罠
よくRPGゲームやってたらダンジョンとかで宝箱があって、そこに都合良くお金やら装備が入ってたりするよな。
しかしそれが現実だったら…。うさんくせ〜事この上ねー!
大体、目的が分かんねぇよな?宝箱を設置した奴は何を得すんだ?
けどよ、この世界にみてぇにダンジョンが冒険者をおびき寄せる為の餌にしてるってんならまだ納得いくゾ。
オッサン達に聞いたんだが、この世界のダンジョンは自身を維持しようとする意思みたいなモンを持ってるそうだ。ダンジョンは自分が成長する、または維持する為の栄養として冒険者の命を使ってるらしい。
オレがモンスターのLPを吸収するようなもんかな?
大体の宝物は鉱物(宝石含む)や、過去にダンジョンが吸収した冒険者の装備品なんだと。
装備品は吸収した時の状態で出てくる物もあれば、長年ダンジョン内で寝かされてマジックアイテムに変化した物もあるんだと。例えば色んな追加効果が付いた装備とかだな。
ーーーーーんで、いま目の前に在る魔法石がその中でもレアな宝物だ。
魔法石ってのは通常、ボスモンスターやレアモンスターなんかのドロップ品らしいがそうそうお目にかかれねーらしい。
その宝石にはスキルや魔術が封じられてて使い道の豊富さから引く手あまたのアイテムだ。
ん?なんか、オレも一個持ってたな…。
「どうする?ザンギー殿」
「う〜ん。悩ましいですな…」
「へーへー。罠が危なそうだから悩んでんだろ?どーせ奴隷のオレにお鉢が回ってくんだろが。おら、取るゾ!」
「おいっ、奴隷!勝手をするな!!」
「っんだよ…」
ん?珍しくザンギーが止めに入った。
こういう場面じゃこいつが真っ先にオレにあぶねー橋を渡らせそうなのにな…。
対照的にオッサンはまだこの魔法石に未練がありそうだ。
「まったく、これだから考えなしの奴隷風情は!どれだけ危険か分かっておらん!私まで巻き添えを喰ったら如何する!」
「あん?巻き添え?どんな罠だよ。じゃあ、ほっとくか?」
「…しかし、魔法石といえばここ数年お目にかかってねえぜ。見過ごすのは惜し過ぎるんじゃ…」
「リスクが高すぎますな。今回は諦めますか?スペイリブ殿」
「でもなぁ…。なぁ、坊主?」
「何だよ、そんな欲しいのかよコレ。さっさと取って次行こうぜ、ほらよっ…ん?」
ガコンッ!
「あっ!おい!!」
「……」
オレが魔法石を手に取り、台座から外した瞬間に何処かで大きな音がする。
??何で今、コイツ後ろに下がったんだ?
ーーーーーーーー次の瞬間、バタンという音と共に足元の床が無くなる。
「うっわあぁぁぁーーーー………」
「きゃっ!ご、ご主人様!?」
「おい!坊主っ!」
「なっ!?おい、奴隷!」
ーーーーーーーーポスン、とオレは床に尻もちをついた。ポスン?
上を見上げると天井に空いた穴から三人が覗き込んでいる。たいした距離じゃねーな。高さ3M程か?
…にしても着地音がポスンはおかしいゾ。二階のベランダから落ちたようなもんだしな…。
オレは座り込んだままの自分の尻の下を確かめる。
ん?なんかポヨポヨしてんゾ。
オレが座ってる床は座布団程度に膨らみ柔らかい感触がある。
見た目や質感も石のそれではなく、まるで肉のようで血管みたいなのが浮き上がり鳴動している。
「うわっ!きもっ!」
何だよこの安モンのホラーみてぇなのは!
何なんだこりゃ!?
「大丈夫ですかーー!ご主人様ーー!」
「おう!クッションが効いてたから何ともねーゾ」
「はんっ!この馬鹿が。ほんっとこの奴隷は馬鹿!」
「おいおい、どーなってんだ?大丈夫か坊主」
「お、おう。大丈夫だけどよ…オッサ…」
次の瞬間足元に変化が起こる。
ドクンっと大きく鳴動した床は熟したザクロの様に口を開き、中からデロデロの液体にまみれたモンスターが這い出てきた。
「グギュッ…ギェ、ギィィィィ!!」
「げっ!なんじゃこりゃぁぁ!?」
カシッ、イィィィィィィーーーーーーーー………ン
オレは抜刀して構える。何だ?モンスターはこうやって湧くのかよ。
てか、一匹で大袈裟な。まぁ、この程度…。
「はんっ!んなモン一匹や二匹…」
「馬鹿奴隷!早く上がって来ぬか、まずい気がする!」
「おう!そうだ、早く上がって来い坊主」
「ご主人様っ!此方へ!」
アリムが穴から上半身をのめり出して手を伸ばして来てる。
う〜ん。下から眺めてると乳がスゴイ状態だ、こっちから見てるとアングル的に谷間というか…何だか凄い破壊力だ。
性欲は無くても良いもんは良いと感じるこの感性、我ながらセンスあるゾ。
「奴隷!なにをボーッと見ておるんだ、女奴隷の方に手を伸ばさんか!」
「アホか!手ぇー伸ばして届く距離か!」
「…っくっ!あ、キャッ!」
「アリム!…っうお!」
アリムが体勢を崩し落ちるが何とか受け止める事に間に合った。
…いや、間には合ったが受け止めきれてねー。だってオレ、子供の体だし…いてぇ。
おもっきし潰されてるし。
顔辺りはあんま痛くねーが苦しい。息が出来ねーからだ、アリムの乳で。
「もっ、もが!っっぷ、おい!…この…デカイ…乳をっぷ、のけろ!」
「あっ、あん!動いちゃダメですっ!ご主人様」
何とかアリムを押し退けたオレは上方の様子を再び振り返る。
…何だ、今の?あんな落ち方…。
「ギシャアァァ!」
「くっ!先にコイツを片付けるか…」
「おい、坊主!気を付けろ。この罠はこれからがヤバイぞ!」
これから?
オレが這い出て来たゴブリンに剣先を向けて警戒していると、アリムが視界を遮るように前に回ってくる。
…いや、邪魔だし。
「ごっ、ご主人様っ。お守りしますっ!」
「バカかお前っ!どけっ!」
アリムを押し退けて前に出る。すぐ鼻先にゴブリンが迫っていた。
焦ってコンパクトな動作をとるのも忘れ斬り込んだせいか、敵に武器で防がれちまった。
「ちっ!よし、次で…」
「あっ!ご主人様、あれを!」
あん?…うおっ!?
何だこりゃ!部屋中の床や壁に肉の瘤が出来てきている。
その瘤は順次膨らみ、ドクンっと鳴動すると最初のヤツと同じように中からモンスターが次々と這い出て来た。




