闘争本能 二話目
開始の合図で戦い合うと思われたが互いに睨み合いながら、ジリジリと間合いをつめて
相手の様子を疑っていた。
数分その状態が続き、対峙する二人の思考が交錯した。
馬岱「(たしか北郷って人は武においては一般兵ぐらいしかないって
魏の人たちが前に言ってたし、負ける心配する必要はなさそう・・・・かな。)」
馬岱は影閃を一刀に向け、グッと足に力を込めた。
馬岱「(でも・・・、油断は禁物、全力でなぎ払う!
さっきのお返しもこめて!!)」
次の瞬間、馬岱の足に込められていた力が爆ぜ、一刀目掛け馬岱の影閃が一刀を襲った。
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一刀「(彼女は 昔どおりならほかの武将より力は一段下のはずだ。
俺の知ってる昔のままなら・・・・・・・な。)」
間合いを詰めながら刀を鞘に収め手を掛けたまま一刀は相手のことを考えていた。
一刀「(だけど・・・・・、どんな敵が来ても、俺は負けるわけにはいかない!!)」
心を定めたとき、目の前には自分を倒そうとする一本の槍が襲った。
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一刀「くっ!?」
自分の身体を狙ってつっこんできた馬岱の突きをなんとかかわし、一刀はよろめかけた身体を
無理に起こそうとはせず、そのまま馬岱から離れようとした。
馬岱「えー!! 避けられた!?」
まさか一般兵ぐらいの強さしかないと聞いていた相手に自分の渾身の突きを
よけられたことに、馬岱の脳裏に驚愕の雷が走った。
馬岱「でも、これは避けられないでしょ!!」
馬岱が避けられたことの動揺に引き込まれることなく、振り返りもう一度一刀目掛け飛び込んだ。
体勢を崩しかけて馬岱と離れようとしていた一刀のところに、またしても光速の槍が放たれた。
一刀「(今度のは・・・・無理だ、よけれない!!)」
馬岱「もらったぁ~!!」
一刀の脳裏を負の未来がよぎった。その顔が見えたのか馬岱が手ごたえありというように声を上げる。
華琳「かずとっ!!!」
静かに見守っていた華琳がその瞬間を捉え、ガタッとイスから飛び上がり一刀の名前を叫んだ。
目の前に広がる負の未来・・・・・、だがその未来をなぎ払う力が今、彼の中にはある-------------
ギィィィィィン
激しい金属音が場内を包んだ。
一刀の「真桜」が、神速の速さで鞘から抜かれ、一刀の目の前にあった影閃の柄を、跳ね上げた。
よろめいた体を捻り膝で身体を支え下から思い切り叩き上げ軌道をそらしたのだ。
あまりの衝撃だったのか馬岱の両手から影閃が離れ、空中へと舞い上がった--------
馬岱「えっ!?!?!?」
その状況にが掴めていない馬岱が驚きの声を上げた。
また、跳ね上げられた衝撃に耐え切れず、ドテッと後ろに下がりながら尻餅をついた。
尻餅をついたとき、自分が今まで握っていたはずの影閃がないことに
気づき自分の両手を見た瞬間、首筋に冷たい感触が走った。
一刀の真桜が馬岱の首筋へと突き出されていた。
一刀「動くな。」
その瞬間空中へと舞い上がった影閃が馬岱の後ろの地面に突き刺さった。
馬岱「ま・・・・・まさか・・・・もう私の負け?」
首筋に冷たい感触を味わいながら馬岱が冷や汗を掻きながらつぶやいた。
一刀「一応・・・・、そうなるかな?」
ハァハァと肩で息をしながら一刀が馬岱の呟きに答えた。
馬岱「う~~~~!! くやしぃ~~~~~!!!!」
馬岱は自分の負けを認めたのか、なみだ目で悔しさを叫んだ。
一刀「いやいや・・・・、たまたまだよ、たまたま。」
馬岱が負けを認めたので、刀を首筋から離し、鞘に収めた。
司会「勝者、魏軍、北郷一刀!!!!!!」
オオオオオオォォォォォォォ!!!!!
一刀の勝ちが確定したとき、静かに見守っていた観客や武将達が歓喜の声を上げた。
華琳「もぅ・・・・・、心配かけさせないでよ・・・・、馬鹿。」
一刀の無事がわかった華琳が安堵の息を吐いてまた椅子に腰をかけた。
一刀「またいつか戦おうね。 今日はありがとう。」
そう言いながら、座っていた馬岱に手を差し伸べた。
馬岱「うぅ・・・、次は絶対負けないんだから!」
一刀の優しさが嬉しいのやら悲しいのやら、馬岱はリベンジを誓った。
馬岱は一刀が差し伸べてくれた手を取った、振りをして思い切り自分の方へ一刀を引き込んだ。
馬岱「えぃ♪」
一刀「うおわっ!!?」
小悪魔な馬岱が姿をみせた。
力を抜いていた一刀は吸い込まれるように馬岱に強く引っ張られ
馬岱に被さるようにこけた。
司会「おぉ~っと、北郷選手、足に来てたのか、勝って安心したのか、はたまた緊張の糸が切れたのか
よろめいて、馬岱選手の方へこけてしまった~。」
司会もいらないことをアナウンスする始末であった。
引き込まれた理由がわからず、また馬岱に被さっていることが色んな意味で非常に不味い
状況に陥った一刀であった。
一刀「ちょ・・・、なにを・・・・。」
理由を聞くため馬岱の方を向いた一刀だったが
馬岱「ニヒヒ、転んでもタダでおきれないでしょ、お兄さん中々カッコいいじゃん、チュッ。」
なぜか振り向いた瞬間、一刀は馬岱に唇を奪われた。
一刀「ふむっ!?」
司会「おぉっとぉ!! 北郷選手
なんという幸運か転んだ弾みで馬岱選手と口付けをしてしまったぁ!
うらやましいぞぉ~!」
一刀「(ばかっ、いらんことを!!!)」
なぜかこの展開をノリノリで実況する司会。一刀からすればそれは本当に困りものである。
ビシィッ!!
実況の後、何かが軋み、亀裂が入った音がどこからか聞こえた。
それに驚き、それと同時にどこからからの殺気に気づいた馬岱が唇をすぐさま離した。
馬岱「(どこからともなく殺気が・・・!!?)」
殺気がどこからのものなのか、周りをすこし見回すと、上の方から
殺気が放たれていることに気づいた。
馬岱「やっ・・・・、やばっ。」
一刀「(あぁ・・・・・、なんでこんなことに・・・・・)」
そう、殺気と異音を放ったのは華琳だったのだ。
さすがに不味いと感じた馬岱は一刀から離れようと一刀を促した。
馬岱「ちょっ・・・、ちょっと離れて・・・・。」
一刀「もう遅いんだよ・・・・はぁ・・・。」
このあとのこと何が待ち受けているか悟ってしまっている一刀はため息をはきながら
馬岱から少し離れ、自分が立つときに、馬岱の腋に手をいれてグッと上に引っ張って起こした。
一刀「とりあえず、うん、お疲れ様。」
ポンッと馬岱の頭を叩くと、そのまま振り返って魏サイドの応援席に向かって
歩き出した。
馬岱も悪戯心を出したことを少し後悔しながら後ろを振り返り、突き刺さっていた影閃を
引き抜いて小走りで蜀サイドの応援席へと駆けていった。