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ジュウロウ頑張る?

俺は二つある太陽をめを細めて睨みながらジュウロウに愚痴をこぼした。


「くそー、感覚的にはもう夕方でもいい位なのにまだまだ明るいなぁ。」

「そだね、あと6時間は明るいだろうねー。」

「太陽の位置からするとそんなとこだな。もう一回狩りに行くか?」

「もういいよ、今日はやめとこうよ。」

「じゃ、寝るか俺なんだか限界に眠い。」

「へ?暗くない以前にまだ眠くなる様な時間じゃないだろ?」

「分かんねー、疲れたのかな凄く眠い。じゃ寝てくる。」


そう言うと兄貴はテントの中へすっこんで行った。別にそこまで夜弱い方じゃなかったのに、まぁ夜じゃ無いけど。

兄貴が寝に行って一人になると何となく不安になる。モンスターとか出ないよね?

何もせずに焚き火の番だけしてても暇で余計に不安になってくる、大体まだ明るいから焚き火いらないし。

折角だから魔術の練習でもするか、モンスターが出て来ても撃退できる様に慣れとこう。

実戦で使ったことないヤツからにするか。


「《ロッククラッシュ》」


向かいの木に向けて放ったバレーボール位の岩は木に当たって砕け散った。

ファイアボールよりは衝撃力が有りそうだがそこまで固い岩ではない様だ。


「しかし、この基本魔術?のロックって何に使うんだろな?あと、ウインドとかも。ただ風が出たり岩が出てもしょうがないだろ。」


そう独り言をいいながら次々試す。そういえば闇魔術のスリップもまだだ。

モンスターが居ないので木の枝にかけてみる。


「《スリップ》」


一瞬黒く光ったあと枝についた葉がシナシナに枯れていく。


「おおっ、そういえばゲームとかでスリップはHPを継続減少させるんだったな。」


あとはダークも直径50cm位の小さい範囲に黒い靄を出すだけだし、これは完全に目くらましだな。

おっとそうそう、アクアウィップがまだだ。


「《アクアウィップ》」


手元から伸びた水の鞭はバシィ!という音で木に当たったがあまりダメージは与えなさそうだ。

こいつは火や風のヤツと違って、当たった後もしばらく鞭の形状を保っているかわりに出してる間中、MPが減ってる。だが微々たるものだ。


「これ鞭みたいに巻きつけたりも出来そうだな。」


少し離れた所の小ぶりな石めがけて水の鞭をふるう。

鞭は石に巻付き手元まで引き寄せることが出来た。これは使い様だな、水なのに千切れないし良いかも。


でもどれも一定以上MP込めても威力上がらないし、連続して撃つことは出来ても同時には一個しか無理だ。

もっと威力の高いのとか広範囲攻撃出来る魔術ないかな?


