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第四話〜街に入るのにも一苦労〜

前回に引き続き、おじさん達との対峙からスタートです。

ここのシーンは悩みました……


初日から怖くて小説情報をまともに見れませんでしたが、ふと見たらブックマークが5件に⁉︎

あ、ありがとうございます!!


毎日21時に更新します。

 声が聞こえた瞬間、おじさんは僕にすぐ斬りかかれる距離を保ちつつ他の騎士たちに目配せをして、馬車の周りを固めた。

 凄い早業だ。

 僕も構えを解いて、すぐ動けるようにしつつも殺気を解く。

 というか……なんだ、商人さんにしては随分想像してたのより若い声……というか性別が違うぞ?


『馬車の中の人、商人ではないみたいですね』


 ティアがなんとも言えない感じの表情で言う。

 ……さらりと姿を見せてるけど、何?僕の身体の中で休むんじゃ無かったの?


『これはあなたの視界に私の姿を投影しているだけです。会話するなら、姿が見えた方がいいでしょう?』


 確かに……そっちのほうがいいや。

 ところで、あのマップ、なんで馬車の中とかまで詳細にわからないかな?


『一度、内装を見ないと表示されないのだと思います。建物の中に関してはそんな仕様ですし。一度見てしまえば、以降は建物に意識を向ければ詳細が表示されるようになってますが』


 その点はちょっと不便だな、なんて考えながら馬車に目を向ける。

 馬車から出てきたのは、金髪碧眼の少女だった。

 年齢は……わからないけど、あまり離れていないと思う。

 たぶん僕より年下かな。


「ガルディス!何故話を碌に聞こうともせずに斬ろうとしたのですかっ!」

「姫様に危険が及ばぬようにするのが儂等の務めであります。此奴は聞きたいことがあると言ったが姫様でなければ意味がないとも言いました。明らかに重要機密を聞き出そうとしてるとしか思えませぬ。故に、危険と判断し斬ろうとしました」


 ガルディスと呼ばれたおじさんは淀みなく語った。

 むぅ……状況を聞くと、確かに僕が悪役みたいになってるなぁ。

 そもそも商人さんだと勘違いしてた所からが既に間違いだもんなぁ。


「ですがっ!」

「あー……すみません。発言いいですかね?」


 更に言い募ろうとするお姫様を止める為に、僕は言い争いに割り込んだ。

 おじさんは職務に忠実なだけだし、怒られるのはなんだか申し訳ない。


「……いいだろう、言え」

「ガルディス!」


 おじさんの態度に、声を荒げるお姫様。

 そんなカリカリしてるとハゲちゃうよ?


『その言葉、女の子に言ったら殺されますよ……』


 思うだけならタダだよね?

 まぁそんな事は置いといて、説明しなきゃ。

 ここから先は真面目な話だから、必要ない限り割り込んだりしないでね?


『はいはーい』


 さて、説明開始だ。


「そもそもね、誤解なんですよ」

「?」

「ほう……何が誤解だと言うのかな?」


 お姫様はきょとんとし、ガルディスさんは威圧の視線と共に訊いてくる。

 あれは嘘ついたら殺すって言ってるな。


「僕はその馬車の持ち主がお姫様であることなんて全く知りませんでしたし、気づきませんでした。いい馬車を使っている商人さん……くらいに思ってたんですよ」

「ふむ……」

「それで、商人さんならこの付近の治安の情報とか、民間で立っている噂を知っていると思いまして」

「それで助けて、聞こうと思った……と?」


 ガルディスさんが確認するように訊いてくる。

 解ってもらえたかな?


「お主の言い分は理解した。だが残念ながら、そのような情報は儂等は勿論、姫様も持っておらん。故に、申し訳ないが力にはなれん」

「まぁそうでしょうね」


 解ってくれたようで良かったが、やはり情報は無しか……まぁ仕方ない。


「じゃあ僕はこの辺で失礼しますね。お騒がせして申し訳ありませんでした」


 よく考えれば、武器持ったまま話しかけようとしてたのか……そりゃ警戒もされるよね。

 心剣を仕舞いながら心の中で反省する。

 お姫様が驚いた顔をしていたけど、どうしたのかな?

