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プロローグ

その日はいつものルーチンワークとなりつつある焼肉ご賞味の日だった。


大抵は会社の若い子達(女性では無い)に奢りという名のカツアゲにあうのだが…。

今回は弟にたかられ・・・・ているのであった。


この俺、38歳 既婚 二児の父は中小企業の建築会社に勤める普通のオッサンである。

収入はソコソコ、社内では他に大した奴が居ないのか?それなりには貰っていた。

まぁ、世間一般からしたらどうだかわからないが…。


なので、社内の若い子を連れて週一ペースくらい焼肉に行く余裕はある大の肉食なのだ。


ちなみに生まれも育ちも関西なので、親しい間柄では関西弁、敬語の時や知人程度の知り合いには標準語寄りの話し方だ。


そんな感じなので「はぁ…俺、最近、肉食べてないわー」と言う弟の呟きに


「じゃぁ肉奢ったろか?」

「おお、奢られたるわ!」


というやり取りの後、俺のオススメの店にてまんまとたかられている最中だった。


「先ずは牛タン食うやろ!ここの店の厚切り牛タンは厚み2センチくらいあってサイの目に包丁を入れたのをブリッと反り返してあってまるでマンゴーみたいになってんねん。

それを並じゃなくて上塩タンで特別に厚切りにしてもらったヤツが超美味いんや」


取り敢えず牛タンとビールを注文してそれに舌鼓を打ちながら次のメニューに思いをはせる。


「後はシャトーブリアンとかハネシタ、カイノミなんかの希少部位も他の店に比べて安いねん。

シャトーブリアン一回食べてみ、サシが入った一見 脂っこい見た目やのに全然しつこ無いで。

ただ、焼いてるうちに肉がくずれてまう・・・・・・ほど柔らかいから先ずは表面を軽く炙って…」


そんな○○麻呂みたいな会話をしている最中にそれは起こった。


ドンッ! っという爆発音の後に目の前が閃光に包まれ真っ白になった…。


「んっ…。つう、何や今の?」


白い光に目が慣れてきたので周りを見回してみた、まだ目が眩んでいるのか周りには真っ白の空間しか見えない。

……っと思ったら目の前で弟がアホみたいな顔をして座っていた。


おかしい、目の前のアホはハッキリと見えるのにもっと近くにあったお肉様は一つも見えない。

と、いうかアホ以外何も見えず真っ白な空間だった。


前後左右、上も下も白一色で何処まで広がってるのかも分からない。

最初、自分の目がおかしくなって失明でもしたのか?とも思ったが、それだとアホだけがハッキリ見える説明がつかない。


何も無いだだっ広い空間で二人とも胡座あぐらをかくようにして座っていた。


「なぁ、兄貴?何これ?」


アホが俺に質問してきた。


「ついさっきまでアホと同じ状況やったのに俺に聞いても分かるわけないやろ」

「あっ、アホ?」

「いや、すまん。脳内で君の名前がずっとアホだったのでつい」

「?何言ってんの?それよりここ何処やろ?焼肉屋じゃないよな?」

「そうやな、こんな真っ白な内装の焼肉屋じゃ、汚れてしゃぁないで」


俺はそのままゴロンとその場で横になり適当な返答をした。


「いやっ、何か余裕やな?」

「そうでもない。結構、焦ってるけど俺ってトラブルが起こった時に内心と裏腹に余裕そうな態度とってしまうねん。

まぁ、壁と天井は白すぎて何処までつながってるか分からんけど床はしっかりしてる」


寝転びながら床をコツコツしてみた。

弟はキョロキョロしながら落ち着かない様子だ。


「しかし、ここ何やろなぁ?何も無いなぁ」

「ちょっと見て回るか?じっとしてても元の焼肉屋に戻りそうもないしな」


俺たちは立ち上がり周囲を調べて回った、しかし幾ら進んでも壁に行き当たらず元いた場所も何処なのか?

周りの景色が一切変わらない白一色なのでどれくらい歩いたのかも感覚がボヤけてきていた。


天井からは明らかな光源が感じられるが照明器具らしき物は見当たらないし全体に明るい為、屋内か屋外かも分からない。


「なぁ、オイ!弟よ。コレ1人は、元の場所に残ってたほうがせめて距離感くらい分かったんちゃう!?」

「いやいや、そんなキレ気味に言われても。兄貴も何も言わんかったやん」


いっこうに解決に向かわない状況に段々とイライラが溜まっていき限界が来た。

(何で俺がこんな目に遭ってんねんふざけんな!!!)


「オイ!!!。そこら辺に居てるんやろ!何とか言え!ふざけんな!ボケッッ!!、ここは何や!?どうなってんのか説明しろや!」


まぁ、返事を期待した訳ではなく、弟以外に気配も一切しなかったが誰かの所為にせずにはいられなかった。


『ここは、何処でも無い場所。 お前達は生命活動を停止した』

「「えっ!!」」


まさかの返事が来た。

弟とお互いに顔を見合わせてアイコンタクトする。

代表して俺が質問する。


「え〜、すいません。もう一度お願い出来ますか?」

『ここは、何処でも無い場所。お前達は生命活動を停止した』


聞き捨てならない事が聞こえた(生命活動停止?死んだって事か?)