レベルが上がらないと無理なのか?いや、レベルなんてステータスに無かったな、うーん。


そうこうしてると兄貴がテントから不機嫌そうに出て来た。


「バンバン、バンバンうるせえよ!」

「あ、ごめん。魔術の練習してたら集中しちゃってて。」

「フーン、上手になったか?まあ、俺は使えないから興味ないけど。」


「それがさ、もっと威力とか広範囲にって思って練習してたんだけど無理っぽい。あと、ロックとウインドの存在意義が分かんない。」


「そいつらが基本になっててウインドカッターとかはその応用なんだろ。」

「へ?」


「いや、だからウインドで風を起こしてそれを刃に形作って撃ち出したらウインドカッターだろ?基本魔術は意味とかじゃなくて魔術のプロセスの初期段階なんじゃないの?」


「へー、兄貴は魔術スキル無いのによくそんなの思いつくね。」

「お前は初めから出来たから気づかないんじゃね?俺はとりあえず基本魔術だけでも出来たらなぁって思ってたから。」

「じゃ、基本のヤツをイジったら良いんだね。」

「いや、シラネーって。そんな気がしただけだから。」

「とりあえず、ファイアからイジってみようか?どうすりゃいい?」

「だから、シラネーって!適当にゲームにあるみたいにファイアウォールとかやってみたら!?」


俺は兄貴の言うように地面からファイアが立ち登り壁になる感じで魔術を放ってみた。

ゴウ!という勢いで炎が立ち登る。


「やった出来た!」

「えっそんな簡単に出来んのか!?修行とか要らないのかよ。」

「すぐ出来たけど?」

「ちゃんと出来てんのか魔術リスト確認してみ?」

「分かった。……あっ、ちゃんと呪文が増えてる、でもファイアゲイザーってなってるよ。」

「ゲイザー?……なぁ、それもっと六畳くらいの範囲に撃てないのか?」

「え、広く撃つの?《ファイアゲイザー》」


目の前の広範囲が火の海になった。ヤバイ、火勢が強い。


「うわっ!バカ、火事じゃねーか。何、ボヤ騒ぎ出してんだ!」

「アンタがやれって言ったんじゃないか!」

「いいから消せ!水かけろ水!」


火を消すために今度は広範囲にアクアを放った。

アクアは津波になり一瞬で火を飲み込みついでにその辺の岩なども洗い流して更地にしてしまった。

魔術リストを確認するとアクアウェイブが増えていた。


「魔術って何でもありか!どうしてそんな簡単に出来んだ!?」

「えー、何でもありは兄貴の方だろ。超能力サイキックもすぐ使いこなしてたし、剣術なんてあの基本能力で何であんな動き出来るんだよ。」

「あんなもん、数秒しか保たないし剣術は前から出来たろ!もういい、俺は寝る!」


なんだか兄貴がご立腹だ。魔術を羨ましく思ってたみたいだし拗ねてんのかな?

