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焼肉屋での最後の瞬間の様に目の前が真っ白になった後、俺達は柔らかい日差しが射し込む開けた場所に立っていた。


今度はゴンベイと居たあの場所とは違い屋外だ。白一色しか無い場所から突然色彩豊かな所に出た所為で少し目をシバシバしたが、じきに慣れてきたので周りの状況をぐるりと一周見渡した。


岩壁を背にして立っていて、眼前には下草が芝生のように綺麗に生え揃った開けたスペースに出てきたようだ。

背後は岩壁なので見通せないが正面に見える半径2〜30メートルの範囲は開けている、その奥は森のように木が生い茂っていた。


「おっ、転生完了?」


隣を見ると見たことない奴が俺と同じく目をシバシバさせて立っていた。

そいつが俺の方を見つめて話し掛けて来た。


「えっ?もしかして兄貴か?」


「えっ?お前、弟か?何か全然見た目変わってるぞ!ってかデカッ!どれだけ身長有るねん?」


「いやっ!違うやろ、兄貴が小っさいねん子供くらいしかないで」


「えっ?あぁそうか、若くしてもらったんやったな。何歳くらいに見える?」


「う〜ん…。7〜8歳?あっいや!背の低い10歳くらいか。顔立ちはシッカリしてるからな。

でも良かったんか?何で子供から始める事にしたん?」


「おお!これで良いねん。折角やからもう一回、子供時代を楽しもうと思って♫

しかしお前メッチャ見た目変わったなぁ、ハッキリ言ってイケメンになってるし耳もチョット尖ってる。

まぁ、エルフ程長くはないけど…。髪の毛は前と同じかチョット明るい茶髪やけど…、地毛でそれって普通ないよな。瞳は日本人っぽい黒やな」


「そうなん?ってか兄貴の変わり様よりマシちゃうかな?

御宅おたくも耳尖ってるで、でもまぁ髪の毛も真っ黒やし整った顔になった以外は子供に戻った感じかな?

ああ、前にも増して目付き鋭いなぁ猫目っていう奴?瞳も黒やけど大分濃いな、二人して生まれ変わるんやったら男前が良いって言ったもんなぁ」


「そうか、子供に戻った以外は前と一切変わってないのか」

「イヤ、だから整った顔になっーー」

「そうかそうかそうか!一切変わりなしかっ。はっはっはー」

「もう、良いけど……。」


「先ずはさぁ、新しい名前要るよね!俺、義経にしよおっと!」

「おーい!有名過ぎるやろ!」

「え〜。別に俺達以外は知らんやろ?」

「俺が呼びにくいわ!ってか前の名前であかんの?」

「折角だから心機一転出来るし改名します。じゃぁ、九郎クロウ

「何で?」

源九郎判官義経みなもとのくろうはんがんよしつね九郎クロウ

「じゃぁ、俺は弟やし十郎でイイや」

「何か適当やな」

「まあ、イヤならまた変えれば良いんじゃない?」


「そっか。で、後は話し方やな。これを機に標準語でいきます、俺って関東弁喋っちゃうぜ!」

「嘘臭いシャベリやな!何で標準語?」

「イヤー、関西弁って《キャー、何だか怒ってるみたい》ってよく言われるから異世界人に受け悪かったらやだろダゼ」

「もっと普通に話せるやろ!……まぁ、飽きるまで付き合うわ」


「さて!取り合えず現状把握かな?自分の能力見てみようか、ステータスって思い描いたら良いのかな?」


俺はゴンベイとのやり取りでゲームっぽい才能を頼んだのを思い出し(ステータス)と心の中で思い描く。



ステータス (クロウ)

種族 ヴァンパイア・ストライク

ランク 不死者の種子アンデッド・シード

HP50/50 , MP25/25 , LP3:000

筋力:0.50 ,体力:0.50 ,敏捷:0.50 ,技量:0.50 ,魔力:1.00 ,魔術技量:1.00


《スキル》

カラスの慧眼 ー[対象スキル経験値取得率+2.00 ]

脳内書記:1.00

ステータス鑑定:1.00

言語理解:1.57

アイテムボックス:1.00

話術ー[論術ろんじゅつ:2.03][詐術:1.84][交渉術:2.01]

武術ー[剣術:1.34]

超能力サイキックー[念動力サイコキネシス:1.00]



んー?、数字が並んでいるが基準値が分からないのでイマイチよく分かんない。

ジュウロウのはどうなってるんだろう?


