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短編小説集

ガラスの天井

作者: 翠泉

 いつからであろうか?

 私が歩を進めることをやめたのは。

 もしかしたら進めなくなったという方が正しいのかもしれない。

 気付いた時には私は四方を白い壁に阻まれていた。


 ただし、上には澄み切った青空と流れる雲が見られた。

 私は青空をどうしても掴みたいと思ったが決して捕まえることはできない。

 あの空はどこまでも遠く、遥かなる高み……


 ただ遠いだけではなくもう一つ問題もある。

 なぜか上にはガラスの天井が存在しているようだ。

 そのため上から外へ出ることもできず、ドアもないため壁からは出られない。


 狭いだけの四角い部屋でただただ空を眺めることしかできずにいる。

 時を無駄に浪費し、堕落した生活を送り、生きる意味も見つけ出せない。

 道すら存在してはいないが迷宮に閉じ込められたようなものである。


 ある日私は夢をみた。

 泥塗れになり、地面を這いずりながらも憧れを追い続ける私の姿……


 あの夢は一体何なのだろうか?

 昔の自分自身だったのか、はたまた……

 だが、私はその姿を見て憫笑した。

 何もできはしないのに……




 私はここから出られずにどれ程の時が経ったのであろうか?

 もう分かりはしないが、とてつもなく長いことだけは理解できる。

 未だに私は空を眺めているだけ。

 

 この天井の正体は何なのであろうか?

 そう言えば誰かに言われたことがある。


 「限界をつくっていないか?」


 誰かまでは思い出せない。

 しかし、なぜか今になって心に響いたのである。

 この天井はもしや私が創り出した幻想ではなかろうか?

 万が一そうであってもどうすれば良いのかは分かりはしない。


 いつも通りにまた空を見ながらここで一生過ごすのか?

 それは違うのではないか!

 私はガラスの天井に挑まなくてはならないはずである。

 この壁は私だけのもの……

 他の人のものでは決してない、私だけのものだ!


 人の一生は、何もしないにはあまりにも長いが、何かを為すにはあまりにも短い。

 私はそう言って何もしようとはしなかった。


 物事から決して逃げるなと言う人がいた。

 それは強い人だからこそ言えるのだと聞く耳を持たなかった。

 けれど私は知っている。

 血の滲むような努力を積んできたことを……


 今、私の本能が可能性に手を出せ!と叫んでいる。

 私はもう逃げはしない。

 必ずあの青空を掴む!


 まだ太刀打ちできないかもしれない。

 けれども私はガラスの天井に挑む!

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