第五話〜冒険者ギルドと僕のステータス〜
現実に、冒険者というものがあったとして……それは職業として成り立つのでしょうかね?
割に合わない気がします。
更新は毎日21時を予定しています。
16/04/29
ステータスの表示を若干変更しました。
通常表示を基礎値から強化値を合計した最終値を表示し、()の中に強化値を表示します。
冒険者ギルドを探して一時間程経った。
街は広いし活気が満ちててとても魅力的なんだけどさ。
「ココ……ドコ?」
ご覧の通り、迷子になりました。
『……あの時兵士さんに訊けばよかったですね。どうします?』
迷子になって、仕方ないので街の中心にある、大きな時計塔の広場で一休みしている。
あまり人がいない辺りで休んでいるので、ティアと声で会話しても問題はないだろう。
「というかさー、このマップ意外と不便だよね。建物の詳細とか一度入らないとわからないって。これどうにかならないの?」
『いえ……そもそも、マップに表示されているのは知覚を拡大して得た情報を基に作成されているものなんです。だから、より詳細にする方法はありますが…あまりお勧めは出来ませんよ?』
「いいよ。便利になるに越したことはないから、気にせずやっちゃって」
『……そうですか?では……死なないで下さいね?』
え、何その不穏な台詞。
《――――――――》
《魂の改竄:天眼付与》
さてさて、一体どうなるのかな?
………………何も変わらないじゃないか。
ドクンッ…
「……ぁれ?」
急に、膝から力が抜ける感覚。
『ミナトさん!?……トさん!!』
ティアが何かを叫んでいたが、言葉の意味もわからず、すぐに意識が途絶えた。
起きた時、視界には闇に包まれた世界と少しシミのついた木の天井が広がり、鼻には微かに香る香水のいい匂いがした。
身体を起こして周りを見ると、何組かの男や女が酒を飲んで騒いでいた。
どうやら、どこかの酒場のスペースを借りていたらしい。
「あ、起きた?」
急ごしらえのベッドの側にあるカウンターに座る、ローブの人が声をかけてきた。
あれ?この声……あの時のローブの女性か?
「あの……もしかして、兵士さんに連れてこられた時に会った人ですか?」
「そうだよ。ちょうどフラフラ歩いていたら貴方を見かけて、私が鑑定した人だと思って困ってるように見えたから話しかけようとしたんだ。そしたら急に、何の前触れも無く倒れるんだもの。心配して駆け寄ってみれば気絶してるし、仕方ないから近くにあった酒場で介抱してたの」
どうやら、この人には多大な迷惑を掛けたようだ……申し訳ない。
『ちょっと……私にも謝罪の一つくらいないですかね?本気で心配したんですよ?』
そうだった。ティアにも随分迷惑を掛けたなぁ。ごめんね?
『……いいです。しっかりと忠告せずに処理を施してしまった私にも非がありますし』
そうだ!能力の方はどうだった?
『貴方の視力が片方ないでしょう?ちゃんと成功しています。使い方は後で説明しますから、今はローブの人の対応をして下さい』
本当だ。今の今まで碌に気にしてなかったけど、片目が見えない。
とりあえず、今はティアの言葉に従っておこう。
また後で教えてもらうからね。
さて……まずは感謝と……ついでに冒険者ギルドの場所を聞こうかな?
「助けてくれてありがとうございます。僕の名前は朝霧湊です。湊が名前です。冒険者ギルドを探していたら、突然目に激痛が走って……後は知っての通りです」
「そう……助けた事は気にしなくていいよ?特に何か出来たわけでもないし。あ、私はセレーネ=マレウス、よろしくね」
セレーネさんはフードを外して笑みを向けてきた。
フードに収まっていた真紅の長い髪が広がり、同時に女性特有のとてもいい香りが漂ってくる。
『うわー!綺麗な人ですね!』
君に言われても嫌味にしか聞こえないと思うよ?
って、すぐにまたフードを被ってしまった。
綺麗なんだから隠す必要ないと思うんだけどなぁ。
「ところで……冒険者ギルドを探しているって言ってたけど、登録する気なの?」
「ええ。門番の兵士さんに、身分証がないなら登録した方がいいって言われまして」
「ま、確かにそうなんだけどねぇ。一応、ここギルドに併設されてる酒場だから、あそこのカウンターに行けば出来るわよ?」
セレーネさんは少し遠い、部屋の隅を指差して言った。
そこには三人の女性が座って、色々と対応していた。
「じゃあ登録して来ますね」
「言ってらっしゃーい。私まだ飲んでるから、終わったら戻って来てね」
すぐに動き出した僕を、セレーネさんがお酒を飲みながら見送ってくれた。
……片方の視界が完全に無くなったせいか、少し歩きにくい。
これに慣れなきゃいけないし、眼帯も用意しなきゃいけないかな。
カウンターの前までやってきた。
このギルド、案外広い。
しかし、ギルドの受付嬢は美人が担当するのはゲームでも異世界でも変わらないのだろうか?
