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第十一話〜その後の顛末と新たな旅立ち〜

この話で一章は終了です。

二章は少しだけお時間を頂きたく思います。


予定としましては、GW明けに二章を投稿しようと思っています。

そして、時間があれば順次、一章も改稿します。

どうか今後もよろしくお願いします。

 心配をかけたかもしれないし、最初は冗談でも言って和ませようと思っていた。

 綺麗な顔が台無しですよ、とか。

 フード取られたんですね、髪の色はやはり綺麗で素敵ですよ、とか。

 だけど、そういうことを言えば、その瞬間に消し炭にされる未来が見えた。

 憤怒の表情を浮かべるセレーネに何も言えず、嫌な沈黙が続く。

 体感ではもう一時間以上黙ったままだ。

 ……埒があかないし、ここはストレートに聞いてみよう。


「えーと……セレーネ?何故そんなに怒っていらっしゃる??」

「……わからない?」


 わからん。

 もう正直に言ってやろうかな、とチラリとセレーネの顔を見る。


「………………わからないの?(ゴゴゴゴゴ!)」


 ダメだ、下手なこと言えない。

 そ、そうだ!

 あの時の戦闘みたいに天眼から最適解が出るかもしれない!

 ……さぁ、僕に状況の最適解を教えてくれ!


『天眼からの応答があります。表示しますか?』


 おお!やっぱり来たか。

 表示するよ。


『最適解:大人しく消し炭になりましょう』


 …………………はい?


 天眼からの応答は、役に立たなかった。

 つ……使えねぇ!

 この天眼、何でも見えるとか謳ってる癖にこの状況打破の糸口が見えてない!


『というかですね、私に相談するって線は無いんですか?』

『あんまし役に立たなそうだったから……』

『酷いですね!?』


 ティアが喚いているがそんなものに構っていられない。

 どうする!?

 どう答えれば死なずに済むのだーー!

 僕が万策尽きて無言でいると、レイニーが助け船を出してくれた。


「もう……そんなに怒ってちゃ、ミナト君も何も言えないよ?少し落ち着いたら?」

「レイニー……」


 猛るセレーネをレイニーが鎮めている。

 ああ、レイニーが女神に見える。

 うちの駄女神と交換しませんか?


『……魂を消し飛ばしますよ?』

『ごめん、つい……』






 セレーネが落ち着いたので、改めて心配をかけたことのお詫びをした。

 その後は、この街が特に変わらないこと、街の人たちはそもそも虚人が迫っていたことに気づいてなかったこと等を話した。

 それから、レイニーが支部長から伝言があると言うので聞いた。


「えっとね……簡単に言っちゃうと、教会に目を付けられた可能性があるから、心苦しいけど早急にこの街を出た方がいいって」


 そりゃあ……また急だな。

 しかし教会って……何故だろう?

 別に僕、直接喧嘩売ってないよね?


「どうして僕が教会ってのに目を付けられるのかな?」

「そこは私が説明するね」


 セレーネが身体を乗り出して言ってくる。

 レイニーは特に異存はないのか、静かに黙った。


「どうして教会がってことだけど、それはたぶん……ミナトが使った力のせいだと思う」

「僕が使った力?」


 僕が使ったのは、神殺しとティアの神としての力だ。

 そのどちらかが、教会にとって重要なものなのだろうか?


「恐らく、二つとも。ティアさん……だっけ?銀髪の娘」

「うん。そうだけど」


 そういえば、二人には名乗ってたっけ。


「私、ナハティアって名前に聞き覚えがあって、この一週間暇さえあれば調べたの。そして、見つけた。ナハティアとは、かつてこの世界の統治を創造神から任された六柱・四神二天がうちの一柱、《宵天・ナハティア》のこと」

