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手記

兄貴と共にログハウスのドアの前まで来た、人の気配がするか聞き耳をたててみる。

後ろの兄貴と顔を見合わしお互いに物音がしなかった事を確認し、ドアをノックしてみる。


コンコン!返事が無い。ドアには木の枝で作ったバーが取り付けてあったので掴んで引いてみる……、開かない。


「何かこれさー、鍵かかって…ウワッ!」


ドン!と兄貴に背中を押されて前のドアに寄りかかるとギィという音と共に開いた。


「早くしろよ!内開きだろうが。」

「あっそっか、何となく癖で。でも玄関ドアっていつも外に引いてた様な……?」

「外人さんが作ったんだろ、日本だと内開きじゃ脱いだ靴に当たって邪魔だしな。」


足元を見ると砂埃がだいぶ積もってる、靴を脱ぐ方式だったとしても脱ぎたくは無い。

中を見渡してみる、随分ほこりっぽいし何年も使われて無い感じだ。

中には机に椅子、ベットの他生活に必要な物が一通り揃っている。


「ねえ、長い事使われて無いみたいだよ。」

「みてーだな、何か金目の物が無いか調べようーゼ。」

「金目!?ドロボーじゃん。」


「じゃぁ、ケーサツ呼んで来いヨ。こんな誰もいないとこで見つけたもんは俺のもんだろ、だいたい俺達 無一文じゃねーか必要だろうが。」


「それはそうだけど……。」

「じゃぁ、持ち主がいたら返しゃいいだだろ?まぁ、調べようーゼ。」


はぁ、まぁ金目の物はなさげだけど本当にあったら持ってく気かな?この人極端だから何か危ないなぁ、必要に迫られたら倫理観とか道徳心なんて無視だからなぁ〜。


ざっと調べたがこれといって変わった物は無かった、もちろん金目の物も。


「これといって無かったね。」

「ああ、目ぼしいのはこのノートみたいなのだけだな。」


他には気になる物は特に無かったが机の上に一冊のノートが置いてあった、脇にはそれを綴ったのか木で作ったインク壺に羽ペンが刺さって置いてある。

インクは既にカピカピだ、ノートらしき物は紙では無く動物の皮で作られている様だ。


「さあ、何が書いてんのかなぁ。」


兄貴はペラリと皮のノートをめくって声を出して読み始めた。


「えーと、なになに〜。この手記を後から来る者の為にのこす事にする……。」

「兄貴そんなクニャクニャした字読めんの?」

「そう言や日本語でも無いのに読めるな、お前は読めないのか?」

「んー、あっ!読める。意識して見るとちゃんと意味が分かるね。」

「コレもステータスの《言語理解》とかの効果だろナ。」

「うん、便利だね。でも書くのは無理っぽなぁ〜。」


兄貴に手渡されて読んだノートはこれを書いた人の日記みたいだった。

それによれば日記の作者は船でこの島に来たみたいだ、案の定イカに船を沈められ命からがら上陸したものの他の船員は皆んなやられたとある。


何年もこの島で生き延びて脱出する為に色々島を調べてまわったらしい、この島の事が詳しく書いてある。

日記によれば最初に俺達が転生された所や、今のこの家が建っている様な森がハゲた場所はなんらかの理由でモンスターが近付かない様だ。


但し、熊のような強い個体はあまり騒ぐと近寄って来る事もあるそうだ。

そういえばあの時は兄貴が「やり直ししろー!」とかでかい声で叫んでた。


俺は一緒に日記を覗き込んでいた兄貴に無言の訴えを視線で送る。


凄い勢いで目を逸らされた。


「おっ、おお。このハゲスポットはモンスターが来ないのか、こっ、これで安心して寝れるなー。あー、何か俺、安心したら眠くなっちまったし後はお前読んどいてくれ。」


兄貴はベットに向かおうとしたが生憎ホコリだらけだ、諦めるのかと思ったら外の木陰で寝てくるとか言って出て行ってしまった。


眠いのは本当だった様だ。


一人残され続きを読んでると他にも色々分かった。

ここは香辛料が豊富に採れる島で世界中でその場所を追い求められるスパイスアイランドと称される場所の様だ。


この世界では香辛料は同じ重さの金より価値があるらしい、何だかコロンブスの大航海時代みたいだ。

日記の作者もはじめはこの島を発見できた事を喜んでいたが、いくら香辛料を手に入れても持って島から出れなければ意味がない。


兄貴も言っていた森の反対側の平原には、作者が黒い悪魔と呼んでいる牛みたいなモンスターがいるらしく熊よりも強いらしい。


おまけにアッチには少数だがデカイ鳥型モンスターも出るらしく、コイツは鳥なのに空は飛べず牛よりも弱い様だが石化ガスを吐く、だから最も危険だと書いてある。

向こう側には行かないでおこう……。


それよりも気になる事が最後の方に書いてあった、作者いわくこの島にもゲートがありやっと出れると嬉しそうに書いてある。

娘さんにも会いたがってる旨が綴られており俺も産まれたばかりの娘を思い出してしまった。


「ゲート?門とか出入り口の事だよね、とりあえずソレでここから脱出できそう!」


最後のページになった、どうやらそのゲートとやらは洞窟の先にあるらしい。

正確には普段は海の中だが引き潮の時現れる洞窟を進めばその先にあるとの事だ。


しかし、洞窟内のゲートの手前にガーディアンがおりこの日の日記を最後に作者は決死の突入を敢行すると書いてある。