「あの〜、出て来てもらえませんか?スゲー話しにくいんですけど」


何処にいるのか何処から話しかけられてるのかも分からないため、なんとなく天井に向かって大声出してたせいか凄くやりづらかった。


その問いかけの直後、不意にすぐそばに光る球体が現れた。



「えっと、さっきのはあんたが?」

『私が答えた』

「あんた誰?名前は?」

『私は何者でも無い、名は無い』


スゲー困る。話しにくいんですですけど…。


「もしかして神様とか?」


『お前達の言う神の存在に権限は近いが、実際に干渉した個体はお前達が初めてだ』


「あの〜、今の俺たちの状況って分かります?ドンッてデカイ音がして光で目が眩んだとこまでは分かるんですけど」


『お前達は栄養摂取の行為中にガス爆発による衝撃に巻き込まれて生命活動を停止した』


何?焼肉屋でガス爆発?店舗ならプロパンボンベ置いてそうだけど完全に店側の管理不行き届きだろ。


「へっ?じゃ今、何で喋ってんの、何これ天国?」


『お前達の言う天国という場所は実際には存在しない。

ここは何処でも無い場所、今この時の為に臨時で用意した場所』


えー、マジかよ俺死んじゃったのかよ!せめて牛タンの次に頼んだシャトーブリアン食ってからにしてくれよー。


「…あの〜、これからどうなるんスカ。天国じゃないし真っ白で他に何も無いし、このままは流石にカンベンなんですけど」


『お前達にはこれから新たな世界に転生してもらう』


「えっ、何で?っていうかこのままはもちろん嫌だけど生き返るとか無理なの?」


『蘇生は不可能だ、一度遠く離れた魂は二度とその世界には戻らない』


「マジで!、兄貴と違って俺なんか最近子供産まれたばっかしやで!」


弟が口を挟んできた、まぁ気持ちは分かる俺だってもう子供に会えないのかと思うと寂し過ぎて今迄の人生に悔いが残る。


しかし……誰だか分からないその人はドンドン話を進めて行く。


『では、お前達の転生を開始する。次の世界に新たな波紋が広がる事を希望する』


「いやいや!待て!死んじまったのは仕方ないとして勝手にこんなとこまで連れてきて『はい、次どうぞって』納得できるか!」


『では、終わりにするのも可能だ。お前達が拒絶するなら他の者に転生させる。

通常の場合、転生及び、来世、天国、地獄等、お前達の想像する次の機会など無くただ終わる』


「……まぁ、取り敢えず話し合いましょうよ」


俺は何とか納得いく答えを引っ張り出すためにのらりくらりと会話して色々相手から聞き出してみた。


それによるとこの名無しのゴンベイさんは世界の管理調整をしているシステムのような存在で俺達の居た世界だけでなくいろんな世界を担当しているらしい。


何も無い状態から今の俺達の世界のように様々な生物の進化や、次々生み出される文化を管理しているって言ってた。


何故か?目的は?等は聞かなかった、俺には興味無いしどうせ何故でも無いとか、目的は必要ないとか、哲学的な?もしくは機械的な返答が返ってきて混乱するだけだ。

今回、俺達に干渉してきたのは今の世界は何か手詰まり感があるらしい、そこで違う世界から新しい個体をほうりこんで変化をつけたいらしいのだ。


そんな一人二人で何か変わるのか?と思ったが小石が起こした波紋がぶつかり又、新たな波紋がその次へと……。

とか分からない事を言っていた。


「うん、なんとなく話は分かりました。

要は貴方の思惑に俺たちは協力するかたちですよね?いえいえ、勿論他の人達でも良いのは分かってますよ。

でも誰かが断らずに貴方の要求を飲んだとしたらその人は協力した事になりますよね。

協力し、貴方に対してなんらかのメリットがある場合、貴方も相手にメリットを返すべきだと思うのですがいかがです?」


『転生に応じる場合、ある程度の便宜をはからう用意がある』


「具体的にはどこまでの?」


『今あるお前達の記憶、既に発現した才能、其れ等は保持したまま新たな世界で得られる才能を任意に選択する事が出来る』


「ファンタジー系の世界にも転生有り?」


『お前達の言うその世界に近いものも有りそこに転生も可能だ』


「おっ、結構な好条件じゃない?」


俺は中々の条件に気を良くして意見を聞くべく弟の方を振り返った。

……ダメだな、死んでしまった事実がかなりのショックだったのかヤツはうわの空で何かブツブツ呟いていて話を聞いて無い。


「おい!おいって!聞いてるか?次の人生の条件を詰めてんねけど」


「えっ、ああ。聞いてるけどアンタよくそんなサクッと切り替えできるな?死んだ事実受け止めるだけで軽くトリップしたわ」


「まぁ、死んでしもたもん・・・・・しゃあない・・・・・やんか。

俺は現実主義やからな!結果の出終わった事については反省はしても後悔はしません。

お前も結婚してたんやったら保険ぐらい入ってたやろ?嫁と子供やったらその保険で家のローンはチャラ、多額の保険金で今後の生活も安泰、オマケに家に居てたら邪魔なだけの旦那は無し!ある意味こんな早い段階で老後までの保障が確定して喜んでるかもよ?」


