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第七話

「やっぱりな。お前魔王だろう?」

男はそう言いながら人混みをかきわけ、こちらへと歩いてくる。

俺は錆びた機械のようにぎこちない仕草で振り返る。

心臓はバクバク音をたてていた。

なんでバレたんだ?

勇者だからわかるのか?

男がにんまりと笑みを浮かべる。

「よう、久しぶりだなぁ!」

おう、久しぶり……って、えっ!?

なにこのフレンドリーな感じ?

そもそもこんな知り合いいたっけ?

困惑する俺の隣からなにやら声が聞こえる。

「うわぁ、やっぱりアンドリューじゃない。こんなところで会うなんて……」

声のした方を見ると、舞桜ちゃんが心底嫌そうな顔でその男、アンドリューを見つめていた。

一方のアンドリューは嬉しそうな表情で舞桜ちゃんに話しかける。

「おう、舞桜。相変わらず成長してないなぁ!」

もしかして今まで、『魔王』じゃなくて『舞桜』って言ってたの!?

なんだ、俺の早とちりか。

最近魔王関連の話題には神経が過敏になっているのだ。

「えっ? 成長してないってどういうこと?」

アンドリューの言葉を聞いた琴葉が首をかしげる。

そうだ、琴葉は舞桜ちゃんが不老不死であることを知らないんだ。

舞桜ちゃんがより一層嫌そうな顔を見せる。

余計なこと言いやがって、という顔だ。

そんな舞桜ちゃんの表情に気づかないのか、それとも気づいた上でわざとやっているのか、アンドリューは琴葉に説明しようとする。

「なんだ、君は知らないのかい? 実は舞桜は……」

途中まで言いかけたアンドリューが顔をしかめる。

喋ろうとしても喋れない、といった感じの表情だ。

その様子に俺は心当たりがある。

これは舞桜ちゃんの口封じにやられたな。

「もう、私に構わないでよ!」

舞桜ちゃんがアンドリューを睨みつけそう叫ぶ。

するとアンドリューは何かにつままれたかのように宙に浮き、手足をじたばたさせ始めた。

「あっちいっちゃえ!」

その言葉とともにアンドリューは遥か彼方へ吹っ飛んでいった。

……あれ無事でいられるのかな?

俺だったら絶対即死だ。

アンドリューの持つスキル『勇者』とやらが優秀であることを祈ろう。

アンドリューを吹っ飛ばした張本人である舞桜ちゃんは、琴葉の服の裾にしがみつく。

「私あの人嫌い……」

その仕草はやっぱり普通の小学生だ。

琴葉が慰めるように舞桜ちゃんの頭を撫でる。

俺はあのアンドリューという人物のことが気になったので尋ねてみることにした。

「今の男は何者なの? なんか知り合いっぽかったけど」

するとまたしても舞桜ちゃんの表情が歪む。

話すのも嫌だ、という顔だ。

「耀お兄さんと琴葉お姉さんと同じ感じ。幼馴染みというか……」

舞桜ちゃんが歯切れ悪く答える。

「幼馴染みねぇ……。アンドリューさんは二十代前半くらいに見えたけど……」

琴葉は首をかしげている。

それだけ年が離れていると、幼馴染みという言葉は似つかわしくない。

でも舞桜ちゃんの場合状況が状況だからそういうこともあるのだろう。

しかし、三百三十四歳の舞桜ちゃんと幼馴染みとは、あのアンドリューという人物も相当の歳だったりするのだろうか?

興味はあったけれど余計なことを聞くと俺もアンドリューのように吹っ飛ばされそうだったので、聞くのはやめておいた。


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