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第八話〜秩序と正義の女神・テュルケー〜

実は本日17:45に、予定していた小話二つを割り込み投稿しております。

六話と七話の間にあります。

友人から「時系列がごっちゃになるからそうしろ」とアドバイスをされていたのでそうさせて頂きました。

混乱してしまった方が居りましたら、申し訳ございません。


告知は3回目になりますが、一応。

次回の投稿日は5/31火曜日の21時です。

 お姫様が連れて来たモノを見た時、身体が無意識に相手を殺しにかかっていた。


『っ!……おやおや、随分と手荒い歓迎ですね、神殺し様?いや、その息子と言った方が正しいかな』

「ミナト様!?」


 創造術で造られた剣を魔力の壁で防いだその女は、余裕のある態度で僕を見つめた。

 ……自分でも驚きだが、理由も無く殺意が湧くのは初めてだ。

 すぐに女の前から飛び退り、距離を置く。

 殺意の意味が解らず僕自身が困惑していると、女が「ふむ」と呟きつつ魔力を放出し始める。

 彼女の魔力は、黄金色に光り輝いていた。


『とりあえず、自己紹介といきましょう。私の名はテュルケー。この世界の主神の一柱です』


 成る程……殺意は神殺しの本能から出てたのか。

 名乗った女……テュルケーの姿を観察する。

 金髪碧眼の長身の女性で、出るとこが出て引っ込むとこは引っ込んだ抜群のプロポーションだった。

 服はティアと同じ様な、キトンと呼ばれる服装に酷似しているが布が少し薄くて、率直に言ってエロい。

 この姿を見ると、信者の男性の半分くらいは煩悩で埋まるんじゃないかなーと思わなくもない。

 いつか会う必要があると思っていた存在に、こうも早く会えるとは予想外だった。うん……こちらも挨拶だけはしておくか。


「ご丁寧にどうも。ミナトです」

『お久しぶりですね、テュルケー。覚えていますか?嘗ての主神様のナハティアですよ』

『会釈:私は初対面ですね。天眼の人格……いえ、神格のメティスと申します』


 二人とも幻影を出して挨拶してるけど、テュルケーは見えて……るみたいだな。バッチリ目が合ってるし。でもお姫様は見えて無いっぽいけど。


「お姫様はこの二人が見えないの?」


 僕が自分の背後にいるティアとメティスを指差すけど、首を横に振る。


「姿は見る事はできないですが、声は聞こえます……」


 声だけ聞こえるとかホラーだね。

 しかも、ティアもメティスも聞いたこともないような昏い声だったから、本気で恐い。

 僕たちと、テュルケーとお姫様は少し距離が開いてるけどその中間地点が殺意と魔力が入り乱れて、火花が散ったり衝撃波が生まれたり既に激しい攻防戦が起きている。

 ……お姫様が吹き飛ばされそうだったので、こっそりと防御結界を張っておいてあげた。


『覚えてますよ、元主様?随分と惨めな姿になりましたね。己の身体を捨て、少年に寄生するとは……それも神殺しという害虫の身体に。宿主共々早く消滅しては如何ですか?』

『そういう貴女は随分と猫を被った姿ですね?実際の貴女はもっと残念プロポーションじゃないですか。なんですがその男が好きそうな身体は?あ、もしかして下界の男たちを漁る為にその姿なんですか?いやー主神がビッチとか信者が可哀想で仕方ないですね!』


 めっちゃいい笑顔でテュルケーを煽っていくティア。そっか……あの姿は偽物なのか。そっかぁ……

 煽りに耐性が無いのか、すぐに顔を真っ赤にして怒るテュルケー。

 口喧嘩弱っ!本当に神様なの?


