後編
私が体の右半分、と表現していたのは、彼女がいつも利き腕のように、私を引っ張ってくれたからだ。彼女は広大な海原を航海する上で、大きな灯台となってくれた。彼女を失った今、――私にはどうしたらいいか、全くわからない。
葬儀が終わり、すぐに月日は流れていき、私は大学三年生になった。それでも私は、彼女についての小説を書き続けている。棺桶に一緒に入れてやることさえ、しなかった。私にとってその作品は、自分の執筆の中核となるものだったのだ。
文字数は百八十万文字に達していた。何故物語を終えることなく長引かせているのか、私にも理解はできていなかった。彼女との約束である気がしたのだ。パソコンに向かってタイプし続けることは憂鬱で哀しい作業ではなく、むしろ清々しい気持ちになれるような、どこか満ち足りたものだったのだ。
彼女が書くことを楽しいと思わせてくれたのだ。だから私は、彼女からの最後のプレゼントだと思って、一生懸命に文字を綴ることだろう。それがいつか本となって、未来へと羽ばたくことを、私は心から願っているのだ。
ここに、その作品を掲載しよう、と思う。この記事を読んでいる貴方はきっと、私の想いを汲み取って、昇華させてくれるに違いないと思うからだ。
絵を描く女 葉山周治
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彼女は第一に、絵描きだった。
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(了)
お読みいただき、ありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたら、幸いです。




