38:バーベキュー
シュバツェル16年4月19日(火)
あみあみ。あみあみ。
ふう。せっとハンモックをあみあみ。
なぜハンモックなぞ作るハメになったのか?
「お母さんもデイキャンプしたいわ~」
というお母さんのために、バーベキューをするのだ。
もうすぐ服屋が開店なんだから、森までデイキャンプに行くヒマはなかろう。
そうだ、バーベキューならできるって事になり、キャンプの雰囲気出す為にハンモックを作っている。
ちょっとだけ気分が味わえたら納得してくれるはず。丸太はお父さんにもらい、ロープは買ってきて作っている。本数がいるんだよね。
クー、ルー、ロープにじゃれついてはいけません。
爪とか牙が……って言ってる間に、牙がロープに引っ掛かってるじゃんか。ルーを外したら今度はクーかーいっ。
もー。遊んで良いロープはあげてるじゃんかー。
ハンモックは仕上がった。次は……。
あみあみ。あみあみ。
クー達はロープは自分達を捕まえると学習したのか、もういじっているロープで遊ばない。おとなしく、遊んで良いローブで遊んでいる。
ハンモックの丸太の時に一緒にもらってた油の多い丸太を……、ふんっ。ふんっ。
「お、これは以前のデイキャンプの時に元々作ろうとしていた、かま……、焚き火ですか?」
「良く分かりましたね。そうです、『スウェーデントーチ風』の焚き火兼かまどです」
「前も油の多い丸太を探されてましたから」
それでもしかしてと思ったのかあ。納得。
やった事なくて、やってみたかったんだあ。
丸太だけで、焚き火とかまどが完結するって楽じゃない?
こんな太い丸太を斧で割った事がなくて、かなり危なっかしい様子だったんだろう。
ローニーさんがどんな風にしたいのか聞いてやって下さった。
丸太を下の方まで割らずに途中まで十字に割り、十字部分の隙間が狭いので、十字に小枝を楔の代わりになるべく切れ目の下の方へ挟んで……。
「こんな焚き火のやり方もあるんですね」
「作って下さってありがとうございます。
はい。上手くいけば、薪を足したりしなくても長時間燃えてますよ。
何かあった時に火を消すには、不向きかもしれませんが」
そっか、それは携帯コンロに期待ですねと言っている間に、全部で三個のスウェーデントーチを作りあげてくれた。ありがとうございます。
次はまだ明るいうちに、何本かある木を利用してハンモックを吊るす。ハンモックに適したロープワークと言われている、"もやい結び"で吊るす。
ローニーさんが、丸結びじゃないのかと聞いてくる。
「船は特殊なロープの結び方しませんか?
テントを張ったり、ハンモックをしっかり吊るしたり、陸上でもそれに見合った結び方が良いと言われています。
テント張ったのに、夜中にテントが崩れたら困るでしょ?」
ああ、崩れましたねと苦笑いしている。経験者だったようだ(笑)
別の木には、ロープと丸太を半分にした木で作ったブランコを吊るす。もちろん、サーラちゃんの遊び道具にだ。
あまり上手とはいえない出来だが、しっかり作ったので許してほしい。
◇
そろそろ五時くらいかな? 野菜や肉や調理器具を持ってくるかな。切るべし!