 お姫様を気にしつつ騎士の皆さんに謝り、今後の予定を考える。

 仕方ないし、一番近くの街まで行くか……

 行き方?当然強化で爆走だよ?


「あの……」


 行き方を考えていたら、お姫様がおずおずと声をかけてきた。

 後ろではガルディスさん達が物凄く警戒している。

 もう早くここから離れたいなぁ……

 対応しない訳にもいかないし、とりあえず要件を聞くか。


「なんでしょうか、お姫様?」

「その、助けて貰った御礼をしなくてはと思いまして……」


 なんだそんなことか。

 正直、大した労力も割いてないので御礼なんかいらないんだけど。

 申し訳ないけど、ここは断ろう。

 早くこの場から離れないと、また騎士の人たちと一触即発になっちゃう。


「大したことはしてないですし、御礼等不要ですよ。そんな事よりも、ガルディスさんたちを休ませた方がいい。貴女が僕と話していると、彼らが休めないですからね」

「そう……ですね。ですが絶対に、いつか御礼はさせていただきますから」

「わかりましたよ。なら……またいつか、縁があって再会した時にその御礼をいただきましょう」

「はい」


 話は纏まったし、早くここから離れよう。


「それじゃあ、僕はこれで。お騒がせしました」


 改めて皆さんにそう言い、お姫様が何か言いたそうにしていたけど気づかないフリをして走り出す。

 身体強化のお陰ですぐに彼らは見えなくなった。

 ……お姫様の名前くらい聞いておけば良かっただろうか?






 ティアが『本気で爆速なんてしたら周囲の地形変わっちゃいます!』って言うので控えめに移動していた。

 お陰で一日で街に着かなくて、野宿する羽目になった。

 それと……異世界に来て初めての夜だ。


『いやー夜っていいですねぇ』


 楽しそうだね。

 僕は枝を集めて、動物を狩って血抜きして、火を起こして……とやることだらけで楽しむ余裕なんかないのに。


『拗ねないで下さいよー。ほらっ、月もあんなに綺麗ですよ!』


 ソーデスネ。

 もう僕疲れたよ……早く寝たい。


『えー?仕方ないですねぇ。あ、じゃあ幾つか聞きたいことがあるのでそれに答えてもらえます?そしたら寝ていいですから。あと、ここなら一人しかいないのですし、声出して会話しても問題ないと思いますよ?』

「そう?じゃあそうするよ。それで……聞きたいことって何?」

『まず、街に行った後のことです。何を最初にやるつもりですか?』

「うーん……まぁお仕事探しかな?」

『やっぱそうですよねぇ』

「帰る方法を探すにしても、生活をするにはお金がいるからね」

『じゃあ二つ目。仕事は何を選ぶつもりですか?』

「一応、異世界にありがちな冒険者とかあったらそれやろうかなぁって思ってるけど」

『冒険者ですか?……私が知る時代にはありましたね。あ、いい機会なので言っておきます。私はこの世界自体は良く知っていますが、超広域マップを見る限り知らない国が幾つもあります。だから私の知識も、もしかしたら相当な時間が経っていて使い物にならない可能性もある、という事を頭の片隅に入れておいて下さい』


 わかった。わかったから広域マップってのを教えてください。


『無理です。今のままでは魂の処理が追いつかなくてミナトが死にます』


「……仕方ない、わかったよ。それは置いといて、朝起きたら街まで行こうか。後のことはまたその時に考えよう」

『行き当たりばったりですねー……あ、見張りは私に任せてください。どうぞ、ごゆっくり。おやすみなさい』

「そう?じゃあ頼むね。おやすみ」


 ティアに見張りを任せて、僕は着ていた制服のブレザーを枕にして眠りに落ちた。

 ……地面が硬くて寝づらい。







 朝、少し暗い内に起こされた。

 ティアと姉さんを間違えながら起きて、死にたくなりながら街に向かった。

 軽めに走ったが、街が見えてくるまでそう時間はかからなかった。

 まだ日が昇ってからそう時間は経っていない。

 まぁ、とりあえず問題無く街の前まではこれたのだからいいか、と街の入り口である門の前に出来上がっている列に並ぶ。

 全く関係は無いけど、街の名前はミレットというらしい。

 どうしてわかったかって?