まぁ、聞いても「スネてなんかないし!全然違うし!」って言うだろうけどね。

仕方ない、自力で魔術開発するか。


「えっと、じゃぁ同じ要領でウインドを広範囲に……。」

「ダメだ、大量の風が吹いただけだ。」

「なら、動きをつけてみるか。」


俺は竜巻の様なイメージで渦巻く風が立ち昇る様にウインドを操作した。


「おおっ!良い感じ、もっと強くだな。」


そのまま風のスピードがどんどん速く鋭くなる様に操る。

風は小型の竜巻状態になり中でウインドカッターも発生している様だ。しかし、竜巻は直径自体は2m程と小さく上には高いが範囲魔術とは言えない。


「ん?失敗かなぁ、範囲が狭いね。」


そう思い一息つきかけた時に不自然な点に気付いた。

MPはもう込めていないのに消えない?炎の様に何かに燃えうつってる訳ではないのに独立して勢いを保っている。

その後、竜巻は風に煽られるように移動を始める。


「成る程、発生後に勝手にモンスターを飲み込んで廻るのか。」


でもいつ消えるんだろう?と思い眺めていると、どんどん風まかせに流されて行く……テントの方へ。


「ヤバッ! 兄貴!!おーーい、危ないにげろー!」

「………。んだよ、俺は寝るって……ウッっは!なんだーーー!」


間一髪テントから飛び出した兄貴はなんとか無傷だった。

しかし、テントはモロに巻き込まれて使い物にならなくなってしまった。


「………。」

「………。」


「お前は俺を殺す気かーー!!」

「……。ごっ、ごめん。」

「あーぁ、布も支柱もボロボロじゃねーか。いよいよ暗くなる前に壊してどーすんだ!」

「ごめん、勝手に動いて行くと思わなかったんだよ。」

「もっと向こうでやれヨ!」

「だってあんまり向こうだとモンスターが居たら怖いし。」

「俺はお前のがズット怖いわ!」

「わっ、悪かったって。」


怒りまくっていた兄貴だったが、だいぶコツを掴んだから魔術をおしえられるかも?と言ったらコロッと機嫌が直った。


簡単な奴だ。


「じゃぁ、まずはそこの何もない空間に魔力を込めて火が燃えあがるイメージで…。」

「よし、燃えあがるイメージだな。」

「………。」

「…………。」


「んなもん、出来るか!分かんねーよ!」

「んー、やっぱ形の無いものは伝えにくいね。兄貴が念動力サイコキネシスやってる時はどうやってるの?」

「えー、どうって。こう、ズバ〜っとビャーっとやるんだよ。」

「もっと分かんないよ!」

「はぁ〜、やっぱ俺は魔術は無理っぽいな。まず、取っ掛かりがつかめん。」


何はともあれ兄貴が怒ってたことを忘れてしまった様なのでシメシメだ。

残っていたロックの範囲魔術を試そう。


「まだ改良が残ってんのあるんだぁ〜、チョット試していい?」

「ん?やれば良いんじゃねーの、何でいちいち聞くんだよ。」


すっかり忘れてる様だ、実に簡単な奴だ。


「じゃ、《ロック》…をこーして…。」


ちなみに、魔術に関しては常に無詠唱だ、魔術の名称ぐらいは頭に浮かべるが基本的にイメージするだけで出来る。其れは範囲魔術になっても同じだった。

それらしい呪文とか有るのかと思ったけど何も頭に浮かばないしステータスにも出ない。


で、ロックの範囲魔術だがロックウォールというのが出来た。字の如く岩の壁だ、ある程度大きさも高さも指定できて防御や障害物の作成に役立ちそうだ。


だがこの魔術はそれ以外にもっと有用な使い方があった、四方を壁で立ち上げもう一枚作った岩の板を兄貴の念動力サイコキネシスで天井にのせれば簡単に岩のコテージが出来上がる。

実際には入り口や窓も要るので何枚かの大小の岩の板で組み合わせて小さいコテージが出来上がった。


かなり重くて分厚いのでモンスターが来ても安全そうだ。


「おお、怪我の功名だな。こりゃ良いのが出来た。」

「中も結構広いね、ま四角だけどテーブルとかイスも出来たしね。ベットもあるよ。」

「石のベットなんて硬くて寝れねーだろ。」

「大丈夫だよ床の下草ごと盛り上げただけだから、あと草の下の土を応用でほぐしといたから大分良い感じだよ。」

「何気にスゲー技術だな……。やっぱ魔術いーなぁ。」

「でも念動力サイコキネシスもかなり便利だよ、それが無いと重くて積みあげれなかったし。」

「うーん、これってMP消費がなぁ。一瞬に分けて使っても5〜6回が限度だし。」

「俺くらいMPあったらね、それでも連続使用じゃ数分もてば良い方じゃ無い?やっぱそういう使い方なんだと思うよ。」


その後ライトとダークも範囲魔術を試し、ライトはその場で光量が増し広範囲を照らせる様になり、ダークは目くらましの能力は同じで範囲が広くなった。


ひと通り魔術を試したあとで俺達は夜までもう少しある事もあり、まだ一度も試して無い錬金術の話題になった。コテージも出来たので中でマッタリ話してる。


中は窓を小さ目にしたせいか薄暗く、入り口もモンスターが入って来にくい様に細くスリット状にしてあるので身体を横にしないと入れない。もちろん窓ガラスもドアもついてない。

暗いのでライトを小さく長時間保つように調整して放っておいた。


「ところでお前まだスキルに錬金術があるだろ、試したのか?」

「うんにゃ、錬金術って金作るの?今要らないだろ。あっ、人里に行ったらお金に困んないね。」


「金が出てくるかは知らんけど。錬金術ってのは物質の構造を解き明かして、それらを以って新しい物質を生みだそうっていう学問とか技術の事だってなんかで読んだ事ある。それを石コロから金が作れるくらい凄いすべですよって事で錬金術って呼んでんだろ?」


