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書き込まれていくいつか必ずヤるリスト


結論から言えば、交渉は成立した。


上目遣いで可愛さをアピールした後、聖水の瓶を抱えて見ちゃいやーよ、見たら効果が無くなるんだからねっ!とツルの恩返しを真似て個室にこもる。

そして一人テーブルの前で、前世一番泣いたと思う忠犬ハチ公の映画を思い出しボロボロ泣いた。


ゔゔゔハチ〜、カムバ〜ックッ!




そして見事にトリクルを作り出すことに成功っ。


確認し終わるまで口から胃が飛び出そうなほどドキドキだったけど、彼らの驚愕した顔には胸がスーッとしたね。アーーッハハハ、ハ……ハ…いや途中、笑ってもいられなかったけど。

え?…ははは、ボク危うく聖女認定されるとこでしたー。


上司、つまり隊長が欲を出し、ボクを枢機卿とか貴族に売ろうとしやがりやがったんですよっ。

いやいやいや、ボクは家族達から離れるのも嫌だし、聖女は主人公ヒロインちゃんであって買い食いにも護衛がつくような身分なんてボクはゴメンだからね。


ここだけの話、聖女って必要最低限の能力と三人いる枢機卿の一人の認定だけで、ぶっちゃけ誰でもなれるんだよねー。事実、過去にはそういった名ばかりの聖女も何人か在籍したのだとか。

ゲームではどうだったんだろう?

