第七話〜お姫様の名前〜
もう……謝罪から始まることをお許し下さい。
予定していた登校日に間に合わなかったという、重大なミスをしてしまいました事、誠に申し訳ございませんでした。
これからもこの拙作と、素人作者をよろしくお願いします。
次回の登校日は5/29、日曜の21時です。
次回は本編と小話二つを予定しております。
※5/28 お姫様の名乗り部分を修正しました。お互いで名乗り合う事にしました。
お姫様との再会から二週間、小話をしたり渡り人の消息を追ったりクエストを受けたりと、忙しくも充実した毎日を送っていた。
……正直、何故お姫様の様な人が僕なんかと話したがったのか理解出来ないけれど。
『そうですよねぇ。一目惚れとかそういう話でもないと思うんですけどね』
『面識が二回しかなくてちゃんとに話したのも再会した時だからね。惚れられる様な事をした覚えも無いし……本当、何でだろう?』
『提案:いつもみたいにストレートに聞いてみたらどうです?』
『うーん……ま、そうしようかな。もしそれで気不味くなったら、とっととこの王都からトンズラすればいい話だし』
渡り人の消息もそろそろ王都だけから辿るんじゃなく、実際に足を運んで調べてみるべきだろうし……丁度いいかもしれない。
どうやって今の現状から問題無く抜け出せるか考えていると、ティアがため息を吐いた。
『何だよ?』
『いえ、別に。ミナトってあまりこの世界の人……というか世界そのものと関わりを持とうとしませんよね。ミレットの街の時は急に命かけたりしたのに。どうしてですか?』
ティアは、あの時からずっと疑問に思っていた事なのか珍しく「解らない」という顔で聞いてきた。
何だそんなことか。
『基本的に僕は帰るために動いてるんだし、異世界の人たちと変に関わりを持ってしがらみとか出来たら面倒じゃない。ミレットのあれは本当に例外。虚人が出てきたのが僕たちに原因があったであろう事と、セレーネとレイニーが死ぬのは何か違う気がしたから助けたの。もう次は無いよ』
本当に、アレだけは例外だ。もう二度と、本筋と関係の無い事で命を賭けるつもりはない。
『なるほど……でもそう言っておいて、何だかんだで助けそうですけどね?変に甘い所ありますし』
『同意:そうですね。もう次は無いぞとか言いつつ何かあれば毎回助けに行きそうです』
『何でそうなるかなぁ?僕甘い所とかあったっけ?』
ティアとメティスに言われて、少しだけこの一ヶ月弱を振り返ってみる。
少なくとも何か甘い対応をした覚えはないと思うんだけど……
『現在進行形で、お姫様の相手してるじゃないですか。今もお城に向かってますし』
『追従:ほぼ二日に一度、律儀に行くとか甘々じゃないでしょうか』
ティアとメティスが「何言ってんだこいつ」みたいな口調で言って来た。
お姫様って……アレは仕方ないじゃないか。
『いや、お姫様の申し出をあのまま受けなかったら王国全土に指名手配されかねなかったじゃない。そしたら今ほど調査進んでないよ?』
『そりゃそうですけど……』
僕の言葉に納得出来ないのか、ティアは釈然としない顔をしていた。
まぁ、納得出来なくてもそれは構わない。
そんなことより、そろそろ行かないとお姫様拗ねるだろうし急ごう。
『やっぱり甘いじゃないですか……』
『同意:自分のこと分かっていないですねマスターは』
……甘いのかなぁ?
二人からグチグチ言われつつ、王城へと急ぐのだった。
王城への行き方は割と色々だけど、この二週間の間で一番使ったのはやはり図書館からの道だ。
以前使った隠し通路は封鎖されていたが、王城へと向かう道はそこ以外にもあったのだ。
王国の一般兵や図書館の職員が隠し通路の存在を知らないのは立場上仕方ないだろうけど、仮に暗殺者とかが使ったら確実に標的は殺られると思う。
というか、ついこの間侵入者騒ぎがあったのに隠し通路が何処にあるのかとか調べなかったのだろうか?