「なぁ〜、お前のステどんな感じ?」

「どうやるの?」

「ステータスって頭ん中で念じてみろよ」

「おっ!出た出た、何か色々入ってる」


「これって相手のステータス見れないのかな?どれ?」


おおっ!。(ステータス)と念じながら見るとジュウロウの顔の横にステータスウィンドウが出た。



ステータス(ジュウロウ)

種族 ミックス・エルフ

ランク 魔導の入口マジック・ルーキー

HP100/100 , MP200/200

筋力:1.00 ,体力:1.00 ,敏捷:1.10 ,技量:1.10 ,魔力:1.20 ,魔術技量:1.30


《スキル》

ワイルドカード ー[全スキル経験値取得率+1.00 |(有効上限1.80)]

人体理解 ー [人型への付与魔術効果+1.00]

ステータス鑑定:1.00

言語理解:1.39

アイテムボックス:1.00

属性魔術 ー [火魔術:1.00][水魔術:1.00][風魔術:1.00][土魔術:1.00][光魔術:1.00][闇魔術:1.00]

付与魔術 :1.00

錬金術 ー [分解:1.00][錬成:1.00][成型:1.00]



「んー、見ただけじゃよく分からんな。取り合えずスライムでも狩りに行くか?」


「いきなり戦闘?ってかいくらファンタジー世界だからって怪我したら痛いし血も出るんだろ?もっと良く調べてからにしたら?」


「それはそうだな。よく考えたら転生前の服装のままだしスッカリ手ぶらだ。

アイテムボックスってのが有ったからその中に何か入ってないかな?」


俺はジーンズに黒っぽいTシャツ足元はスニーカー、ジュウロウはチノパンだったが他は似たような服装だった。


子供に転生した際に服のサイズが子供用に成ってたのは良かったが、手荷物などは一緒に転生して無かった。


アイテムボックスと念じると、側の何も無い空間にぽっかり穴が開いて手を突っ込むと中に入ってる物が頭に浮かんできたので取り合えず全部出してみた。


あったのは、鉄パイプみたいな物が3本、大きな丈夫そうな布1枚、鍋1個、カトラリーセット(フォーク、スプーン、コップ、持ち手付きのお椀?)、ナイフ1本。ジュウロウのアイテムボックスも内容は同じだった。


