34:お母さんの夢
シュバツェル16年4月13日(水)
うんーん? 暑い、重い……。
クー、ルー。窒息しそうだから、顔の上で寝ないで……。
今日は味噌汁とご飯とベーコンエッグくらいで良いよね。みんな昨日、もりもり食べていたから、多分胃が重いと思う。
あー、服を作らないと、上下一式ダメにしたな。靴は流されも傷みもせず、無事だったのは幸いだ。
クローゼットを覗きながら、数が減った着替えの事を思う。
「おはよう、ずいぶん朝早いね。
寝れなかったかな?」
着替えて部屋を出るとサーラちゃんがもう起きていて、両親の部屋から廊下を覗いているのだ。
抱き上げて抱き締めると、「おはよう。おきたの」と返ってきた。「まだ寝てて良いよ。それともお手伝いする?」と聞いてみたら、お手伝いするというので一緒にキッチンへ。
着替えは今日、お母さんが作ると張り切っていたので、パジャマのまま料理しても良かろう。
◇
ダイニングのイスを一つキッチンへ運び、コンロの前に置いて、その上にサーラちゃんを下ろす。
「しばらくそこで見てて」
お米をボウルに入れ、研いで炊く用意をする。
コンロに手をついて、一生懸命見ているのが可愛い。
鍋に米を移して水を計り、このまま放置。
お米をお水で洗って、今はお水でふやかしているんだよと説明する。すると、サーラちゃんはうんうんと頷く。
昨日の夜、鍋に水と昆布を入れていた鍋を火にかける。これは味噌汁の出汁を取っていると説明。サーラちゃんはまた、うんうんと頷いている。
一つ一つ説明しながら準備をしていく。
米を炊く時は鍋の蓋をしてもらったり、切った味噌汁の具を少しずつお皿に入れて渡してから鍋に入れてもらったり、危なくない範囲で手伝ってもらって、一緒にご飯の用意をする。
ローリエさんが起き出してきて、調理風景を眺め始めたり。お母さんとアージヨさんも起きてきて、観戦組が増えたり。
クーとルーが朝ご飯まだーって足元くるくる元気に回り始めたのは、お母さんとローリエさんに確保してもらったり。
起き出してきたお父さんが、クーとルーのご飯のお肉を包丁でミンチにしてる間に、サーラちゃんの分のベーコンと卵を食べやすい大きさに切ってしまって、皿に盛り付ける。
カトラリーの使い方が、昨日見た限りでは覚束ないので、食べやすくしたのだ。
クーとルーの躾が終わると、みんなでご飯になった。
洗い物をローリエさんがしてくれたので、今朝はちょっと楽ができた。ありがとうございます。
その時間に、サーラちゃんの髪を編み編み。アシンメトリーの編み込みから毛先近くまで三つ編みしただけだが、お母さんにもねだられた。
お母さんは二回クルリンパするだけの、別のヘアスタイルにした。リボンできっちり止めるのって、なかなか難しいな。
金髪って、コシもなくてとーっても細いんだよね。それも、理由なのかな?
