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屈辱の探索

ザンギーが【命令だ、ーーー】って言ってから体の自由が利かなくなった。

正確には【口を塞げ】と言われた通りに口が開かなくなり喋れなくなっちまった。


どうなってる?心臓を締め付けるだけじゃねーのか?

痛覚耐性で耐えれるからと、たかをくくってたがマズイかもな…。


「はははっ。不思議そうな顔だなぁ奴隷!さしずめ主人である陛下でもないのに、なぜ命令出来るのか?とでも考えておるのだろう」


「ああ…坊主。ザンギー殿はな、陛下と主従契約でお前への命令権限を一時的に譲渡して貰ってんだよ」


いや、オッサン…。そういう事じゃない、こんな本人の意思に関係無く言う事聞かせられんのか?ってトコだよ!

これじゃまるで操り人形じゃねーか…。


「(ご主人様。奴隷は主人が【命令】と言った後の指示には逆らう事は出来ません。意思を無視して命令通りに体が動いてしまうのです)」


「こらっ、女奴隷!なにを許可なくボソボソと話しておる。お前たち下賤の者は言われた通りに指示に従えばいいのだ」


オレがオッサンの説明にまだ腑に落ちない顔をしていると、アリムが小声で教えてくれた。

どうやら予想通り、言われるがままのようだ。


「ちっ!どうせなら団長のオッサンの方が命令権を貰えば良かったのによ…」


「何だと?この奴隷、まだ自分の立場が分かっておらぬようだな。

…フフッ、そうだ…先ほどモンスターの血だまりを踏んで靴が汚れておったなぁ。では貴様がいかに底辺の立場かキチンと教育してやろう。

ーー【命令だ】跪いて私の靴を舐めて綺麗にするんだ。そして、自分が最底辺の人間だと自覚するのだ!」


「なっ!そんな事やる訳ねーだろが…がっ、かくくっ…クソッ…」


ザンギーの野郎の命令を耳にしてから勝手に体が動き出し地べたに這いつくばっちまう。


「ぐっ、クッソ!」

「オイオイ、そのくらいにしといてやれよ…」


「なにを仰る、スペイリブ殿は甘いですなぁ。これはこの奴隷の為でもあるのですよ、しつけですよ躾」

「はぁ…やれやれ…」


クソったれ!必死で逆らってるから中々進まねーが確実にザンギーの汚ねえ靴に顔が近付いてく。

ぐぎぎっ!痛え。無理に逆らおうとしてるので筋肉や腱が悲鳴をあげている。


「もうお止め下さい、貴族様!ご主人様はまだ奴隷になって日が浅いので不遜なおこないをしてしまっただけです。どうかお許しを!」


「はははっ。では尚更のこと教育が必要ではないか。さあ!サッサと靴を舐めろ!」


ぐぎぎっ。このガキ!後で絶対仕返ししてやるからなぁ!

もう少しで汚ねえ靴の縫い目まで見えるって位置で、アリムがオレとザンギーの間に割り込むように跪いて来た。


「貴族様、靴なら私が舐めます。これでお許し下さい」


そう言うとアリムはザンギーの靴を舐め始める。

〜〜っくぅ、このっ!ザンギー、後で絶対ぶっ殺す!


「……ふんっ。つまらん、もうよいわ。お前がやっても意味がないのだ、ふんっ!」


ザンギーはアリムが舐めていた靴を振り払うように蹴りだす。

顔を正面から蹴られるかたちになったアリムは口元を押さえてうずくまっていた。


「さあさあ、そんな事やってないで進もうぜ。折角やった獲物もあんまり時間が経つと結晶化出来ねえぜ」


「そうでしたな。ふぅ…やれやれ、この奴隷共が素直に従っておれば余計な時間をかけずとも済んだものを。まったく、随分なロスだ」


何がロスだ!てめえの所為だろーが!クソッ。

それにスペイリブのオッサンもオレへの態度はともかく、アリムに対しては明らかに奴隷として接してるようで大して気にもしてない。正真正銘の奴隷には本来みんなこういう態度なのか?

オレのは成り行きで奴隷化されたのを見てるから一応それなりに扱ってるんだろうか?


それにしてもザンギーの野郎、女の顔を蹴るとかフェミニストのジュウロウが聞いたらじっとしてねーだろうな…。


「(おい、アリム。大丈夫か?)」

「(はい、このくらい何でもありません。ご主人様が貶められなくて良かったです…)」

「(〜〜くっ!ザンギー、絶対に後悔させてやる…)」


無言で睨みつけるオレと、ただ佇むアリムを尻目に城からの二人は倒したモンスターを魔結晶へと変えていく。


「まったく、処理くらい出来んのか…スペイリブ殿、奴隷共にやらせましょうぞ」

「ん?ああ、坊主。結晶化出来るか?」

「…いや、オレは魔術は使えねーゾ」


「はんっ!結晶化など魔術師でなくとも使える者はパラパラいるというのに、とことんハズレか、はははっ」


「何だと!」

「おい、もうよせよ。ザンギー殿も手伝ってくれ、こういうのは生まれつきのモンが大きいからよ」

「そうですな、生まれつき下賤の者では致し方ないのかもしれませんな、はははっ」


「…ま、かく言う俺達も一体ずつしか結晶化出来ねえし。まとめて大量に結晶化できる奴なんかに比べりゃ才能ねえのかもな」


団長のオッサンがオレを気遣ってか、そんな事を言っていたらザンギーの奴が渋い顔をしていた。


そういや、ダンジョンでヒゲ王に会ったとき頼りない奴がまとめて結晶化していたな。

何でこんな戦力になりそうに無いのを連れてんのかと思ったら、あいつはそういう特技があったのか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その後も二層ほど下の階に進み戦闘を繰り返していった。


