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闘争本能  作者: たっちゃん(小さな畔)
13/16

何事もほどほどに

観戦席--------------------


一刀「あちゃぁ~・・・、あれはもう完全に遊ばれてるな。」


風「星ちゃんも意地が悪いのです。」


季衣「美以も星と一緒にすごしてるなら性格に気づいたらいいのに・・・。」


沙和「でも・・・、星ちゃんの性格を把握するのは多分むりなの・・・。」


風「しかしぃ~、あれでは美以ちゃんがかわいそうなのです。」


いつもの飴を咥えながら風が少し怒ったような口調で言った。


一刀「(孟獲ちゃん・・・・、あの性格じゃあ・・・、たぶんこのままだと・・・・。)」


風を抱えたまま、そう考えたあと風に一刀が尋ねた。


一刀「風、その飴、余ってないか?」


風「おぉう、お兄さんもこの飴の魅力に気づいたんですか?」


くりんと首を回して目を輝かせながら風が一刀に言い返した。


一刀「おう、風がおいしそうに食べてるの見ると、ちょっと舐めてみたくてだな・・・。」


風「ふふ、仕方ないですぇ~、はい、どうぞですよ。」


そういうと風はどこからか新しい飴を取り出し、一刀に差し出した。


一刀「お、ありがとう。」


それを受け取ると一刀はそれをポケットにしまいこんだ。


風「おやや、お兄さん、すぐ食べないのですか?」


一刀「お楽しみは最後までとっとくよ。」


風「そうですかぁ、それはしょうがないですね~。」


そういうと風はまた前を向いたのだが、すぐに自分の体が宙に浮いたのに気づいた。


風「う?」


起こった事がわからず、頭の上にははてなマークが吹き出した。


一刀「ごめんな、風、ちょっと席外すわ。」


そういうと風の体を自分が座っていた席に移し、落ちた上着の埃を払って、着込んだ。


風「お兄さん、またどこかいくのですか?」


一刀「いや・・・、多分いかなきゃならないような気がするだけさ・・・?」


風「???」


そういい残すと一刀はリング付近の方まで歩いていった。


--------------------------------

趙雲「ははは、美以よ振りはいいぞ振りは。」


趙雲が孟獲の猛攻を余裕綽々で避け続けていた。


攻撃を仕掛け続けていた孟獲は疲れきり、肩で息をしていた。


孟獲「にゃぁ・・・・・にゃ・・・・・ぐす・・・っひっ・・・。」


趙雲とのやり取りに疲れきり、とうとう、孟獲の涙腺が緩んでしまった。


孟獲「うぇぇぇ~・・・。」


趙雲「あっ・・・。」


孟獲「うわぁぁぁ~~~~~~~~~~~ん。」


ついに堰を切ったように孟獲が大粒の涙を滝のようにこぼしだしたのだった・・・・・


それに焦って対戦相手の趙雲が孟獲を慰めるように声を掛けた。


趙雲「す・・、すまん美以よ、謝るから泣かんでおくれ。」


趙雲が冷汗を書きながら孟獲に謝ろうとするのだが。


孟獲「どうせ嘘にゃ~~、星嫌いにゃぁ~~~~~!!!!」


今や趙雲の言葉は孟獲の心に火に油を注ぐようなものであり、涙を増やすだけだった。


孟獲の涙は両手で顔を隠すがその大粒の涙の滝は両脇にあふれ出ていた。


司会「おぉ~っと、趙雲選手、なんと孟獲選手をなかせてしまったぁ~~~!!」


そして、司会が趙雲の行いを会場中に伝えてしまった。


すると、会場中からブーイングが飛び交った。


それは趙雲の焦りを更に増幅させるものであり、孟獲を泣きやまそうと頑張るのだが。


趙雲「すまん、すまん美以!! このとおりだ、許してくれ~。」


謝りながら趙雲が孟獲に何度も頭を下げた。


孟獲「うわぁ~~~~~~~ん!!!」


趙雲の声は届く事はなく、泣きじゃくる孟獲であった。


その光景を見かねて蜀の皆がリング上にあがった。


関羽「星!! あれほど美以をからかうなと言ったのにお前というやつは!!」


趙雲「うっ・・・・・・、面目ない・・。」


関羽が孟獲をからかいすぎた趙雲を怒った。


張飛「美以、なきやむのだ~~!!」


馬超「美以~、なきやんでくれよぉ~。」


黄忠「美以ちゃん、ちょっ~と深呼吸して深呼吸~。」


馬岱「美以~、なきやんでよぉ~。」


ミケ・トラ・シャム「みぃしゃま~、だいおうしゃま~。」



皆が美以を心配して声を掛けるのだが、どの声も美以の涙を止める事はできなかった・・・・


その姿に、魏、呉勢はどこか呆れていたのだがそこに救世主が現れた。



泣きじゃくる孟獲の後ろに人の影が映った。


蜀勢「んっ、あなたは?」


その影はそのまま泣きじゃくる孟獲の両脇に手を入れてそのまま


