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真夜中は別の顔

俺はパワーアップした性能を試そうと外に出ていた。

外は真っ暗だったが星の明かりで物の形などは分かる、思ったより明るい。


こんな時、よく物語では……。

「都会の空と違い星がよく見える、星明かりでもこんなに明るいんだな、街灯も無い森の中じゃ真っ暗だと思った。」

……、とでも言うんだろが俺にとっては普通!


星明かりってこんなモンだよ、何故だか主人公って関東の都市部出身で思春期の少年ってのがパターンだが、関西出身 田舎育ちの四十前のオッサンでも良いじゃないか。


晴れてても星が見え無いとかどんだけ空気汚れてんだ?って感じだ。

いや、ビルの灯りが明るくて星が見えないのか?すいませんね!夜中なんてお店も全部閉まっちゃう様な田舎で。


てな訳で自然あふれる夜の星空に特に感慨もなく、まだパチパチとくすぶる焚き火に近づき追加の薪をほり込んだ。


「うーん、幾ら星明かりがあると言っても流石に暗いな。」

「こういう時は光源からその影に焦点を合わせて……。」


暗さに目を慣らすとき近くの影から見つめてそれに目が慣れたら次に濃い影……、と順に慣らしていくと以外と見えるようになるモンだ。


この時も俺はまず手前の影から見つめようと焦点を合わせた途端、周りの景色がかなり明るくなった。

昼の様にとまではいかないがかなり明るい、夕暮れ程度か。木の葉の一枚まではっきり見える。

スキルには特になかったがヴァンパイアなので夜目がきくようだ。


「おおっ!さすが夜特化、問題無く見える。」


「おし、能力試験だ。」


俺は近くに生えている木に向かった、幹の太さが直径30cm位の木に向かって思いっきり拳を振るう。

ベキッという衝突音の後ほどメリメリと木は倒れていく。


「ッ!…おおスゲー、人間の力とは思えない。あ、そっかヴァンパイアだ。」


ちょっと痛かったが擦りむいた拳も一瞬で再生されていく、LPも消費して無い。

昼でも擦り傷ぐらいならLPを使わずに数分で再生していたが段違いのはやさだ、これなら致命傷でもない限りLPは使わずにすみそうだ。


しかし確かに凄い力だったがどうも腑に落ちない。

転生前にゲーセンでパンチングマシーンをやった時、大人の体でもパンチ力は精々100〜120キロ。ゲームなので正確じゃ無いだろうがその5倍の5〜600キロの力がかかったところでこのサイズの木が一撃で折れるだろうか?


生前、木造建築の仕事だったせいか余計に不自然さを感じる。木は以外と強いもので直径が30cmもあれば普通、軽自動車が突っ込んだところで中々折れるものではない。


おそらく筋力5.00とは常人の1.00に対してあくまでも筋力自体が5倍なのであって、その筋力がもたらす破壊力は5倍どころでない様だ。もちろん、俊敏や技量のアップも伴うだろうから半端じゃない事になってる。


この技量だが格闘の技術などではなく自身の身体を操る技量らしい、運動神経の良し悪しみたいなもんかな?脳内書記で確認したがそれっぽい解説があったので間違いないだろう。


「ジュウロウにはこの辺でいるって言ったけどちょっと森に入って試してみるか?」


俺はアイテムボックスからお手製の剣を出し森へわけ入っていった。

それにしてもこの剣もサンダーウルフの電撃食らったりなんやでボロボロになってるな。

あっ!そういやエンチャントかけてもらってないや、まぁいいかチョイ試すだけだしな。


「ウサギか何かいないかなぁ〜?」

「げっ!」


サンダーウルフがいた、それも三匹。

ちょっとヤバいかなと思い引き返そうとしたがペキッっとお決まりの様に足元の枯れ木を踏んで気付かれた。


「「「グルゥゥ!!」」」

「えーい、もう!やってやるヨ。」


おもいきって飛び込み剣を振り抜いた。フェイントのつもりだったのだが俺の俊敏5.00のまえに狼は避ける事もできずに斬り飛ばされる。

半ばまで斬れたのだが途中で剣の方が俺の怪力に耐えきれずグニャリと曲がってしまう、強引に吹き飛ばした感じだ。


もう剣は使い物にならないので二匹目には蹴りを放った、胴の真芯をズドンと蹴り上げ多少のダメージを期待したが……。

期待を大きく上回り狼は蹴りつけた瞬間、腹を破裂させ二つに千切れた。


うわっ!かなりグロい、ズボンが返り血でドロドロだ。


残る1匹を見るとビリビリと帯電して今にも電撃を放ってきそうになっている。

しかしこの調子なら電撃も楽にかわせると思った俺は狼の動きに注意をはらい身構えた。


狼が放った電撃を左に数歩避けて余裕でかわしたはずだった、が……。ドシン!と電撃が右側に落ち、あまり距離をとっていなかった右手の剣にも電撃が放電する。


「グッッ!っつ……。 おお!もう直ってる。」


黒焦げになった右手は瞬時に黒い霧に変わりその後、元どうりに再生される。


「やってくれたな!喰らえ念動力サイコキネシス!!」


少し距離のある狼に念動力サイコキネシスを発動する、狼を見えない力で持ち上げ力一杯地面に叩きつける。

後ろ足あたりを掴む感じで何度も地面や木の幹に叩きつけ狼の息の根を止めた。


「はぁ、はぁ。ちょっ、ちょっとやり過ぎたか?」


ジュウロウが居ないから正直に言うが結構ビビった、おかげでMPも考えずにやり過ぎてしまった様だ。

俺は視界の端に出ているステータスゲージを確認する。


「MPが減ってない!?あれだけ超能力サイキックを使ったのに満タンだ。」


視界の端でMPを表すゲージは依然端までピッタリありその横に出た数値も最大値のままだ。

もしかして夜はMPが減らないとか?


