17:パワーストーンとスマホ
「優、眠っているの?」
目を閉じてるうちに、うたた寝していたらしい。
「ちょっとうたた寝してたけど、起きれるよ」
「それ、マスクよね? 良くできてるわね」
「ありがとう。手作りなんだ」
「優の世界は、手作りは珍しいのよね? 耳紐のところの作り方、いつか教えて?」
「いつでも。簡単に作れるよ」
「楽しみにしてる。
はい、これ。お湯に浸けて絞ったタオルよ。顔拭いて。
トイレは二階のを女性用にしているから、身支度したら集合って伝言よ」
「分かりました」
それちょうだい、とマーチャさんは使い終わったタオルと、下げてなかった食器を持ってくれた。
「タオルも食器もごめんなさいっ」
「良いのよ~。気にしな~い、気にしな~い」
マーチャさんの無邪気な可愛らしさにほっこりしつつ、こそこそトイレへ向かう。みなさん休憩といえど、交流して仕事中みたいな時間だったのにゆっくり過ごし、しかもうっかり寝ていたので後ろめたいんだ。
しかし、何やらばたばたしてるなと思ったら、足りないものや必要そうな物を、各ギルドから届けてもらってるようだ。
こちらのスマホはまだまだ試験段階で、各ギルドと、個人では各ギルドのギルマスと副ギルマスくらいしか保有していないらしい。
スマホからもボーリング玉みたいな水晶からも、国もどのギルドかも距離も関係なく、思っているボーリング玉みたいな水晶へ接続出来るけど、スマホ同士でやりとりができないから、普通の人が持っても意味がないんだそうだ。
例外は、軍や冒険者の一部に普及している事だそうだ。
軍に置かれているボーリング玉みたいな水晶や、近くのギルドにすぐに救助を求められるから、救助要請ツールになっているんだと。
思考を戻して、ギルドが新設されたら、必然的にあの水晶が設置されるなら、増やす手段はあるって事だ。
あのボーリング玉みたいな水晶は、登録などの情報を、他のボーリング玉みたいな水晶に一斉配信が可能。それに、ドッグタグみたいな物に付いている水晶から、情報を引き出すだけの送受信もできていたんだから……。
なんだ、ギルドへの登録やデータの更新と同じじゃんか。
ボーリング玉みたいな水晶同士ならやり取り可能で、身分証にもらったドッグタグ同士ではやり取りができない。ボーリング玉みたいな水晶と、ドッグタグではやり取りは可能。
後気になるのは、ボーリング玉みたいな水晶には内包物が入っていたけど、身分証には内包物の入ってない水晶が使われている事。
パワーストーンだと、何も入ってない水晶と、内包物の入っている水晶では効果が違うとされている。
お父さんも、身分証は記録媒体みたいなものって説明してくれたしね。
うん。試す価値はあるかな?
つらつらとそんな事を考えていると、いつの間にか会議が再開されていた。
お昼休憩の時に話し合われていた事の話が一段落した時に、朝の続きをお願いされた。よし、思い立ったが吉日!
「朝の続きの前に、お願いがあります。
ギルドにある、内包物のある水晶……。えっと、カウンターにある大きな水晶玉です。
それと同じ水晶で、内包物がある部分を使ってスマホが作れますか?」
「なかなかない魔石だが、加工する時に出た欠片を保管してある。その中に、内包物のある欠片がないか探させよう。
あればすぐに加工して、いくつか届けてもらおう」
「それがあるなら、スマホにするのは可能ですわ。
まだ水晶を嵌めていないスマホをここへ届けさせ、私が加工しますわ」
「ありがとうございます。
宜しくお願いします」
前者はまだご挨拶へ伺ってない、魔石ギルドの方だろう。
後者は昨日お会いした、魔道具ギルドの筆頭専属担当とご挨拶頂いたマリーナさん。
お二人も、ご迷惑かけるみなさんも、宜しくお願いします。
でもこれで、心置きなく朝の続きが出来る。
「休憩の時に湯たんぽとカバーの話は終わったから、エアマット、保温シート、布団乾燥機の話を頼む」
「分かった。
休憩中は席を外していてすみませんでした。では、エアマットから話します」
こうして話し始めるも、しばらくすると空咳が出始める。
マーチャさんが、効く症状と効かない症状があるけれど、飲んでみてと持って来てくれたポーションを飲んでみたけど、あまり変わらない。
たまにだけど、人混みに長くいたり、空気の入れ替わらない所に長くいたりすると、喉を痛める事があるんだよね。
ここは人がそれなりにいても人混みほどじゃないし、出入りもあるから空気もそれなりにに入れ替わってるはずなんだけど?
「ツヨシがピンピンしとったから忘れとったが、昔、ばあさまから、転移者は転移してからしばらく風邪のような症状と、腹を下す症状を患う者が多いと聞いたぞい。
何でも、こっちの水や空気に慣れる期間かもしれんと、いつかの転移者がゆうとったらしいわい。
その期間が終わると、この世界で生きられる体質に変わるんじゃとされとるそうじゃ」
「"所変われば水変わる"って諺があって、同じ国の中でも気を付けろっていうからな。
優は無理せずもう休め。みんな、構わないか?」
「ありがとう。熱はないし、しゃべらなきゃ平気そうだから、ここで座って聞くだけ聞いているよ」
「本当に大丈夫か? 辛かったら、いつでも部屋へ行って休むんだぞ」
「分かりました」
そう答えてイスに腰かける。
始めは気遣わしそうな人もいたが、大城さんの話しに、みんなどんどんそちらへ意識が完全に向いて行くのが、見ていて面白かった。
途中、これをこんなに風にしたら、こんな使い方でこうならないかなといった事を一言だけ口を挟んだ。魔道具ギルドから届いた、水晶の嵌まってないスマホにそわそわしたり、商業者ギルドの作ったカートを、みんなであーだこうだ言うのを聞いているうちにあっという間に時間が過ぎた。
そして、お待ちかねの、ボーリング玉みたいな魔石の欠片で作られた、十ミリくらいの玉が届いた。
マリーナさんが手早くそれをスマホに組み込み、二台のスマホを完成させた。
早速スマホ同士で繋がるか試したら、バッチリ繋がった。
やったね!
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなどお気楽に、下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね!
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます!




