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躾に出します

なんてこった!奴隷だと?流石に想定外だ。

何か仕掛けてくるかもって身構えてたが、せめて投獄される位で夜になりゃ抜けだしゃ良い程度に考えてた。まずった。


「兄貴、大丈夫?」

「おお、別に今んとこ痛くも痒くもねーな…」

「坊や、気が短かそうだから先に言っとくけど、陛下に危害を加えようとするんじゃないよ。」

「ふんっ!何したか知らねーけど、こんなモンでおとなしく従うと思うなよ!」

「兄貴、本当にどこも痛くなったりしてないの?」


「今は何とも無いはずさね、ただ主人である陛下に害意や殺意を持ったらその限りじゃないよ。気を付けな。」


「はっ!ふざけんな!その髭面ぶっ飛ばしてからこんな所…グッ……。」


いっ、痛え。心臓が潰れそうだ…、何なんだこりゃ?


「馬鹿だねぇ、教えてあげただろ。隷属陣は基本設定で主人に危害を加えようってのを禁じてんさね、今みたいに害意程度なら心の臓が痛む位で済むけど殺そうなんて企んだら立っていられないよ。」


「この野郎!ぶっ殺し…グアァー!…」


「何、聞いてたんだい。よしなって言ったろ、本当に行動に移したら心の臓が破裂しちまうからね。」


「兄貴!大丈夫!?」


ジュウロウが倒れ込んだオレを心配そうに見て背中をさすってくる。ダメだこれ、スゲー痛え。


「ちょっと、あんたら!こんな事、横暴だろ!!」


珍しくジュウロウが怒ってる。あっ、何だか魔術を発動しようとMPを練り込んでんのが触れてるから分かる。

おいおい、待てって。ソイツ殺したらオレの心臓もヤバいんじゃねーのか?


痛くて喋れねーがジュウロウの腕を掴んで制止する。


「え?でも兄貴…」

「まあ待たれよジュウロウ殿、余は何も小さい兄を痛めつけようなどとは思って居らぬ。」

「それじゃぁ早く元に戻してよ!」

「そうくで無い。兄の奴隷契約もじきに解放しようではないか、だがそれには条件がある。」

「条件て何さ!?そもそも強引にこんな…」


「まあまあ、先程の兄の態度で分かるであろう?交渉の機会を持ちたくての今回の隷属契約でもあるのだ、話を聞いてくれれば悪いようにはせぬ。」


「じゃぁ、言ってみてよ。何が望みなのさ。」

「聞くな!どうせ騙す気だ。こいつゼッテーぶっ殺…グアァ…」


「おうおう、無理をするな小さい兄よ。お主に死なれては何の為の隷属契約か分からぬ、お主らには頼み事を聞いて貰えればその後は何処に行くなり好きにして構わぬ。無論、報酬も出そう。」


このままじゃ兄貴は奴隷のままだし自力での契約解除の方法も分かんないし…。

条件次第だけどこのヒゲ王の話を聞いてみる事にし、目線で話の先を促した。


「うむ、頼みとは他でもないダンジョンの事だ。今回、新しく出現したダンジョンを小さい兄に攻略して貰いたい。」


「ダンジョンなら俺も一緒に…」


「いや、ジュウロウ殿には他に頼みたい事がある。それにダンジョン攻略には此方の騎士も同行させる、回復魔術を使える者も一緒に行かせるので心配は要らぬ。見事、最下層に辿り着けたあかつきには隷属契約からの解放と庶民が一生手にできぬ程の褒賞を約束しようではないか。」


