14:一国一城は凄かった!主はもっと凄かった!!
月曜日。今日は、大城さんの建築中のお家の現場へお邪魔する。
凄いドキドキする。
大城さんの建築中の家は、商家の多い地区の一角にあった。
大城さんの仕事場と、マーチャさんの仕事場を自宅の一階に併設するにあたり、それなりの広さの土地を探してここに決めたんだって。
今は二人の仕事場所が、少しずつ数ヶ所に分散していて非効率なのだそうだ。
思い出してみれば、今の家で大城さんの事務仕事をどこかでしていて、針仕事の部屋があってってしてたな。
大城さんの仕事部屋とか、そんな部屋は逆になかったなと納得。
どれがお宅か聞かなくても分かった。凄い。
新しい家の外観は、一階部分は薄い灰色の石ブロックで、二階部分は白漆喰で仕上げられた美しいもので驚いた。
台風のない風土だが、防犯の為に頑丈な引戸タイプの雨戸も備えたという。
戸袋も、一階のは重厚な色味の木目調に。二階のは白くして、それぞれ目立たないようにした拘りの仕上げが小憎らしい。
大城さんの建築関係のお弟子さん達をはじめ、多くの人が忙しなく行き来している中、お邪魔しますと挨拶しながら自宅となる二階を目指す。
ちらちら、あるいはじろじろ見られても話しかけられずほっとする。
自宅用の玄関は、建物の右手の中程の壁にそって伸びている階段から入り、一階の内部に一部組み込まれた階段へ回り上がったところにあった。
上が工夫されてるのか、明るさがあって良い。
二階部分の床の高さに近くなった目に飛び込んで来たのは、階段の開口部まで覆う大きな庇。その庇の柱に合わせたガラス張りの立派な風除室! 階段が明るかったのは、この空間のためか。
風除室のガラス越しに、両脇はルーフバルコニーと、玄関と横並びの掃き出し窓越しに作業している人の見える部屋。
そして、登ってきた階段の正面の開け放された引戸の先に見えるのは、上がり框!
靴が脱げる。嬉しーいっ。ずっと靴を履いてる生活は、楽な一面もあるけどやっぱり靴は脱ぎたい。
「いやー、若い世代は分からんが、俺は家の中では靴脱がないと落ち着かんから。日本風の玄関はどうだい?」
「もちろん最高です!
と言いますか、洋風のお洒落なお屋敷のような広さに驚きです」
「下は仕事場だから、二階の住居部分だけならちょっと広めの家くらいの広さだ。
ただ、色々な技術を遠慮なく詰め込んだ」
そこはもう、遠慮なくやっちゃいましょう!
玄関の両サイドには、引戸のついた座れる収納ラック。たぶん、シューズボックスかな? 靴は見当たらないけど、人はいるんだし。
床や腰板はざらつきのない、光沢のある板が張られている。
奥行きがあるためか、天窓が二ヶ所設置されていて明るい。
シューズボックスからスリッパを出して下さり、スリッパに履き替えて靴をしまう。
左手の一つ目のドアから中を覗き、大城さんが中の人におはよう、順調かと声をかける。
私もおはようございますと、挨拶だけした。
「親方、おはようございます」×2
「仕事は順調ですよ。ただ、外は今日も冷えてるってのに、中はずいぶん暖かくて、眠くなってしかたありませんや」
「床が温いなんて、何の魔法ですか」
「俺が作った、『床暖房』って魔道具で、床下から部屋を暖めるんだ。靴を脱いで家に入るから、寝転ぶ事も出来る。
靴を脱いで家に入るのも、悪かないだろ?」
「そりゃもう、悪いわけありませんや」
そうだろ、そうだろ。何かあったら事務所にいるからなと、次の部屋へ向かう大城さんについて行く。
職人さんたちには、お邪魔しましたと声をかけて。
ドアを一つ飛ばして着いた部屋は、リビングになっていた。あれ、じゃあさっきの部屋は何?
あそこがリビングだと思ったんだけど? うーん?
ここでも大城さんはおはよう、順調かと声をかけている。もちろん、私も挨拶をする。
職人さん達から挨拶が返ってくるのと、床暖房を絶賛されるのまでがさっきと同じ。
ダイニングの部分は大丈夫だが、対面式キッチンの方で困っていた。
大城さんは一通り話を聞き、丁寧に説明し、少しやってみせていた。
こちらとやり方が違うから大変だろう。
いつも言っているが、焦らずゆっくり、丁寧に作業しながら覚えてくれといった事を伝え、しばらく様子を見守っていらした。そして、後は頼む、何かあったら事務所にいると、キッチンとダイニングにいる人達に向けて言い残してキッチンを後にした。
良い上司だなと、笑顔になってしまう。
対面式キッチンの反対側は、引戸の横に中身の詰まった大容量の食器棚が二つあり、パーティー用かな? と首を傾げつつ引戸を潜り抜けると、右側からトイレ、洗面所、脱衣所、お風呂が並んでいた。
お風呂は細い廊下の幅目一杯もプラスして使っていて、キッチンの壁と共有の構造っぽい。
トイレ、洗面所はしあがっていて、この並びの中では脱衣所で作業している人がいるだけだ。
そこは大城さんに確認してもらう前に、自分で最後の確認と調整をしている段階なので、後で声をかけますとの事ですぐ離れた。
脱衣所を出て左へ進むと、玄関から続く広い廊下とつながっている。広い廊下の付き当たりは、見た事のある景色が……。
一応裏口らしいけど、これ、裏口のレベルじゃありませんから! 玄関で通ります!
違うのは奥行きだけで、それに合わせた座れるシューズボックスも鎮座してますやんっ。
玄関と同じ引戸の外は、構造はルーフバルコニーだけど、機能はサンルームってなんですか……。
壁沿いの内階段で、大城さんの仕事場から、玄関へ回らずに家に入れるようにもなっているとか。
何とか言うか……ねえ?
今度は玄関に向かって左側の、玄関から二つ目のドアの中へ。
お。廊下側の壁がちょっと高くなっていて、その段差部分に細い窓が設置され、ここも採光に神経を使っていらっしゃる事が伺える。
東側になる細い窓からは、朝陽が差し込んでいて本当に明るい。
ドアの向かいの壁にも、北側とはいえ、三枚の窓が設置されていて開放感がある。二枚分の網戸まであるよ!
廊下と同じ、ざらつきのない、光沢のある板が張られた床と腰板。
置いてある家具は宮付き・フットボードなしのベッド。三個組の可動式のクローゼット。それに、入れ子になっているテーブル。
背の高い方はイスに座っている時に、背の低い方は床に座っている時に良さそうな高さの物。
同じデザインのイスが、窓の下のテーブルの左右に一脚ずつ配置されている。
どれも無垢だが、面積が一番広い三個組の可動式クローゼットが腰板と同じくらいの色味。次が、テーブルとイスがそれより濃い色味。ベッドが一番濃い色味の物で造られている。
シンプルで洗練された印象の部屋だ。
あまりにも素晴らしい内装に驚いて声も出せずにいると、
「ここが優ちゃんの部屋になる。
足りない物や入れ換えたい物があったら、遠慮なく言ってくれ」
しばらくの間、さっきまでよりも驚いて口をパクパクさせながら、大城さんを見詰める事しかできなかったのだった。
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなどお気楽に、下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね!
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます!