『調べなかったと思いますよ?そもそも貴方のように隠し通路が丸見えな人なんて世界にほぼ居ないのですから、下手に調べたりしたら寧ろそっちの方が情報が漏れる可能性があって危ないですよ』
『同意:そうですね。恐らく知っているのは国王とその子孫たち、後は近衛騎士団の隊長等の側近たちでしょうか?近衛騎士団何てものがあるのか知らないですが』
現在進行形で通路を通ってる僕としては、そのまま殆どの人が知らない方がいいかなぁと思う。
王城まであと半分、と言ったところで何か違和感を感じて立ち止まる。
『……ねぇ二人とも』
『はい、言わなくてもわかってます。とりあえず魔術発動出来るように準備しておきます』
『応答:周囲を警戒……反応はありません』
即座に反応する二人。普段の軽い感じもしないし、頼り甲斐のある仲間だ。
『今、王都に入った時と同じ感触がしたよね?』
『網に引っかかった感じですよね?私も感じました』
『同意:私もです』
『最初は何処から張られたのか解らなかったけど、今回の事を考えると犯人は王城の中に居ると思うんだけど、反論ある?』
『私は無しですね』
『応答:一応言っておきますが、マップではそれらしき人間は捕捉できません。頭の片隅には置いていて下さい』
メティスの忠告を受け入れつつ、念のため索敵抵抗の魔術を使用する。
これは追跡、探知等の索敵系魔術の発動を妨害する効果がある。
どうでもいいが魔術使ったの久しぶりかもしれない。
少しだけ身体を強化して走る。
チンタラ歩いてたら敵が来てしまうかもしれないし、とっとと王城の中に入ろう。あの中に入れば、城の兵士たちが相手をしてくれるだろう。
『押し付けですか……鬼畜ですねー』
『さて何のことかな?』
ティアの言葉は聞こえないフリをして受け流し、通路を進んでいく。
結局、通路では僕の警戒に反して特に何もなく、無事に城に出た。とりあえずお姫様の部屋に行き、少し事情を話してガルディスさんに警戒に当たってもらった。
僕はお姫様に断りを入れて、帯剣した。さて……警戒の準備は出来たし小話は何を話そうかな?
1,2時間が経ち、キリも良かったので話を中断して質問する事にした。
「ねぇお姫様。何で僕みたいな素性も知れない渡り人なんかと話したがるの?」
「うーん……なんででしょう?」
質問を質問で返された。
何だ、このお姫様も理解してないのか?
「わからないの?」
「何となく……としか言いようが無いんです。ただ……」
「ただ?」
「心の奥底から、貴方と共に居なければならない……と訴えかけてくる物があるんです。それは、貴方が初めて助けてくれた時に湧き出てきました。そして離れてからも消えることなく、寧ろ大きくなっていきました。だから、何とかして再会しようと思いましたしこうして側にいて貰える様にお願いしたりもしました」
これって……僕はどういう反応したらいいのだろうか?