孟獲の小さな体を持ち上げた。



孟獲「うにゃっ・・・・?」



今まで泣きじゃくっていた孟獲の涙が止まった。


蜀勢「おぉ、美以の涙が・・・・。」


大きな目をぱちくりさせて周りを見渡すと、そこにはいつも見上げていた


蜀の武将達の姿があった。


孟獲「おぉ~、みんなちっちゃくなったにゃ~!!」


皆より高い位置から見つめる事に喜び、手足を振りながらはしゃぐ孟獲。


一人喜んでいるがその姿はまさに、傍から見れば幼子に親が行う「たかいたかい」だったのだが


孟獲はそれに気づいてはいなかった。


そしてそれを行っていたのは一刀だった。


関羽「ほ・・、北郷殿・・。」


一刀「突然失礼。今の状況を見かねてね・・・。」


趙雲「しかし・・、あの状態の美以をなきやますとは。」


黄忠「すごいわね・・・。」


あの状態の孟獲を泣きやました事を蜀勢は驚き、また感心した。


一刀「子供のあやし方なら黄忠さんの方がうまいとおもうけどね。」


皆小声で美以に聞こえないように話した。


その後、舞台を終幕に迎えさせるため、一刀が美以に話しかけたのだった・・・


一刀「孟獲ちゃん、趙雲さんもこうやって謝ってるし、そろそろ許してあげてくれないかな?」


はしゃいでいた孟獲がその声に気づいて首を回して一刀の方へ振り返った。


孟獲「む、兄はだれにゃ? 美以が浮いてるのは兄のせいにゃ?」


そこで初めて一刀の存在と、一刀が自分を持ち上げていることに気づいた。


一刀は孟獲のその質問に答えた。


一刀「俺は魏の北郷一刀。孟獲ちゃんが言うとおり、俺が君を持ち上げてるんだよ。」


孟獲「むぅ~、一兄というのにゃ。一兄のおかげで美以は皆より身長が高くなったのにゃ~。」


一刀の言葉に即座に孟獲が反応した。


そのあとちょっと悩んだ顔をしていた孟獲だったが


孟獲「仕方ないにゃ・・・・。一兄のおかげでこんな風に皆を見下ろせたのにゃ・・・。」


その言葉のあともう一押しと踏んだ一刀が目の前にいた趙雲に目配せをした。


それに気づいた趙雲がすぐさま深々と頭を下げて謝った。


趙雲「美以、私が悪かった、このとおりだ、許してはもらえないだろうか。」


その趙雲の謝罪に孟獲は・・・・


少し悩んだものの、すぐに答えを出した。


孟獲「星がそこまであやまるのにゃら、仕方ないにゃ・・・・・、でも。」


趙雲「でも?」


孟獲の言葉の続きを待てず、趙雲が質問した。


孟獲「美以の勝ちにしてほしいのにゃ、それだったら許してやるにゃ。」


ふんっ、と孟獲が腕を組みながら言葉を紡いだ。


趙雲「ぬなっ!?」


孟獲の要求に趙雲が声を濁したのだった。


武人としてこの大会は貴重なものであり、趙雲の楽しみでもあったのだ。


趙雲にとってそれをこの一回戦で終わるのはとても辛いものだった。


趙雲「ぬぬぬ・・・。」


顎の下に手を置いて考えながら周りを見渡すと、蜀の皆からは「仕方ない」という


ジェスチャーや視線が送られた。


この惨状を引き起こしたのは自分であり、それを収縮させられるのはこれしかないのであれば。


はぁ、とため息をついて趙雲が俯いたあと、顔を上げ、孟獲の顔を見て言った。


趙雲「わかった、今回は私の負けとしよう。」


そういうと、趙雲が孟獲に手を差し出した。


それに答えるように孟獲も手を伸ばして趙雲と握手を交わした。


司会「お~っと、どうやら試合が話し合いで決着がついた模様です。


    なんと今回の戦いの勝者は孟獲選手のようです。」


司会がリング上の出来事を会場に伝えた。


その光景に3国の武将達が安堵の息を吐いた。


やはり大会としてはあのような光景は好ましくないのであった。


一刀が孟獲を目の前に下ろし、ポケットから風からもらった飴を渡した。


一刀「いい子だね、孟獲ちゃん。はい、これはご褒美。」


孟獲「おぉ~、これは風の飴ではにゃいか、一度なめてみたかったのにゃ~。」


そういうと孟獲は手渡された飴をすぐさま口に運び、ほにゃ~、となり孟獲は笑顔になった。


孟獲「甘くておいしいにゃ~、ありがとうにゃ~、一兄~。」


一刀「うんうん。じゃあまたあっちで皆で大会を観戦してくれるかい?」


蜀の待機席を指差しながら一刀が孟獲に聞いた。


孟獲「わかったにゃ。一兄がそういうなら聞いてもいいにゃ、ミケ、シャム、トラ、いくじょ!」


そういうとお供を連れて孟獲たちが蜀の待機席へと駆けていった。


その光景をみて、蜀勢、一刀は一安心した。だが・・・


一刀「さて・・・、問題はまだあるんだよなぁ・・・。」


関羽「問題・・・、とは?」