『やはりお前たちは悪しき存在ですね。旧時代の古い骨董品に世界の理から外れた化物、それにどんな存在かもこの私ですらよく解らないナニカ。この世界の害悪にしかならない存在は、早急に消えなさい!』


 しかも急に存在を否定されたんだけど……

 出来れば僕もこの世界からはオサラバしたいんだけどなぁ。


「いやー奇遇ですね?僕も早くこの世界からは消えたいんですけど、帰る方法が見つからなくて……教えて貰えません?」

『正直もうこの世界に未練とか無いんで……ミナトさんの世界に行けるなら早く行きたいんですけど』

『同意:マスターと同じく、この世界の生まれでも無いので未練の欠片も無いです』


 あちらの神様の宣言に対して即座に同意の返事をした。

 おお……あちらさん、呆気に取られてるよ。まさか同意されるとは思ってなかったんだろうな。

 あ、あっちからの魔力の放出が止まったし僕も止めるか。

 お互いの魔力の波が止まった後、衝撃で散々に荒らされた部屋に痛い沈黙が降りる。

 お姫様は現状を把握出来なくてオロオロしてるみたいだ。

 今まで気づかなかったけど、この部屋全体に結界が張られていた。

 外界と隔離する為の結界の様だけど……何でだろう?


『どうせ自分の姿を見せたくないからですよ。巷で評判の痴女が主神だとバレたらマズイですしね』

「ああ……成る程」

『違いますっ!私はまだ処っ――あ……』


 ……本当に一瞬だけど、空気が凍った気がした。


『そーですかぁー。まだ処女ですかー。いやー奇遇ですねぇ?私もですよ。なぁに恥ずかしがる事はありません。貞操観念がしっかりしているのは立派な事ですよー』


 何かティアから凄いカミングアウトされたけど、そんな事より今はこの場をどうするかしっかり考えないといけない。

 とは言え……ティアは処女なのかぁ……そっかぁ。


『ニヤニヤしないで下さい気持ち悪い。……で、本当に何の用ですか?ミナトさんを元の世界に帰してくれるなら万々歳なんですが』


 ティアの仕切り直しの言葉で少し落ち着いたのか、テュルケーは思案顔になった。


『ちょっと待って下さい。そこの神殺しと組んでこの世界に攻めに来たのではないのですか?』

『何言ってんですか?恐らく虚無の神でしょうが、あいつに襲われたんですよ。そんで世界の狭間に連れ込まれて、何とか逃げて、強制転移でこの世界に舞い戻って来たんですよ。まぁ千年も経ってて驚きましたが』


 ティアの説明にまたも呆気に取られるテュルケー。どうやらティアが復讐する為に神殺しを連れて戻ってきたとおもっていたらしい。


『ヤバイ……これはヤバイです』


 真っ青な顔でブルブルと震え出したテュルケーを見て、ティアが何故か焦りだした。


『ちょっとテュルケー。まさかとは思いますけど、《聖戦》の準備とかしてないですよね?』

『……(ギクっ!)』

『……してたんですね?』

『……ふるふる(涙目)』

『認めなさい?してたんですね!?』

『はいぃ……してました』


 ティアはその言葉を聞くと、顔に手を当てて天を仰いだ。

 そして自分を落ち着かせるように何度か深呼吸をすると、静かに神剣を取り出した。


『この、大馬鹿者をどう料理してやりましょうかね……』


 全然落ち着いてなかった。


『ちょっと待ってよティア。聖戦って何?』


 さっきから置いてけぼりで、事態がどう動いているのか全く分からない。

 お姫様もキョトンとしてるし、ここらで説明して貰わないと何も理解できないよ。


『この際だからお姫様もよく聞いておいて下さい』

「えっと……分かりました』


 声しか聞こえない存在に対して、どこを向いて礼をすればいいのか分からずお姫様はオロオロしていた。


『ああ、とりあえず顕現した方が良いですかね。……魂の修復率は48%ですか。まぁ少しの間なら問題は無いでしょう』


 そう言うとティアは、『むんっ!』と気合を入れた。

 ……微妙に存在感が濃くなった程度に感じるけど、それだけだなぁ。お姫様にもはっきりと見えるようになってたので問題は無いんだろうが。


『とりあえず聖戦についての説明からしますね。聖戦とはまぁ、神が、その神を主神と崇める国と勇者を使って行う戦争ですね。お姫様の為に分かり易く、この千年の間に起きた聖戦の例を挙げるなら魔人族とこの大陸の戦争ですかね』