鉄パイプの用途が分からなかったのでアイテムのもステータス見えるかな?と考えると表示が出て簡易テントの支柱だった。


「兄貴はキャンプとかよくやってただろ?これで何とかなりそうかな?」


「これってパイプをピラミットみたいに組んで布を三角錐型に巻くのか?どのみちスゲー簡易な物だな。最低限の物しかないし、取り合えずの食料も無し。

キャンプセットっていうよりサバイバルセットだな。

普通ファンタジー初期セットって剣とかポーションくらい入ってないのかね?」


「意外と近くに街とか有るのかもよ?それとか文明が発達しててみんなスマホの良いやつ持ってて車が空飛んでるとか?」


「だったらサバイバルセットも魔法のスキルも使わなそうだけどな。

えーと、先ずは装備出来そうな武器防具は無しと。 あと、気になってたステータスの確認だな。

俺の筋力数値がジュウロウの半分しか無いんだけど?お前チョットそこにあるまくらくらいの石持ち上げてみ」


「これ?っよいしょっと。まあ、何とか持ち上がるね」


俺も持ち上げてみた。


「どれどれ?っうっはぁ!無理!絶対持ち上がらない。

こりゃ数値の1.00は一般の人並みで俺は子供だから半分くらいの力しかないみたいだな。

1.00で100%1.30は三割増か。 剣術は剣道やってたせいか人並み以上だけど肝心の剣が無い、あと使えそうなのは超能力サイキックか?」


俺は石を見えない手で持ち上げるイメージをしてみた。


触れてもいないのに石が浮き上がる、重さは感覚的に有るがもっと重くても大きくてもイケそうだ。


「おおっ!これ良いな。楽々だ」

「おー!凄いな漫画みたいだ!いいなぁーそれ」


喜んだのも束の間、石は数秒もすると見えない手を離したようにドスンと落ちる。

と同時に軽い頭痛がする、起きたばっかりの時のように頭がハッキリしない。


しばらく立ったままジッとしてると収まってきた。


「おーい、兄貴大丈夫か?」


「うーん、もう大丈夫。でも何だ今の?念動力サイコキネシスってあれで終わり?」

「かもね?ステータスに詳しく出てないの?」

「あっそうか!ステータスって大体、詳細説明も見れるな」


ステータスを開く。


念動力サイコキネシスの詳細と念じる。

出た!「視認できる範囲の物を触れずに動かす」。


……、そのままだ。今度は超能力サイキックの詳細を見てみた。


「MP継続消費型の様々なスキル(高火力、高燃費)」。


高燃費?ステータスに表示される他の数値を見てため息が出た、MPが2になっている。

おそらく一旦MP0になりその時、石が落ちて頭がボンヤリしたのだろう、その後MPが時間経過で回復でもして頭痛も収まりMPも現状の数値に落ち着いたと思える。


「ダメじゃねーかこんなの!」

「どうだったの?」

超能力サイキックはMP消費するらしい、おまけに使ってる間中MPガンガン減っていくみたいだ。

あのくらいの石を動かすくらいで全MP無くなるって使い物にならないだろ」


「兄貴のMPって25しか無いんだもんな。魔法系使うなって言われてるようなもんだし、他のスキルで何とかするしかないよね」


「他のスキル?話術使って話し合いで解決するのか?人里に下りる前にモンスターとかと鉢合わせしたらその時点で死ねるゾ!剣術使うのか?剣も無いのに?エア剣術か!?」



ーーーーーーーーーーーーー



また出たよ……。

兄貴って気が短いんだよね、大体俺に言ってもしょうがないじゃん。


勝手なワリに下手に口が立つからゴンベイも鬱陶しくて適当にスキルふったんじゃ無いかな?

大体、子供の体はアンタが言ったからだし(で、基本ステータスほぼ半分。)超能力サイキックも確か自分で言ってましたよ、ヴァンパイアといえば超能力だろ!(そうなの?)とか、とにかく強力なヤツ!って子供みたいにさ。


あーぁ、ダメだこりゃ。この人、お空に向かって叫び始めたよ。


「無しだ!!こんなのー!チェンジ、チェンジ!!聞いてんのかゴンベイ!?やり直しだーーーー!!!」


ガサゴソ、バキッベキッ!


「んっ?ゴンベイか?」


違うと思います。

だって森の方から踏み分けてくる感じの音だし、アンタがデカイ声出して騒ぐから来なくていいのが来たんじゃないの?何かもぅ、嫌な予感しかしない……。


「グルゥゥ」


「ゲッ!熊?」

「ほらぁ!兄貴がギャァギャァ言うからーー!」


「出番だジュウロウ」

「イヤッ、兄貴やってよ!」

「俺がなにすんねん!さっきMP切れたし武器も無いし!」

「えっ、エア剣術で」

「エア剣術は封印しました、威力が大き過ぎる…。俺への!」

「えー、どうすりゃいいの?うーんとえーと、じゃあファイア!」


兄貴がゴチャゴチャやってたせいで殆ど自分のスキルを確認出来ていなかったが、火魔術が有ったと思ったので呪文も分からず当てずっぽうで「ファイア」と唱えてみた。


ボゴゥ! という音をたてて火の玉が飛んで行った……のではなく、熊?の鼻先から額辺りでバスケットボール大の炎が上がった。


「グガァァァ!!ゴギャァァ!」


「おい!ジュウロウ!お怒りだぞ。どうせやるんなら火を起こすんじゃなくぶつけるとか、もっと強力なのぶちかませ!」


「そんなこと急に言われても。何が出来るかもよくわかっーー」


その直後には既に怒り狂った熊?が目と鼻の先迄突進して来ていた。


「危なっ!避けろっ!」

ドンッ!


っという音と共に俺は兄貴に突き飛ばされ、その為に伸ばされた兄貴の腕目掛けて熊?の鋭い爪が振り降ろされた。


バザッ!大した音もせず切断され吹き飛ばされた兄貴の腕が宙を舞っていた。


息が止まる一瞬の後、信じられないくらいの血を吹き出す腕を抱えて叫ぶ兄貴が目の前にいた。


「ギャァァァァァ!っっっ痛ってぇぇぇぇ!」


何が何だか分からない内に最悪の状況は進んでいく。


「えっ?何?腕千切れたりしたら死なないの?」

「はっ、早く腕拾わないと??」

「その前に血を止める??」混乱して思考がチラチラする。


だが熊?の行動は止まらない、振り下ろしたのと反対の方の爪を今度は兄貴の頭部に向けて振り抜く。


ベシャッッ!その音は吹き飛ばされた兄貴の頭の中身が俺の胸元に叩き付けられた音だった。


熊?は二本足で悠然と立ち上がりこちらを睥睨している。


「おえぇっ、げええっ!」


そんな場合じゃないのに、極度のストレスで嘔吐してしまう。

もう何も考えられない。どうして良いか分からない。


その時、俺の目の前で信じがたい事が起こる。


兄貴の死体がヒモで吊り上げたように起き上がり、無くなった腕と破損した頭部からシュウシュウと黒い霧のようなヤツが立ち昇っている。


いや、違う。兄貴の死体から霧が出てるのではなく、吹き飛ばされた腕と俺の上着に付いた頭の一部だった物が黒い霧へと分解され、兄貴の死体へと吸い込まれるように戻っていく。



あれだけ吹き出した血も水溜りのようなそれや俺の上着に飛び散った一滴まで……。




一呼吸の後、其処には死ぬ前と変わらない兄貴がボンヤリ立っていた。


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