『そりゃあそうでしょう。デパートの総合案内所とかに美人担当がいるのと変わらない理由ですよ。たぶん……』
ふーん。よくわからないや。
「あの……登録したいんですけど」
「はい、登録ですね。こちらの紙に名前、出身地、特技を書いてください」
案外書くことは少なかった。
渡された紙はコピー用紙なんかと比べ物にならないほど粗悪な物だった。
まだ製紙技術はそんなに発達していないのか。
羽ペンで紙にサラサラと書いていく。
出身は迷った末に空欄にした。
受付嬢に聞いてみたら、それでもいいそうだ。
書き終わった紙を受付嬢に渡して、五分ほど待つとギルドカードを渡された。
カードは不思議な材質で、軽いけど金属製のようだ。
カードには名前とランク、書いた特技が表示されていた。
「これで登録は完了です。ルール等についての説明を受けますか?」
「お願いしようかな」
「了解です。とは言っても、そんなに多くないのですが」
そう言って受付嬢は苦笑した。
「申し遅れました。私は冒険者ギルド、ミレット支部の受付を担当します、レイニー=メトロギスです。……なんか面倒だし、君可愛いし、堅苦しい敬語はなしでいこうか。あそこにいるセレーネとは何かと縁があって付き合いは長い方だから、何か困ったことがあったら私に言ってね?」
急にフランクな口調になってびっくりした。
それはさておき、ルールの説明を聞いたが簡単に纏めるとこうだ。
・ギルドは、中立都市アルバナードにある本部がトップで、トリストラム王国の王都とベルカ帝国の皇都にある支部がそれぞれの都市にある支部を纏めている。
・ランク制で、ランクが上がればギルドからの支援の質も上がる。
・ランクは、ペナルティを重ねると降格する場合もある。
・ギルドは冒険者同士の争いは基本的に干渉しない。自己責任で。ただし、殺し合いになり且つ相手を殺害した場合ペナルティ発生。
・基本的に、支部長に従うこと。ギルドマスターから命令されれば、そちらを優先。
こんな感じである。
とても簡単……なんて言わないけれど、まぁどれも普通なら破ることのないルールだと思うけど。
「まぁこんなものかな?ランクはFからAの基本の六段階と、SからSSSまでの特別枠が三つね」
「そのランクは戦闘力の指標ですか?」
「一応、貢献度に応じてランクが上がる仕組みだけどだいたいそう考えてもらっていいわ。FとEはルーキー、Dで一般的な冒険者の実力を持つと言われているの。それ以降はベテランの域ね」
ベテランがC以上……S以降はどんなものなのなのか、想像出来ない。
さて、説明も聞いたし一度セレーネさんのところに戻ろう。
そう言えばティア随分と静かだね。
『だって話題が無いんですもん……』
たまにはそれくらい静かにしていてくれ、頼むから。
「レイニーさん。説明、ありがとうございました。セレーネさんのところに戻りますね」
「うん、じゃあまた。あ、それとねミナト君。次からは敬語は要らないよ?それに名前も呼び捨てで構わないから」
「……わかったよレイニー。それじゃあまた」
なんかグイグイくる人だったな……
「戻りました」
「おかえり。無事登録出来たみたいだね」
セレーネさんは先ほどと変わらず、クピクピと酒を飲んでいた。
この人、休まずに飲んでるけど大丈夫なんだろうか。
「さ〜て、ミナト君。君は出来立てほやほやの冒険者な訳だけど、これからどう活動していくつもりなのかな?」
「……?そりゃあ、先ず自分の生活の安定を図るでしょう」
「そうだよねぇ。そこで、一つお願いがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「私とパーティを組んでくれないかな?」
これはまた唐突だな。
『気を付けて下さい。こう言う時は何か裏があるものです。慎重に、とりあえず即答は避けt』
「いいですよ?」
『ってコラァーーーッ!人の話は最後まで聞きなさい!!』
いいじゃないか別に。介抱してくれた恩もあるし、たぶんだけどやましい事は無いよ。
「……お願いしておいて何だけど、本当にいいの?」
「ええ。セレーネさんには介抱して貰った恩がありますし、悪い事をする人には見えませんから」
「……ありがとう。じゃあ、これからよろしくね。まず手始めに私の事を呼び捨てにして、敬語は無しにしようか。私も君の事はミナトって呼ぶから」
そう言いながらセレーネさn……いや、セレーネは立ち上がった。
「とりあえず、君の実力とかを教えて貰おうかな。個室を借りてくるから、そこで待っててね」
美人さんと個室ってちょっとアブナイ雰囲気があるよね?
『えっちです……不潔』
違うんです誤解なんです!ちょっと考えてみただけなんですぅーーーっ!
ティアの誤解を何とか解いて、先を歩くセレーネを追いかけて部屋に入る。
ギルドは三階建てで、個室は全て三階にある。
その内の一つがセレーネの借りた部屋だ。
ちなみにこの部屋、一応ギルド登録者はタダで使用できる。
しかし、他の宿の方が明らかに色々質がいいので利用者は稀だったりする。
しかし、こんな場所で何をするのだろう?