それに比べて黒騎士は希少な存在だからね。

多少揉めはしたけど、職業の希少性とボクと言う生きた金貨トリクル製造機を確保した彼は渋々諦めてくれた。


分かっていたけど、ほんっと人を都合のいい道具としか見てないね。



そうして上と契約し、毎回ボーナスとして僅かだけど食料や備品に医療品をゲットすることに成功したのだった。

そしてボクを上司に紹介した教官だけど、、すこぶるご機嫌だよ。

どうやらボクの作るトリクルは、他とは一線を画すほど出来が良かったらしい。

まぁレイヴを始めとして可愛い弟妹達への愛がたーぷり詰まっているからね。

いずれヒロインちゃんがトリクルを作れるまで、荒稼ぎさせて貰おうっと。


んで彼は、組織じぶんに有益な情報をもたらしたと目をかけられ、その上ボクのボーナスが現物支給で2割が懐に入ってくるんだよ。

ホクホク顔にもなるというものだろうね。


ここはボクの落とし所でもあった。

下手な事をすればアルバイト料はそのまま全て教官の懐に入ってしまう。

これから持続的に物品が入る事と、もしまた儲け話があれば真っ先に話す事を約束し、何とかニ割で解決した。

もちろんこのまま搾取され続けるつもりはないよ。

教官殿には早目に御退場して頂く予定だ。



因みにこの数十分のやりとりだけでボクの心の中にある、いつか必ずヤるリストは10ページ目まで書き込まれている。



でもーー。




ーードサッッ



「リウっ!!」


弱っている幼女を放り投げるとは如何なものだろうね。



ーー君、絶対塔の上から綱なしバンジージャンプをさせてあげるから楽しみにして待っていなよ。



支給品の箱が二つ放り投げられ、体にボコッボコッと当たる僅かな痛みと音を聞きながら、ボクは心の中にある、いつか必ずヤるリストの11ページ目に書き込むのだった。



ぐったりとしたボクをレイヴが優しく抱き上げてくれる。

ジェントルマンでお姉ちゃんは大変嬉しいよ。


「リウッ!何があったんだ!?おい、しっかりしろっ」


「…大きな声出さなくても、聞こえる…大丈夫……眠い、、だ、け…」


これは本当。

今もすっっっっごく眠い。眠たくてたまらない。


大人でも泣くのに体力を使うけど、子供の体力的には更にキツイ。

しかも精神力?ゲームでいうMPみたいなものが吸い取られていくみたいなんだ。

何時間もパソコンの画面から強制的に離れられなかった時のような疲労感がのしかかっている。

超ーーっ眠い。

しかしまだやることが残っているからね。


ーーお姉ちゃんはがんばるよっ。



「レイヴ、バンザイして…」

「は?いや、今はそれよりも」

「バンザイ」

「な、なんだっ?お、お前なに脱がせて、いや、そういったのは俺達がもう少し大人になってからだな…勿論責任はとるし、いずれ生まれてくる子供も…」


眠い目をこすり、ボクは何やらブツブツ言っているレイヴのシャツを無理矢理上げたーーやっぱり。

腕だけではなくお腹もアザになっている。


「その前にプロポー…、、ヒゥッッ」


箱から取り出した打ち身切り傷の軟膏をペタペタ塗ると、冷たかったのかレイヴから可笑しな悲鳴が上がる。


ーー面白い。


腕も手当する時も同様の悲鳴が上がり、なんとなく癖になりそうだよ。


「お、お前、なんか手際が良すぎないーーんぐっ」

「ん」


わんぱくな弟たちがよく怪我をしていたから、応急処置や包帯の巻き方はそれなりと自負している。

レイヴの包帯を巻き終わり、解熱剤と痛み止めの錠剤を余計な事を詮索する口に押し込んだ。



その後残った医療品を使い怪我人の手当をしていく。


小さな手を取り腕の軽い擦り傷や切れた手の甲に消毒液と絆創膏を貼っていく。

一卵性の双子の姉弟、シルビアとシリウス。

二人はクリクリとした大きな目、明るい茶色でふんわりとした髪質の月並みの表現だけど、可愛らしいお人形のようなんだ。

ああっ胸がキュンキュンするよっ、そのハニカミ笑顔はプライスレスだね。

手当を終えたボクにありがとう、と小さく呟いた姿に何故今ここにスマフォが無いのかと涙した。



次はアシェット。

彼は攻略対象者だ。

キャラクター紹介では片目にモノクルをかけていたけど、現在眼鏡は無い。

肩口で切られた髪がサラサラ動き、まるで天使のような顔立ちの綺麗な少年だ。

ゲームでもその美しい髪を耳にかける仕草がステキで、宗教画から出て来たような聖人の儚さを兼ね揃えた美人さんだけど、実際には口も性格も悪く、大きなバトルアックスを振り回すパワー重視の戦闘狂になるのである。


アシェット君 、何でも昼の訓練中に教官相手にやんちゃをし過ぎたらしく、お腹を何回も蹴られたらしい。



ーー判決、腹パン5000回の刑に処す。


ボクは心の中にある、いつか必ずヤるリストの12ページ目に書き込んだ。



「ちょっ、待て待てっアンタ絶対それ冷たいっっ、二ギョエェッッ」


ーー癖になりそうだ。





そうして癒されつつ怪我の処置を終えた頃にはもうフラフラだった。

もう一つの箱を拾い上げる時に、疲れで膝から崩れ落ちる体をレイヴが支えてくれる。



心配な気持ちを隠しもせずボクの名前を呼び続けるレイヴなの声に、なんだか胸が暖かくなった。前世でも家族以外の男の人にこんな目で見られるのは初めてで、どうしたらいいか分からないんだ。

前世の記憶が蘇る前は、普通に額や頬にキスされてもしても当たり前だったけど…。

今のボクは子供だし何もおかしいことは無いよね、ね?

ボクは思い出して赤くなる顔を隠し、急いで箱を差し出した。



「こ、これ、食料。みんなで分けてよ」


「食料ってアイツらが…?お前、本当に何をしてきたんだ?」


「…臨時のお仕事?んー、その報酬?」

「仕事って…リウ?」


安心したらどっと疲れが…。


「レイヴ、眠い……ボクの分のご飯、レイヴがたべ…て…もう、眠く、、て…」



そうしてボクは深い眠りに落ちた。





「ありがとな。

おやすみ、リウ」




優しい声が聞こえた気がした。





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