お姫様が電波受信してるようにしか聞こえないんだけど……
『ミナト、一つお願いが』
『何?今身体貸してとか止めてよ?』
『いやそうでは無くですね。お姫様の名前を聞いて貰ってもいいですか?彼女が聖女であるなら、名前の中に神の名前が入ってる筈なんです。もしかしたら、彼女の心に神が干渉してるかも知れません』
『わかった。そういう事なら聞くよ』
単純に考えて、この世界の主神十二柱の中の誰かだと思うけどね。
「ねぇお姫様」
「何ですか?」
「お姫様の名前、教えて貰えない?よく考えたら僕知らないんだよね」
「いいですけど……貴方のお名前も教えてください。助けられた時も聞いていませんでしたし、何時までも貴方と呼ぶのも変ですから」
「いいよ。僕の名前は朝霧湊。湊が名前で朝霧が名字……というかファミリーネーム」
「ミナト様ですか……良い名前ですね。それでは私も名乗りましょう。私の名前はアルミナです。アルミナ=テュル=ネメシス=トリストラム」
「……名前長いねぇ」
王族とか貴族が名前長いのはイメージ通り何だけど……慣れ親しんでないなら、どうも違和感があるんだよね。
「テュルは我らが主神・テュルケーの御名から頂いており、私たち王族は全てその名を持っております。またネメシスの部分ですが……聖女は、聖女としての称号を名前として入れるのですが、ネメシスという称号は過去の記録には一度も無くて、どういう意味なのかわからないのです」
ネメシスって……僕の世界の神様の中にそんな名前の女神がいた気がする。
なんだったかな……
『復讐と義憤の女神じゃありませんでした?』
『あ〜そうかも。……って、なんで知ってんの?ティアはこの世界の神様じゃないか』
『何を言っているとはこちらのセリフですよ?神には神の世界があります。まぁ神世界とか、そんな風に呼ばれているんですけど。その世界は次元の狭間を超えた先にあって、あなたの世界にいる神々は勿論の事、知られざる神や、所謂コズミックホラーとされていた某邪神の方々等、様々な存在がいます』
『……』
『ついでに言うなら、貴方達が創作だと思っている世界……古代の神話から、今の時代で言うならマンガやアニメの作品等、それによく似た世界は、この広い世界の中に必ず存在します。そしてその無数の世界に必ず繋がっているのが、神世界なのです』
つまりこの世界と僕の世界も、神世界によって繋がっているわけか。
でも、それを教えなかったって事は、そこからじゃ帰れないから……なんだろうなぁ。
『その事はまた後で細かく教えます。今はお姫様の話を聞きましょう』
言われた通りに意識をお姫様の方に戻す。
ちょっと質問するか。
「今までの聖女の称号はどんなのがあったの?」
「秩序と正義の女神であるテュルケー様が主神の一柱になられた際に誕生した聖女は、ユスティーツィアの称号をお持ちだったそうです。また、この大陸に魔人族が侵攻して来た古の大戦ではルークスの称号を持った聖女が誕生していましたね」
ユスティーツィアにルークスねぇ……何とまぁそのままというか、僕の世界の言語が使われてるのが凄く気持ち悪いというか……場違いというか。
って、何で僕知らない筈の言語なのに僕の世界の言葉だって解るんだ?
『それは多分メティス……というか天眼が原因だと思いますよ。天眼は世界の全てを識る力ですから……たぶん神世界から地球のある世界に繋がって、知識を得ているんだと思います』
この力があったら試験とか意味ないんだろうなぁ……
いや、今はそんな事考えなくていいか。
また質問をしようとお姫様に口を開いたところで、お姫様が何かに反応した。
「――!……はい、はい。わかりました。今から向かいますので……では」
念話のようなもので少し会話をして、すぐに切り上げたお姫様。
むう……どうしたのだろう?
「えっと……何かあった?」
「あ、いえ!ちょっと、貴方に会いたいと言うお方が居まして……」
「え、もしかして僕のこと誰かに話したの?」
それなら今すぐにでも逃げ出すつもりだけど。
「いえ違います!……本当に、誰にも言っては居ないのですが……お願いです。会ってあげて貰えませんか?」
お姫様が涙目になりながら、上目遣いで懇願して来る。クソ……無自覚なんだろうけど、そのお願いの仕方はズルいよな。
「あー……わかった、わかったよ。この部屋で待ってるから」
「っ!ありがとうございます。すぐに戻りますから!」
僕の了承を得たお姫様は、凄い勢いで部屋の外に出て行った。こういう時お供を連れて行くのが普通じゃないんだろうか?
『やっぱ甘いですねぇ』
『同意:もう言い訳は出来ませんね』
なんか二人の不満の声が聞こえたが無視だ。
誰かを迎えに行ったお姫様を見送りつつ、さてどう時間を潰そうかと悩む僕であった。
お読みいただきありがとうございました!