何故そんなにダンジョン攻略に拘るのか分からないんだけど条件は悪くないね。

ぶっちゃけ受ける以外に解決法が無いうえに、事が終ればお金もくれるって言うし一旦話しに乗る事にした。


兄貴は、渋々だが他に手が無いのも分かっている様で俺の視線に頷いてた。


「おお!条件を飲んでくれるのか。有難い、では別室で詳しい打合せでも…」

「何が有難いだ、押し売り同然だろーが。」


兄貴の悪態にまたもや配下の偉そうな人が食い付いた。


「奴隷風情が陛下の恩情も分からずになんと言う口を利く!」


「あ!?押し付けがましい恩情もあったモンだな!それとな、お前を殺そうとしても心臓は痛まねーんだからソッチこそ口に気を付けろよ!!」


「なっ!陛下、この様な無礼な子供に頼らずとも我が騎士団をもってすればダンジョン攻略は可能です!何卒なにとぞご再考下さい!」


「その騎士団をして未だ20層以下階に行けず数ヶ月では無いか。これには国家の趨勢すうせいが掛かっておるのだ口出しするで無い。」


「くっ、然しこの様な勝手を許しては…」


「まぁ、大臣様の言う事も分からないでも無いさぁね。パーティーを組んでダンジョンに潜っても、この坊やが自分勝手に動いたんじゃ攻略もはかどら無いってもんさ。」


「其れは同行する者に従う様に、主人である余が命令しておけば良かろう。」


「で、命令違反の度に胸を押さえてうずくまるってのかい?モンスターだらけのダンジョンでさ。」


「では、如何するというのじゃ。」

「アタシに暫く預けて頂ければ躾けてお返ししまさぁね。」

「ほぅ、其れでまたもや報酬をせしめると言う訳か。ガハハ。」


「いえいえ、此れでもお城出入の奴隷商なんでね。中途半端な商品を陛下に売り付ける訳にはいかないって事さ、アフターサービス扱いで無料だよ。」


「ふん、まぁ良い。カズミールの婆やとは古い付き合いだ信用して預けてみるか。」

「ちょっとまて、何勝手に決めてんだ。」

「そうだよ、兄貴を酷い目に遭わす気?」


お婆さんはそっと目配せしてから話し掛けてきた。


「大きい方の坊や、兄貴がダンジョンでうずくまってる間にモンスターに喰わせたいのかい?小さい坊やも自分が餌になるより旨い飯食って長生きしたいだろう?」


「う〜ん、でも奴隷扱いして酷い目に遭わせるんじゃないよね?」

「まぁ、もういいや。何処にでもつれて行って良いから旨い飯を食わせろよ!」


何だか兄貴はもうお腹が空いてきてどうでも良さそうだ。本当に良いの?自分のことだよ。

まぁ、どのみちコッチに最終決定権は無いので従うしかないか。


小声で兄貴とゴニョゴニョ相談したら、お婆さんについて行ったら隷属陣の解除方法が探れるかも?って言ってた。一応考えてたんだね、お腹が空いてるだけかと思った。


そんな訳で兄貴はお婆さんに連れて行かれ、俺は別の頼み事を聞く為お城に残る。

さようなら兄貴〜、ドナドナド〜ナ、ド〜ナ〜。


いや、別に喜んでません。取りあえず兄貴の命に危険がある訳では無くなったし安心したからだよ。


「それで、俺の方に頼みたい別件って何なんですか?」

「おお、そうじゃった。まぁ、此処ではなんじゃし別室で食事でもしながら話そうではないか。」


ーーーーーーーーーーーーー


そして別室にて俺はご機嫌で王様と話しに花を咲かせていた。

何故、ご機嫌か?俺の周囲も花が咲いたかの様な美女メイドで埋め尽くされ、至れりつくせりで給仕されていたからだ。


「いや〜、王様。それならそうと早く言ってくれれば良かったですのにぃ。」


「いやいや、面目無い。ささ、ジュウロウ殿もっと召し上がれ、このゲーター肉のステーキなど逸品じゃぞ。おい、お前達ジュウロウ殿の杯が空いておるではないか、お注ぎせんか。」


「いやはや、ジュウロウ殿はあの無礼な子供と違い話の分かる御仁ですなぁ陛下。ああ、ジュウロウ殿こちらのも美味ですぞ是非召し上がって。」


「有り難うございます。それより大臣様の方こそ兄貴が無礼千万で申し訳有りませんでした。」


「何をおっしゃる、ジュウロウ殿が詫びることでは有りませんぞ。然し、あの子供ももう少しジュウロウ殿の様に礼を弁えておれば双方いさかい無く…」


「まあ、其れを言うな大臣。此方も無理を通そうと少々強引過ぎた。ささ、ジュウロウ殿もっと好きなだけ召し上がってくれ。」


「そうですな、私も子供相手に些か大人気なかったかも知れませんなぁ。ハハハ。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


