番外編〜〜ミレットの街の彼女たち〜〜
お久しぶりでございます。
そろそろ不定期から定期更新に変えたい白銀色です。
今回から、色々と変える部分がございます……と言っても、今のところ一つだけなのですが。
ステータスの部分、今回は簡略表示として情報が少ないですが、これからのステータスにおいてSTR等の細かい数値を取っ払います。
結果、今後のステータスは――
名前、人種、レベル、職業、技能、称号
の6つの情報のみになります。
設定改変の我儘を御許しください。
次回の更新は6/12、日曜の21時です。
――Side:レイニー――
私の名前はレイニー。王国の国境付近にある中規模の都市、ミレットの街の冒険者ギルドの受付嬢だ。
ついでにギルド支部長の娘ではあるが、あの父親の事はあまり好きではないし、どうでもいいことなので忘れよう。
それよりも、今の私たちの現状を語ろうと思う。
もう一ヶ月以上前の話だけど、この街は唐突に、大きな天災に見舞われた。
天災の名は「虚人」。ある人の話ではそれは神の兵器らしい。
私たち支部の職員やミレットの冒険者は何も出来ず、無謀な防衛戦をするしか無いと思っていた。
だが、偶々前日にミレットの街に訪れた、冒険者になったばかりの少年が天災を退けた。そして、その少年は早々にこの街を去っていってしまった。
私と、友人のセレーネはその少年――ミナトとまた再会すると彼に宣言し、今に至る。
まだ、彼に会いに行く為の準備は完了していない……
「レイニー、そっちはオーク二体殺って!私は残りの全てをやるから!」
「わ、わかった!」
ああ、現実逃避的に過去の出来事の回想とかやってたのに……また戦闘が始まってしまった。
今私たちは、ミレットの街から国境までの途中にある森で戦闘中だ。
何故ギルドの受付嬢をやっていた私がこんな生きるか死ぬかの戦いをやっているのかというと……先程の回想にあった、ミナトとの再会の約束が関係している。
彼は、とんでもない強さだ。
たぶん本人は否定するだろうが、彼が本気で戦えばこの世界に生きる存在は全て勝てないだろう。
そんな彼に会いに行くとして、どんな危険が待っているか分からない。
相応の実力が無ければ会いに行くことなど不可能だろう、というのは私とセレーネの共通見解だった。
セレーネは……Bランクだし、まぁ結構強いから今は良いとして、問題は私だった。
ギルドの職員は一応、最低でもCランク程度の実力はあるのだが、私はDよりは強いがCには勝てないくらいの強さだった。まぁ冒険者のランクなんてピンキリだけどね。
なので現在は受付嬢を休職し、冒険者として日々戦っている。
ちなみに、私とセレーネの今のステータスはこんな感じである。
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レイニー=メトロギス 22歳
人族
Lv.39
職業:冒険者[Rank:C]
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セレーネ=マレウス 19歳
人族?
Lv.72
職業:冒険者[Rank:B]
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セレーネは虚人襲撃の時、レベルは38だったらしい。しかし、強くならなきゃの一心で国境に鎮座する巨大な古代遺跡に突入。ここ最近まで一回も出てこず、ひたすら倒して休んで倒して休んでを遺跡内で繰り返していたらしい。
寝床はまぁ、安全地帯があるから休めなくはない。けど、食料や水はいずれ無くなるだろう。それについて聞いたら
「魔物の肉があるじゃない。水は……ほら、水の魔術で。飲めたものじゃなかったけどね」
って朗らかに言われて、呆気取られたものだ。
そんな感じで、色々ぶっ飛んでたセレーネの鬼気迫る様を見た王国や隣国の冒険者たちは、すわ人型の魔物か!?と思うほどだったらしい。
まぁ、その魂を磨り減らす訓練で30以上もレベルが上がったのだから凄いものだ。今はその訓練も止め、私の訓練を手伝ってくれているが。
「「ブモォーー!」」
私が関係の無い回想をしていると、相対していたオーク数体が雄叫びを上げながら突撃してくる。
おっと、これ以上の現実逃避は命に関わるわね。
とりあえずセレーネの邪魔にならないよう、指示通り二体を相手して引き離しますか……たぶんあの子は一人でも残りの十数体相手に出来るだろうし。
簡単な挑発の魔術等を使って、オーク二体を引き連れ広い場所に出る。
どうやら森を出てしまったようだが、まぁ良いだろう。
私は慌てずに腰の短剣二振りを抜き放ち、左手の短剣に魔力を通す。
『――術式:加速――』
短剣に刻まれた魔術陣が起動し、世界がスーパースローなる。
私のそれぞれの短剣に刻まれた二つの陣の能力のうち片方は、5秒間の超加速。
リキャストの時間は無く、肉体に限界が来るまで連続で使い続けることが可能な優れ物だ。……一度の使用で、相当な疲労が溜まるが。
超加速の世界の中でも通常通りには動けるので、特に苦戦するような事はない。
重要なのは、もう一つの陣の能力だ。
右手の短剣に魔力を通し、陣を発動する。
『――剣陣:属性付与・雷――!』
短剣の周りに雷が集まり、剣の形を成す。
属性付加……それだけなら魔法剣や魔剣といった類と変わらないが、この剣にはまだ秘密がある。
ゆったりと流れる世界を駆け、手前にいる阿呆面を晒しているオーク一体の首に、雷の短剣を突き立てる。
雷の激しいスパークと、肉の焼ける臭いが立つ。
そんな事御構い無しに、さらに魔力を流し込む!