俺はゲージに注目しつつそばにある枝に向け念動力サイコキネシスを使ってみた。

見えない力で掴みかけた時にゲージの端がピリピリと震え、枝を折り取る時にはほんの少し減少しスグに満タンに戻った。


「こりゃぁ、減ってるけどすぐ回復してるみたいだな。……おい、脳内書記。」



《クロウの夜間におけるMP消費》

MPは細胞内に存在する魔力を集めて使用しているが、この時魔力を使用した細胞は死滅し代謝により入れ替わる。クロウの場合この代謝が超再生により瞬時におこなわれる為、常に最大値まで再生する。



「なんと!MP使い放題。」

「……ん?待てよ、一旦は減るんだから一発で最大MPを超える様なスキルはそもそも無理なのか。」

超能力サイキックがMP継続消費型でよかったぁ。」

「そうだ、MPを気にしなくていいんなら試したいのがあったんだ。」


俺は念動力サイコキネシスを自分にむけて使い身体を持ち上げてみた。


「ヤッタ、出来るゾ!」


物を持ち上げれるなら自分を持ち上げて飛べるんじゃないか?と思っていたのだ。

考えた通り持ち上げて浮遊する事に成功する。


「よし、もっと上でビュンビュン飛ぶか。」


グンッと勢いよく空に上がりそのまま垂直に飛んでいく、そこそこのスピードが出るようだ。

気分よく飛んでいたがあっという間に限界がきた。


地上から数十メートル付近でどうやってもそれ以上あがらない、どうも感覚的に地上から見えない力で持ち上げる感じなので地面から離れすぎると力が届かないようだ。


「少しガッカリだな……でもまぁ飛べるのには違いない、ワハハハッ。」


上機嫌で森の木の上空を飛んでいたが空から先を見通して笑いが止まる。


「ん?あれ、海!?」


俺たちがキャンプしていた場所から森を抜けた先は海になっていた。

もと来た方角は小ぶりな山になっており今の高度では見通せない、まさかな?と思いつつ山の方角へと飛んで行った。


空を飛びながらの移動だとあっという間に山までたどり着いた、地面から決まった距離を垂直に飛べるので中腹に至る頃には高度も上がり山頂手前で山の向こう側が見えてきた。


「うわー、やっぱり……。」


山頂から眺めた向こう側の景色もこちらと同じく端は海岸になっており、つまり俺たちがいるこの場所は……、島だった。


「こりゃマズイな、結構ちっせー島だゾ。」

「人とか住んでなさそうだ、こっから全部見通せる上に集落っぽいのは見当たらんゾ。」


俺は近くに大陸か大きな島でもないかと海の方へ飛んでみる事にした、とりあえずここから見える限り周りは海しかない。

もっと外側に向けて飛べば陸地が見えるかもしれない。


しばらく飛び海岸まで出てそのまま海の上を飛んで、陸地が見えないか?と前方を見ていると唐突にガクンと高度が落ちる。


その場所で止まり浮遊していると高度はそれ以上落ちる事はなかったが海面までもう10メートルもない。原因は何だ?


その辺でウロウロしてみると高度が上がったり下がったりする。

どうやらこれは海底を基準に高度が決まってるようだ外海に向けて進めばドンドン高度が落ちる。


「しょうがねー、行けるとこまで行くか。」


ドンドン島から離れていきそれにつれて海面が近ずく。

もう膝まで浸かってるがまだ陸地らしきものは見えない。そろそろ限界か……。


ズボンが返り血でドロドロになってたのでついでに海水で洗ったっておいた。

踵を返して島に戻ろうとしたその時、……ズボッ!!。


凄まじい勢いで海中に足をひっぱりこまれる。

必死で念動力サイコキネシスを発動し上に上がろうと引き込む力に逆らうが、胸まで海中に沈み顔をなんとか上に出すので精一杯だ。


「ぐぅー!何なんだ?くそーー!」


らちがあかないので海中に顔まで浸け海底を覗いてみると馬鹿でかいイカが足を絡め取り海中に引き摺り込もうとしているのが見えた。


「ぐっボー!、ごぽっ、がぽ。」


海中で叫んでも何も言葉にならない。


最初は足にサメでも食いついたか?なんて冗談で思ったがこれならサメの方が随分マシだ。

だが力負けはしてない様でこれ以上引き込まれはしない、しかしこれではジリ貧だ。


イカは海中を泳ぎ俺をさらに外海の深みに引っ張ろうとしていた、それを見て思いついた事を試してみる。

念動力サイコキネシスを全開にして海水を左右に押し分ける、海を割ろうとしたのだ。


結果的に海は目論見どおり割れたのだが、とてもモーゼの十戒のようにはいかず自分周辺の海底までだった。

だが海水のなくなった場所ではイカも踏ん張りが利かず、足先で海底の岩を掴んでなんとか俺と引き合ってるだけだ。


「もらったー!お前はイカ刺しにして食ってやる!!」


俺は足に絡んでいたイカゲソを肩に掛け、一本背負の要領で思いっきり力を込める。

中々イカが海底の岩をはなさないので念動力サイコキネシスで自分が海岸方面に向けて飛ぶようにさらに力を込める。


その時……、ブチッ!


イカゲソが切れた、勢いあまった俺は海面を水切り遊びをする時のようにパシャパシャと跳ね飛び……、浜辺にベタンと叩きつけられた。


俺の手にはしっかりとイカゲソが握られていたがあんな危ない目にあってゲソだけとは……。



まったく………、割に合わない。





































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