表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

1. はじまり

  綺麗な装いをした名家の美女たち。そのたわいないおしゃべりの間にも優雅な音楽が豪華な部屋を満たし、そこは主人の麗しの場である。

  「そういえば、聞きまして、ステラ様。今日から新しい側女がこちらに加わったそうで、それもまた随分とシユウ様に愛でられているそうですよ……」

  意味ありげに話す美女に、私は楽器を弾く手も止めずこう答える。「それはまた、賑やかになって嬉しゅうございますわ。早くお近づきになれたら良いのですが。」

  「まあ、ステラ様はお優しいこと……」美女は微笑んで本心を隠す。

  そう、ここは一流の女たちがその美しさを競い合う後宮(ハレム)。一夫多妻が認められているこの国では貴族の元によく後宮(ハレム)を目にする。ただ、何がこの後宮(ハレム)の女たちをピリピリさせているかといえば、ここの主人がユスレム王国の南州を支配する王子、シユウ・マニザレフだということ。そして、彼はまだ正妻を決めていないということ。その後宮(ハレム)でも私ステラは、王子の正妻最有力候補の姫である。

  理由は簡単。まず私は隣国の姫で身分は上等。母譲りで顔立ちも良い。それに、唄、舞、楽器、教養何をとっても、他より一段と優れるよう育てられてきた英才教育の賜物だ。別に自惚れているわけではない。ただ、これが事実なのだ。そして、周りが私が正妻になることを確信していることも。

  ちなみに、後宮(ハレム)の女には二通りある。一つは正妻を目指すもの。これはだいたい身分の高い娘であることが多い。もう一つは、実家のために後宮(ハレム)に残ることのみ考えるもの。このようなものは皆、将来正妻になろうというものの下に集まり、派閥を作る。すなわち、後宮(ハレム)にいるものは侍女でさえ、この派閥にいる側女の数で誰が正妻に一番有力か一目でわかる。まったく、怖い世界だ。

  そんな中、私の下に勝手に生まれた派閥には、後宮(ハレム)の側女のほとんどが集まっている。

  そして、人が望んでいるかどうかはおかまいなしに、私を正妻にできるよう日々努力し、また幅を利かせているのだ。


  ユスレム王国とは、ここら一帯を支配する三大帝国の一つ。そしてこの国は大きく4つに分かれている。南北東西に。南州とは、その中でも唯一海に接している一大都市で、国のほとんどの富はここに集まっているといっても過言ではない。だが、繁栄している反面、治安も悪い。シユウ王子が治めるまでは、隣国から入り込んできた薬物に侵されていたこともあったらしい。まあ、私は知らないけれど。

  とにかく、そんなこんなで、ユスレム国の首都は一面を砂漠で支配された巨大な州、北州にあり、それはまたの名をキンテスという。ユスレムの古語で泉という意味で、そこがこの国のはじまりだということだ。

  ユスレム国はそもそもその広大な砂漠で生まれ、領土を広げていった帝国である。ただ、ひとつ普通の帝国と違うところは、侵略した土地を全て奪い取るのではなく、条件付きでその国の自治を認めるということ。さらに、それぞれの支配者を皇族とし、尊重すること。私が読んだ本の中には、それは砂漠を超えて土地を治めるのは難しく、自治で安定されたものを操ったほうが都合が良いからと理由づけされていたが、私はこの支配の仕方は素晴らしいと思う。人は自分の欲に負けてしまうことがほとんどだから。私だってそうだから。私の母国なんてもっと……。

  楽器を弾いている私の手がふいに震え、音が少し鈍る。私は少し慌てて弓を持つ手に意識を傾けた。

  いけない、母国のことを考えると私、おかしくなっちゃうから……。

  自分への呆れ笑いを隠しながらも演奏に切りをつけた私は楽器を持って立ち上がる。泣いてるところはやっぱり、誰にも見せたくないから。

「ステラ様、どうされました?」ティアという私にいつもつきまとってくる美女が演奏を止めて、声をかけた。すかさず私は優雅に手を振って、おしとやかに、

「しばしの間、お暇させていただきますわ。疲れているようで。」と一言残して、自分の部屋へと向かった。

 付き添いますと言ってきた侍女たちの親切も突き放して。


  「はぁ……」ため息をついて私はベッドに身を投げる。

  遠かった……

  私の寝所は妻たちが日々を過ごす母屋から結構奥深まった離れのような場にある。もっとも、ユスレムの後宮(ハレム)では、奥に深まれば深まるほど、主人の寝所に近いということになるので、位が上になる。事実、私の寝所の前の廊下を突き当たればシユウの寝所だ。

  ただこの長い廊下は私には苦痛でしかない。廊下ではおしとやかに、姫らしく振舞わなければならない。そんな緊張感にずっと縛り付けられている。私の心が休まる場所はここしかない。

  私の机の周りには本棚に入りきらず積み上げられた本たち。全部読みたいと思って図書室の方からもらってきたものだけど、全く手がつけられてない。

  机の上には手紙の数々。早く返事を書かなくてはいけないのに、全然筆が進まない。

  私は貴族の女たちに流行っているという恋愛本を手に取る。英才教育を生まれた時から仕組まれていた私にはつい最近まで縁のなかったもの。でも一度手に取ってしまうと、どんなにくだらないと思っても、止まらない。いや、止まれない。ぐちゃぐちゃな境遇から始まった二人が、綺麗に紡がれていったり、悲しみに涙を流したり。ありきたりなのに、読み切るまで絶対に離れられなくて、私は自分の大切な時間を無駄にしている。でも、そんな未来のことより今をっていう自分の欲に負けて、こんなパッとしない毎日が続いているのだ。最近では現存するものだけじゃ物足りなくて、自分で書いたりもしている。朝から晩まで暇さえあれば、そんな生活……。そういうやり方でしか、私は夢を見れないから。

  それが悪いものだってずっと思ってた私はおかしかったのかな?どうすれば、私の尊敬するような人たちみたいな人生が送れる?人の人生の美しさってなんなのかな?

  私の常識はとことん崩されていった。良いようにも、悪いようにも。たったひとつの出会いによって。これから語るのは、そんな私のものすごく大切なストーリー。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

作品を投稿するのは初めてで、まだ不安でいっぱいですが、自分も読者の皆さまも楽しめるようなストーリーにしていけるよう頑張ります!

エンディングは全く見えていないので、感想、アドバイス等あれば、ぜひぜひご連絡ください!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