「…………盗聴盗撮その他諸々の危険は無さそうね。よし、もういいかな。ミナト……私が見せて欲しいのはね、君のステータスなの」
ステータス?
『ステータスとは、魂の情報をある程度可視化した物です。主に人の間で使われるステータス表は、魂の強さを表すレベル、保有する生命力と魔力、筋力や俊敏、使える技能(スキルや魔術等)、魂に刻まれた称号が表示されます』
ふーん。ゲームのステータス表示と同じような物かな。
見せる事でのデメリットってある?
『うーん……自分の弱点が知られてしまうくらいですかねぇ。すみません……私やナガレ達はステータスがバレてもどうにか出来るほど強かったので、イマイチデメリットが想像出来ないです』
そんなに強かったんだ父さん達。
いや、それは今は置いておこう。
「見せるのは構わないけど、自分で確認してからでいいかな?今の自分のステータスを知らないんだ」
「いいよ〜。ゆっくり待ってるから」
さて、許可は取り付けた。
早速ステータスを確認しよう。
『ステータスの出し方は念じれば出ます。自分にだけ見えるよう、念じて下さい』
ステータス、オープンッ!
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朝霧湊 14歳
Lv.13
職業:冒険者[Rank:F]
HP:58350(+57500)
MP:121000(+120000)
STR:10139(+10000)
DEX:12207(+12000)
VIT:11670(+11500)
INT:14198(+14000)
MND:24200(+24000)
LUK:1050(+1000)
技能:魔力操作(Lv.7) 並列起動(Lv.1) 天眼(Lv.-)
創造術(Lv.1) 神術:宵闇(Lv.-) 神術:姫宮(Lv.-)
心剣顕現(Lv.-) 耐性:無属性魔術(Lv.10)
称号:『狭間の旅人』『魂を繋げし者』『宵天の守護者』
『神殺しの一族』『混ざり者』『始祖の血族』
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……どうしよう、どこから突っ込めばいいのかわからない。
と、とりあえず技能と称号を確認しよう。
細かく見ようと念じれば説明が出るみたいだ。
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技能
魔力操作(Lv.7)……己の魔力を操作する技能。
レベルが上がるごとに効率が上がる。
並列起動(Lv.1)……複数の術式を同時に処理する技能。
レベルが上がるごとに並列起動数が増加。
天眼(Lv.-)……天から世界を見下ろし、総てを識る瞳。
世界のあらゆる情報を視覚的に視ることができる。
創造術(Lv.1)……己のイメージを具現化する。
構成の複雑さ、設定した能力値により消費魔力が増加。
神術:宵闇(Lv.-)……神代の術式。
闇と夜の領域を思いのままに操る力。現在は使用不可。
神術:姫宮(Lv.-)……神代の術式。
己の望むままに世界を創り変える力。現在は使用不可。
心剣顕現(Lv.-)……心を具現化した武器『心剣』を召喚する。
耐性:無(Lv.10)……無属性攻撃に対する耐性。
Lv.10は、身体に触れた瞬間魔術そのものが打ち消されるレベル。
称号
『狭間の旅人』:世界の狭間を通り抜けた者。
あらゆる無属性系統の魔術に対する耐性を得る。
『魂を繋げし者』:他者の魂と己の魂を直接繋げた者。
お互いのステータスに補正。補正値は相手のステータスの20%分。
『宵天の守護者』:《宵天》ナハティアの守護者。
『宵闇の羽衣』の使用が可能になる。
『神殺しの一族』:神を殺した罪深き者の子孫である。
この世の理から外され、老いることも死ぬことも無く、
無限に神と殺し合いをする運命にある。
『混ざり者』:他者の血を術により取り込んだ者。
世の理に反した愚者の称号。
『始祖の血族』:始まりの神とその子孫の末裔。
世の理からあらゆる祝福を得る。
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………………ダメだ、手に負えない。
色々ティアにも聞きたいけど、今はこのステータスを見せるか否かだ。
……ちょっと交渉しよう。
「あの、セレーネ。ちょっとお願いがあるんだけど」
「ん?何かな?」
「ステータスは口頭で伝えるだけじゃダメかな?」
「うーん…………いいよ、わかった。じゃあ今から言うステータスを教えて。レベル、HPとMP。後はミナトが使える技能の中で教えても構わないと判断したもの。このくらいならどう?」
それなら、教えても大丈夫だろう。
僕はステータスを確認しながら、レベルや技能を教えた。
教えたのは、魔力操作、並列起動、創造術だ。
称号の方は何がヤバイのか分からなかったから、一つも教えてない。
創造術は初耳らしく、実演して欲しいと言われたが「明日どうせ見るんだから我慢して」と言って我慢させたのだった。
彼女たちがヒロインとして生きていけるかは、まだ未定です。
お読みいただきありがとうございます!