口目を口にしたまま固まっている。


「このグラスに入っているくきは? なんだい?」


「それは"ストロー"という、冷たい飲み物を飲む時に使う物です。こおりが入ってますので、ストローでぜて全体を冷たくしたり、こおりけて味がうすくなるので、ぜて全体の味のムラをなくすのにも使います。

 女性だと、ストローを使うとグラスにくちべにが付かないので、そのために使う人もいます」


 ほう、洗い場の者がよろこぶね、などとおっしゃる。どこの世界でも、グラスやカップに付いたくちべには手こずるみたいだ。


「このしきもの二つは?」


「グラスのほうの物は、グラスのしずくがテーブルをらさないようにする目的の『コースター』。アイスの下のタイルは、冷たさを長持ちさせるためです」


「実に良くできている。

 サイラ、全てろくしているかい?」


「はい、"コースター"はざいの間にお作りになられたようでろくはございませんが、それ以外はっております」


「コースターはなぐさみにあさひもで作りましたが、もくせいぬのが良いかもしれません。

 ぬのだと落ちそうなしずくわせて、服などにしずくが落ちにくくもできます。

 今日はおしぼりを使って下さい」


 お父さんがじつえんしてくれる。ごうかいだが、まあ良しとしよう。


あさひものコースターは、自分のぶんしょうろくしてます。ひつようなら言って下さい」


 お茶が終わると、今度はれいぞうだ。真っ直ぐキッチンへこられたのはそれが目的だろう。

 れいぞうを見ているエバーソンさんに、あれやこれやとせつめいする。


 中身がふたにつかないていの大きさのびんに入れてかんするほうが良いという事。きょくたんに日持ちするわけではないので、しんしてはいけない事。さいしつにはグラスに水を入れて、それを入れたほうが良さそうでけんしょうちゅうだという事。れいとうしんして、長く入れておかない事。ブロック肉など、中までこおらずいたむかもしれない物があるかもしれない事。れいとうけといって、変色する事がないかけんしょうちゅうだという事などなど。



れいぞうする部分は、れいぞうばこと使いかたは変わらないようだ。

 れいとうの部分は、私達もれればれいぞうばこの時のように使いこなせるようになるだろう」


「はいっ、みんなで使いかたを覚えましょう」


 ◇


 おうせつに移り、ほんだいが始まった。


 あらかた私が言った通りで決まった事、この町でやってみてなどを洗い出してめ、おうりょう全体へ、そして国全体へ広げる事。


 はんばいや食事をていきょうする屋台には、大人のろうしゃにもさんにゅうさせる事、など。



「しばらくはえいへいが見回りの時に、ストリートチルドレンにシステムを広げる事になった。

 教会でぶんしょうたしかめ、しょくぎょうがストリートチルドレンであれば、はんけんわたして食事をていきょうしてもらえるよ。

 食事のていきょうは、おもえいへいしょなど、あるてい安全な場所の近くだけになる。元(ぼう)けんしゃようへいで、けっそんなどのため、はたらけなくなった者で料理ができる者をやとい、屋台でていきょうするよ。

 その時にはんけんわたす」


「はい、よろしくお願いします」


はんけんで使いたいしるしはあるかね?」



 きょうの花を思い出した。

 こちらに来たのは、この世界では三月の末か四月の頭だった。


 日本はまだニ月だったが、そのままいれたら、そのころには見れただろう花を。


「さくら、が良いです」


 とくべつな思い入れがなくても、ふとした時に見上げてしまうあの花を。


「……大切な物のようだね」


「そうだな、俺達日本人にはとくべつな花だ」


 私より思い入れがありそうなお父さんが答える。


「ではそれを、わりに使いましょう。

 どんな花ですか?」


「こんな花です」


 ポケットからばんそうこうを入れている、小さなケースを取り出す。かざりにさくらモチーフのイラストのシールをっている。


「これです」


 ケースのシールをそっと指差す。


「……では、この花を」



 わりには線でりんかくえがいたさくらと、漢字の"さくら"をいんで使う事になった。


 ◇


 その日の午後、サイラさんに連れられて、うでの良いほうせきちょうこくさんのこうぼうおとずれた。


「何か身に付けられる"サクラ"のアクセサリーをお作りしましょうと、エバーソンさまからのでんごんです」


 おどろいて退たいしようとしたが、「ご自身の取り分をらしても、この国のためしみなくお力をして下さるユウじょうへ、これしきのれいをしてもことわられますまい」と言われてしまいことわれなかった。


 どんな物にするか、少し考える。イメージがいたので、ぎょうにかかる。


 ほうせきちょうこくさんの手をりて、金とどうぜてピンクゴールドを作り出した。


 これをうすばして細い板をさくせい。これを真ん中で曲げてV字(がた)にすると、Vの開いているところをつなげて先を少し内側へり返す。


 同じ物を全部で五個作り、ピンクゴールドのはりがねみたいな物で作ったの台に、とがったほうを中心にはいしてかんせい


 ところどころしょくにんさんが手直しして下さったので、きれいなできあがりだ。チェーンを通す、丸い部分も付けて下さった。


「この"ピンクゴールド"は、ただの金とはまたちがう味わいの色ですね」


「さくらはうすいピンク色なんです。それに近い色で、知っている中でさいげんできそうだったのが、このピンクゴールドですが、うまくいって良かったです。

 何から何まで、お力をおして下さったソアンさんのおかげです。ありがとうございます」



 こうして『さくら』と『ピンクゴールド』。とくに『ピンクゴールドで作ったさくら』は、そうしょくひんでの、私のだいめいとなったのだった。

お読み下さって有難うございます。

お楽しみ頂けましたら幸いです。


面白かった、良かったなどお気楽に、下の

☆☆☆☆☆

にて★1から★5で評価して下さいね!


続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!


感想や応援メッセージもお待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