ふぅ、疲れてきたな。

ジュウロウと島でやってたときはそんな事思わなかったが、昼にこんな頻繁に戦ってなかった気がする。それに、この小太刀だ。こんな金属の棒を始終振り回して歩いてたらそりゃ疲れる。


オマケにここで出てくるモンスターは度々防具や武器を装備してる奴がいる、そのせいで攻撃を防がれたりの無駄打ちが増えて子供のオレじゃ体力が足りねーゾ。はぁ〜一服してぇ。


「よし、この辺から本番だぜ。こっからはまだマッピングできて無いからな」


「そうですな、マッピングしながらですと各階にかかる時間も比べものになりませんし、その分戦闘回数も増えますからなぁ」


「ああ、それにこの辺からはコボルトもゴブリンもリーダー格が出てきて、装備も充実してきやがる。本腰入れていかなきゃな」


「へ?まだ装備付きのモンスターが増えんのか!?」


「当たり前だ。我々ほどの実力はないにしても騎士団の探索部隊が手をやき、この辺りからの探索ペースが格段に落ちておるのだ。そうでなくては既に30層に至っておるわ。だから我々が勅命を受けたのであろうが…ったく、無能が」


「〜〜くっ、コイツ!」

「まぁまぁ、先を急ごうぜ。休憩はまだまだ先なんだしよ」

「げっ、マジか!?」


どうやら休憩はまだ当分無いみてぇだ。既にバテてんだが…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「何をやっておる、しっかり突っ込んで行かんか奴隷!足止めも出来んのか!」

「ハァ、ハァ…っうりゃ!……ゼェハァ、ハァ…」


ギギャ、ギャ!……


「おっ、やったか?なんとか乗り切ったな。…にしても大丈夫か坊主?」

「…ゼェハァ、ハァ…」

「大丈夫ですか?ご主人様…」

「まったく、体力の無い。これだから無能で下賤の者は…ちっ!」

「ハァ、ハァ…下賤…ハァ…は関係…ハァ…ねー……ハァ、ハァ」

「はんっ!息も絶えだえなのに減らず口だけはまだ出るか、ふんっ!」


コイツ!好き放題言いやがって、そもそも後衛のサポートが足りてねーんだよ!

オレは暫く息を整えてから言い返してやった。


「…っく、はぁ〜。ふぅ、お前の魔術が威力弱ぇんだよ!一撃でトドメさせねーから戦闘時間が延びて前衛にシワ寄せが来てんじゃねーか!」


「ん?いや、坊主。ザンギー殿の魔術は魔術師団の中でも指折りだぞ?大体ダンジョンでの戦闘はこんな感じが普通だがなぁ」


「えっ、マジでか!?」

「聞いたか、奴隷!自分の無能さを棚に上げおって…」


「何でだ!?ジュウロウならこんな敵一撃だし、だいたい初歩のファイアボールなんてもっとバンバン連発できるだろが」


「…くっ!ジュウロゥ……忌々しい…。ふんっ!私は目標到達階までの魔力量を計算してやっておるのだ!魔術の素人が分かった風な口を聞くな!」


「そうだぜ、坊主。俺たち前衛の騎士だけじゃもっと辛いのが普通だぜ」


マジかよ。ジュウロウのを見てて、てっきり魔術ってダメージディーラーかと思ってた。

これじゃ弓とか同じで戦闘のタイミングとったり、チマチマ削るだけじゃねーか。

まぁ、弓とかよりは威力ありそうだけど精々骨を折る程度だ。


防具持ちの敵だと急所は守られてて一撃で死なねぇから戦闘が長引いて仕方ねー。


「もっと威力のある魔術はねーのかよ?弓じゃなく魔術なのはなんか利点があるんだろ?」


「馬鹿が。弓はいちいち矢を消費するし、点攻撃一辺倒ではないか。範囲攻撃もでき、魔力量が回復すれば何度でも使える魔術の方が高尚なのは言うまでもないわ!」


「じゃあその範囲攻撃とか、もっと威力のある魔術使えよ!」

「馬鹿が!この馬鹿、ほんっと馬鹿!魔力量を温存しておると言っておるだろうが!」

「はぁ?ジュウロウはそのくらいバンバン使っても平気だったゾ。お前のMPがショボいだけだろが」


「〜〜くっ、キィィー!!またしてもジュウロウ、ジュウロウと…【命令だ】そこの壁に頭をぶつけよ!」


ガンッ!


「ぐっ!っっつ、痛ってぇ〜」

「大丈夫ですか!ご主人様!」


「(おい、坊主。ザンギー殿は城でジュウロウってのと一悶着あったらしいから、あんまそれに触れるな。また命令されても知らねえぜ)」


何かジュウロウと城であったらしい。オッサンが小声でそれらしい事を言ってきた。何した?


それ以来ザンギーは一言も喋らなくなり、青筋を立てたまま無言で歩いてる。

まぁ、静かでいい。ムカつくけどな。

重い雰囲気に耐えかねたのかオッサンが休憩を提案してきた。


ふぅ、これでやっと休める。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



オッサンが先行して見つけてきた小部屋のような場所でオレ達は休憩をとる事になった。

そういや朝にこいつらが迎えに来た時着せ替えゴッコしてて飯食ってねーな。腹減った。


この休憩で昼飯にするそうだから、飯食ったらひと眠りするか。……ヤバイ。

どーすんだよオレのお昼寝タイム!ザンギーの阿呆にめっちゃ目ぇつけられてんのに不味いゾ!










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