第零話 ~プロローグのプロローグ~
初投稿作品になります。
拙い文章ですが、暇潰しにでも読んでいただけたら幸いです。
注:この話は本編の少し前のお話です。
深く、深く、無限に続く虚無の世界。
生きるモノ全てを拒絶する空間を疾走する、三つの影がいた。
一人は両手にそれぞれ緋色と碧色の剣を持ち、襲いかかる異形の影を斬り伏せる黒髪黒目の男。
一人は杖を持ち、魔術の力で影を退ける金髪碧眼の女。
一人は、彼ら二人に守られるように存在する、銀髪蒼眼の女。
彼らは一寸先も見えない空間の中を、逃げて逃げて逃げ続けた。
そうしてどれほどの時間が経ったか、影が襲ってこなくなった。
それで余裕が出来たのか、男が口を開く。
「もーっ疲れた!……なぁリーナ、まだ術式完成してないのか?」
「まだダメ。ナガレ……集中してるから、少し黙って。ついでにその情けない顔も止めて」
「(......しょぼーん)」
ナガレと呼ばれた男はがっくりと肩を落として消沈する。
リーナと呼ばれた女は、男との遣り取りはいつもの事なのか全く気にした様子はない。
「申し訳ありません……ナガレ、リーナ。お二人はもう戦いから退いていたのに……」
「気にするなナハティア。友人が困っているのは、さすがに見て見ぬ振りは出来ねぇよ」
「ナハティアが気にする必要はないよ。私たちも、少し物足りない生活だったから」
ナハティアと呼ばれた女は益々申し訳なさそうに眉根を寄せる。
どうしたものか……とナガレが頬をかいていると、急に背後の虚空の遥か先を見つめる
ナガレの目には黒い影の軍勢が映っていた。
「おい……ありゃ洒落にならん。リーナ、術式は?」
「まだ完成はしてない……けど、省略して作っても一人だけなら確実に送れる」
「……上出来だ。流石俺の嫁」
マズイと言いながら軽い調子の二人の間には、確かな信頼の絆があった。
「ナガレ?リーナ?」
ナハティアは、普段と変わらない筈の友人二人が何故か遠く感じてしまう。
「ナハティア、アンタにはこれから転移の魔術をかける。場所は俺の出身世界で、俺の住んでた街の郊外にある森の入り口に出る筈だ。転移したらまっすぐ街に行って、街の中心にある山に向かえ。そこにいる姫宮 セツって人なら、アンタの事も計らってくれる筈だ」
「ナガレ!?一体何をするつもりですか!」
「時間がねぇんだ。大量の影がこっちに向かってる。リーナ、ナハティアを送ったら援護くれ」
「了解、任せて」
ナハティアの疑問に矢継ぎ早に答え、リーナに指示を出すナガレ。
ナガレはリーナが頷くのを見ると、愛剣二振りに魔力を込め、遥か先の軍勢に向けて駆けていく。
「リーナ!」
「私もナガレも簡単に死んだりしない、というか死ねないよ。神殺しは永遠に死ぬ事はないのだから。だからナハティア、貴女は安心して行って。必ず再開すると約束するから」
淡々と語るリーナに、ナハティアは何も言えない。
「……」
「もし、あっちでミナトかユカリって名前の子に出会ったら仲良くしてあげて」
「……え?それって」
「それじゃあ、お別れ。またね」
リーナの気になる言葉を問いただそうとするが、それよりも早くリーナの魔術が起動する。
『ーー旅人の羅針盤ーー』
「ちょっと、待っ……」
子ってどういう事よ!という疑問を聞き出せないまま、ナハティアの意識は途切れた。
ぶ、文章を書くのは本当に難しい......
あ、まだ続きます。
続きは22時です。