お父さんは今日もお弁当はいらないし、手ぶらでアージヨさんと出勤。
お母さんは見学に誘ったローリエさんと仕事場へ。
休みのシフトの関係で一台ミシンが空いているそうなので、後で使わせてもらう事にした。
◇
「きゃー、可愛い~!」
ふう。良い仕事したわ。サーラちゃんの裏は適当、レイヤード風ベスト完成。
柔らかな茶系のベストに、レイヤード部分の淡いイエロー系の襟、長袖のキャンディスリーブ、長目の裾を取り付けた。
ボトムスは、濃いブルー系のガウチョパンツ。ガウチョには、大きなシームポケットも付けている。
「一枚の服で二枚着てるみだいなんて、面白い!」
鏡の前で顔を真っ赤にしているサーラちゃん。
中古の服を買うのも珍しい家も多いので、新しい服を仕立てるとなると、もはや一大イベントと言ってもいいのだ。
そんな中、服を二枚着ているというのは相当な贅沢。
「どう? 気に入ってくれたかな?」
「す、ごい! ありがとう」
こちらを振り返ったサーラちゃんが、勢いよく飛び付いてきた。お気に召して何より。
後ろからは「これも書いておきます」とか言っているサイラさんの呟きが聞こえる。
「ワンピースだと、傷んだら買い替えるのも使う生地が多いから高くなるだろうけど、上下が別で上だけ買い替えるなら、使う生地がワンピースより少ない分も安くなると思うよ。
デザインもこんな凝ったのじゃなければ、もちろん、さらに安くなる」
そして同じ生地でラグランスリーブのロンT、身ごろと袖で生地を切り替えた物も作った。
「こういうのなら使う生地は本当に一枚分でも、無地とはまた違うでしょ?」
これはお店のラインナップ入り決定となった。もちろん後ろからは、「書いておきます」って声も聞こえた。
◇
「はーい、これをかき混ぜます」
お昼もサーラちゃんのお手伝いありで料理となった。
今日はドリアだよ。今は野菜を炒めて小麦粉を入れ、牛乳を入れてかき混ぜているところだ。
適度に煮詰まったらご飯を入れ、さらにかき混ぜる。
煮詰まれば器へ盛ってチーズを乗せ、オーブンへ。
お母さんはラグランスリーブの量産と、サーラちゃんの服を作るのでいらないそうだ。
ドリアをオーブンに入れている間に、クーとルーのご飯を作って躾をする。
もう完璧にこなす。
トイレはトイレトレーで必ずすれば、"付け"も"お座り"もできるし、"止めなさい"もできる。絶対に言葉を理解していると思う!
焼き上がったドリアは昆布だしで作ったので知っている味とは違ったが、美味しく食べれる物ができあがった。ほ。
お昼の後にサーラちゃんとクーとルーと遊び、少しサーラちゃんをお昼寝させ、 その間は座学。
「はい、どうぞ」
「かわいい」
サーラちゃんが少しでも食べる気になるように、オレンジをウサギにカットした物を今日のおやつにした。
これも後ろで記録していたが気にしない。
しかし、ウサギさんカットのオレンジは、可愛くて食べるのがもったいないとなかなか食べてもらえなかったのは失敗したわ。
ちなみに、ローニーさんとサイラさんも同じ事言っていた。
おやつの後、またお母さんの仕事場で、今度は自分のトップスを作る。
Vネックの何の変哲もないロンティーを作ったのだが、新しいデザインが見れるかもと期待していたお母さん達は落胆していたが知らない。
「私が着る物が、凝ったデザインのわけないでしょ」
「でーもー、ブラウスとか?」
「製図がいるからすぐ作れないし、襟だの前たてだの生地くうから自分のでは作らないって」
何より手間がかかって、作るとなると邪魔くさくてしかたないよ。
「じゃあ、何かデザイン描いて?」
はいと、木簡を渡された。エー。
お。元は水兵の制服だったセーラー服ならこっちにはないだろう。セーラー服っと。
スカートからレースとか出すデザインも見ないから、スカートのレイヤード。
「こんなのはどう?」
セーラーは生地を使うので、つけ襟で手持ちの服に合わせて楽しむ方法もあると口頭で伝える。
つけ襟はあるそうなので、そのバリエーションに取り入れるそうだ。
スカートのレイヤードは、数年前に魔道具ギルドから新しい機織機が発表され、それが現在主流になりつつあるそうだ。生地が量産され、価格が少し安くなりそうだから、これくらい余分に生地を使っても高くならずに作れそうだと喜んでくれた。
手織りが魔道具織りになったイメージかな?
「布の生産が増えて需要に追い付き、ミシンで人件費が安くなって、みんながもっと安く新しい服を買えるようになれば良いわ」
お母さんは目をきらきらさせて、夢を語った。良い夢だね。
「新しい織機に期待だね」
転移者の知識やこの世界の人達の努力で、農産や畜産、酪農はずいぶん発達したと座学で聞いた。
食べる物にゆとりが生まれて、他に手を伸ばす時間ができたなら、きっと色んな物を開発、生産するゆとりのある人もたくさん現れるよ。
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