『……………………』


 ティアは無言だ。

 否定も肯定もしない……が、たぶん合っているのだろう。

 ティアの表情が何よりも肯定していた。


「それで……ティアが嘗ての神の一柱である事と、教会に目を付けられることがどう関係するの?」

「今この世界を統治している神々はね、四神二天を滅ぼして神の座を奪った者たちなの。神話や教会の教えではね……」


 セレーネがつらつらと教えてくれたが、余計な考察とかまで語って長すぎた。

 要約すると……


 当初こそ真面目に統治していた四神二天だが、数万年も経つとマトモに統治をしなくなった。

 大地は衰え、疫病が蔓延し、天災が起こるようになり、世界は滅びに向かっていた。

 苦しむ人間や動物が憐れに見えた他の神々が、四神二天を討つ。

 長い時をかけて世界を安定に戻し、中心になって動いた十二柱が世界を統治する神となった。

 めでたしめでたしーー


 といった感じだ。

 まぁありがちなストーリーではある。

 中国皇帝の政権が変わる時とか、前皇帝をこき下ろして討伐した正当性を主張するのと似ている。

 そして何故、ティアの力に目を付けたのかと言えば、嘗て倒した筈の神が生きてるかもしれないと思われたからだろう。

 そして、復讐なりされるかもしれないと思ったとか。

 つまりはそういうことか。


「あー……うん。目を付けられた理由が何となくわかった。確かに、そりゃ目を付けるよね」


 そうなると、もし教会の関係者がこの街で僕と遭遇したら不味いな。

 そんなことになろうものなら、この街に絶対迷惑がかかるね。

 こりゃあ、確かにすぐ出た方が良さそうだ。


「レイニー。支部長に伝えてくれ。すぐにでもこの街を発つから、僕のことはどうか上手く誤魔化してくれって」

「……やっぱり、出て行っちゃうか。うーん残念だな。折角可愛い子がここを拠点にしてくれると思ったのに」


 レイニーが冗談めかして言う。

 笑いながら言っているけど、悲しそうなのがバレバレだ。

 こう思ってもらえた事に、少しだけ嬉しく思う。


「ありがとうレイニー、そう言ってくれて嬉しいよ。別に今生の別れじゃないんだ。また戻ってくるよ」

「絶対だからね?」

「ああ」


 レイニーとそう約束すると、彼女は満足したのか立ち上がった。


「じゃ、私まだ仕事残ってるから……またね、ミナト君」


 手を振って、振り返らずに部屋を出て行く。

 まだ出会って一週間、実際に接したのは三日程度の筈だが、随分仲良くなったものだ。

 彼女には、いつか土産話をしてやろう。

 そう心に決めた。

 …………さて、セレーネにも色々と世話になったし礼を言っておかないと。


「セレーネ、君もこの一週間程……と言っても、僕が実際に体感していたのは三日程度だけどさ。ありがとうね、世話になったよ」

「ううん、気にしなくていいよ。私が好きでやったことだしね」


 セレーネは笑いながら首を振る。

 それにつられて左右に靡く鮮やかな真紅の髪が美しい。


「フード、取ったんだね。髪、綺麗だよ」

「……そう言ってくれるのは、たぶんこの世界では貴方くらいのものだよ」


 髪を抑え、自嘲的な笑みを浮かべるセレーネ。

 あまりに酷い笑みに、言葉が無かった。


「この色の髪はね、破滅を呼ぶ色だって言って、世界中で忌み嫌われている。それが何でかわからなかったけど……ずっと背負って生きてきた」


 悲しげに伏せられた瞳に、言いたい事が一つだけあった。

 たぶん……その色が破滅を呼ぶと言われているのは、神殺しの魔力の色が元なのだ。

 あの力は世界全てを滅ぼす力だ。

 その力を知っている神なら、紅色という物が恐ろしくなるのはわかる。

 トラウマのようなものだ。


「じゃあ、あの自己紹介の時に態々髪を見せたのは……」

「そう。貴方がそれにどう言う反応をするか見たかったから。……結果は予想を大きく外れて、何の忌避感も感じなかったけど。それからだよ。ミナトを理解したいと思ったのは」


 セレーネは少し恥ずかしげに言った。

 少し伏せた瞳は熱く濡れており、頬は赤みがかっている。

 あれ?

 何この空気?

 甘ったるいぞ??