王様は先ず兄貴への対応に対してのお詫びから始まり、今回の件に至った経緯を詳しく話してくれた。

それによると最近出現したダンジョン(俺達が王様に会ったダンジョン)の攻略には国の今後の趨勢に関わる程の価値があるらしく、どうしても最下層まで到達したいらしいんだよね。


ダンジョンは他にも沢山あるけど、どれも深くても20層までで今回の様にそれ以上の階層に伸びる物はこの百数十年無かったらしい。

今回の様な20層を超えるダンジョンはこれまでの例では最下層で他の国にゲートで繋がっているとの事だ。


過去にも50層レベルのダンジョンが有ったのだが、現在は向こうの国からゲートを閉ざされている状態だって。なんで塞いだんだろう?

島国であり、諸事情により海から外国との行き来が出来ないこの国にとっては、交易や文化の交流が無く文明が滞っている状態なんだろうね。


で、国の発展を目指す王様達エライ連中は、勿論この機会を物にして百数十年以来止まってた他文化との交流や、この国には無い物品を手に入れたい訳だ。大変だね上に立つ人は。


そんなこんなで、国の将来がかかったダンジョン探索に騎士団が乗り出したんだけど、これが上手くいかない。

ダンジョン探索にはあまり大人数で軍隊を送り込む事もできない。結果、個人の戦闘力の高さが重要になる、然しこの島国自体は現在のオウルガルド王家に統一されており小競り合い程度の紛争は有っても戦争など無く、争いが無ければ兵士の質も上がらないって流れで武官的にはかなりの人材不足なんだってさ。


中々進まないダンジョン探索にイライラした王様は、自身の目でダンジョンの様子を確かめるべくして下町で雇った冒険者と低層階に潜ってみたんだって。そこで俺達と出くわしたんだね。

勿論お忍びだからあの品の無いガハハ冒険者のキャラ作りで俺達に対面したんだけど、予想外の兄貴の反撃と帰る道中に見たその剣術の腕を見初めて城に呼び出したって訳だね。ギルドであったあの腰巾着から居所の情報を得たのかなぁ?


そもそも王様達は、俺達にダンジョン探索に協力して貰って最下層まで到達できれば、報酬もはずんだ上で国をあげて英雄扱いするつもりだったんだってさ。

国の為にどうしても協力を取り付けたい。でも…ダンジョンでの兄貴のあの態度でしょ〜、最悪の場合でも交渉くらい出来るように隷属陣を用意していた所に兄貴が最悪の反応をして今に至るって訳だね。


それにしても奴隷にして無理やり言う事聞かせようなんてヒドイって思ったけど、向こうにはそんなつもりは無くこうやって話し合う機会を作れれば直ぐにでも契約解除しようかと思ってたんだって。

だって、引き止めようとしたら斬り掛かって来るんじゃ話のしようも無いってさ。流石の兄貴も引き止めただけで斬ったりしないと思うけどちょっと自信無い。


で、俺から兄貴を説得して了解を得たら、その地点で奴隷解除してくれるって話になった。

兄貴にしても他の国にも冒険に行きたいだろうからどの道ダンジョン攻略はするんだし、説得は問題無いと思う。


あと別件の頼み事とは俺の回復魔術に関する事だった、これもダンジョンで王様の手首をくっつけた時から目をつけてたんだって。普通は斬れ落ちた部位をくっつける魔術師は中々居ないんだって言ってた。

隷属陣を発動する時つけた兄貴の傷も触れもせず治していただろう…とか勘違いしてた。あれは兄貴の超再生なんだけどなぁ…。


まあ、そんな感じで俺はこれから暫くお城に通い、回復魔術関連の別件依頼をこなしつつ兄貴がお婆さんの躾から帰るのを待つ事にした。

直ぐに呼び戻しても良かったんだろうけど多少大人しくなるように躾て貰うのは俺も願ったりかなったりだしね〜。



は〜、良い子になって帰ってくるキラキラ兄貴が待ちどうしい。








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