「……それはそれで嫌やな……。まぁ、家族の今後の目処が立ってんのが分かって落ち着いたわ」

「で、どうする?次の世界で好きな才能持ってスタート出来るらしいぞ〜!」

「何か……。ノリノリやな。

好きな才能って、あくまでも才能やろ?初めから飛び抜けた能力持ってスタートじゃないやろ?」


『才能は持って生まれる可能性、何処まで伸ばせるか又は才能が発現するかは本人次第だ』


「なっ、微妙やろ?」


「いやいや、よく考えろ愚弟よ。

なにも才能ってのは技能的な物だけじゃないぞ、例えば体格や病気になり難い遺伝子とか?寿命なんかも持って産まれた才能やろ。

お前三十代でポックリ死んだんもう忘れたんか?」

「え〜、そら健康で長生き出来たら良いけど。

ただ、生きていく事自体も結構辛いで。怪我もあるやろし」


「フフフ、フハーハッハッハ」

「いや、何を大笑いしてんねん、どっかの悪党か?」

「この俺に、いやさこの・・お兄ぃちゃんに任せなさい!」


俺には全ての問題を解決する秘策があったのでドヤ顔で弟に言ってやった。

そして満を持して次の世界での才能を依頼する。


「では、ゴンベイよ!我に不老不死を与えよーーー!」

『それは不可能だ』


弟が凄く哀しい目をして此方を見ている。

そんな目で見ないでくれ、もう一度死にたくなる。


何がいけなかったのだろう。俺の灰色の脳細胞はコレが正解だと告げていたのに、突っ込んで聞くか?


「あの〜、どの辺が不味かったんでしょうか?」

『不老は可能だ。 だが、不死を個体が有する事は出来ない。

魂が離れる程のダメージを負い其れが遠く離れてしまった個体は消滅する』


「……ん!それって事故とか怪我した場合ですよね?定まった寿命での死は何とかなるんですか?」


『寿命は幾らでも延長可能だ』


「よし!」


再び弟にドヤ顔を向ける俺。


「何、ドヤ顔してんの?結局長生きしても事故とか怪我で半身付随とかになっても延々と生きてやなあかんやん」


「フフフ、それはこの追加の要望でフォローするのだよ。さあ!ゴンベイよ!我に不死身の肉体をーーー!(あっ、いや。怪我してもすぐ治るとかそもそも怪我しないという意味の不死身ね)」


「なあ、もう止めといたら?」


弟の「それ無理やって」と言う突っ込みとは裏腹に俺の要望は以外とすんなり受け入れられた。


『了解した。他に要望が無ければ転生を実行する』


「いやいや、チョット待ってよ。なんかスンナリ行けたのは良いけどもうちょい詰めさせてよ」


その後、弟と共にゴンベイと詳細を詰め、俺は不老不死で不死身(ヴァンパイアという種族だと言われたのでヤバイと思って、太陽の下に出れないのとか嫌だって言ったら問題無いと言ってた。

あと、血を吸うのとかもチョット……って言ったらそれも問題無いらしい。向こうの世界では違うのだろうか?)


弟は「不老不死とか別にいいから千年くらいの寿命で良いわ」とか微妙に感覚のずれた贅沢を言ってた。


後は各々出来る限り才能を盛り込んでやろうと色々言ったが、どうも世界での個体のキャパが決まってるらしく何かを入れると何かが抜けるみたいだった、(等価交換がゴンベイの基本理念?らしい。)


結果、俺は永遠の命以外は生前のネックだった記憶力の無さをフォローする才能、弟は寿命を遠慮?したお陰か向こう世界での魔法?全般の才能を貰えるらしい。

ついでにもう一声、ゲームみたいに能力が文字とかで見えたら便利だと言ったらそれらしい才能も付けてくれるらしい。


最後にスタートする年齢を聞かれたので俺は極力若い方が良いと言い、(ゴンベイは加減せずに赤ん坊とかにしそうだったのでそれはクギをさしておいた。)弟は普通に20歳ハタチ前後と要望を伝えていたようだ。


話しが纏まったところでゴンベイがいよいよ転生開始の台詞を高々と宣言する。




『では、お前達の転生を開始する。次の世界に新たな波紋が広がる事を希望する』




こうして俺たちは新しい人生をスタートしたのだった。


























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