「ううっ、マーチャさんのご実家の忙しさを思い出す量の食材ですね」
「あれよりさすがに少ないよ」
「私は見た事のない量です」
「あはは、さすがに一般家庭で見る量ではないですね」
ローニーさんもサイラさんも手伝ってくれている。今日は食べておゆきよ。
現場から戻ってきた職人さん達も、お父さんから「食べて行けるヤツは、食べてから帰れよ」と声がかかり、朝から楽しみにしていたそうだ。
回りでテーブルになりそうな物やイスになりそうな物を用意してくれている。
「はあ、お肉はお肉屋さんでもう少し小さくカットまでしてくれたら助かるのに、ブロックしか売ってないよね」
「あちらでは小さくされているんですか?」
「そうだね、炒め物に良い薄さ、焼き肉に良い薄さ、ステーキに良い厚みとか、ある程度用途に合わせたスライスされて売られてる。
量も四人家族で一度で使い切れる量だったり、冷凍庫があるから、冷凍して保存する、多目になったお得な量とか、量もいくらか選んで買えるんだよ。
ブロックもあるけど、スライスされたのがあるから、そんなにたくさんは店にも並んでないな」
「人手がたくさんいりそうですね」
「ああ、お肉をセットすると自動で切り分けてくれたり、人がついてるけど人が切るより早く切ってくれる魔道具があるんだ。ミンチにする魔道具もあるよ」
ほう、人がカットしてその方式を試すのも面白いかもしれませんとは、主婦サイラさん。
六時の鐘の音が聞こえ、スウェーデントーチに火をつける。魔法で下の方に火をつけていたら、他のトーチには職人さんが真似して火をつけてくれている。
「ありがとうございます、助かります」
「こんくらい、手伝いにもなりませんや」
と笑ってくれる。気の良い職人さんだな。
そうこうしているとお父さんや職人さん達、お母さんとサーラちゃん、お母さんの工房の人達が集まる。
お母さんはハンモックを、サーラちゃんはブランコを見つけてさっそく使っている。
「このゆらゆらが気持ち良いわ。
毛布かましてもっと結び目が気にならなくすれば、もっと快適かしら?」
そんな事を言っていたが、気にいったようだ。他の人達と代わっているが、何回も乗っている。
お父さんはサーラちゃんを軽く押してあげているが、「こういうのは父親が作る物じゃないのか?」とか言っている。……、「滑り台作ってあげたら、喜ぶんじゃないかなあ」と返しておいたよ。
ローニーさんは、子供さんにブランコを作ってあげる心算のようだ。
この後、町ではちょっとしたスペースにブランコや滑り台が設置され、ブームが来たのであった。 それに隠れるようにして、ハンモックのブームも来たらしい。
◇
スウェーデントーチやバーベキューをしている網のまわり、仮設のテーブルセットなど、みんな思い思いの場所に腰を落ち着け談笑している。
私もやっと、色んな職人さんと話せた。
みなさんお父さんに、「若い娘さんによってたかったら、困らせるだけだろう! 落ち着くまで、しばらく待て」と、お父さんにお世話になった二日目には厳命されていたのだそうだ。道理で放置してくれると思ったよ。
そしてありがとう、お父さん。色んなところで守ってもらっているな。本当にありがとう。
たまにはこんな夜も良いな。
将棋やオセロを楽しんでいるグループもいる。これも先の転移者か、お父さんが持ち込んだのかな?
娯楽がないから、夜が長いんだわ。以前よりみんな遅くまで起きているようになっているらしいんだけど、遅くても夜十時には寝るのが普通。
起きててもやる事がないからさ、私も早寝する。
……マクラメでもして、お母さんの店においてもらおうかな。
楽しかったバーベキューは、八時くらいにお開きとなった。
みんなを見送り、お父さんの内弟子のお二人が後片付けを手伝ってくれている。
お父さんに内弟子がいるって知らなかったよ。
一階に一人部屋が二部屋あって、そこに昨日から住んでいるそうだ。お父さん、そういう事は言ってよ。
二人で共同で使うキッチンや風呂、トイレもあって、二階の自宅へ来る事はないそうだ。いや、それでもさ?
お母さんの仕事場にも、奥になんかあったな。って、お母さんの仕事場も風呂、トイレ、キッチンは二人で共同で使うとはいえ、完備した部屋があるとな?!
まあ、仕事や仕事場の事は、私が口出しできる事ではないか。
◇
「あ、網についてる脂や肉は、炭になるまで焼いて下さい。その方が早くきれいにできますから」
「分かりました」
「テーブルは明日、明るくなってから片付けるか」
「あ、じゃあ冷蔵箱、一緒に持って。そんなに余った食材はないけど、意外と重くて」
「持って行くから、サーラちゃんを風呂に入れてやれば良い。眠そうにしてる」
「あ、本当ね。ごめんなさい、じゃあ先に家に入るわね」
こうして初めてのバーベキューの夜は、驚く事もあったが、穏やかな終わりを迎えた。
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