『ようこそミレットの街へ』

 って思いっきり門に書いてあるからね。

 ミレットの街は城壁に囲まれて中身は見えなかった。

 規模も割と大きいし、主要な都市の一つなのだろう。

 その為か、旅人や商人が沢山並んでいて、彼らの間で噂話がそこかしこでされていた。

 ここぞとばかりに噂を盗み聞きしていたけど、僕の知りたい情報は殆ど無かった。

 わかったことは、このミレットの街がトリストラム王国という国の地方都市であるということ、貨幣の種類が銅、銀、金、白銀、黒金の五種類であること。貨幣は大陸共通らしいということくらいだ。





 知りたい事も知れたので、暇になった。

 最初から暇で、話しかけてオーラが出ていたティアと会話して待っていたら、すぐに順番が来た。

 だが、ここで問題が起きた。


「身分を証明する物とか持ってない……」


 身分証が無く、額に大きな傷がある強面の兵士さんに連行されてしまったのだった。

 一日二日で二度も疑われて殺されかけるのは勘弁してほしい。

 さて、どうなるんだろうか……と思っていたら僕を連行した兵士さんが、ローブを着た人を連れて来た。

 なにをされるんだろうか?


「この少年ですか?」


 ローブの人が兵士さんに尋ねる。

 声からして女性のようだ。


「ああ、身分証が無かったんでとりあえず連れて来た。判定を頼む」

「了解しました」


 ローブの人はそう言うと、懐から水晶玉を取り出した。

 ……今どこにしまってたんだ?


「君、この水晶玉に手を乗せて貰えるかな?そうすれば君の素性がわかる」


『……っ!』


 どうやら、不審者判定装置みたいな物らしい。

 ここは是非やって貰おう。


『……!(ワタワタ)』

「わかりました」


 水晶玉に手を乗せる。

 少しひんやりとした感触。


『……(見つかりませんよーに)』


 さっきからワタワタ煩いよ……


『――真実と法の女神 ティミスの名の下に、彼の者の真実の姿を我に視せよ――』

『――真実の瞳――』


 ローブの人が詠唱する。

 今更だけど、なんでこの世界の言語が理解できるのだろう?

 聞こえて来るのは聞いたこともない言葉の羅列なのに、意味が日本語として理解出来てしまう。

 逆に、喋る時は自分の口から知らない言葉がベラベラ出てきてギョッとする。

 ……これは慣れるまで時間かかりそうだ。


『言語は私のお陰なんですよー。泣いて感謝して下さいね?私がいなかったら日常生活すら送れなかったのですから』


 そうやって感謝を要求して来なければ素直に感謝してたよ。






 ティアと思考で言い争いをしていたら、判定が終わったらしい。


「この者は特に犯罪歴も無く、間者でも無さそうですね。街に入れても問題は無いと思いますよ?」


 ローブの人が兵士さんに判定結果を伝えている。


「了解。んじゃボウズ、通行料として銅貨三枚な」

「ゑ?」


 ……空気が凍るというのはこういう事ですかそうですか。


「あー……その子の通行料は私が払うよ。どうやら本当に一文無しみたいだし」


 フードの人が助け舟を出してくれた。

 この人にはもう頭が上がらない……


「それじゃあ、少年君。これは貸しだよ?」


 優しいフードの人はそれだけ言って部屋を出て行った。

 それから少し経って、手続きが終わり正式に街に入った。

 色々と悶着があったけど、無事に入れて良かった良かった。

 安心していたら、兵士さんが近寄ってきた。

 なんだろう?


「ボウズは冒険者ギルドに登録してないよな?」

「はい、してないですね」

「なら登録しに行け。ギルドカードはどこでも身分証になるからな」


 親切にも、この後やるべきことを教えてくれた。

 一応、冒険者という存在がある事も確認できたし、本気で登録しに行こうかな。

 しかし便利な物があるよなぁ。

 あれか。

 運転免許が身分証の代わりになるのと似たような物なのかな?


「わかりました。ありがとうございます」

「おう、気にすんな。じゃあな」


 それだけ言って兵士さんは仕事に戻って行った。

 強面の割に優しい人だったな。

 さて……冒険者ギルドってどこかな?

 まぁ探せば見つかるだろう。

本当に、この話は難産だった……


お読みいただき、ありがとうございます!

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