一刀の言葉に関羽が聞いた。


一刀「一応二人の戦いが中断したのを確認してここにあがったけど・・・、


    禁止事項で試合中は何があってもあがっちゃだめっていうのあったよな・・・?」


馬岱「あっ・・・、そういえば・・・・。」


馬超「わすれてたぁ~~・・・。」


黄忠「ついうっかりきちゃったわね・・・・。」


張飛「ま・・まさか・・・・、戦う前に鈴々は負けちゃうのか・・・?」


関羽「うぅ・・・、私も失念していた・・・。」


趙雲「す・・・・すまん、皆・・・。」


リングに上がった皆は、一刀の言葉で禁止事項に気づき、うなだれてしまった。


禁止事項に気づいた観客達もざわめきだした。


一刀「ここは・・・・、華琳にまかせるしかないな。」


そういうと一刀は華琳の座っている方を見上げたのだった。


司会「曹操様、今回の件はどうなされましょうか?」


司会が禁止事項を破った者達への対処を、今回この大会を統括している華琳に


処罰がどのようなものになるか尋ねた。


司会の言葉のあと、華琳がスッとイスから立ち上がり、マイクを手に取った。


華琳「皆、静粛に。」


華琳のその言葉に、ざわついていた会場が一気に静まり返った。


華琳「今回、趙雲対猛獲 の試合に置いて、孟獲の癇癪により、試合が中断された。


    あの様子ではもしこの者達が止めに入らなければ、今も彼女は泣き続けていただろう。


    禁止事項を知ってなお、あの状況を打開すべく石畳へあがり、止めに入った

   

    彼らの勇気をどうか汲んでくれないだろうか?


    私は今回の件を特例ではあるが不問としたい。


    そこで、この意見の是非は会場の皆に任せたいとおもう。


    皆、この件に対しての不問、異議はあるだろうか!!?」


この華琳の問いに会場の皆は顔を見合わせ、そして



観衆「異議なああああああああああああああああああああし!!!!」


異議なしの声が会場中に轟いた。


その声にリング上の皆が安堵の息を吐いた。


正直全員が失格かと思っていたのだった。


声がひとしきり鳴り止んだ後、華琳が軽く皆に向けて手を上げて言った。


華琳「皆、寛大な処置感謝する。


    ただ、今回この状況を生み出した、趙雲、孟獲二人は


    遅延、迷惑行為を行ったとして、没収試合とし、両名を失格とする。


    また、以後このようなことが無きよう、三国の英雄達は心がけて欲しい。


    以上!!」


そういうと華琳はマイクを元の場所に戻し、イスに戻って座った。


一刀「よかったよかった・・・。華琳の寛大な処置に感謝。」


関羽「本当に今回は曹操殿に感謝の言葉しかありません。」


張飛「よかったのだ~、華琳~、ありがとうなのだ~。」


馬岱「私はまぁ、負けちゃってたわけだけど・・・。」


馬超「何もしないままおわらなくてよかった~。」


黄忠「今度からはないようにしなくちゃいけないわね・・・・。」


趙雲「皆、ほんとうに申し訳ない・・・。以後無いように気をつけます。」


そういいながら趙雲が皆に対して深々と頭を下げた。


一刀「まぁ・・・、さすがに華琳でも次はないだろうから、気をつけてね。」


趙雲「承知した。北郷殿、本当にご迷惑をおかけしました。」


趙雲がもう一度一刀に対して頭を下げた。


一刀「皆が失格にならなかったし、さっきの出来事も丸く収まったし、気にしないでよ。」


自分の前で手をヒラヒラさせながら一刀が答えた。


趙雲「かたじけない。」


そういうと二人は笑顔で向かい合った。


二人の会話の後、司会のアナウンスが入った。


司会「会場の皆様、今回は特例として不問ということになりました。


    それでは、時間も押してまいりましたので、石畳上にいる選手の皆様は速やかに


    退場してください。


    皆様の退場を持って次の戦いに移りたいと思います。」


リング上にいる皆に退場するよう司会が促した。


一刀「うし、それじゃ、また。 次は誰かとこの上で会える事を楽しみにしてる。」


関羽「そうですね。」


張飛「ふふん、鈴々とあたったら負け決定なのだ~。」


馬超「バカ、鈴々、そういう話じゃあないだろ。」


馬岱「あたしはもうあたっちゃったしな~。」


黄忠「私は・・・、そうですね、またどこかで手合わせ願いますわ。」


趙雲「次の大会では願わくば北郷殿、貴方と戦いたいですね。」


そう言葉を交わして、リング上より皆が降りていった。


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