「待て、セレーネ。それはいくら何でも早過ぎる。チョロインなんて目じゃない早さだぞ!」

「……?何を言ってるのかわからないけど、別に貴方の事を女として好きとかそんな事じゃないよ?」


 あ、なんだ……良かった。

 誤解させるような動作はやめて欲しい。


「まぁそんな感じで、ミナトがどんな人なのか知りたかったけど……この街を拠点に出来ない以上、今すぐは無理みたいだね」

「そう……だね。そう言ってくれるのは嬉しいけど、僕はこの街を今日の夜には出るし、僕の関係者だってバレたら面倒に巻き込まれると思うよ?」


 遠回しに、僕の事はもう忘れてここで今まで通りに過ごしてくれ頼むから、と伝える。

 その意図を汲み取って尚、セレーネは拒否した。


「お断り。折角髪になんの忌避感も無い人と出会えて友人になれたのに、その縁を捨てるなんて私には無理。絶対追いかけるからね」


 すっごくいい笑顔で言われてしまった。


『これはまた……面倒な女性(ひと)に目を付けられましたね』


 ティアが苦笑いして言う。

 僕は絶句して、何も言い返せなかった。






 部屋でのショックから立ち直った後、セレーネ行きつけの店の店主のオバちゃん、支部長のルドノアさんや支部長補佐のダグラスさんに挨拶して、今回街を守った報酬として貰ったお金で多少物資を補給したりした。


 そして、夜。


 ミレットの街の門に、セレーネと仕事を抜け出したレイニーが見送りに来ていた。


「見送りとかいいのに……」

「いいのよ、このくらい。街を守ってくれた英雄だし、私たち共通の友人だし」


 レイニーが明るく応える。

 湿っぽいのは苦手だし、すごく助かる。


「私もレイニーも、ミナトの事はしっかり覚えておくし、いつか、地の果てまで追いかけるから。そのつもりでいてね」


 セレーネはここまで来ても追いかける宣言を止めなかった。

 もうどうにでもなれ!


「ここで話してると、何時までも出発出来そうにないし、ここらで切り上げるよ。じゃあ、またいつかね」


 僕は手を振りながら歩き出す。

 セレーネとレイニーは無言で手を振り返して見送ってくれた。

 それから暫く歩いて、街の門すら遠目になんとか見える距離まで来て、ティアが話しかけてきた。


『とうとう、出発ですね……』

『ああ。とりあえず、最終目的は地球に帰還って事で旅をしよう』

『賛成です!でもその前に次の街に行きませんとねー』


 頭の中でされる明るい会話。

 ミレットの街を出た事の寂しさを紛らわす為に、僕らは何時までも話し続けた。


 ーーこうして僕らは、仲良くなった彼女たちと別れて街を後にした。いつの日か再会すると約束してーー






 ーー某所にてーー


 荘厳な雰囲気を放つ神殿の、奥深くに存在する聖女のための祈りの場。

 そこに、膝をつき顔を伏せ、熱心に祈りを捧げる小さな少女がいた。

 何時までそうしていたかわからなくなるほどの静寂の中、鈴を震わせるような澄んだ声が響く。


『我が聖女、アルミナよ。私の声が聞こえますか?』


 声の主は、この部屋にはいない。

 アルミナと呼ばれた少女は、顔を上げ声に応える。


『はい、女神様』


 応答したことに満足したのか、女神と呼ばれた声の主は少し気分を良くした。

 そして少しの後、重要な御告げをした。


『世界を滅ぼす忌まわしき存在が、この世界に現れた。其方は、私が遣わした勇者と共に、この存在を討ち滅ぼすのだ』


 それは、この世界始まって以来の大事だった。

 いわば、お伽話に出てくる勇者たちと同じように、悪を討て、ということだ。

 そんな大役を任されたことを嬉しく思い、少女は気合を入れて御告げを受け入れた。


『はい!必ずや、勇者と共にその悪しき者を討ち滅ぼしてみせます!』


 少女の返答に満足した女神は、頼むぞ……と告げて消えた。






 女神様に御告げを受けた少女は、己の使命を果たすことを誓いつつ、全く別のことを考えていた。

 それは、この王都に戻ってくる途中で助けてくれた少年のこと。

 いつかお礼をすると約束した少年のこと。


「ああ……あのお方は、今何処にいらっしゃるのでしょうか?」


 少女は知らない。

 討ち滅ぼす悪しき者が、その少年である事を。


お読みいただきありがとうございます!

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