締め括りにこの手記を読む者に宛てて自分が上手く脱出できなかった時はこの事を娘に伝えて欲しいと結んであった。


改めて日記の表紙を見ると作者の名前と書き始めの日付が書かれている、もう何年も前なのだろうか?この世界の今が何年の何月かも分からないのでなんとも言えない。


何はともあれこの作者が無事に脱出できた事を祈ろう。


かなり色々分かったし脱出の目処もこれでたった、兄貴を起こして相談してみよう。

それにしてもあの人昨日もお昼寝だけして夜通し遊んでたからな、ソリャ眠いだろう。


俺は外に出て兄貴を探した、木陰で寝てくるって言ってたけど木なんて森の方にしかない。

まさか森の中で寝てるなんて事ないよね?と思いつつグルリと家を回り込むと建物の陰で兄貴はスヤスヤ眠っていた。


流石に森の中で寝るほどツワモノではない様だ。


「お〜い、兄貴。起きてよ、いい事分かったよー。」

「……スー、…スカ〜。」


おかしい全然起きない、揺すってみたが一切目を覚ます気配がない。

兄貴は寝起きの機嫌はすこぶる悪い、しかし寝室のドアノブに手をかけただけで起きるぐらい敏感な方だ。


少し考えてから、……顔を踏んづけてみる。……ゲシッ。

反応がない…身構えて損した、顔に靴型がくっきり着いていたがスヤスヤ眠っている。


何かおかしいな、徹夜しても全然眠そうじゃ無かったのに陽が高くなったらぐーぐー寝てるなんてまるでヴァンパイア……。それでか、納得した。


兄貴が起きるまで手持ちぶたさだ、うーん今日はログハウスで寝れたらと思ってたけどホコリだらけだし魔術でコテージでも建てとくか。


しかし、開口部の窓や入口、そもそも天井が兄貴の念動力サイコキネシスじゃなきゃ上に乗せれない。

うーん、そうか!いい事思いついた。


「まず先に天井用の岩板から作ってと、今回は広めにしとこう。《ロックウォール》」


俺はまず八畳ほどの面積の岩板を平置きで作成する、そしてその下に4枚の外壁を一度に立ち上げようとしたが上手くいかない。

そもそも魔術は連発は出来ても同時に複数は発動できなかったんだ。


「うーむ、上手くいかないな。一旦真ん中で持ち上げてみるか?《ロックウォール》」


この案は正解だった、真ん中に大きめの石柱を作成して天井板を持ち上げる傘の様な状態だ。

それから家の外壁を立ち上げた、まだ部屋のど真ん中に石柱がある。


「ヨッシー!上手くいった。……、と思ったら入口が無い、やり直しだ……。」


4枚の外壁を一旦消し開口部をふまえて作り直す、作った物を消すのは簡単だ一瞬で土に戻る。


開口部は何とかなる、まずは外壁になる一辺に窓部分以外の壁を二枚立ち上げる。

その後窓幅の岩板を1m程立ち上げれば窓の有る一面が出来上がりだ。


同じ要領で他の三面も窓と入口を立ち上げれば最後に真ん中の石柱を消せば出来上がり。

おー!兄貴なしでも出来上がった、これであの子はいらない子だ。


でも最終的に消す岩板を作るのはMPのロスだけどね、そもそもコテージを仕上げるには俺の最大MPでも休み〃じゃないとMP切れする。


中のテーブルやベット等を作ったら完成した、中々の出来ばえだ。

しかしコレが出来上がったらもうする事が無い。


「おーい、兄貴!兄貴!」


ダメだ全然起きない。もう本当やる事ないしお腹空いてきたんだけどなー。


そうだ!まだ少しMPも残ってるしウサギか猪を狩りに行こう。

今の所兄貴がほとんどLPとして吸収しちゃってるからソイツらは食べたことない。


俺は勇んで森の中に入って行った、俺だって結構強くなったしもう大概のモンスターなら余裕がある。

大体の奴は魔術で一発だしね、熊とか以外なら怖いもんなしだ。


……、熊に出会いました。


ある日の森の中ですが俺は落し物なんてしてません、これから逃げますが追いかけないでね。


「グルゥゥ!」


無理なようです。


「こっ、怖くなんかないぞ!もう戦闘のパターンはつかんだんだ。《ダーク》」


熊は顔の周りに黒い靄をまとわりつかせて鬱陶しそうにしている、そのまま腕を振り回して周辺の木々をベキベキ折りながら此方に向かってくる。


目は見えて無いみたいなのになんでこっち来んの?ヤバイ逃げなきゃ。

俺は回り込むように横に逃げた。……が熊もこっち向いた。


「なんで!?」


これはヤバイと思い熊の眼前にロックウォールを立ち上げる、幅2m高さ3m位だ。

一旦熊の進行は止まったが当然回り込んでくる。


「とっ、当然廻ってくるよね〜。くっ!《ロックウォール》」


熊が回り込もうとした方にもう一枚岩板を立てる、下からせり上がった岩板に顎を強打され熊がよろめく。

熊が怯んでる隙にたて続けてロックウォールを放ち熊を三角柱の筒の中に閉じ込めた。


「ふっ、ふうー。危なかったぁ。」


安心したのも束の間ゴンゴン熊が岩板を叩きつけ下手したら突き破ってきそうだ。


「ウヒャ、もう!《ファイアゲイザー》」

「ギャー!グゴギャー!」


……、何とか熊を仕留めた、ロックウォールを解いて壁をのけてみる、うわっ!丸焦げだ、やっつけたけどどうやって持って帰ろう?

もうMPも無いしとりあえず兄貴を呼んでこようか、そろそろ起きてるだろう。



大物を仕留めたジュウロウは意気揚々と帰るのであった。














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