『――剣陣:簒奪――』
「ブモォォーーー!?」
オークの身体から魔力や魂そのものが抜き取られていき、肉体も元から居なかったかのように消滅。最終的にはその場に魔石だけが残った。
これが短剣の秘密。
右の短剣には、『剣陣』という術式が組み込まれている。
それは『属性付与・七属性』と、『簒奪』の二つだ。
属性付与は、その名の通り武器に特定の属性を付与してダメージを上げるもの。しかし簒奪は、少し毛色が違う。
簒奪は、相手の魂を喰らって無理矢理に成長させる力だ。簒奪は、相手の今までの経験値、技能、特性を全て奪う事が可能なのだ。(一度奪った事のある技能や特性は統合されて強化される)
だから、私の所持技能はあまり人様に教えられないような物満載だ。魔物の固有技能まで会得した時は、短剣を使うの止めようかと思った。まぁ……もう既に遅いかと諦めて、使い続けているけど。
この凶悪な力を持った短剣は、セレーネが遺跡で彷徨ってる間に見つけた物らしいが……本当、国境にあるダンジョンって何なんだろう。
そんな疑問が湧いたが、今はまだ戦闘中。加速も一度切れてしまったので、バックステップをして少し距離をとる。
仲間を目の前で消滅させられて怒り心頭のオークは、深く考えもせずに突っ込んできた。良いカモだ。
もう一度加速を使って悠々と避けた私は、未だにスパークを迸っている短剣をオークの頭に突き立てる。
「ク"モ"ォォォォー…………」
悲鳴は一瞬で消え、魂も搾り取られて、後に残るのは魔石だけ。
本来ならこれだけで上がるはずもないレベルが、ドンドン上がっていく。
……まぁ今は、それは良い。
セレーネの方は大丈夫だろうか?
大丈夫だと思って置いて行ったが、少し心配になって来た。万が一という事もあるし、あの子は後衛型だし。
見に行ってみよう。
そう思って森の奥に目を向けた瞬間、視界が白い光に飲み込まれた。
――Side:セレーネ――
レイニーがオーク二体を引き連れて走っていく。
ほんの少しの動きしか見せてないが、あそこまで手際良く動けるなら、そろそろこの訓練を止める時も近いかな?
「「「ブッフゥ!」」」
よそ見していたら、オークメイジたちの放った火の魔術が私の障壁に当たった。いけないなぁ……戦闘中はよそ見しちゃダメだった。
まぁ、レベル差が広すぎてあまり戦闘と言った感じがしないけど。
詠唱すらしない無属性の魔術でサクッと仕留める。
それをかれこれ5分程度だろうか。続けていたが、だんだん飽きてきた。
いっそ全て燃やしてしまおうか……と思案に耽っていると、このオークのボスらしき大きな魔物がノッシリと現れ、急に仲間に怒鳴り始めた。
「人間、シカモ一匹如キニ遅ヲ取ルトハ、貴様ラソレデモ誇リ高キオークノ兵カ!?全兵、突撃セヨ!!」
「「「ブモォォ!!」」」
あー……また面倒なのが出たなぁ。事前情報には載ってなかったけど、これ危険度Aランクのオークキングじゃない?私たちB,Cランクの仕事じゃ無いよなぁ。
ギルドに対して不満はあるが、このままのんびりやってたら負けてしまう。
いくらあの遺跡探索で強くなったと言ってもまだまだ足りないのだ。
さて、本気で狩るとしよう。
私は遺跡で手に入れたワンド『アウロラ』を掲げる。このワンドは固有術式が埋め込まれていて、それがとても強力なのだ。
強力過ぎて、使い所が限られると言うのが難点と言えば難点だと思う。
そんな事を思いながら前方に障壁と妨害結界を張り、オークたちの侵攻を一時的に止める。
さぁ、急いで詠唱をしよう――
《――暁の天に冀う――》
《光満ちる天の片割れ、命を祝福する夜明けの陽よ》
《命を否定する魔の尖兵、我等の敵に裁きの光よ降り注げ》
《――天光の御柱――!》
詠唱を完了する。
その瞬間、天から眩い閃光が堕ちてきた。
即座に爆音と衝撃が発生。
予め張っておいた障壁も粉々に砕けて吹き飛ばされそうだが、何とか耐える。
……うーん、威力を間違えたかな?森の大半が消し飛んで更地になってる。
あれ、レイニーまで消し飛んでないよね?……ないよね!?
不安になって来たよ!?
「レイニーっ!生きてたら返事してー!?」
静まり返る爆心地。
否が応でも、心臓の鼓動が速くなる。
まさか……本当に、殺っちゃった!?
「レイニー!お願い!返事をしてーッ!!」
「こっ、こっ、こっ……!殺す気かバカーッ!!!」
不安で押し潰されそうだったが、私の不安に反して凄く元気な怒声が返ってきた。良かった、どうやら無事のようだ。
少し泣いちゃったけど……秘密にしとこう。
この後、散々あの光の柱について追求されたが適当にいなしてミレットの街に戻って行った。
この時はまだ知らなかったけど……私たちの旅立ちも、もうすぐそこまで迫っていた。
セレーネさんのキャラが若干ブレてますかね……?
お読みいただきありがとうございます!