「ふむふむ。で、何でそんなにティアは怒ってるの?」

『それはですね、聖戦をやるのに勇者が必要なのですが……召喚ってあり得ないほどの代償を必要とするんです。そしてその代償を払うのは信者たち国民。更に言えば呼んだ勇者が異世界人だった場合、その者の人生を潰すという事ですから。余程の事がない限り……それこそ、この世界が消滅の危機に瀕していて、自分たちでは解決出来ない時くらいなんですよ』

「ん?その理屈で行くと、僕の父さんって世界の危機の為に呼ばれたの?」

『そうです。千年前、確かにこの世界は虚無の神によってどうしようもない程滅茶苦茶に荒らされていました。だから私たち六柱は苦渋の決断をしてナガレたちを召喚したのですが……この馬鹿たちに裏切られて、この世界からも虚無の神からも襲撃を受けるハメになりましたよ』


 何というか……本当に大変だったんだなって思う。もうテュルケーを見る目が据わってるしね。


『あの時は……その』

『今更謝罪なんてされても困りますよ。そもそも、貴女たちは千年経ってて希薄になってるかもしれませんが、私にとってはまだほんの一、二ヶ月前の事なんですよ?簡単に許せる筈ないじゃないですか。貴女たちのせいで六柱のうち四柱は消滅、二柱の私たち天のうち、その片割れは行方不明。世界の狭間に逃げた私たちを追って虚無の神がこの世界から手を引いて行ったお陰で、何とか平和を保てているようなものですよね』


 もうティアは咳を切った様にドンドンと不満を吐き出してくる。

 次々と出てくる本当の歴史に、一番の部外者であるお姫様は既に混乱し切っていた。

 自分の信じていた神が実は裏切り者だったなんて、宗教はよく分からないけど辛いんだろうな。

 ティアはまだまだ言い足りないだろうが、テュルケーの方がどんどん萎れていって哀れなのでここらで一息つかせる。


「本筋から離れてるぞティア。テュルケーが聖戦準備をしてる事に怒ったんだろ?それ以外の過去の裏切りはもうどうしようもないよ。こいつらの中じゃ既に千年経ってるんだし」

『あーもう良いです。とりあえず聖戦の準備がどこまで行ったのか聞きましょう。……おい、どこまでやった?』

『き、昨日勇者の魂を召喚して、今は肉体に憑依させてる最中です……』

『……っあぁ!?』


 完全にヤ○ザのような雰囲気を漂わせてるティアに、僕はもう何も言えない。

 テュルケーも、たった十数分前とは完全に別人で、神様の威厳なんて欠片も感じられない程に弱った状態で返答していた。

 少しの間荒れていたティアだが、急に静かに考え出す。

 僕とメティスは置いてけぼりだなぁ。


「暇だねぇ」

『応答:暇というか、私はこの世界がどうなろうが知った事ではないので静観してるだけです。一応、事態はだいたい把握してましたしね』

『なんでティアに教えなかったの?』

『応答:あまり大事だと思っていなかったものですから』


 態々伝える必要があるもないと思ってたわけか。まぁ仕方ないか。

 しかし、テュルケーは既に泣いててマトモに話せないしティアは頭抱えて『ウガァー!』とか発狂してるしお姫様は呆然としてるし僕ら二人は静かに蚊帳の外だし……これ収拾つかないなぁ。どうしよう?

 頭を抱えたい気持ちが、少しだけ僕にも分かった。

お読みいただきありがとうございます!

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