「やっぱそういうのって脳内書記で記憶覗いてんの?まあ、そんな情報仕入れた事があるってだけでも驚きだけどね。」


「いや、これは確か漫画で読んだ知識だ。超有名なヤツだ。」

「そうなの?感心して損した。」

「何を言う!漫画は日本の文化だぞ。」

「ハイハイ。」


で、錬金術だが兄貴が見たそうなので分解陣、錬成陣、成型陣、結晶化、とそれぞれ試してみる事にする。


「まずは、分解陣いくね?《分解陣》」


ロックウォールで作ったテーブルの上で分解陣を発動してみた。

テーブルのうえに分解陣が描かれる。

綺麗な円が幾つか描かれ、そのあいだに解らない文字や記号が沢山並んで発光する。


暫くしてシュンという頼りない音で光は消え、陣が消えてしまった。


「なんにも起こらないね、分解する物を陣の上に置くのかな?」

「そうだろうな、何か取ってくる。」


兄貴は外に出て小ぶりな丸太を取ってきた、さっきワールウインドに巻き込まれて細くなった生木だ。


「外に一杯ちらばってたから取ってきた、そういえばさっきのマジで死ぬとこだったんじゃ…。」

「あーー!有難う、これ分解したらどうなるんだろねっ、楽しみだなぁ。」

「いやお前あんまり興味なさそうだったじゃ…。」

「きっ、興味津々だなぁ〜。さてとコレをテーブルに置いてっと《分解陣》」


また怒りがぶり返してはかなわないのでサクサク進める。

分解陣が発光し丸太が分解される。丸太は樹皮の部分と木材本体、それに水に分解されバシャッとテーブルを濡らした。


「おっ、分解した?」

「ああ、皮と中身と水分だな。」

「これ、何の役に立つの?」

「んー、まだ分からん。次のやってみろよ。」


分解されたそれぞれをテーブルにそのままで錬成陣を発動する。


「《錬成陣》」


分解陣とはまた違った陣が発光し光が収まったあとテーブルに一個の木片が残った。

他には水も樹皮も残っていなかったが木片は元の木材本体と違い黒ずんでいた。


「出来たけど、んー?」

「ごちゃ混ぜに合体したみたいだな、皮まで混ざって黒い別の木材みたいだ。」

「続きやってみる?」

「ああ、そうだな。あと何あんだ?」

「成型陣と結晶化だよ、成型陣からいく?」

「成型っていうからには型変えるんだろうから、とりあえず真ん丸にしてみろよ。」

「分かった、《成型陣》」


また違う陣が光りテーブルの上には真ん丸の木の塊が現れた、何かこういうお土産どっかで見たことある。


「結局のところどんな利用法があるんだろ?」

「分かりにくいスキルだな!」

「残りは結晶化だけだよ。」

「じゃっ、それいけ!ちゃっちゃといけ!」

「う、うん。《結晶化》」


何で怒られてんだ俺?ほんと気の短い人だなぁ。


結局、結晶化の錬金術だが不発に終わった。

何度唱えても何も起こらない、陣とかも出ないし魔術っぽい発動が感じられない。

なんなんだこのスキル。


「なんにも起こららないね。」

「どうなってんだ?スキル説明にはなんて書いてんだ。」

「えっと、《結晶化を促進させる錬金術》」

「だから、何の結晶化だよ!誰だこの取説作った奴、責任者出て来い!」

「まぁ、いいじゃん錬金術も木で家具とか作ったり出来そうだから今度ゆっくり試しとくよ。」

「クソ、きっとゴンベイだな!あいつ口数少ないとモテるとか思ってるんだきっと。」


口数少ないのと説明不足は違うと思います。


兄貴がまたゴネだしたので適当に話をそらそう。そういえば窓の外はすっかり真っ暗だ、ライトの魔術で照らしてたので気がつかなかった。


「あっ、外もう真っ暗だよ。もう兄貴のパワーアップ出来てるんじゃない?」

「えっ、本当だ。よーしステータス確認してみるか。」


これでよし、もうさっきまでの事なんか忘れてる。本当、簡単にヤツ。


兄貴のステータスを覗き込んでみる。



ステータス (クロウ)

種族 ヴァンパイア・ストライク

ランク 不死者の種子アンデット・シード

HP500/500 , MP25/25 , LP1:198

筋力:5.00 ,体力:5.00 ,敏捷:5.00 ,技量:5.00 ,魔力:1.00 ,魔術技量:1.00



「うわっ!5.00て何!?」

「はっはー!やった、大幅パワーアップ。」


「軒並み10倍になってるよ。あっ、でもMPは相変わらずみたい、魔力とかも変わんないとこみると魔術はもう種族的に苦手っぽいね。」


「うーん、魔術は残念だが凄い力だゾ!常人の5倍、相撲取りも真っ青だ。はははっ。」

「俺だと無理して持ち上がる重さはせいぜい60キロだから其れが300キロ!?子供の身体で!?」

「はははっ!人間やめました。」

「いや、ヴァンパイアは人じゃ無いしね。」

「ちょっと俺、力試してくる。」

「外、真っ暗だよ。危ないんじゃ無い?」

「この近辺で試すだけだ、大丈夫だよ。」


そう言って兄貴は外に出て行った。


今日は色々あったせいか俺ももう眠い、兄貴なんか待ってられないのでもう寝てしまおう。

モンスターが外に出たとしてもあの怪力の人がどうにかするだろう。


こうしてジュウロウの転生初日はなんとか無事終了していく。




















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